何!? 俺の知っている遊戯王の世界ではないのか!?   作:やーなん

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先日、日間ランキングを見る→この小説が一時的にとは言え五位→ふぁ!?→お気に入り50件以上プラス→これ夢かな・・。
こんなイロモノ小説がほんの少しとは言えランキングに乗るとかどういうことなの。

じゅ、需要があるなら続きます!!
今回は前編後編になりますね。





第十六話 魂のデュエル 前編

「あはは、自宅謹慎一週間だってよ」

「スズナさん、無茶しすぎですよ」

 休みが終わり、月曜を挟んだ火曜日、スズナさんはやってきてそんな事を笑いながら言った。

 今日は俺たちの学校は創立記念日で休みなのだ。

 それを聞いた途端、彼女はこうして遊びにやってきた。何も無い所だが、この町を気に入ってくれて嬉しいのは地元民としては誇らしい。

 

 今日、スズナさんは道場での稽古の見学をしているところを俺が相手をしている。

 

 

「うちの高校は公立だからね。余程のことがない限り停学処分は無いとわかってたからな」

「だからって、無茶しすぎですよ。

 翔子を守ってくれたことは感謝しますけれどね」

 この世界でデュエル後に逆上するのは非常にモラルが低い行為とされる。

 

 アタッチメントを取ってモンスターを出そうものなら刑法で処罰されるが、これには例外が多い。

 以前、男女がデュエルして男が負けて逆上して殴りかかろうとした所、女性が身を守るためにモンスターを召喚して撃退し、怪我を負わせた事件があった。

 それは最終的に裁判になったが、女性は無罪を勝ち取ったと報道されていた。

 

 だからスズナさんも余程のことがなければ大丈夫だろうと、確信しての行動だったのだろう。

 流石に、俺も翔子の家に警察が来ているのを見た時はびっくりしたが。

 

 

「それにしても亀谷だったっけ?

 ずいぶんと男前になったじゃないか」

「う、うるせーよ!!」

 近くで基礎運動をしていた亀谷が居心地が悪そうに悪態付いた。

 

 あの後、翔子の家に亀谷の両親もやってきて、必死に警察や翔子やその両親に頭を下げているのを覚えている。

 非行に走った息子を横に謝る二人が余りにも不憫だったためか、親父が彼の更生を手伝うと言い出した。

 その申し出に深く頭を下げて彼の両親は快諾し、こうしてこいつは晴れてうちの門下生となったのだ。

 

 当然、それだけで素直にうちに通うようになるのならば非行には走らない。

 亀谷は昨日、初日にしてばっくれようとした。

 

 が、町を歩いている所を、彼を探し回って総動員したほかの門下生たちに捕まり、強制連行。

 こういうことはうちでは良くあるので、周囲数十メートルの特定のデュエルエナジーを感知する検知器をうちは何機も有している。

 その後、親父の付きっ切りな熱血指導の甲斐あってか、今日はしぶしぶながら自分からやってきた。

 

 亀谷の格好は不良然とした金髪ロン毛は坊主寸前まで刈り上げられ、黒色に染め直させていた。

 体力が余り無いということで、今では基礎的な体作りとユリちゃんと一緒にやっている。

 ちなみに、彼らに疎外感を持たせてもダメなので今日は門下生皆揃って基礎の反復である。

 

「うぅ……何で私まで……」

「デュエリストは体を鍛えてなんぼだぞ。頑張れ、ユリちゃん」

「おかしいでしょ、なんでデュエリストが体鍛えないといけないのよ!!」

 がばっと、腕立て伏せの態勢から顔を上げてユリちゃんは世の不条理を訴えた。

 

 

「なーに言ってるんすか、ユリちゃん。

 ここぞという時に引きたいカードをドローするドロー力を鍛える為に、こうして日々の鍛錬に勤しむんじゃないんですか」

 と、近くで腹筋しながら星井は至極真面目な顔をでそう言った。

 

「おかしい、理論的じゃない……」

「この世に理論的なことのほうが少ないでしょ、ほら、口じゃなくて体を動かすっす」

「うぅぅ……昨日の鍛錬の筋肉痛がぁ……」

 星井や他の門下生たちの激励を受けながら、涙目でユリちゃんは腕立て伏せを続け始めた。

 

「いいなぁ、ここに居る人たちは。

 みんな今も青春をしてるって顔しているよ」

 スズナさんは俺たちのような若い連中だけでなく、三十代前後やもっと年上の門下生たちを見ながらそう呟いた。

 

「親父は厳格な雰囲気より、ゆるい感じが好きだからな。

 締めるときはきっちり締めるが、堅苦しくは無くってな具合にな。

 そう言った空気があるからかもしれないな」

「なるほどねぇ……」

 スズナさんはどこか羨ましそうにそう言った

 

 

「みんな、おにぎり持ってきたわよ」

「お、もうそんな時間か。いったん休憩を取るぞ」

 翔子が台所からおにぎりが積まれた大皿を手にやってくると、親父が全員に中断を呼びかけた。

 

「おう、いつも悪いな翔子」

「いいのよ、好きでやってるんだから。

 はい、お茶。スズナさんもこんなので良ければ食べていったら?」

「いや、私は遠慮するよ。

 これは苦労を分かち合った者同士で食べるからこそ最高の味になるだろうからね」

 俺は翔子から350mlペットボトルの濃ーいお茶を受け取るが、スズナさんは遠慮がちに手を振った。

 

「そう。遊助、何味がいい? 今日は鮭と昆布と梅干があるけど」

「梅干で。今日はなんかやけに暑いからな」

 そんなやり取りをして、俺はおにぎりを受け取ったのだが。

 

 

「おい!! 須田!!」

「うん? どうした亀谷、お前も梅干がいいのか?」

「違う、そうじゃなくてだな!!」

 突然声を上げた亀谷の態度に首を傾げていると、今度は挙動不審な動きをし始めた。

 なにやらプルプルしている。

 

「お、俺とデュエルしろ!!」

「なんだ、そんなことか。それぐらい幾らでも受けて立つぞ」

「俺が、俺が勝ったら……ッ!!」

 亀谷は一瞬躊躇ったが、すぐにこう言った。

 

 

「まッ、真辺に告白するからなぁ!!」

 うん……?

 

「お、お前、新入りのくせに、しょ、翔子さんに告白だとぉ、な、生意気なぁ!!」

 星井はそういう反応を示したが、他の年上連中は面白そうな物が見れそうだと笑って成り行きを見ている。

 

 翔子は困ったように俺を見たのだが。

 

「え、お前こういうのが好みなの?

 別に俺たち、付き合ってるわけじゃないから、別に告白して付き合うのなら俺を通さずに好きにしてくれて構わないんだが」

「えッ」

 俺の言葉に、思わずそう言ったのは……少なくとも、一人ではなかった。

 

 

「翔子も、確かに俺たちは婚約者同士だが、それは将来の話だ。

 もし誰かと付き合いたいのなら、別に俺に気を使う必要なんて無いんだぞ」

 それは、本心からの言葉だった。

 俺は翔子を縛るつもりなど毛頭無いのだから。

 だから仮に俺以外に好きな人が出来た場合、俺に気を使う必要など無いなのだ。

 

 そこまで言って、俺は空気がしんとしていることに気づいた。

 

 

「師範代、流石にそれはちょっと無神経では……?」

「は?」

 俺は、星井がなぜそんなことを言うのか、本気で分かっていなかった。

 

「なぁ、遊助」

「スズナさ」

 ん、と続ける前に、彼女に殴られた。

 平手ではない、本気で人を殴る時の拳の握りだった。

 

「本当は当事者同士の問題だから首を突っ込まないつもりだったんだが、本気で分かってないみたいだったからな。

 今の自分の言葉を良く考えてみろと言ってもすぐには分からないだろうし」

 人を殴ればそれ相応の衝撃が拳に帰ってくる。

 殴れば、殴られた分だけ痛いのだ。それを感じていないということは、スズナさんは相当に殴り慣れているように思えた。

 

「だけど無いわー、今のは無いわ。

 ラノベの汎用型主人公みたいに鈍感とかそういうのじゃなくて、わかっててこれだからなぁ」

「え……え?」

 ユリちゃんの言葉も頭に入ってこなかったのは、殴られた衝撃だけでは無かっただろう。

 

 

 翔子が、泣いていた。

 

 彼女は何も言わずにおにぎりの積まれた大皿を床に置くと、くるりと踵を返してとぼとぼとと道場から出て行った。

 

「え、あれ、なんでこんな空気に……」

 俺と同じくらい、或いは俺以上に混乱しているだろう亀谷は、状況についていけずにきょろきょろと首を動かしていた。

 

「むしろファインプレーだったぞ。

 このままいびつな関係を続けてもお互いの為にならなかっただろうしな」

 スズナさんは苦笑しながら彼にそう言ったが、すぐに顔を強張らせて俺の方を向いた。

 

「何してるんだ。早く彼女を追え!!」

「あ、ああ」

 俺はスズナさんに言われるままに、皆の視線に追いたてられるように翔子を追いかけていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 本当は分かっていたのだ。

 

 遊助が私に気に掛ける理由は、昔の約束と婚約者と言うだけでしかないのだということは。

 知っていて、知らないふりをしていた。

 彼はそれを十分に分かっている。だからあんなことを言ったのだ。

 私の気持ちを理解していながら。私の為に、無情にも。

 

 

「翔子」

 彼に呼び止められた。足を止める。

 

「俺は何か気に障ることを言ってしまったのか?

 だとしたら謝るよ。悪かった」

「謝らなくていい。いいから」

 私は涙を隠すように袖で拭った。

 

「遊助にとって、私はただの幼馴染の婚約者だもんね。

 他の男と付き合ったって、どうにも思わないんでしょう」

「うん? そんなことか?

 俺はただ、もし仮に他の誰かと付き合いたいと思ったとしてもそれをダメだというつもりはないって言いたかっただけだ。

 俺はこの通り修行や鍛錬の毎日だし、お前の好きなように遊んでもやれない。

 今日だって休みだってのに、昼飯の手伝いまでさせちまっている。

 普通、お前ぐらいの年頃なら、遊んで回ったりしたいもんだろう?」

 それは、言葉だけなら配慮に満ち溢れていた。

 だがそれはどこか、ネジの外れた気遣いだっていうことを、彼は気づいていない。

 

「もしそれで、私がその仮定の人物を好きになったら、遊助は身を引くんでしょ?」

「お前が本気でそうなったら、俺は応援しようとは思う」

「そこはッ!! ……そこは、なんで無理やりにでも奪い返すとか、言ってくれないの。

 そうなったら私、遊助を裏切ったことになるんだよ?

 どうして、そんなに淡白なの……。私は、遊助以外なんて考えられないのに……」

 私は声を荒げようとしてぐっと堪えた。

 わがままなのは私なのだがら逆上するのはとても見苦しい。

 

 

「俺はその程度でお前が俺を裏切ったとは思わないからだ。

 仮に昔の約束を破ったとしても、それを責めるつもりは無いよ。昔の、ガキの頃の拙い約束だ」

「どうして。遊助にとって、あの約束はその程度のことだったの?」

「そんなわけがない。

 俺がお前を守りたいと思ったのは俺の心からの本心だ。

 例えお前が裏切っても、それは続くと言うだけの話しだっていうことだ」

「とにかく……私は、他の誰かと付き合うつもりは無いから。

 それに、私はやりたいからこうしてここに来ているの。それだけはわかって」

「ならそう言ってくれればよかったのに。

 俺はこの通り察しが悪いからな。なんでも言ってくれないとわからないんだ」

 振り向くと、遊助はホッとしたような表情になっていた。

 その表情が、なんとかやり過ごした、と言っているように見えたのは、私の底意地が悪いからだろうか。

 

 ……私は、覚悟を決めることにした。

 

 

「ねぇ、遊助。

 遊助は本当に私のことを気に掛けてくれるよね」

「当たり前だろう。お前は俺の大事な幼馴染で、婚約者なんだから」

「でも、私は私に気に掛けてくれる遊助しか知らないの。

 それ、もうやめない? 私、本当の遊助を知らないの」

「…………なぁ翔子、俺はまた何か気に障るようなことを言ったのか」

 逃げた。

 取り繕ったような仮面じみた笑みを浮かべたまま、彼はそう言った。

 

「私、大事にされているのは分かってる。

 それがただの義務感だと分かってても嬉しかったし、誇らしかった。

 でも、それじゃダメだよね。結局それは、形だけの関係なんだから」

「そうさ、俺は義務感でお前を守ってるとも。

 だからこそ、俺はお前に嫌われないように努力した。

 お前の期待に堪えようと必死に体も鍛えた。

 お前を守りたいと言う気持ちも嘘偽りなんて無い。

 事実がちゃんとあり、結果が伴っていてこれ以上何が不満なんだ?」

「不満なんて無いよ。

 ただ、昔も似たようなことあったよね。

 遊助がまるで私のボディーガードみたいだった頃。

 あの時のあだ名覚えてる? 黒服、だったよね。私それが窮屈に思えて、もっと砕けて話すようにしようって話し合ったじゃない」

「翔子がそれがいいって言ったからな」

「そう、結局今の私たちの関係って、私がそう言ったからなのよね」

 そして遊助はずっとそれを守ってくれている。

 ……・ずっと、演じ続けてくれている。

 

 

「私もそのこと、最近まで忘れてた。

 酷い話よね。私のわがままだったって言うのに」

「やめてくれ翔子。俺は今のままで良いんだ。

 ……俺はお前に、嫌われたくないんだよ」

「……ッ」

 この期に及んで、私は彼の懇願にも近しい言葉に心動かされそうになった。

 だが、ダメだ、もう決めたのだから。

 

「もういいの。“ごっこ”遊びは終わりにしましょう。

 私、今からとっても酷いこと言うわ。

 私は遊助のことについて知らないことがあるのが許せないの。

 ずっと独占していないと気がすまないし、他の誰かと目を合わせるのも嫌なの。

 だけど、遊助はそんな私でも我慢してくれている。それがもう、私は許せないの。

 私だって昔より成長したわ。あなたを昔の約束で縛っているだけの女で居たくないの」

「…………」

「お願い、本当の遊助を私に見せて」

 かちゃり、と私はお互いを縛り付けている見えない鎖の鍵穴を開いた。

 

 

 

「……・場所を変えよう。ずっと立っているのは疲れるだろ」

 張っていた肩を落とし、遊助はそう言った。

 まるで、猫背の人間が背筋を伸ばしているのを止めたかのように脱力して。

 

「……うん」

 私はその時点で感じていた。

 彼の根本的なところこそ変わらないものの、今までと決定的に何かが違うのだと。

 

 

 その後、私達は遊助の部屋へと移動した。

 彼は道着を脱ぐと、そえをベッドに投げ捨て、上着を着ることなくその辺に座り込んだ。

 

「……俺の昔の戯言、覚えてるか」

「昔の?」

「六歳になった頃、全く別の人間の一生分の記憶が頭に入ってきたんだってな」

「あー……小学4年生の頃だっけ」

「よく覚えてるな、そんなこと。

 まあ別に信じなくてもいいよ。どうせお前には関係の無いどうでもいいことだしな」

 そう語る遊助は、それこそ今まで見たことも無いような気だるげな雰囲気を纏っていた。

 どこか退廃的で、そして陰気だった。

 

 そう、まるでこの間初めて遊助の家に来た時の三門 悠里と同じように。

 何もかもが、どうでも良さそうな、そんな表情をしていた。

 

 私は知らない誰かの部屋に迷い込んだ気分になった。

 だけど、そう、そんな彼を私は知っていた。

 

 そうだ、思い出した。

 ずっとずっと昔、私たちが一番最初に会った頃、彼は同年代の子供と混じらずに冷めた目で皆を見ていたのだ。

 

 

 

「はぁ……なんか、だるくなってきた。

 やっぱり話は後にしない? なんか眠くなってきやがった」

「それって冗談か何か?」

「冗談なもんか。俺はもっと自堕落な人間なんだよ。

 外を出歩くのも嫌いだし他人と関わるのも嫌なんだ」

 彼が心底億劫そうなのは、その表情からも明らかだった。

 

「努力なんて言葉も大嫌いさ。あれは努力できる才能のある人間の為の言葉だからな。

 だから翔子、俺はこれでもお前に感謝しているんだ。

 お前のお陰で、俺は“普通”で居られたんだ。大嫌いな努力も運動も耐えられた。

 学校生活も孤独とは無縁だったし、退屈もしなかった。

 俺はまともで居られたんだ。お前の前では良い格好で居たかったから」

 はぁ、と遊助はごろんと寝転がってため息を吐いた。

 

 

「どうして、別にそんなことする必要なかったじゃない」

「浮かれてたんだよ最初は。幼馴染なんて居るって状況に。

 失望してくれたって構わないぜ。俺はもう、これまで通りのモチベーションを保つ自信が無い。

 俺はもう、なにもかもだるくなってきたんだ」

「…………」

 私は、どんどんとダウナーになっていく遊助に掛ける言葉を失っていた。

 呆れたのではない、ここまで無理をさせていたのかと罪悪感が胸に押し寄せてきたからだ。

 

 

「私と一緒に居るのは、苦痛だったの……?」

「分かるかよ、殆ど日常だったんだから。

 でも、今日みたいにこうしてボロが出始めたってことは限界だったんだろうさ。

 お前だって、俺みたいなだめな奴が婚約者なんて嫌だろ」

 遊助は私に問うことすらせず、自分の言葉を自分で完結させてそう言った。

 まるで、私の意志は決まりきっているとでもいうように。

 

 

「じゃあ遊助は嫌だったの? 私との婚約……」

「さぁな、今となってはどうでも良いさ。お前の好きにすればいい」

 遊助はもぞもぞとベッドににじり寄って、薄手の毛布を引っ張りだすと、蓑虫みたいに包まった。

 

「どうでも……いい?」

「こうなっちゃ、過ぎたことだろ。

 もう俺は前の俺に戻れるとは思えないし」

 私は、遊助が包まっている毛布を無理やり剥ぎ取った。

 

「なッ、なにしやがんだよ!!」

 遊助は一瞬のうちに私の手から毛布を奪い取った。

 彼がこんな風に怒るのは、初めてだった。

 いつもなら、恨めしげにぶつくさ言うぐらいしか怒らないのに。

 これが、私がいつも抑圧させていた物だったのだ。

 

 

「どうでも良いってどういうことよ。

 今はその話をしているんでしょ。少しは真面目になりなさいよ!!」

 だけど、私だってその物言いにはカチンときた。

 

「知るかよ、お前も俺なんかより良い男捜せよ」

「今更、そんな事できるわけ無いでしょ!!

 遊助には分からないかもしれないけど、人は簡単に誰かを嫌いになったり好きになったり出来ないのよ!!

 一瞬で100%好きになったり、嫌いになったりできないのよ!!」

「だったら嫌いになれる時間はこれから幾らでもあるっつぅの!!

 こっちは昔からお前の押し付けがましい好意にどれだけ苦労したと思ってやがんだ!!」

「だったら少しくらい好きになってくれたって良いじゃない!!

 私だって好きになってもらうよう努力したのに、あいまいで素っ気無い態度ばかり取ってたじゃない!!

 女の子一人振れない弱虫の癖に!!」

 図星だったのか、私の罵声に遊助は一瞬たじろんだ。

 口喧嘩に慣れていない人間特有の言い負かされた時のひるみだった。

 

 

「俺はお前のそう言う身勝手なところ、前々から気に入らなかったんだ!!

 大して可愛くも無いくせにプライドばかりお高いときてやがる!!

 どーせお前なんか俺以外の貰い手なんて居なかっただろうよ!!」

 そう言われても、苦し紛れに思いついたことを口に出しただけだ、そんなの私には効かない。

 

「分かったわ、ならデュエルしましょう」

「なに……?」

「幾ら本当の遊助が自堕落で見栄っ張りの根性無しだったとしても、16年以上デュエリストとして過ごしてきた魂までは嘘じゃない。

 これ以上言葉で交わしても意味が無いわ。だったら、デュエルで語りましょう。

 その方が、お互いを分かり合える」

「……いいだろう、誰がお前にデュエルを教えてやったのか、今思い出させてやる」

 怒りと屈辱に満ちていても、遊助の表情は私の知るそれに戻った。

 やはり遊助は、どこまでいっても一人のデュエリストで、その魂は失われていなかったのだ。

 

 むしろ……。

 いや、今はデュエルに集中しよう。

 

 そうして私達はデュエルディスクを構えた、その時だ。

 しゃららら、とデュエルディスクから新しいカードが排出されたのだ。

 

 

「これは、新しいシンクロカード!!

 それとその素材となるカード」

 そのどれもが実用性が高く、私のデッキに新しい風を吹き込んでくれるだろうカードたちだった。

 

「なるほど、これは傑作だ……」

 対して、同じく新しく出てきたカードの束を見て、遊助は自嘲するように笑った。

 その数は多かった。デッキひとつ分は優にあるだろう。

 

 

「カードはその持ち主の魂、か。なるほど、博士の言っていた通りだ。

 俺たちの関係が違うステップに移行したことにより、カードの方も俺たちに合わせて出てきたってことか」

 そんなオカルトじみたことを呟きながら、遊助は笑った。

 

「面白い、お互い新しいカードを組み込んだデッキでやりあうぞ」

「そうね。今の私たちにはそれが一番でしょう」

 そして私達は10分の小休止を挟んだ後、新しいデッキをデュエルディスクに差し込んで、距離を置いて相対した。

 

 

 

 

 

 

        「「デュエルッ!!!」」

           遊助VS翔子

           LP4000

 

 

 

 

「先攻後攻はお前が決めていい。

 俺はお前のデッキを良く知っているからな」

「そう、じゃあ後攻で」

「まあ、お前ならそうするだろうな。

 ……俺のターン。俺は、永続魔法「深淵怨艦(アビスシップ)の侵食侵犯』を発動。

 1ターンに一度、『深淵怨艦(アビスシップ)』モンスターを墓地に送り、そのレベル以下の『深淵怨艦(アビスシップ)』モンスターを手札に加える。

 俺はレベル6の『深淵怨艦(アビスシップ) 重巡リ型』を墓地に送り、レベル2の『深淵怨艦(アビスシップ) 駆逐イ型』を手札に加える」

「新しいカテゴリー!?」

 一人の人間に新しいカテゴリーのカードが出てくることが無いわけではないが、それはサポートカードだったりが大半だ。

 今まで使っていたのと全く別の新しいカード郡が出てくるなど、聞いたことがなかった。

 

 

深淵怨艦(アビスシップ)の侵食侵犯』

 永続魔法

深淵怨艦(アビスシップ)の侵食侵犯』の(1)の効果は1ターンに一度しか使用できない。

(1)1ターンに一度、デッキから『深淵怨艦(アビスシップ)』モンスターを墓地に送り、そのレベル以下の『深淵怨艦(アビスシップ)』モンスター1体をデッキから手札に加える。

(2)このカードが存在する限り、自分は墓地から『深淵怨艦(アビスシップ)』以外のモンスターを特殊召喚できない。

 

 

「俺は『深淵怨艦(アビスシップ) 駆逐イ型』を召喚。

 このカードが召喚・特殊召喚に成功した時、このカードをリリースして発動する。

 墓地に存在する『深淵怨艦(アビスシップ)』モンスターを特殊召喚する。

 俺は『深淵怨艦(アビスシップ) 重巡リ型』を攻撃表示で特殊召喚。

 墓地に存在する『深淵怨艦(アビスシップ) 駆逐イ型』は墓地から『深淵怨艦(アビスシップ)』モンスターが特殊召喚された場合、墓地から守備表示で特殊召喚できる。

 墓地から特殊召喚に成功した『リ型』は、デッキから『深淵怨艦(アビスシップ)』モンスターをサーチできる。

 俺は『鬼級深淵怨艦(アビスシップ) 装甲空母型』を手札に加える」

 連鎖するように、異形な機械とも生物とも見える兵装の怪物たちが効果を発動していく。

 病的なまでに白い肌を持つ人型の生気のないモンスターは、どこか彼が受け継いだというカード群を彷彿とさせる。

 

 

深淵怨艦(アビスシップ) 駆逐イ型』

 ☆2 水属性 アンデッド族 攻守700/0

深淵怨艦(アビスシップ) 駆逐イ型』の(1)と(2)の効果はそれぞれ1ターンに一度しか使用できない。

(1)このカードが召喚・特殊召喚に成功した場合に発動する。

 このカードをリリースし、墓地からレベル8以下の『深淵怨艦(アビスシップ)』を特殊召喚する。

(2)このカードが墓地に存在し、墓地から『深淵怨艦(アビスシップ)』モンスターが特殊召喚された場合に発動する。

 このカードを守備表示で特殊召喚する。

 

 

深淵怨艦(アビスシップ) 重巡リ型』

 ☆6 水属性 アンデッド族 攻守2000/800

深淵怨艦(アビスシップ) 重巡リ型』の(2)の効果は1ターンに一度しか使用できない。

(1)このカードが墓地から特殊召喚に成功した場合に発動する。

 デッキから『深淵怨艦(アビスシップ)』モンスターを選んで1枚手札に加える。

(2)このカードが相手によって破壊され、墓地に送られた場合に発動する。

 デッキから『深淵怨艦(アビスシップ)』モンスター1枚を墓地に送り、そのカードよりもレベルの低い『深淵怨艦(アビスシップ) 』モンスターを墓地から特殊召喚する。

 

 

「俺はカードを二枚伏せて、ターンエンドだ」

 

 

 遊助 LP4000

 場  『深淵怨艦(アビスシップ) 駆逐イ型』『深淵怨艦(アビスシップ) 重巡リ型』

 魔罠 □■■■□ 『深淵怨艦(アビスシップ)の侵食侵犯』 セット セット

 手札 □□

 

 

 

「笑えるだろう、翔子。

 俺の魂の齎すカードは、こんな絶望に満ちた怨霊だという。

 くっくく、何とも俺にふさわしいじゃないか。

 一度死んで新しく生を受けた俺はアンデッド同然だということさ!!」

「遊助、それ本気で言っているの?」

 遊助の言葉が本当なら、仲間だという二人もきっと同じ境遇のはずである。

 彼は間接的に自分の仲間も侮辱したのだ。

 

 だがその自虐的な物言いは、自ら泥沼に嵌って行く自傷行為にしか見えなかったのだ。

 

 

「翔子、お前に何がわかるよ。

 親にもいえない秘密を抱え、いらない生前の苦悩まで引き継ぐ羽目になった俺の苦悩を。

 それでも俺は、お前に尽くしたぞ。笑えよ、それしか出来ないこの滑稽な愚者の姿を」

「それでも、私は遊助を見捨てないよ。

 たとえ遊助がどんな遊助だとしても、それは私が望んだ物なんだから。

 私のターン、ドロー」

 私は引いたカードを確認し、よし、と内心頷いた。

 

 

「私は永続魔法『集束する因果律』を発動。

 このカードがする限り、『魔法少女』シンクロモンスターが特殊召喚される度に因果律カウンターがこのカードに乗る。

 そして魔法使い族モンスターの攻撃力は因果律カウンター×100ポイントアップする。

 更に私は『悲壮なる決意秘める少女』を特殊召喚するわ。

 この効果で特殊召喚に成功したことにより、デッキから『魂の宝玉』を手札に加える。

 特殊召喚したこのカードの効果を発動する?」

「いいだろう、こっちの盤面も整えておきたいところだ。

 効果を発動し、俺は次のバトルフェイズをスキップしてそのカードを手札に戻させる」

 

「分かったわ。『悲壮なる決意秘める少女』は手札に戻る。

 次に私は『魔法少女の先達』を特殊召喚。

 この効果で特殊召喚に成功したことにより、デッキから『魂の宝玉』を手札に加える。

 特殊召喚したこのカードの効果を発動する?」

「『深淵怨艦(アビスシップ) 駆逐イ型』を墓地に送る」

 

「『魔法少女の先達』は手札に戻る。

 次に私は『恋惑い背中追う少女』を特殊召喚する。

 効果により『魂の宝玉』を手札に加える」

「『恋惑い背中追う少女』の効果は発動しない」

 

「分かったわ、では『魂の宝玉』を召喚。

 そして、レベル2『恋惑い背中追う少女』に、レベル4『魂の宝玉』をチューニング。

 逆境渦巻く悲しみ乗り超えて、明日への希望を斬り開く!!シンクロ召喚ッ!!

 ―――レベル6、『愛と正義を備えし魔法少女』ッ!!」

 目に見えない駆け引きが終わり、漸く私はシンクロ召喚に成功した。

 

「シンクロ素材となった『魂の宝玉』は永続魔法扱いとしてフィールドに残る。

『愛と正義を備えし魔法少女』がシンクロ召喚に成功した時、自分のライフを2000回復する。

 更に『集束する因果律』に因果律カウンターが乗り、攻撃力が100上がる」

 

 翔子 LP4000→6000

 

『愛と正義を備えし魔法少女』 攻撃力2400→2500

 

「私はカードを二枚伏せて、ターンエンド」

 うかつに攻撃はしない。

 相手は墓地を肥やして大量展開して来るデッキのはずだから。

 

 

「メインフェイズ2終了時に罠カードオープン。

『沈み墜ちゆく魂』。このカードは相手のエンドフェイズに発動する。

 このターン、相手が手札・フィールド・デッキからモンスターカードを墓地に送った場合、その中から一体を選んで自分フィールドに効果を無効にして守備表示で特殊召喚する。

 この効果で特殊召喚したモンスターは『深淵怨艦(アビスシップ)』として扱い、表示形式を変更できない。

『恋惑い背中追う少女』を特殊召喚」

 遊助のフィールドに絶望に満ちた表情で病的に肌が白くなった私のモンスターが出現した。

 

 その痛ましい姿に、私は手を強く握り締めた。

 

 

「遊助……」

「そうさ、俺はこういう人間なんだよ。

 ……さあ、俺のターンだ。デュエルを続けよう」

 私は頷いた。

 もっと、デュエルを通じて彼と分かり合うために。

 

 

 この勝負、負けるわけにはいかない。

 

 

 

 

 

 

 





実は先日、主人公の内面に共感できないとの感想を頂いたのですが、よくよく考えれば私の書く小説の主人公ってみんな頭がちょっとおかしい感じばかりでした。
ですので、共感できたらむしろヤバイので、ご安心を。私は読者の皆様にそういったものは求めておりませぬ故。

そして主人公が自分を解放。
主人公がヒーローとイコールではありません。
むしろヒロインがヒーロー枠だったり。
こんな主人公たちですが、よろしければ次も見てやってください。

この間は一杯感想を頂いて、正直びっくりしました。
次も頑張って仕上げるので、需要があればすぐできます。

では、また。
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