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吹雪「さぁーて、来週の艦隊これくしょんは!?」
睦月「睦月ですぅ! 改ニになるのが当たり前のようだけど、
第三水雷戦隊で私だけまだ改ニが出来ないにゃし!
皆強くて羨ましいけど、
五誓にかけて頑張っていきましょー!
さて来週は!」
夕立「『睦月、可愛い子選手権』
『全自動ポイポイランチ』
『曙対不知火』の三本っぽい~」
吹雪「明日もまた見て下さいね!
あ・か・ぎ・さんっ!
うへへへへへ」
入渠ドックには、
深く長く入るためのものと、
浅く短く入るための風呂がある。
この中には艦娘の体を癒やす、
鋼材や燃料が配合されていて、
修復の度にその量を減らす。
演習時にはどんなに被弾しても、
艦娘同士の傷は修復する必要はない。
艦娘の放った攻撃が当たったとしても、
攻撃として認識されないからだ。
……とはいえ、
海風にもまれ、水しぶきのついた体を、
そのままにしていられるほど、
彼女たちは女を捨ててはいない。
「へーい皆さん! おつかれですね―!」
入渠しているのは、
先ほど激戦を終えて来たばかりの2艦隊。
『第三水雷戦隊』と、
金剛率いる『英国ティータイム』。
計11隻。
「悔しいっぽい~」
「私全然動けなかったからつまんな~い!」
不平を漏らしているのは島風と夕立。
如月は睦月の2人は、互いに体を洗っている。
「あらぁ、睦月ちゃんもしかしてまた……」
「にゃ!? ふ、太ってないよ!?
如月ちゃんそこ触っちゃ?!
お腹くすぐっひゃい~!」
「うう、私全然活躍できなかった……。
折角神通さんに教えてもらったのに……」
「そりゃああれだけ奇策重ねたんだもん。
避けられたら困るよ」
吹雪の背中を流しているのは最上だ。
ぱっと見て男女どちらかわからなくなるほどの、
中性的な容姿であるが、れっきとした女の子である。
「瑞雲使って魚雷使って砲撃もしたい。
欲張りな要求全部作戦に絡めちゃうんだから、
三隈ってすごいよね~」
「え!?
あれ金剛さんが立てた作戦じゃないんですか?!」
「あっはは~、やっぱそう思っちゃった?
だって金剛さん、
『なんとかなるね~! 砲も魚雷も無駄デース!』って、
全く作戦立ててくれなかったし……」
苦労したであろう。
しかし、そちらのごり押しであっても、
負けていたであろうことは吹雪にも分かった。
「北上さん! ああ、そんな悪女に!
やめなさいこれ以上北上さんの肌を羨ましじゃなくて、
三隈さん! 貴女北上さんとくっつきすぎです!!」
「あら? 互いに功績をたたえ合う一環の、
スキンシップですわ。ねえ北上さん」
「あー、うん。そだねー。
あ……そこいい感じかも」
「おっしゃ戦争ですね、
三隈さん工廠裏に来てくれます?」
「野蛮ですわぁ。
でも、そういう争いが起こるのもまた、
愛なのですね」
やたら賑やかな方を、
向いてしまったら駄目だと吹雪は察知していた。
「神通ぅ! 駆逐艦皆、
まだまだですネー!」
落ち込んでいる神通に寄って肩を抱き寄せる金剛。
勝者の余裕という意味ではない。
「はい……練度が足りずに……」
「ノー、練度以前の問題でーす。
練度はありまーす。
でもぉ、経験が足りませーん!
いっつも遠征ばっかりで、
弱い駆逐艦としか戦ってないから、
爆撃も雷撃もゴテゴテになるのでーす」
「面目次第もありませ――」
金剛はニヤリと笑って神通の口に徳利を傾けた。
隠し持っていた酒が、神通の口内に侵入し、
喉を滑って体を発火させる。
「暗いです!
愚痴は全部聞きますから、
とっとと酔ってしまうでーす!」
「ああ、金剛さん!?
神通さんが戦えなくなったら次の演習が!」
うろたえる吹雪に金剛はなお笑う。
「こんな調子で出ても、
どうせ負けのイメージ引きずって勝てませーん。
でしたらひっこめます。
これは戦場でも一緒ですよー……ええっと、
吹雪だったですか? ブッキー!
戦場は常に、そういうことを考えなきゃ駄目でーす!
常に笑顔! 明るく楽しく!」
「た、楽しく?」
「YES! メンタル駄目で戦いなんか出来ません!
ですから次の戦い、
ある意味厳しいですね―。
まぁガンバレブッキー!」
そう言い残して金剛は、
顔を真赤にして酔いの回り始めた神通を背負い、
脱衣所へと向かった。
「ど、どど、どうしよう!
コンディション云々の前に、
駆逐艦5隻だけで次勝てるわけないよぉおお!!」
「なっさけないわねえ駆逐艦娘。
私と北上さんの活躍は、魚雷を使ってのことよ?
肉薄して信管を外して当てる。
魚雷は当たれば無敵なんだから!」
「でもだってだってぇえ!!」
「あ~、うちの旗艦がマイペースなのはしょうがないよ。
でもあれで色々考えてる……んじゃない~?」
大井と北上の励ましにも吹雪は上手く応えられなかった。
不安は波及するかと思われたが、
島風と夕立はそうでもなく、
むしろ闘士を燃やしている。
「駆逐艦5隻だけで……敵を倒すっぽい」
「にっひひ! 燃えるよね~!
速攻で沈めちゃうんだから!」
「……とりあえず、6隻にしないと……。
誰か手伝ってくれるかな~……」
憂鬱なまま、吹雪は鎮守府内を探した。
自分たちの艦隊に一時的に入ってくれる艦娘を。
加えて指示などをだしてくれる艦娘を。
最初は愛宕。
「ごめんね~。これから出撃なの~」
次いで高雄。
「同じよ。ごめんなさい」
長良型軽巡洋艦の集会に飛び込んだが駄目。
赤城に頼むために食堂へと向かったが、
食事中のため何も声をかけずに去る。
もう演習まで時間がない。
絶望的か……吹雪が諦めかけていると、
睦月と如月が慌ててやってきた。
「吹雪ちゃん! 見つかったよ!」
「え!? だ、誰!? 誰がやってくれるの!」
「自称、出撃のプロで、
多くの駆逐艦、軽巡洋艦、空母、戦艦を、
沈めてきた歴戦の英雄」
それっぽく如月は迫力を込めて述べる。
「か、艦種は!?
戦艦!? 空母?!」
「それはね~」
そして、演習の第2幕が開始される。
戦艦も空母も無傷で勝利できる英雄がいるっぽい。