何!? 俺の知っている遊戯王の世界ではないのか!?   作:やーなん

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まことに勝手ながら、第十四話の
「だって、博士のデッキってあれだぜ、日本で一番有名な錬金術アニメのあれだぜ!!」
というセリフを

「だって、博士のデッキってあれだぜ、人気の某錬金術ゲームシリーズのあれだぜ!!」
に変更させてもらいます。
塾長と元同じ会社の同僚という設定を生かしたいのでご了承ください。

それにぶっちゃけ、自分あのマンガ読んだことないんすよ・・。
今後博士がデュエルする機会があるかもしれないので、今のうちに。
需要が・・・というより今回はADSダウンロードしたのに対戦できなくて断念した悲しみで続き書きました(涙



第十八話 ヒーローと敵役

 道場内は居た堪れない空気が蔓延していた。

 

「えっと、その、気にすんなよ新入り」

 星井は何が起こったのか理解が及んでいなさそうな表情の亀谷の肩を叩いた。

 

「う、うるせぇ、どうせこうなることはわかってたんだ!!」

 その手を振り払う亀谷は、諦念の入り混じった複雑な顔をしていた。

 

 

「師範、師範代は大丈夫ですかね?」

「あれは二人の問題だろう、それより……」

 門下生の言葉に、道場主たる遊助の父は亀谷の方に目を向けた。

 

「そうさ、わかりきったことなんだよ。

 俺ぁもう帰る!! こんなところに居たってしかたがねぇんだからよ!!」

「失恋にショックなのはわかるっすけど、やけっぱちになるのはもっとダメっすよ」

 ある種の余計なお世話だったが、星井の言葉もあながち間違いではなかった。

 今の亀谷は、スズナの目から見ても危うかった。

 

「あんたに何がわかるよ、俺の気持ちが!!」

「まあ、なんすかね。姐さんは昔から師範代にぞっこんだったんすから、潔くあきらめて新しい恋を探すのが一番っすよ」

「そういうことを言ってるんじゃねぇよ!!」

 話が噛み合っていないことに亀谷は激怒し、星井ははてなと首をかしげる。

 

「よくわからないっすけど、気持ちをぶつけ合うにはデュエルが一番っすよ。

 ちょっくらこの道場の期待の新星こと、この星井 誠司が新入りをもんでやるすか」

「へっ、いいぜ。やってやるよ。返り討ちにしてやる」

 またこの展開か、という表情の隣のユリちゃんを見て、スズナは苦笑を禁じ得なかった。

 

 

 

 

 

 

          「「デュエル!!」」

            星井VS亀谷

 

 

 

 

 

「先攻は俺だ、モンスターとカードを一枚セット、ターンエンド」

 亀谷は特に動きを見せずにターンを終えた。

 

 亀谷 LP4000

 

 場 セット

 魔罠 □□■□□

 手札 □□□

 

 

「俺のターンっす。ドロー。

 ……・俺はこのままターンエンドっす」

 星井も何もせずにターンを終えた。

 お互いに最初のターン何もできないという、遊戯王あるあるだった。

 

 星井 LP4000

 

 場 無し

 魔罠 □□□□□

 手札 □□□□□□

 

 

「後攻でドローゴーだと? 舐めてんのか!!」

「言っておくっすが、手札事故だと思わない方がいいすよ」

 星井の不敵な表情は、とても手札事故を起こしてまいっているようには見えない。

 

「俺のターン。ドロー。

 なら何もできないまま終わらせてやるよ。

 俺は『バウザーの尖兵 グリーンタートル』を反転召喚する。

 さぁ、その間抜け面を見せろ!!」

 

『バウザーの尖兵 グリーンタートル』攻500

 

「攻撃力500のモンスターを攻撃表示?」

「こいつはリバースした場合に、デッキからレベル4以下の爬虫類族の『バウザー』をフィールドにセットできる!!

 俺はデッキから『バウザーの尖兵 レッドタートル』をセットする」

 亀谷のフィールドに甲羅から顔と手足を出したカメとは色違いのカメがセットされた。

 

 

「なぁ、ユリちゃん……バウザーって……」

「知らない、何も聞きたくない……」

 スズナはなぜか唖然としていたユリちゃんの方を見たが、すぐに彼女は両目を固く閉じて耳を手でふさいだ。

 

 

「そしてリバースカードオープン!!

 罠カード『報われぬ横恋慕』発動する!!

 このカードは自分フィールドに『バウザー』モンスターが存在する時に発動できる。

 相手フィールドにデッキから『桃色の姫君』を特殊召喚し、デッキから『バウザー』モンスターを一枚手札に加えることができる!!

 俺が手札に加えるのは、『大魔王 バウザー』だ!!」

 亀谷が公開したカードを見て、ああやはりとスズナは確信した。

 

 バウザーとはこのゲーム史上で最も有名な悪役としてギネスにも載った、某配管工の宿敵の海外での愛称だった。

 

「俺は二体のモンスターをリリースして、アドバンス召喚!!

 現れろ、異形の軍勢統べる猛々しき暴虐の王、『大魔王 バウザー』!!」

 

『大魔王 バウザー』攻3000

 

 最早定番とすら言えるお馴染みの悪役の姿が、亀谷のフィールドに現れた!!

 

「『大魔王 バウザー』がアドバンス召喚に成功した場合、デッキからリリースしたモンスターのレベル以下の『バウザー』モンスターを特殊召喚できる!!

 俺はレベル5の『バウザーの近衛兵 アーマータートル』を特殊召喚する」

 全身をトゲ鎧を守った二足歩行のカメがデッキから現れた。

 

『バウザーの近衛兵 アーマータートル』 攻1800

 

「バトルだ、『大魔王 バウザー』で『桃色の姫君』を攻撃する!!

『桃色の姫君』は『バウザー』モンスターから受けるダメージは二倍になる、これで勝負は終わりだ!!」

 星井に特殊召喚された無駄に攫われる姫君は、当然ながら攻撃表示でその攻撃力はゼロだった。

 このままワンショットキルが成立するかと思いきや。

 

 

「自分フィールドのモンスターが攻撃対象になった場合に、『ウルティマン レオン』はバトルフェイズを終了して特殊召喚できるっす」

 あわやまたもや攫われるのかと思われた姫君は、バウザーとの間に立ちはだかるように現れた赤色の配管工……ではなく赤と銀色の巨人の姿にちょっとだけ残念そうだった。

 

『ウルティマン レオン』攻2800

 

「『ウルティマン レオン』が特殊召喚に成功した場合に、デッキから『ウルティマン レオン』のカード名が記された魔法カードを手札に加えることができるす。

 自分が手札に加えるのは『必殺!?レオンキック』っす」

「くそッ」

 攻撃を止められ、亀谷は憎々しげに星井を睨めつけた。

 

「救いのヒーローってか。

 良いよな、てめぇはそういうモンスターを扱えて!!」

「どういう意味っすか?」

「あんたはヘンテコなモンスターばっかり使うね、なんて言われたことないだろう?

 須田の奴や真辺は忘れてるだろうが、俺たちは同じ幼稚園だったんだぜ。

 そこでデュエルごっこが流行った時、みんなは格好いいモンスターや可愛いモンスターを自慢して遊んでいた中で、須田や俺は馬鹿にされていた!!

 よわっちくて変なモンスターばかりだとな!!」

 それは聞きようによっては下らない話だろう。

 

 だが、スズナは笑えなかった。

 もし自分がジャンプ系の品のないギャグ漫画の内容をモチーフにしたデッキを一生扱ってこの世界で暮らせと言われたら、即行で首を括る自信があるからだ。

 

 それは幼い時の下らない思い出かもしれない。

 だが、それは誰しもあり得た残酷な子供の頃の思い出だった。

 それこそ、のちの人格形成に関わってしまうほどの。

 

「そんな中で真辺は唯一、俺のモンスターを見て羨ましいって言ったんだ。

 そんな大昔の淡い思い出だ、別に期待なんかしちゃいなかった。

 だけど、だけどな……・」

 亀谷は歯を食いしばり、己の心情を吐露した。

 

 

「何より許せなかったのは、俺の使うモンスターたちが負け犬ばかりだってことだ。

 あんただってわかるだろ。デュエリストなら、モンスターカードを手に取った時、そいつらがどんな生き様や思いを抱えていたか大まかに感じ取れる。

 そしてこいつらは皆、負け続けの雑魚や敵役なんだよ!!

 俺だってもっと格好いいモンスターや謂れのカード使いたいって思って何が悪いんだよ!!」

「だが、お前の使っていた人工カードも思いっきりやられ役だっただろう」

 スズナは思わず横からそう口に出してしまった。

 ホラーとRPGの敵役は役割が違う、と理解していながら。

 

「それでもあいつらの間抜け面を見るよりよっぽどマシだ!!

 俺は、俺のカードを誇れないんだよ!!」

 そう叫ぶ亀谷に、予想外の方から声が走った。

 

 

「お前さぁ!! さっきから聞いてれば、彼のどこが不満なんだよ!!」

「え?」

 真横から発せられた声に、スズナは思わず彼女の表情を見た。

 

「良いじゃん、格好いいじゃん、お前頭おかしいんじゃないの!?

 なんであんたがそのカードの良さが分からないわけ!?

 持ち主であるあんたが、どうして!! 要らないなら私に頂戴よ、使えなくたっていいから寄越しなさいよ!!」

「ユリちゃん……」

「逆なのよ大ボケおたんこなす!!

 あんたが誇れないんじゃない、お前がそのカードにふさわしくないんだよ!!

 なんでそんな簡単なことが分からないの!! なに気取ってるのよヘタレ、お前なんかそのカードの価値に比べたらカスも同じよ!!」

 声を荒げて容赦なく罵倒するユリちゃんに、誰もが唖然としていた。

 

 彼女からすれば、この世のカードに当たりと外れがあるならば、『大魔王 バウザー』は大当たり中の大当たりだろう。

 

「ユリちゃん、ちょっと落ち着こうな。

 ほら、外に言って頭冷やそう」

「ちょっとスズナさん、離してよ。

 あの脳みそスカスカ野郎にもっと言ってやらないと気が済まないの!!」

「これ以上頭に血が上って余計なこと言ってもあれだろ?」

 スズナが彼女の耳元でそう言うと、ユリちゃんは渋い顔でゆっくりと口を固く結んだ。

 そのまま彼女はスズナに引きずられていくように道場の外へと行った。

 

 

「良かったじゃないっすか。

 自分はあんな風に言われたことないっすよ。正直羨ましいっす。

 さあ、デュエルを続けるっす」

「え……あ……ターンエンド」

 年下の少女から全力で罵倒されるなんて未知の経験に、亀谷の思考はフリーズ状態のようだった。

 

 

 亀谷 LP4000

 

 場 『大魔王 バウザー』『バウザーの近衛兵 アーマータートル』

 魔罠 □□□□□

 手札 □□□□

 

 

「俺のターン、ドローっす。

 そしてバトル!!

『レオン』で『バウザー』を攻撃するっす」

 ここでお決まりの『バウザー』の攻撃力は『レオン』を上回っている云々が無いのは、それを打ち破る手段が周知だからだろう。

 

「俺は速攻魔法『必殺!?レオンキック』を発動するっす。

 このカードは『レオン』が相手モンスターに攻撃する場合にのみ発動できるす。

 そのモンスターをダメージ計算を行わず破壊し、その元々の攻撃力分のダメージを与えるっす!!」

 上空千メートルから繰り出されるという流星の如き一撃が、大魔王に炸裂した。

 

 亀谷 LP4000→1000

 

 だが、この程度でやられたら世界一の悪役の名が廃る。

 

「だ、『大魔王 バウザー』の効果は発動!!。

 自分のライフが相手より少ない時にこのカードが破壊された場合に発動できる!!

 このカードを墓地から特殊召喚し、元々の攻撃力を二倍にする!!

 だたし、この効果で特殊召喚したこのカードはフィールドを離れた際に除外される」

 墓地から復活を遂げた大魔王はその巨体を更に倍加させ、咆哮と共にその威容を示した。

 

『大魔王 バウザー』攻3000→6000

 

「そして、『バウザー』は特殊召喚に成功した時、このカード以外の『バウザー』モンスターの数まで相手のカードを破壊できる。

 当然、『レオン』を破壊する!!」

 大魔王が息を吸い込み、その口の中から猛烈な火炎放射が放たれた。

 灼熱の業火に晒された『レオン』はあえなく墓地に送られた。

 

「この効果を使用したターンは『バウザー』は攻撃できないが、相手ターン中なら関係ない」

 

 

『大魔王 バウザー』

 ☆8 炎属性 爬虫類族 攻守3000/3000

『大魔王 バウザー』はフィールドに一枚しか存在できない。

(1)このカードがアドバンス召喚に成功した場合に発動できる。

 このカードのアドバンス召喚の為にリリースしたモンスターのレベル以下になるように、デッキから『バウザー』モンスターを任意の数だけ特殊召喚できる。

(2)自分のLPが相手より少ない場合にこのカードが破壊され、墓地に送られた場合に発動できる。

 このカードの元々の攻撃力を二倍にして特殊召喚する。

 この効果で特殊召喚したこのカードは、フィールドを離れた場合に除外される。

(3)このカードが特殊召喚された場合に発動できる。

 このカード以外の自分フィールドの『バウザー』モンスターの数まで、相手フィールドのカードを選んで破壊できる。

 この効果を使用したターン、このカードは攻撃できない。

 

 

 まさに大魔王にふさわしい豪快さと強さを兼ね備えた亀谷の切り札だった。

 

 

「『アーマータートル』は自分フィールドの『バウザー』モンスターに貫通効果を付与できる。

 つまり、次にあんたが守備表示で耐えるなんてできないぜ」

 ようやく調子を取り戻したのか、亀谷は不敵に笑った。

 

「残念すけど、俺のヒーローたちは巨大化した怪獣を倒す専門家なんすよ。

 俺は速攻魔法『ウルティマン・リベンジ』を発動するっす!!

 バトルフェイズ中に破壊された『ウルティマン』を可能な限り特殊召喚できるっす。

 さあ今一度立ち上がれ、『ウルティマン レオン』!!」

 カードイラストにまで彼が立ち上がる姿が刻まれた魔法カードによって墓地から舞い戻る『レオン』。

 

「『レオン』が特殊召喚された為、デッキから『スピニングレオンキック』を手札に加えるっす!!

 そして、復活した『レオン』で『大魔王 バウザー』を攻撃する!!」

「そんな、ウソだろ……」

「速攻魔法『スピニングレオンキック』を発動するっす!!

 このカードの効果は『レオン』が戦闘するモンスターを守備表示にしてダメージ計算を行い、その後そのモンスターを破壊し、元々の守備力の分のダメージを相手に与えるっす」

「俺の『バウザー』が負ける……」

 

『レオン』の放つきりもみ回転を加えた必殺キックに、『バウザー』もその刺々しい甲羅にその身を引込め防御態勢を取った。

 直後にすさまじい両者の衝突があった。

 火花散る激突の後、辛くもその強固な装甲を貫けなかった『レオン』は警戒するように距離を取った。

 

 しかし、殻に閉じり守りに徹したはずの『バウザー』は最早動かなかった。

 

 

 星井 LP4000→3800

 亀谷 LP1000→0

 

 勝敗を告げるブザーが鳴る。

 

 

「勝者、星井!!」

「く、くそおおおおぉぉぉぉ!!!」

 師範の公平な声に、亀谷は心の底から悔しがって、床を叩いた。

 それは彼にとって本当に久しぶりの、心からの感情だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「それにしても意外だったな、ユリちゃんがあれのファンだったとは」

 勝敗が決した頃、スズナは熱が冷めてやっちまったという顔で落ち込んで膝を抱えているユリちゃんに笑いかけた。

 

「彼の出てくるゲームはカートも含めて全部やったし、某スーパーなRPGは何十回やったかも覚えてないし仲間になった直後からスタメンを外したことなかった。

 大好きなキャラなのに、なんだってあいつが……」

「私たちを含めて大乱闘もできそうだな」

「やめてよスズナさん、笑えない」

 ユリちゃんは心底嫌そうな表情だったので、彼女はこれ以上口を出すのはやめた。

 自分が本当に好きなものを貶されたり茶化されたりするのは誰だって嫌なものだ。

 

 そうして彼女がしばらく黄昏ているユリちゃんに付き合っていると。

 

 

「なぁ、ユリちゃん……だったっけ?」

 おずおずと、道場の入り口から亀谷が顔だけを出してきた。

 

「なによ」

「俺……おれ……こいつにふさわしいデュエリストになれるかな……」

 人は常に変わり続けている、とスズナは知っている。

 さっきの一戦の中で、彼の中に何かしらの心境の変化があったのだろう。

 

「はぁ? 何言ってるの。

 成れなかったら私がぶっ飛ばすわよ。全次元のファンを代表してね」

 ユリちゃんは一切冗談とも思えない表情で彼にそう告げたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 結局夜まで泣き続けた情けない俺が翔子を隣まで送り、腹が減ったので台所に行くと親父が焼酎を飲んでいた。

 親父が酒を飲むのは珍しい。

 

「顔つきが変わったな」

 親父は俺を見てすぐに察した。

 

 

「別にうちの道場を無理して継ぐことはないんだぞ」

「……別に無理してないよ」

 俺はそう答えた。本心だった。

 

「俺がもし生まれ変わったとしたら、その時の両親はまた親父とお袋がいい。

 親父たちと門下生の連中は俺の誇りだから」

「そうか」

 親父が父親でなかったら、きっと俺はまた堕落していただろう。

 もっとずっと早く、メッキが剥がれてたに違いない。

 

「親父、偶にはデュエルしようぜ。

 新しいカードが出たんだ」

「ああ、そうか。そうだな。久しぶりにやろうか」

 

 そうして、その日は更けていった。

 

 

 

 

 

 

 

 




そういえば、初めて今回カードイラストについて言及しましたが、それぞれの主要なカードの元ネタとか元になったシーンとか欲しいですかね?
設定厨な自分はそういう解説とか大好きなんで、需要があればすぐにでも書き連ねられるのですが。
ついでに主要キャラの使用デッキ名とかデッキレベルとか。
なにはともあれ、需要があればの話ですよね。
では、また次回。

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