艦これ 反改   作:RS

13 / 14
4-3

 

 

 

睦月は夢を見ていた。

 

如月と初めて任務に出た時の夢だ。

 

 

敵の攻撃で中破に追い込まれ、

死の恐怖に縛られて硬直した睦月を、

如月がカバーした。

 

ボロボロの帰投、

泣きじゃくる睦月、

曳航する如月も中破寸前だった。

 

 

初めて入る修復風呂は暖かく、

内外両方の癒やしをもたらしていく。

 

 

「知っているかしら睦月ちゃん」

 

まだなきべそをかいていた睦月に、

如月は優しく謎かけた。

 

 

「落ち込んでいる子の慰め方って、

 どうすると思う?」

 

口をつぐんで、

睦月は首を横にふる。

 

如月は色気のある笑みを浮かべて、

 

「そ・れ・は・ね~」

 

 

 

 

 

 

グッと抱き寄せられる、

懐かしい感覚が睦月を襲った。

 

目覚めればそこは入渠場で、

受けた傷は殆ど癒えている。

 

 

「……」

 

意識がまだ霞がかっている睦月は、

誰に抱きしめられているのかがわからない。

黒い髪と、自分と同じくらいの体格。

思い当たる人物の名前を、睦月は口にする。

 

「……吹雪、ちゃん?」

 

 

声を出したことに、睦月を抱きしめた吹雪が、

驚いて離れた。そして、意識が戻ったことに安堵したのか、

目を潤ませて再度抱きしめる。

 

「良かった……良かったよぉ……」

 

 

死ぬかも知れなかった。

睦月の意識はまだ混濁している。

だから、死の恐怖が目前にあったことに、

恐怖を感じない。

 

「睦月ちゃん死んじゃうかと思ったよぉ……」

 

 

「……私……」

 

 

無茶な単艦特攻を仕掛け、

大破し、沈みかけた。

 

吹雪が魚雷を撃つのが後数瞬でも遅れていたのなら、

砲撃の正中によって、海の藻屑と成り果てていただろう。

 

 

その恐怖を身に引き起こすことが、

今の睦月には出来なかった。

 

緊張の糸がズタズタに切れていて、

今のこの状況も、

半ば夢見心地なのである。

 

 

「大破して、もう少し遅かったら……うう、

 訓練しておいて良かった……睦月ちゃああああああん!!」

 

 

 

 

 

 

そうだ。

 

 

 

睦月は朧気な意識の中で、

そこで泣いているのが、

本来なら自分なんだと思っていた。

 

あの時、必死に掴みきっていれば。

 

練度が足りていたら。

 

被弾さえしなければ。

 

泣いて抱きしめて、

今の自分の気持ちを、

如月にもわかってもらえるのだろうと。

 

 

 

「……敵は……?」

 

 

「あいつは、逃げた。

 魚雷を命中させたのに、

 中破にも届いていないくらいの速さで。

 ……あれは駆逐艦の範疇を超えていたよ。

 睦月ちゃんが、やられなくで……ほん、と、に……」

 

 

きりりと涙をこらえたかと思えば、

直ぐ様涙腺は緩んで決壊する。

 

 

「…私……どれくらい……こうしていたの?」

 

「に、2時間くらい……。

 ずっと息も絶え絶えで……」

 

「……ずっと、抱きしめていたの?」

 

「え、ええ!? あ、あう、う、……うん。

 迷惑だったかな? なんか、部屋にいても落ち着かなくてさ。

 ほ、ほら! 夢の中で寂しくないように! ね!」

 

 

顔を真赤にして、手を振り乱して、

無理矢理笑って吹雪は取り乱す。

 

それがおかしくて、

睦月は笑った。

 

 

「吹雪ちゃん必死すぎるよ」

 

「あ、あはは、ごめん」

 

 

ズキンと、右腕が痛くなる。

睦月は自分の右腕を抑えた。

 

どうしたのだろう。

 

突き出した時に打ったのか?

それとも不備で、艤装がダメージを受けきらなかったのだろうか?

 

 

「……」

 

 

どれも違った。

 

 

「ねぇ、吹雪ちゃん」

 

「え、なに。どうしたの?」

 

「……私の……その……抱き心地はどうだった?」

 

「……え゛?!」

 

 

どうしてそんな質問を受けたのか吹雪にはわからず、

ただただ混乱する。

 

 

「(抱き心地!? え、それってどういうこと?!

  か、感じたままを言えばいいのかな?

  えと、体が柔らかくて、その、おお、お、

  ど、どうすればいいの?! まさかそっちの趣味あるの!?

  不肖駆逐艦吹雪は、至ってノーマルだよね!?

  女の子同士の恋愛って漫画とかの話だよね!?

  と、とにかく黙ったままはいけない!

  その上でもしも同性愛とかならそれとなくはぐらかさなきゃ!

  だって私にはまだその世界は早いし!)」

 

 

「えっと、睦月ちゃんの抱き心地ね、

 その、あ、暖かいし、柔らかいしで本当、

 お、その……よ、良かったよ」

 

 

腕を抑えていた睦月が、

思いつめたような顔で、

口を開いた。

 

 

 

 

「如月ちゃんも……同じ事言ってた」

 

その右腕は、砲門がある箇所だ。

しかし、何かを掴む手もある。

 

「私ね……如月ちゃんに引っ張られてきたの。

 ここに来た時も、戦いの時も。

 いっつも、引っ張ってくれたの」

 

ぐーと、パーを、交互にゆっくりと繰り返す睦月の右手。

 

 

「どうしてもダメな時は、抱きしめてくれて。

 恥ずかしかったんだけどね……でも。落ち着いたの」

 

 

吹雪は、睦月が見ているのが、

右手ではないことがわかっていた。

 

ここでも、今でもない。

 

 

「そんな如月ちゃんが大好きだったし。

 今度は私が引っ張ってあげたいなって……

 そう……思っていてね……」

 

 

引き戻してあげなきゃいけない。

 

吹雪は心に湧き上がった衝動にまかせて、

睦月を抱きしめた。

 

 

「なのに、引っ張りきれなかったの……

 私が、あの時もうちょっと、

 ううん、もっと、もっと…強かったら…」

 

「睦月ちゃん。

 ダメだよ。それは、駄目だよ」

 

「だって、沈んだんだよ……

 私の、手から、自分から、落ちて……」

 

「引っ張られちゃダメ」

 

「如月ちゃんを、追いかけなきゃ……」

 

「帰って来て睦月ちゃん!」

 

 

大きな声に、睦月は体を竦ませて、

すぐに、負傷のない右腕に痛みを感じて、

目の端から、抑えていたものが溢れでた。

 

 

「帰って来て……今、私たちは、生きているんだから」

 

「痛いんだよ、吹雪ちゃん―――」

 

 

目をぎゅっと瞑って、

 

 

「痛くて、痛くて―――痛いんだ―――」

 

 

吹雪は彼女を強く、きつく抱きしめた。

自分は泣いてはいけない。

泣いてはいけない。

 

だが吹雪の目にも、

こみ上げてくる。

 

 

吹雪は、泣き声をあげることはなかった。

強く歯を食いしばって、泣き続ける睦月を抱きしめていた。

 

そうしなければ、睦月がここからいなくなるのではないかという、

予感めいたものを感じていだ。

 

悔しさも悲しさも、弱さも辛さも、

湯は洗い流そうとはしなかった。

彼女の涙が、代わりに流していた。

 

 

 

 

きっともう大丈夫だろう。

ダメだったとしても、守ってあげよう。

吹雪は硬く誓ったのであった。

 

 

 

 

 

 










嘘次回予告

 「お笑いが世界を救うのでーす!」
 金剛発案、お笑いフェスティバル。
 いざ開幕!!
 「僕らムツキサ!」エア友達で挑む睦月に皆も涙。
 「冷やしぽいぽい!」島風と体を張った新体操を!
 「さぁ、パーティーの時間だゴラァ!!」
 現代風「真出玲羅ガールズ」に特攻服でいどむキリクマ。
 勝つのは、誰だ!!








以下、この小説のスタンスについて解説




如月轟沈に関して、
あれは劇場版で語られるのか?
それとも、
「そういう世界観だ」と暗に伝える装置だったのか?
今の私にはわかりませんが。

何にせよ私はこの小説を書くに当たり、
「本編の大筋を変更はしない」という信念のもと書いています。

如月轟沈も、鎮守府直接攻撃も。
作中において肝心な部分は書きます。
……が、原作通りには書きません。

それは、この4話。

アニメ4話では金剛姉妹が勢揃いで、
キャラソンも歌って、戦闘も頼りがいのあるお姉さんです。

しかし、肝心なのは金剛四姉妹ではなく、
「睦月がどうやって持ち直すのか」のはずです。
だから肝心な部分は書ききり、
そうでない部分は削りました。

アニメ4話で、吹雪は金剛を頼りがいのある人だという描写がありますが、
それはこの小説における3話と、
吹雪のいない4-1で描写済みです。

面白お姉さんの側面は、次回でも十分間に合います。

というよりも、
アニメの4話、あれはいったいなんだったんだ……。
睦月ちゃんの声優さんが本気を見せてくれたこと以外、
何も印象に残らないとは……。



ともかく次回は、

第五遊撃部隊の結成話です。
メンツはアニメと一緒のつもりです。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。