何!? 俺の知っている遊戯王の世界ではないのか!?   作:やーなん

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みなさんお久しぶりです、ここ最近クソ暑くて夏ばて気味の作者です。
今回はスズナさんのデュエル回です。彼女の使うテーマは、個人的に一番の出来だと思っています。
色々調整中でカード説明は少なめですが、これからはテンポ重視で何度も使いそうなカードだけ記すようにしようかと思っています。
いやいや、出るカード全部見せてよ、と仰る物好きな方がおれば、仰ってください。

需要があれば失踪しません。
それでは、本編です。










第十五話 その女、恐れ知らず

「とりあえず、学校にちゃんと通うことを条件にうちに居ていいことになった」

 親父たちがユリちゃんの両親と話をつけたのは、結局午前二時近くになってからだった。

 

 こんな時間まで掛かったのは、ひとえに親父たちがオンライン通信でマッチ戦をしていたかららしい。

 何だかんだでデュエルすればお互いに分かり合えてしまうこの世界で、三度も対戦すれば言わずもがなだ。

 

 詳しい話は後にして、今日は遅いからもう寝ろという話になった。

 

 

「お世話になります、ご迷惑掛けてすみません」

「構わないよ、うちで良ければ気が済むまでいるといい」

「遊助、空いてる部屋にお布団もって行って」

「あーい」

 そんなこんなで、俺は空き部屋に箪笥から持ってきた布団を敷くことになった。

 

 

「この部屋の中は好きに使って構わないから。

 着替えとか勉強道具は明日親御さんが届けてくれるってさ」

「うん……」

「じゃあ、俺の部屋は隣だから。

 気になるんなら、鍵とか持ってくるけれど?」

「いい……」

「分かった。それじゃあな。おやすみ」

「ねぇ、ちょっと待って」

「ぅん?」

 俺は呼び止められて、ユリちゃんの方に振り向いた。

 

 

「ちょっと時間は遅いけど、少し話さない……?」

「俺は別に構わないが」

 ちょっと俯きがちなユリちゃんが自分からそんなことを言い出したのだ。

 俺は断る理由も無いので頷いた。

 

「ねぇ、あの女とどういう関係なの?

 ちょっと普通じゃないわよ。あれ」

「翔子のことか?

 まあ、確かに普通の関係じゃないわな」

 どうやら彼女の興味は翔子にあるらしい。

 さっきのデュエルが余程堪えたのかもしれない。

 

 

「ええと、……二人は付き合ってるのよね?」

「いや、交際はしてないな。その必要も無いしな」

「え? 付き合ってないの?」

「俺と翔子が恋人同士に見えるのか?」

「そうじゃなきゃ、あんな風に言えるわけ無いじゃない。幾ら幼馴染相手だからって」

「そうなのか?

 幼馴染なんて始めて持ったから、アレが普通だと思ってた」

「いや、普通におかしいから。

 あれはどう見ても……・」

 ユリちゃんは何かを言おうとして、口を噤んだ。

 

「ねぇ、遊助さんは一生あの女に人生を捧げるつもりなの?

 付き合ってもいない相手なのに」

「うん? 当然だろ、俺たち将来結婚するし」

 俺がそう言うと、ユリちゃんは目を見張って驚いたような表情になった。

 

「え、でも付き合ってないって……。

 あ、もしかして婚約者的な感じなの?」

「ああ、俺の親父と翔子の親父が親友同士でな。

 お互いに嫌じゃなければ将来を約束してはどうかって、今時古風な話だけど、うちって結構歴史ある家だからな。

 親父もお袋とはお見合いだっていうし」

「婚約とかお見合い結婚とか実在していたのね……」

 ユリちゃんは数秒ほど黙ると。

 

「ねえ、結局の所、遊助さんってあの女のこと好きなの?

 好きだから婚約して、結婚するのよね?」

「多分、向こうはそうなんじゃないのか」

「は……?」

 ユリちゃんは一瞬、俺が何を言っているのか分からないといったような表情になった。

 

「ええと、確認するけど、あなたはあの女が好きなのよね?」

「好きか嫌いかと言えば好きだが。

 ただ、これを恋愛感情と言っていいのかは分からないな。

 俺、恋とかしたことないし」

「…………」

 ユリちゃんは今度こそ絶句した。

 

 

「……・信じられない、最低……」

「ん? どうしたんだ、ユリちゃん」

「私、前世では喪女でオタクだったけど、好き合っていないのに結婚するとかオカシイってわかるから。

 私も誰かを好きになったこと無いけど、スズナさん言ってたよ。

 恋する女は相手に本当に好かれてるかどうか分かるもんなんだって。

 ねぇ、遊助さん、あの女をあんな風にさせてるの、きっとあなたが原因だと思う」

「…………」

「気も無いのに、優しくしてどうするのよ。

 心の底から好きでもないのに、気の有る振りして……それがどれだけ残酷なのか、私にだって分かるわよ」

 ユリちゃんはため息を吐いた。

 彼女が俺を見る眼は、心の底から軽蔑している者のそれだった。

 

「そんな優しさ、チリ屑ほどの価値も無いから。

 あの女には分かってるのよ、自分は偶々最初だったからこうなっただけだって。

 女にとって誰にでも優しく出来る男って、男にとって尻軽な女と同じくらいいけ好かないし不愉快なもんなのよ。

 ホント、私が言えた義理じゃないけどさ」

 言いたいことを言ったユリちゃんはもう一度ため息を吐いた。

 

 

「……だって、怖いじゃないか」

「え?」

「翔子以外に気心しれた女性なんていないし。

 俺、誰かを好きになっても告白する自信とか無いし。付き合うことだって出来ないと思う。

 だったら、俺を慕ってくれる翔子に俺の人生くらい、くれてやったって良いじゃないか!!」

 呆れた物言いだと言うことぐらい、分かっている。

 俺は自分が傷つきたくないから、ぬるま湯に甘んじているのだ。

 

 

「恋はしたこと無いが、前の人生で気になる女の子ぐらいは居たよ。

 恋心なんて理解できてない小学生中学年ぐらいの頃だった。

 俺は初めてその子に手紙で思いのたけを打ち明けた。その結果、どうなったと思う?

 周囲の人間から囃し立てられ、からかわれ、そして何よりその子には泣かれてしまった。

 当然だよな、俺は万年いじめられっ子で、嫌われ者だった。

 そんな奴、誰が好こうって話だ。告白されるだけ迷惑だよな。周りもクソばかりだったが、俺も俺で馬鹿だった。

 それ以来、俺は誰かを好きになることは無くなったさ。あの時の感情もきっと気の迷いだったんだよ。それは生まれ変わってからも変わらない。

 恋だって? 馬鹿らしい。そんなものは幻想だし、有ったとしても薄汚れた欲望の結果でしかない。

 美談なんて、創作のだけの話なんだよ。だからネットの中に閉じこもって何が悪い。

 それでも俺は変わろうとしたさ。折角の第二の人生だ。

 いじめられないように周囲にいい顔をして、勉強も頑張った。体も鍛えて、心も清くあろうとした。

 でも、あの先生にはお見通しだったよ。あの人は一目で俺の本性を見抜いたさ、俺は何も変わってなんていない、とね!!

 そんなこと、誰よりも自分が分かってるっての!!」

 俺は一方的にそんな事を捲し立てた。

 彼女に聞いてもらいたいとかそんなことも無く、ただ思ったことを吐き出したかったのだ。

 

「俺にとって、人間なんてのは家族以外は化け物同然なんだよ。

 女心なんて、まさに化け物の巣窟だ。怖がって何が悪いさ。

 それでも翔子やその親父さんたちは違ったし、塾長たちのような仲間もできた。

 俺はもう、昔みたいに無意味に虐げられて、孤立して世間に絶望するのは嫌なんだよ」

 そこまで言って、漸く俺は自分が何をしているのか気づいた。

 

「…………ごめん、こんなこと、今の君に言うことじゃなかったよな」

「ううん、分かるから。その気持ち、分かるから。

 私も、同じだったから……」

 ユリちゃんは両目に涙を溜めて首を振った。

 

 

「まずは、大人に頼ることを覚えようぜ。

 俺たちは結局、成人するまで世間的に子供なんだからさ。

 何か有っても、ドン千に吸い込まれそうになっている真ゲスを助けようとした某先生みたいにはいかないけど、必ず助けるからさ。俺たち、仲間だろう?」

「……うん」

「悪いな、あんな話しちまって。

 今日はもう寝よう、おやすみ」

「おやすみなさい」

 俺は気恥ずかしくなって、さっさと彼女の物となった部屋を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いやぁ、一度でいいからこうやってベッドの上でパジャマ着ながらガールズトークしてみたかったんだ」

「…………」

「うーん、やっぱりエロ本の類は無いか。女の子だもんなぁ……」

「……!!」

「お、こういう下着穿いてるのか。意外に大人しいのが少ないぞ」

「いい加減にしてください!!」

 箪笥の下着を物色し始めた彼女に、私も流石に我慢の限界が訪れた。

 

「……冗談だよ、だってお互いに裸まで見せ合った仲なのにむすーっとしてるから、ちょっとからかっただけさ」

 我が物顔で私の部屋を物色しまわっていたこの女は、スズナさん。

 遊助が敬えと言うのでこうやって家に泊めて上げて、お風呂に乱入してくるのも、まあ許した。

 だけど部屋を荒らされるのは許せなかった。

 

「やっぱり女の子のおっぱいは最高だよな」

「自分にもついているじゃないですか」

 散々風呂の中で弄んできた彼女に批難の目を向けて私は言った。

 

「いやいや、自分の体じゃ興奮できないんだよ。

 これでも結構鍛えてるから筋肉が張っちゃってさ、もっとこう、ふんわりした柔肌が……うへへへ」

 唐突に身の危険を感じたので、私はクッションを盾にするように手に取った。

 この人、私よりスタイル良いくせに何を言っているんだか。

 

「そんなに警戒しなくても、合意なしに襲ったりしないって。

 でも性的じゃないスキンシップぐらいならいいよね?」

「今すぐウチから出て行きますか?」

「がーん」

 スズナさんはあからさまに落ち込んでしまった。

 

 

「あ、そうだ、遊助の昔の話とか聞かせてくれよ。

 からかうネタは幾ら有ってもいいからな」

 が、すぐに顔を上げてニコニコ笑いながらそう言った。

 

「じゃあ、そっちがあのデュエル塾で何をしてるか教えてくれればいいですよ」

「お」

「あそこって小学生向けの私塾でしょう?

 あなたたちみたいなのが集まって勉強しているわけでもなさそうだし。

 怪しげな儀式みたいなのしているようなら止めないと」

「怪しげな儀式ぃ?」

 スズナさんの頭上に疑問符が浮かんだ。

 

「遊助はあそこに通うようになる前まで、変な趣味を持ちはじめて。

 それが無くなったと思うとあなた達を仲間だって言い始めて。同好の士を見つけたと思うじゃないですか」

「ああ、あー、なるほど、そうか」

 私がそう言うと、何か心当たりが有るのかスズナさんは何度も納得したように頷いた。

 

「きっとあれだろ。エジプトの遺跡に行きたいとか言い出したり、変なオカルトグッズとか集め始めたり、錬金術の本とか読み始めたり、怪しげな霊能者とか探し始めたりしたんだろう?」

「何で分かったんですか?」

「いやぁ、私も似たようなことしてたんだよなぁ」

 スズナさんは恥ずかしそうに頭を掻いてそう答えた。

 

 

「怪しげな儀式なんてしてないから安心しなって。

 私達は気の合う仲間同士でぐーたらと駄弁ってアニメ見たりメシ食ったりしてるだけだって」

「今日、遊助が連れて来たあの女の子も、気の合う仲間なんですか?

 私にはとてもそうには見えませんでしたけれど」

「これからそうなる予定なんだよ。数年前の私もあんな感じだったから、放っておけないのさ。

 あの塾に集う仲間ってのは、そう言う経験をして、塾長に助けてもらった連中なのさ」

「……あなたが彼女のようだったんですか? 全く想像できませんね」

 その言動はともかく、彼女のまとう雰囲気は余裕を持った大人のようなそれだからだ。

 

 

「うーん、こっちだけそちらの初恋事情に首突っ込んでいるんだから、不公平だよな。

 だから私の初恋の話もしてやろう。話はもっと前まで遡るんだが、聞きたいか?」

「聞きたいです!!」

 恋バナが嫌いな女子は居ないのである。

 

「おーけー。ところでさ、翔子ちゃんは、男になりたいと思ったことあるかい?」

「え? 何でですか」

「私は体こそ女だけど、自分は男だと思って生きていたんだ。

 戸籍も最近まで、二十歳になったら男として登録しようと思ってたくらいだ」

「えっと、それはつまり……」

「性同一性障害って奴だな。世間一般的に言うのなら」

 それは、衝撃的な告白だった。

 彼女の同性愛的な言動は、それに起因する物だったのだろう。

 

 

「そんなに深刻なことじゃなかったよ。

 両親もよく理解してくれたし、周囲も受け入れてくれていた。

 時々からかわれたりもしたが、私の周りは私を助けてくれた。

 あれは中学に上がった頃だったかな、私は産まれて初めて男を異性として意識してしまったんだ。

 きっかけは、ボール遊びで転んで膝を擦りむいた時に、保健室に運んでもらった時だった。

 それまでは男の子と同じように彼らに混じって泥だらけになるまで遊んだり、男の子らしい服装ばっかり着てたっていうのに、だ」

「恋をしたってことですか、素敵じゃないですか」

「まさか。自分が男に抱かれる姿を思い浮かべて、その日のうちに吐いたよ。

 これは重症だと、医者の世話になる羽目になった。

 嫌悪感が酷いようなら、本格的に治療を受けるようにも進められたよ。

 だけど断った。私は私が異常であることを受け入れられなかったんだ」

 それを語るスズナさんは、どこか哀愁に満ちていた。

 

「だけど、日に日に私の体は女として成熟していったんだ。

 感情とは別のところで、私の体はどこまでも女だったのさ。

 私は心の整理をつけるために、手酷くふられてみようと思って、気になり始めていたある男の子に告白したんだ。好きですよ、ってな」

「それで?」

「向こうは受け入れてくれたよ。つい先日まで一緒に泥んこになるまで遊びまわってたっていうのにさ。

 その交際は、一年くらい続いたかな。自分でも意外なほど長続きしたよ。

 でもある時、そいつは私に体の関係を求めてきた」

「…………」

「私は、それ自体を責める気は無いんだ。

 私も仮にも精神は男だし、理解できなくはなかった。

 ちょうど性欲にも目覚める年頃で、手頃な所に手の届く気心の知れた女が居た。気の迷いを起こすことぐらいあるだろうさ。

 だから私はそれを断ることが出来なかった。その結果……」

 スズナさんは一瞬言うのを躊躇ったが、結局その先を口にした。

 

 

「土壇場になって、逃げ出した。

 猛烈な吐き気と違和感と恐怖で、私は泣きじゃくった。男に泣かされたのは初めてだったよ。

 彼も我に返って、私を慰めてくれたけれど、それすら私にはおぞましかったんだ。

 結局、そのあと微妙な関係になって、別れることになった。

 私の初恋は終わって、それ以来、私は荒れるようになったんだ」

「そう、なんですか」

 思いのほか重い内容に、私はどう言葉を述べればいいか分からなかった。

 

 

「ある時、女子たちが前世が分かるすごい占い師が居るって噂しているのを聞いたんだ。

 すがる様な気持ちで、私は彼女の元に訪れた。色々と悩みがあったからね。

 彼女は、私の悩みを解決してくれたよ。塾長を紹介してくれて、彼のお陰で私は救われた。

 自分の性別にも向き合うことができるようになって、あの男の子とも仲直りもした。

 よりは戻さなかったけど、今まで彼女らしいこともしてあげられなかったからお礼にキスぐらいはしてあげたかな。

 悩みが無くなったら、今まで感じていた違和感や嫌悪感が嘘のように無くなったよ」

 そこで登場したのが、件の占い師だった。

 私は複雑な思いでそれを聴いていた。

 

「それからしばらくして、初めて告白されたんだ。

 男じゃないぞ、女の子にだ。どこの女子校だとも思ったが、その時私は天恵を得たんだ。

 あれ、私ってもしかして、男も女も好きになれるんじゃね? と。

 そう考えたら、急にむらむらしてきちゃってね。うへ、うへへ……」

「あ、もういいです」

「あれ、ここからがいいところなんだが……」

「もう遅いし、電気消しますね」

「あ、その連れない表情そそるわ。

 くそう、くそう、遊助の奴、こんな可愛い子ものにするなんてうらやましいぞ!!」

 ぱちん、と戯言を聞き流しながら部屋の明かりのスイッチを押した。

 そうすると彼女も諦めて、床に敷かれた布団にもぐりこんだ。

 

 

「明日、一緒に遊びに行こうぜ。

 美味しい物とか食べたいな、私が奢ってあげるから、色々と案内してくれよ」

「はいはい、分かりましたわかりました」

 素っ気無くあしらいながらも、私は彼女の言ったことを思い返していた。

 

 スズナさんがちゃんと眠ったのを確認した後、私は眠りについた。

 ちなみに翌日、眼を覚ましたら彼女が真横で眠っていて悲鳴を上げたのは余談である。

 

 

 

 

 

 

「なぁ、翔子ちゃん。この町じゃこういうナンパが流行ってるのかい?」

「まさか」

 翌日、私はスズナさんと一緒に街中を歩いていると、平日だと言うのに不良らしき連中に囲まれたのだ。

 

「全く、遊助もつれてくれば良かったわ」

 スズナさんも見かけによらず強そうだし、最悪痛い目を合わせればいいかと思っていると。

 

 

「久しぶりだな、真辺」

 不良の一人が、馴れ馴れしく話し掛けて来たのだ。

 

「知り合い?」

「ううん、全く知らない。誰あんた」

 見に覚えが無かったので、私は首を振った。

 

「なに言ってやがんだ!!!

 中学の時、同じ部活だった亀谷だよ!!」

「ごめん、全く覚えていない」

 そんな奴がいたような気もするが、どうでもいい連中のことなんてすっかり記憶から抜け落ちていた。

 

 

「くそッ、ふざけやがって。

 前々からてめぇと須田の野郎は気に食わなかったんだ。

 人が真剣に部活に取り組んでる横でいつもいちゃつきやがって、

 お前らのせいで俺と部長たちはどこに行っても腫れ物扱いだ!!」

「ああ、あの時の馬鹿三人の一人なのね、あんた。

 アタッチメント外してデュエルし掛ける方が悪いんじゃないの?

 何のための法律だと思ってるのよ。自業自得じゃない」

「うるせぇ、以前の借りを返してやる。

 デュエルだ。まずはお前から叩き潰してやる!!」

 流石に街中でアタッチメントを外す暴挙はしないようだが、頭に血が上った奴は聞く耳をもたなそうだった。

 

「しょうがない」

 振り払う火の粉は払わなければならない。

 

「なぁ翔子ちゃん。ここは私に任して貰えないだろうか?」

「スズナさん?」

「性根の腐った奴の相手は初めてじゃない。

 それに君にいいところ見せたいしね」

 と言って、彼女はウインクしてきた。鳥肌が立った。

 

 

「来なよ、三下さん。私が相手になろう」

「俺たちの間に割ってきたことを後悔させてやる」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

     「「デュエル!!」」

      スズナ VS 亀谷

       LP4000

 

 

 

 

 

「私が先行だ。

 私はモンスターを一枚セット、カードを二枚セットし、ターンエンド」

 

 

 スズナ LP4000

 場  セット

 魔罠 □■■□□ セット セット

 手札 □□

 

 

「なんだぁ、びびってやがんのか。俺のターン、ドロー。

 俺は永続魔法『BS(バイオショック)ウイルス研究施設』を発動。

 今カードの存在により、『BS(バイオショック)』モンスターのアドバンス召喚に必要なリリースを一つ少なく出来る。

 更に、手札から、魔法カード『BS(バイオショック)レベル4ウイルス蔓延』を発動!!

 相手フィールドにモンスターが存在し、自分フィールドにモンスターが存在しない時、デッキからレベル4以下の『BS(バイオショック)』モンスターを特殊召喚する。

 デッキから『BS(バイオショック) 生ける屍』を特殊召喚!!」

「へぇ、ここいらでも流行ってるのかそのカード群」

 スズナさんは余裕そうな表情で奴のプレイングを見ている。

 

「スズナさん、あのデッキは……」

「ああ、大丈夫、荒事には慣れてるからさ」

 助言はいいと、彼女は手を振った。

 

 

「そして、俺は『生きる屍』をリリースし、アドバンス召喚!!

 現われろ、暴虐の化身!! 『BS(バイオショック)戦慄の暴君』!!」

 このカードはフィールドに存在する限りバウンスされず、破壊以外の方法では墓地にはいかねぇ!!

 破壊されても除外され、次のスタンバイフェイズに戻ってくる無敵のモンスターだぜ!!」

「無敵を謳うならせめて「相手の効果を受けない」ぐらいの耐性を持ってなきゃなぁ」

「減らず口もそこまでだ、バトルだ!!

 この『戦慄の暴君』で、セットモンスターを攻撃だぁ!!」

「セットされたモンスターの守備力は500の『PPP(ポップ)ヘルパー ソードアーマー』だ。

 よって破壊され、墓地に送られる」

 あっけなくスズナさんのモンスターは破壊され、彼女のフィールドが無防備になった。

 

 

「破壊されて墓地に送られた『PPP(ポップ)ヘルパー ソードアーマー』の効果発動。

 デッキから『PPP(ポップ)』モンスター1体を選び、手札に加えることが出来る。

 私は『PPP(ポップ)スター スキルスキャナー』を手札に加える」

「『戦慄の暴君』は通常攻撃に加えて、リリースしたモンスターの数だけ攻撃できる。

 てめぇにダイレクトアタックだぁ!!」

「発動するカードは無い」

 

 スズナ LP4000→1200

 

 

「ひゃあ!! さすが亀谷さんだぜ!!

 一ターン目で大型モンスターを呼び出して、ライフを半分以下にしちまった!!」

「サレンダーするならいまのうちだぜぇ!!」

 ダイレクトアタックを受けたスズナさんの姿を見て、奴の取り巻き連中が下卑た笑いを浮かべた。

 

「俺はターンエンドだ。

 次のターンで終わらせてやるよ」

「それはどうかな、私が遊んでやっていることに気づかないなんて、可愛らしい奴らだ」

 スズナさんはまるで余裕の笑みを崩さず、更に不敵に笑って見せた。

 

 

 亀谷 LP4000

 場 『BS(バイオショック)戦慄の暴君』

 魔罠 □□■□□ 『BS(バイオショック)ウイルス研究施設』

 不良E 手札 □□□

 

 

「なんだとぉ?」

「私のターン、ドロー。

 私は『PPP(ポップ)スター スキルスキャナー』を召喚」

 スズナさんのフィールドに、ピンク玉みたいな小さなモンスターが召喚された。

 

「なんだ、そのちっこいモンスターは!!」

「『スキルスキャナー』の効果発動。

 このカードが召喚・特殊召喚に成功した場合に発動する。

 フィールド上に存在するモンスター1体を選んで装備する。

 私は、『戦慄の暴君』を選択し、装備する!!」

 ちっこいピンク玉は、口を開けると竜巻のような強烈な吸引力を発揮して、なんと『戦慄の暴君』を吸い込んでしまった!!

 

「は、はぁ!?」

 あんな強力なモンスターが、両手の平の幅より小さいモンスターに食べられては、唖然とするだろう。

 

「対象の取らない破壊でもない除去、これを避けられるカードはなかなかお目にかからない。

 魔法カード『スキャニング』を発動。

 このカードはモンスターを装備している『スキルスキャナー』一体を選択し、発動する。

 対象のカードとその装備カードを素材として、エクストラデッキから『PPP(ポップ)』モンスターを重ねてエクシーズ召喚扱いとして特殊召喚する」

 ピンク玉がごくん、と飲み込むと、くるくるとジャンプして一瞬のうちにその姿を変えた。

 

「銀河の平和守るため、幼き戦士は剣の力を写し執る。

 エクシーズ召喚!! 現われろ、ランク4『PPP(ポップ)ヒーロー ソードマスター』」

 どこぞの緑の衣の勇者を彷彿とさせる帽子とデフォルメされた剣を手に取り、ピンク玉は勇ましい目つきになって変身したのだ。

 

「バトルだ、『PPP(ポップ)ヒーロー ソードマスター』で、ダイレクトアタック!!」

「うぎゃぁ!?」

 

PPP(ポップ)ヒーロー ソードマスター』攻2500

 

 亀谷 LP4000→1500

 

 

「これで私はターンエンドだ」

 

 スズナ LP1200

 場  『PPP(ポップ)ヒーロー ソードマスター』

 魔罠 □■■□□ セット セット

 手札 □□

 

 

 

「ほら、お前のターンだ。

 このターンで決めるんだろう? やってみなよ」

「くそ、馬鹿にしやがって……俺のターン、ドロー。

 ……ふ、へへ、残念だったな、俺はレベル5の『BS(バイオショック)刈り取る者』を『ウイルス研究施設』の効果でリリースなしで召喚する。

 このカードは相手のライフがこのカードの攻撃力以下の場合、ダイレクトアタックできる!!

 

 

BS(バイオショック)刈り取る者』

 ☆5 闇属性 アンデッド族 攻守 2000/1500

(1)このカードの攻撃力が相手プレイヤーのライフ以下の場合、このカードは相手にダイレクトアタックできる。

 

 

「バトルだ、これで終わりぁ!!

BS(バイオショック)刈り取る者』で、ダイレクトアタック!!」

「『PPP(ポップ)ヒーロー ソードマスター』の効果発動。

 このカードをエクストラデッキに戻し、発動する。墓地からレベル4以下の『PPP(ポップ)』モンスターを特殊召喚する。

 私は『PPP(ポップ)スター スキルスキャナー』を特殊召喚する。

『スキルスキャナー』の効果発動。

『刈り取る者』を装備する」

 スズナさんに飛び掛ろうとした『刈り取る者』は、星型の光と共に元の姿に戻った『スキルスキャナー』に吸い込まれてしまった。

 

「あ、そんな……」

「ここで私は、永続罠『メモリースキャニング』を発動。

 1ターンに一度、墓地に存在する『PPP(ポップ)』モンスターを自分フィールド上の『スキルスキャナー』に装備カード扱いとして装備する。

 私は『ソードアーマー』を装備させる」

『刈り取る者』に巻き込まれる形で、墓地の『ソードアーマー』も彼に吸い込まれてしまった。

 

「更に、『スキルスキャナー』の二つ目の効果。

 このカードが装備しているモンスターを選択して発動する。

 そのカードを素材として素材にしたカードと同じ種族、同じ属性の『PPP(ポップ)』エクシーズモンスターをエクストラデッキからエクシーズ召喚する。

 私は『ソードアーマー』を選択する」

 

 

PPP(ポップ)スター スキルスキャナー』

 ☆4 光属性 戦士族 攻守 500/500

PPP(ポップ)スター』カードはフィールドに一枚しか存在できない。

PPP(ポップ)スター スキルスキャナー』の(1)(2)(3)の効果はそれぞれ1ターンに一度しか使用できない。

(1)このカードが召喚・特殊召喚に成功した場合に発動する。

 フィールド上に存在するモンスター1体を選んで装備カード扱いとして装備する。

(2)このカードが装備している装備カード扱いのモンスターを選択して発動する。

 そのカードを素材として、そのカードと同じ属性・種族の『PPP(ポップ)』XモンスターをX召喚する。

 この効果は相手ターンでも発動できる。

(3)このカードが墓地に送られたターンのエンドフェイズに発動する。

 デッキ・墓地から『スキャニング』カードを一枚選んで手札に加える。

 

 

「銀河の平和守るため、幼き戦士は剣の力を写し執る。

 エクシーズ召喚!! 再び現われろ、ランク4『PPP(ポップ)ヒーロー ソードマスター』」

 緑の帽子と剣を携えたピンク玉が、フィールドに現われる。

 

「『ソードアーマー』を素材として戦士族モンスターをエクシーズ召喚した場合、攻守は500ずつアップする」

 

PPP(ポップ)ヒーロー ソードマスター』攻守2500/1400→3000/1900

 

「……っく、俺は『BS(バイオショック)レイブンズ』を守備表示で特殊召喚。

 このカードは自分フィールドにモンスターが居ない場合に特殊召喚できる。ターン、エンドだ……」

 おや、あのカードはリリースすることで同名カードを二体までデッキから呼べたはずだが。

 と思った所で、彼の抱えている手札の数を見て察した。

 

 

 亀谷 LP1200

 場 『BS(バイオショック)レイブンズ』

 魔罠 □□■□□ 『BS(バイオショック)ウイルス研究施設』

 不良E 手札 □□

 

 

「私のターン、ドロー。

 バトルだ、私は『PPP(ポップ)ヒーロー ソードマスター』で『レイブンズ』を攻撃!!」

 鋭い剣さばきで、凶暴化したカラスは切り裂かれた。

 

「『ソードマスター』は戦闘で相手モンスターを破壊した場合、オーバーレイユニットをひとつ取り除くことで、続けてもう一度攻撃できる。

 終わりだ、相手プレイヤーにダイレクトアタックする!!」

「く、くそおおおぉぉおおお!!」

 

 亀谷 LP1200→0

 

 デュエルは、スズナさんの勝利で終わった。

 

 

「解せないね、あんたそこそこの腕はあるくせに、自分の魂を込めたデッキを使わないなんてな。

 だから土壇場でカードはお前に答えてくれないんだ」

「うるせぇ、お前に何が分かる!!

 女だからって構わねぇ、ぶっとばしてやる!!」

「こいつはとんだシャバゾウだなぁ」

 今にも殴りかかって来そうな連中に対して、私は拳を構えたが。

 

「よいしょ、っと」

 スズナさんはなんと、デュエルディスクのアタッチメントを外したのだ。

 

「お、おい、お前、なにしてやがる!?」

「ん? 見て分からないのか?

 暴行を受けそうなんで緊急措置でアタッチメントを取っ払ったんだ。

 私は『PPP(ポップ)スター スキルスキャナー』を召喚」

 そして何の躊躇いも無く、モンスターを現実に実体化させた。

 間の抜けた小さなピンクボールが道路に現われる。

 

「こいつの口の中はどこに繋がってるか、私にも分からない。

 こうしてモンスターを呼び寄せた以上、警察も飛んでくるだろう。

 私はこれ以上やったって構わないがどうする?」

「正気か、お前……」

 あの凄まじい吸引力であの化け物たちをあっさりと飲み込んだ小さなピンク玉に不良たちは怖気つつも、奴はそんなことを口走った。

 

「私には、味方になってくれる仲間が居る。

 事情をちゃんと聞いてくれる大人たちが居る。

 だから、この程度の横紙破りなんて怖くないのさ。

 それともお前たちもモンスターを出して応戦するのか?

 お前たちに本当にお互いを庇いあってくれる仲間や大人が居るって言うのなら、試してみると良い。

 私は、容赦はしないぞ。そこの彼女を傷つけようとするのならば、な」

 そう言ったスズナさんの凄みに、不良たちは完全に気圧されていた。

 

「やれ、『スキルスキャナー』」

「ひ、ひぃいい!! こいつヤベェよ!!」

「逃げろ、逃げろぉおお!!」

「あ、お前ら、俺を置いてくな!!」

 不良たちは散り散りに逃げ去っていくが、逃げ遅れた……ええと、なんて言ったっけ、そいつが『スキルスキャナー』の吸い込みに吸い寄せられ、上半身をぱくりとされてしまった。

 

「よし、身内以外の証人ゲット」

 奴の下半身は暫くじたばたしていたが、警察が来る頃には大人しくなって、すすり泣くような声まで聞こえてきた。

 

 

「ちょっとやりすぎたかな、でも、非行少年にはいい薬か。

 悪いな、迷惑をかけちまって」

 スズナさんはニカッと笑ってそう言った。

 

 私は終始彼女のペースに圧倒されながらも、彼女が慕われている理由をなんとなく察したのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 




実の所、ピンクポールを『スキルイーター』にしなかったのは、それだと安直過ぎて負けた気がしたからです。
スズナさんのデッキはコピー機用語とパロディーを組み合わせた自分的に完成度の高いカテゴリーとなっています。
そのデッキの性質も彼女の特徴を現していて完成度の高いキャラを生み出したと自身を持って言えます。

ここで気づいた方もいるでしょうが、転生者組みは何らかの主人公をメインにすえたテーマを使用しています。
それにしても任天堂さんはホントこの小説のお世話になりっぱなしです。社長さんのご冥福をお祈りします。

OCGはデッキから落とし穴とか魔法罠を次々サーチできるペンデュラムとか、混沌としていますが、ここでは全く関係ありません!!
こんなイロモノ小説を待ってる人なんて少ないでしょうが、需要があれば続きます。
それでは、また次回。
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