「だぁめだぁああああ……」
全身筋肉痛の吹雪が、
夜風に当たるため岬に佇んでいる。
戦いを通してわかる、
自分の不甲斐なさに打ちのめされていた。
「折角旗艦で皆にいいところも見せられるかも―って、
思ってたのに……イイトコ全然ないし……」
駆逐艦が旗艦を務める機会は早々無い。
あったとしても、遠征や、比較的安全な海域での、
哨戒任務が常である。
演習や戦闘においては、
重巡や戦艦などが旗艦を務めることが多い。
月が海を照らそうとしているが、
黒いうねりはどこまでも黒く、
光の侵入を許そうとはしない。
「……なんのために呼ばれたんだろう、私」
前にいた鎮守府から通達されたのは、
今いる鎮守府への編入。
荷造りなどは全て、前の提督が行っていたので、
吹雪は皆にさよならを言う間もなくここへと来た。
座学だけなら誰よりも積んでいた。
だから旗艦になってもそれほど慌てずにすんだのだ。
「きっと、いらなかったんだよね……」
最後に見た提督の顔は、
苦しげに、無理やり笑っていた。
気を使う反面、裏に見えた顔が、
吹雪の心に若干の刺を残している。
吹雪はここに来て、赤城の姿を見て、
一目で憧れて、頑張ってみた。
ところが今日の演習を見る限り、
吹雪は、ここにいる意味がわからなくなりかけている。
皆強くて優秀なのだ。
今日演習をした全員、
強烈な個性を持っている曲者ぞろいであるが、
同時に強力な戦闘力を持っている。
自分では到底すぐには追いつけないほどに。
そんな鎮守府に、素人を送り出したとしても、
戦力になるとは思えないし、
足手まといになるかもしれない。
吹雪は自己嫌悪の渦中にいた。
すると、背後に気配を感じる。
振り返れば、旗艦2人がいた。
「Heyブッキー!
こんなところで何してるですか?」
「吹雪ちゃんお疲れー。
ねぇねぇ、牛乳とコーヒー牛乳あるけど、
どっちが飲みたい?」
戦艦金剛、軽巡洋艦那珂がそこにはいた。
金剛は艤装を完全にとった状態で、
那珂は艤装どころか服も寝巻きの状態だ。
「あ、え、……はっ!
お、お疲れ様です!」
すぐに敬礼する吹雪に、
金剛も那珂も笑う。
屈託なく笑う2人を見て、
素直に素敵だと、吹雪は思った。
「ブッキー何しょげてるですかー?
もしかして、負けたからですかー?」
「その、えっと……はい」
「駄目だよ吹雪ちゃん。
女の子は笑顔が大事なんだからねっ☆
はい、牛乳! カルシウムだよー」
牛乳ビンを吹雪に渡し、
那珂はコーヒー牛乳を開けた。
「Oh、中々美味しそうですね」
「だーめ。これは那珂ちゃんのだから、
金剛先輩は自分で買ってきて」
「つれないよ那珂ちゃーん。
1口だけ、1口だけでも~」
「だーめ。アイドルは、
間接でもちゅーしちゃ駄目なの」
唇を尖らせた金剛は、
どこからともなくティーセットを取り出し、
ポットから紅茶を出した。
湯気が夜風に当たってくゆる。
「ふふ~んだ。
英国にはコーヒーよりも紅茶があるから、
全然、ほんと全然良いんだもんネ~」
吹雪は牛乳を飲む前に、
「あのっ」と口をはさむ。
「お、お二人共、私なんかのために……」
そう言葉を繋いでいくと、
金剛がムッとして吹雪にでこピンした。
「あいてっ!?」
「『なんか』なんて、いっちゃ駄目でしょー。
もっと自信を持ってくださーい」
「そうだよ吹雪ちゃん。
アイドルは誰もがセンターに立つ、
そういう気合いで行かなきゃいけないの!
自信がないならつければいいの。
那珂ちゃんを見て!
この溢れ出る艦隊のアイドルとしての自信!!」
「す、凄いですけど、
私アイドルじゃあ」
「女の子は誰だってアイドルになれるの。
つまり、女の子はアイドルのタマゴ!
そう那珂ちゃんが、皆のハートを、
釘付けにするの!」
「HAHAHA!
那珂ちゃんは本当に可愛いでーす!
ブッキー、今日の戦いですが、
皆まだまだ強くなれます!
今度やる時は、私に一撃当てて唸らせてみてクダサーイ!」
ほどなくして、
嵐のごとく金剛と那珂は帰っていった。
自己嫌悪に陥っている暇はない。
吹雪は岬から鎮守府へと帰っていった。
次回予告
那珂「いっくよ~!」
阿賀野「ユニットライブ!」
資材。円盤。ファンクラブ。
この世の全てを手に入れた女、
トップアイドル軽巡棲鬼。
彼女の撃沈前に放った一言は、
全艦娘をスポットライトへと駆り立てた。
「ワタシノファンカ……ホシケレバクレテヤル。
サガセ! ワタシノスベテヲオイテキタ!」
艦娘たちはレジェンドロードを突き進み、
夢を追い続ける。
世はまさに、アイドル戦国時代!
次回 艦ピース!
第1話「センター那珂ちゃん!」
デュエルスタンバイ!!
異常に強い那珂ちゃん。
如何でしたでしょうか。
二次創作だとあまり見かけませんでしたので、
やってみた次第です。
神通という鬼教官。
それが姉にいるのですから、
強くないわけがないというわけで、
こんな強さになりました。
実際改ニになれば強いですし。
さて、次回はアニメでもかなり話題になった3話。
明日の最終回次第で、
この3話の価値がはっきりするはずです。
如月ちゃん……無駄に沈んだんじゃないならいいんだ。