何!? 俺の知っている遊戯王の世界ではないのか!?   作:やーなん

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今回も長くなりそうなので前篇後編に分かれます。
今回の処理で間違っているところがありましたら教えてください。
作者もちょっと自信が無いところもありますので。

それでは、こんなイロモノ小説を見に来てくださる読者の皆様に幸あれ。
本編どうぞ。



第四話 まさかの実現!?デッキ交換デュエル 前篇

 昨日のデュエルから翌日、俺と木村くんは戦術研究室のモニターで昨日のデュエルの検分をしていた。

 

「思い切って、『タイムマシン』は一枚でもいいかもな。

 この時、リトルロボじゃなくてシスターだったら勝ててたんだが……」

「僕はこの時盾のつもりで呼んだので、リトルでよいかと思いました。

 シスターは墓地に送られてもフレンドキャットロボをサーチするだけなんで。

 デッキに入っているモンスター化できる魔法カードはそれで全部ですから」

「打点も低いしサーチもサルベージも楽だから一枚ずつでいいと思ったんだがなぁ。

 それに、安定性を求めすぎて相手に時間を与えすぎてる感があるな」

「目先のライフアドバンテージに飛びついたのもダメでしたね。

 ああ、こうして見てみると自分の未熟さが浮き彫りになって恥ずかしいです」

 そんな感じで俺たちは昨日のデュエルを見返していた。

 

 

「プレミを除けば、やっぱりサーチカードばかりでダメージソースに乏しかったのが一番の敗因かな。

 どうする? このままじゃビートバーンにしても中途半端だと思うが」

「確か恒常的にダメージを与えられるカードがあったと思います。

 ええと、どれだっけ……ああ、これだこれだ」

 木村くんがテーブルの上に並べられている緑一色のカードたちから一枚を選んで手に取った。

 それは相手にカードを公開する度にダメージを与えるカードだった。

 

「ああ、確かにそれなら相手にプレッシャーを与えながらサーチも行えるな。

 それをメイン火力にするのなら、今のデッキに少し手を加えるだけで大分改良できるな。

 だが、効果ダメージを無効化するモンスターに遭遇することも考えて、戦闘補助を抜いてそれを除去するカードもあるといいかもな」

「そうですね、でも防御カードとの兼ね合いもあるから、難しいなぁ……」

「こうやってデッキの構築している時が勝利の次に楽しいんだよ」

 木村くんもそう思っているのか、口元が緩んでいた。

 

 

「まさか、全部魔法カードで構築されたデッキと戦っていたとはね……。

 戦っている時に薄々そうじゃないかと思っていたけど……」

「なんだ居たのかこのお邪魔虫」

 俺たちが座っている反対側で頬杖ついて不機嫌そうにしている翔子である。

 

「ここはデュエルの学習をする場所だぞ。ボーっとしてるだけなら帰れ帰れ」

「人様のデッキに口を出すなんて良いご身分ね。昨日テレビに出てたデュエル評論家みたい」

「多分同じ番組見てたぞ俺、俺はあんなねちっこい批判はしないわ」

「よく魔法カードだけでデッキを構成しようなんて思いついたわね。

 でも魔法を封じられたら何もできないじゃない」

「ガンメタ前提でマッチ戦するならともかく、相手の行動を抑止するコントロールデッキが好まれない今の環境でそれを気にしてたら何もできないぜ。

 お前のデッキだってシンクロ取り上げたら勝ち筋皆無じゃないか」

「そっちだって手札事故起こしたら何もできないじゃないの」

「手札事故の無いデッキなんてあるわけないだろ。常勝の将軍が居ないのと同じだ。

 それに、いかに手札事故のリスクを抑えられるかが、決闘者(デュエリスト)としての腕の見せ所じゃないか」

 正直こんなの水掛け論だ。

 そんな下らない論争に付き合うのも無駄なので、木村くんの方に集中しよう。

 ところが、木村くんは俺たちをいやに感心した顔つきで見ていた。

 

 

「ん? どうしたんだ」

「あ、いえ、お互いのデッキのことをよく理解しているんだなぁって」

「そりゃあお互い幼稚園の頃からの付き合いだからな」

「幼馴染なんですね」

「ただの腐れ縁だよ。家も近くで小中高と同じ学校、そのうち同じクラスになった回数は十回以上。

 学校の行事やレクリエーションの度に同じ班、周りもそれが当然だってツラしやがる。

 こいつもこいつでいつも俺に突っ掛かってくるし、母親が学校までついて来てる気分だぞ」

「そうなんですか。でも、そういう関係ちょっとうらやましいな。

 僕にも幼馴染の女の子が居たんですけど、一回体壊して転院を繰り返しているうちに疎遠になっちゃったことがありまして」

「そんないいもんじゃないけれどねぇ」

 俺は渋い顔でそう言ったのが、木村くんの表情は曇らない。

 

「僕、いつかデッキについて話し合えるような気の置けない友達を作るのが目標だったんです。

 先輩は先輩ですけど、少しずつその目標に近づけている気がするんです」

「あー、うん。そうか」

 そんな曇りのない目で言われては、何も言えないではないか。

 別に俺は木村くんと友達でもいいんだけれど……どうやら彼は先輩後輩と言う立場を気に入っているようだった。

 

 

「それは別にしても、お互いの戦術とか癖を知り尽くしていると、やりにくかったりしませんか?」

「毎日何回も連続でやっているわけじゃないからな。

 お互いに毎回少しずつデッキの内容は変えているし、毎回同じような展開でデュエルが進むわけじゃないしね」

「なるほど……。お互いのデッキの内容をわかりあっているんですね。

 お二人のタッグデュエルはきっとお強いんでしょうね」

 おや、なかなか面白いことを言うじゃないか、

 

「はッ、なんならデッキを交換してタッグを組んでも俺がこいつに合わせてやれる自信があるぜ」

「私のデッキは挙動が単純だから自慢にならないわよ。

 私だって今あなたからデッキを渡されて誰かとデュエルしろって言われてもできるわ」

 横から口を挟んできた翔子と俺はにらみ合う。

 

 

「え、本当ですか。ぜひ見せてください。デッキを交換したデュエル!!」

「「えッ」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 俺と翔子の共通点は数える程しかないが、その中でも一番なのを上げるのなら、お互いに意地っ張りだということだろう。

 つまり、お互いに一度吐いた言葉を撤回できないのだ。

 

 

「じゃあ僭越ながら僕がジャッジモニターでデュエル経過を見てますね」

 お互いにデッキを交換して行うという珍しいデュエルに、木村くんは期待に胸を躍らせている。

 

 お互いのデッキを交換してデュエルなんて、年末の深夜にやっているお笑い番組で売れない芸人がスベる為の振りで遣る程度でしか行われない為か、きっとまともにデュエルとして成立しているところを見るのは初めてなのだろう。

 ライディングデュエルどころかF1でデュエルまでするこの世界でも、あまり見ない形式であろう。

 

 

 俺たちが沈痛な面持ちで対峙していると、デュエルスペースで暇潰ししているほかの生徒たちもこっちの様子を窺いだしているのが見て取れる。

 俺は意を決するしかなかった。

 

「ほれ」

「うん……」

 俺はデュエルディスクからデッキを取り外すと翔子にそれを差し出した。

 同じように、彼女からも自身のデッキを手渡される。

 

 その光景を見ていたギャラリーが、何事かと小さく騒ぎ始めた。

 

 初代アニメ遊戯王ではお互いにデッキをシャッフルする為にデッキを受け渡しをするシーンが何度か見て取れるが、シリーズが進むとデュエルディスクが勝手にシャッフルしてくれるのでそんなどこかシュールな光景も見られなくなった。

 当然、俺の住むこの世界のデュエルディスクも、自動的にデッキをシャッフルしてくれる。

 

 だから周りはこんなに騒いでいるのだ、この野次馬どもめ。

 俺、このままクラスに帰るの嫌なんだけど……。

 

 そんなことを考えていると、何やら翔子の様子が変なことに気付いた。

 自分たちのデッキを交互に見てはそわそわしている。

 その上、緊張しているのか顔を赤らめていやがるのだ。そんなたまじゃないのに。

 

 こんな調子で実力が出せると思っているのか。

 よし、ここは一発、空気を和ませてやろうか。

 

 

「翔子、今からお前は、自分のデッキの真の恐ろしさを知る!!」

 ビシッ、と沢渡さんみたいにキザに決めたぜ。

 

 

「おい、あいつら、自分たちのデッキを交換してデュエルするみたいだぜ」

「マジかよ……って、須田と真辺の三組夫婦か。なにやってんだあいつら」

 俺としては場を和ませたかったのだが、どうやら周囲に俺たちがやろうとしていることを喧伝しているだけにしかならなかった。

 翔子も顔を真っ赤にして完全に俯いてしまった。

 

 ああ、駄目だ、これ以上は悪化しかせんわ。

 ここは翔子のデュエリストとしての本能に賭けよう。

 

 

「じゃあ木村くん、始めるぞ。記録オーケーか?」

「はい、勿論です」

 こう言った授業外でのデュエルもこうして記録すれば成績に入れてくれる。

 地道にこういうことをするのが大事なのだ。

 

 

 

「行くぞ、翔子」

「……うん」

 

 

 

 

         「「デュエルッ!!!」」

          遊助VS翔子

          LP4000

 

 

 

 

「先攻は……お前か」

「私のターン……私はモンスターを裏守備表示でセット、カードを二枚伏せてターンエンド」

 おい、やる気あんのか、と口にしかけたが、俺は寸前で踏みとどまった。

 どんな優秀なデッキでも、他人が使うと途端に事故ばかり起こすなんてことはよく聞く事例だ。

 

 翔子 LP4000

 場  セット

 魔罠 □□■■□ セット セット

 手札 □□

 

 

「俺のターン。ドロー」

 逆にこっちは事故こそ起こしていないが、現状使用できないカードが三枚。

 これで事故ってないって言えるんだから、安定性が違うわな。

 

 翔子も本調子じゃないし、ここはすこし挑発でもするか。

 

 

「俺は『慈愛と因果の少女』を召喚。

 このカードが召喚に成功した時、デッキから『魂の宝玉』を一枚墓地に送ることができる」

 ピンク色の髪をした気弱そうな雰囲気の少女が現れた。

 

 

『慈愛と因果の少女』

 ☆2 光属性 魔法使い族 攻守 0/0

『慈愛と因果の少女』の(1)と(2)の効果の使用はいずれか1ターンに一度しかできない。

(1)このカードが召喚に成功した時、以下の効果を選択して発動できる。

 ●デッキから『魂の宝玉』を一枚墓地に送る。

 ●除外された『魂の宝玉』を一枚を墓地に戻す。

 ●墓地に存在する『魂の宝玉』一枚除外する。

(2)墓地・除外ゾーンの『魂の宝玉』を対象にして発動できる。

 そのモンスターを攻撃表示で特殊召喚する。

 

 

「俺はカードを二枚伏せて、ターンエンドだ」

 

 遊助 LP4000

 場  『慈愛と因果の魔法少女』

 魔罠 □□■■□ セット セット

 手札 □□□

 

 

「最初はお互いに動き無し、か」

「だが須田の方は準備を終えている。出方を見ているな」

「攻撃力ゼロのモンスターを棒立ちとかマジかよ」

「それはあの伏せカード次第だろ」

 ギャラリー共やかましいぞ。

 

 

「私のかわいいモンスターを立たせたままとか、馬鹿にしてる?」

「さて、な。お前のデッキだろう。

 俺がどう出てくるのかは自分の方がよくわかってるんじゃないのか?」

 俺はにやにや笑いながらそう言った。

 それだけで、翔子の目つきが対戦相手とデュエルの事以外目に入らない、決闘者(デュエリスト)のそれに変わった。

 

「私のターン、ドロー。

 私は『スライム・ヒーラー』を召喚する」

 翔子の眼前に、クラゲみたいな形のスライムが現れる。

 

 

『スライム・ヒーラー』

 ☆3 水属性 水族 攻守 500/300

(1)このカードがフィールド上に存在する限り、自分は『スライム』モンスターが召喚・特殊召喚される度にフィールド上の『スライム』モンスター×300ポイントライフを回復する。

(2)1ターンに一度、この『スライム・ヒーラー』以外のフィールド上の『スライム』モンスターをリリースして発動する。

 墓地から『スライム』モンスター1体を対象選び、そのモンスターを特殊召喚する。

 

 

「そして私は永続罠『恐怖!? スライム地獄の部屋』を発動する。

 デッキから『スライム』モンスターカードを1枚墓地に送り、相手に500ポイントのダメージを与える。

 ………………なるほどね。

 私はデッキから『スライムズ・ドール』を墓地に送る」

 しっかり俺のデッキの内容を確認しているあたり、抜け目がない。

 

 遊助 LP4000→3500

 

「更に、『スライム・ヒーラー』の効果で、裏守備表示の『スライム・ブルー』をリリースし、今墓地に送った『スライムズ・ドール』を守備表示で特殊召喚する!!」

 墓地からデフォルメされた二頭身の騎士が、ボテンと脱力した状態で現れた。

 

 

『スライムズ・ドール』

 ☆3 地属性 戦士族 攻守 0/0

 通常モンスター

 中身が空洞の小さな騎士人形。

 普段は動かないが、奴らの上に乗ると魂が宿ったかのように襲い掛かってくるぞ!!

 

 

「スライムが特殊召喚されたことで、『スライム・ヒーラー』の効果発動。

 フィールド上のスライムは二体、よって600ポイントライフを回復する」

 クラゲみたいな触手を左右に振ると、翔子の周囲に光の粒子が降り注いだ。

 

 翔子 LP4000→4600

 

 

「そしてこのカードは、融合素材となるモンスターをフィールド上からリリースすることで、エクストラデッキから特殊召喚できる。

 がらんどうの命無き騎士よ、今こそ弱き者の為に立ち上がり、友の魂その身に宿せ!!!

 ―――誇り高き弱者の味方、『ナイト・オブ・スライム』ッ!!」

 

 突如として脱力していた騎士人形が飛び上がり、隣に浮いていた『スライム・ヒーラー』の頭上に乗っかった。

 でた、別名乗っただけ融合だ!!

 

 

『ナイト・オブ・スライム』

 ☆5 地属性 戦士族 攻守 1700/1000

『スライム』モンスター+『スライムズ・ドール』

 このカードは自分フィールド上の上記のカードをリリースした場合のみ、エクストラデッキから特殊召喚できる。

(1)このカードは融合素材とした『スライム』カードと同じ効果を得る。

(2)このカードが墓地に送られた場合、デッキから『スライム』カードを手札に加える。

 

 

 でた、俺のエースモンスターだ!!

 ……って、なんで俺が初出するより先にお前が出すわけ!!

 

「バトルよ、『ナイト・オブ・スライム』で、『慈愛と因果の少女』を攻撃!!」

 翔子の攻撃宣言と共に、ふわふわと浮いている素材元の『スライム・ヒーラー』に跨る騎士人形が動き出す。

 ふよふよと近づき、とんでもない脚力でスライムの頭上から飛び上がって手にしている剣を『慈愛と因果の少女』に振り下ろす。

 情け容赦のない光景だった。『慈愛と因果の少女』も涙目になってカリスマガードしている。

 弱者の味方とはなんだったのか……。

 

 あんまりな光景だというのもあるが、彼女をみすみす破壊させるわけにはいかないので、デュエルディスクを操作した。

 

 

「リバースカード、オープン。

 トラップ発動。『魔法少女の奇跡』。

 自分フィールド上のシンクロモンスター以外の『少女』魔法使い族モンスターが攻撃対象に選択された時に発動できる。

 墓地または除外ゾーンから『魂の宝玉』を特殊召喚し、その二体を素材とするシンクロモンスターをシンクロ召喚するッ!!」

 

 

『魔法少女の奇跡』

 通常罠

『魔法少女の奇跡』は1ターンに一度しか使用できない。

(1)自分フィールド上のSモンスター以外の『少女』魔法使い族モンスターが攻撃対象に選択された時、発動できる。

 相手のバトルフェイズを終了し、墓地または除外ゾーンから『魂の宝玉』一枚を特殊召喚する。

 その後、攻撃対象にされたモンスターとその二体を素材とするシンクロモンスターをS召喚する。

 

 

 

 別名、イヤボーンである。

 魔法少女モノとかじゃお約束だよな。

 

「まあ、絶対それを伏せているだろうとは思っていたけれど。

 分かってて攻撃したのよ、さっさとそれを使わせたかったから」

 翔子は苦笑してそう言った。

 

 強力なカードだが、実際問題こいつはかなり使いにくい。

 なにせ『慈愛と因果の少女』以外の『少女』カードはみんな通常召喚できないんだから。

 その上攻撃反応型という遅さも目立つ。俺だって初見の時以降は使わせる目的以外で攻撃したことは無いくらいだ。

 それはそうと、少し恥ずかしいがやることは済ませておこう。

 

 

「レベル2の『慈愛と因果の少女』と、レベル4『魂の宝玉』をチューニング!!

 優しき祈りは次元を超えて天を貫き、希望となって降り注ぐッ!!

 ―――シンクロ召喚、レベル6『因果集いし約束の魔法少女』!!」

 あー、恥ずかしい。

 ピンクと白を基調とした格好の、弓矢を携えた魔法少女が現れる。

 

 

『因果集いし約束の魔法少女』

 ☆6 光属性 魔法使い族 攻守 2200/1500

 シンクロ・効果モンスター

『魂の宝玉』+『慈愛と因果の少女』

『因果集いし約束の魔法少女』はフィールドに一枚しか存在できず、このカードの特殊召喚は1ターンに一度しかできない。

(1)このカードがS召喚に成功した時に発動できる。

 このカード以外のフィールド上に存在するすべてのデッキ・エクストラデッキから特殊召喚されたモンスターは、全てデッキに戻る。

(2)このカードの攻撃力は、このデュエル中に特殊召喚に成功した『因果集いし約束の魔法少女』の回数×200アップし、その回数分だけレベルが上がる(最大12レベルまで)。

(3)このカードの効果でレベル12となったこのカードと墓地の『慈愛と因果の少女』を全て除外し、手札の『契約を齎す者』を公開することで発動する。

 このカードの元々の持ち主はデュエルに勝利する。

 

『因果集いし約束の魔法少女』 ☆6→7 攻2200→2400

 

 

「シンクロ素材となった『魂の宝玉』は永続魔法扱いとして墓地へは行かずフィールドに残る。

 そして、『因果集いし約束の魔法少女』の効果発動。

 このカードがシンクロ召喚に成功した時、デッキ・エクストラデッキから特殊召喚されたモンスターは全てデッキに戻る!!

『因果集いし約束の魔法少女』よ、その願いと祈りで悲しみを消し去れ。

『ナイト・オブ・スライム』はエクストラデッキへとお帰りだッ!!」

 

 ……

 ……・

 …………

 

 

 あれ?

 俺は今しがた召喚した『因果集いし約束の魔法少女』を見やった。

 彼女もちょっと困ったような表情で、小首を傾げてこっちを見ていた。

 

 

「私は攻撃宣言時、リバースカードを発動していた。

 永続トラップ、『バリアブルー・スライム』。

 私は手札から通常モンスター以外の『スライム』モンスターを墓地に送り、墓地から『スライム』通常モンスターを手札に加える。

 私は手札の『スライム・エッグ』を墓地に送り、墓地の『スライム・ブルー』を手札に加える」

 出たよ、遊戯王名物「発動していた」が。

 

 

『バリアブルー・スライム』

 永続罠

(1)1ターンに一度、手札の『スライム』通常モンスター以外の『スライム』モンスターを墓地に送り、墓地の『スライム』通常モンスターを手札に加える。

 

 

 通常軸スライムでは墓地肥しを兼ねた優秀なカードだ……。

 俺はさっさとスライムを墓地に落としたい構築をしているので、案外手札に通常『スライム』が足らないくなることも多いのだ。

 しかしそれは今問題ではない。

 

 

「カード効果の処理の間にシンクロ召喚時の効果が発動した為、タイミングを逃した『因果集いし約束の魔法少女』の効果は不発だッ!!」

 翔子の持つ『魔法少女』シンクロモンスターは全てシンクロ召喚時の効果を持っているが、その全てが『時』の効果。

 

『歯車街』の発動に『サイクロン』のチェーンと同じ処理だ。

 より近しい例えなら、相手ターンの何らかの除去に発動した『竜星』モンスターの効果で『ショウフク』を呼んだ時と同じである。原作再現的にまことに腹立たしいことではあるが。

 

 と言うか、発動していたとかルール違反じゃないが、発動確認を怠るのはマナー違反だからな!!

 そいつが発動していたならこのカードは使用しなかったって主張してジャッジの判断を仰いだっていいんだぞ!!

 

 ……まあ、チェーン確認してなかった俺も悪いし、木村くんにその判断をさせるのも可哀想だ。

 どの道そのカードが発動してようがしまいが使っていたことには変わりないんだし、今回はぐぬぬと言っておいてやろう。

 

 

「あはは、遊助恥ずかし」

 このアマ、目に物見せてやろうか……。

 

「私はカードを一枚伏せ、ターンエンドよ」

 

 

 翔子 LP4600

 場  『ナイト・オブ・スライム』

 魔罠 □■■■□ 『恐怖!? スライム地獄の部屋』『バリアブルー・スライム』 セット

 手札 □□

 

 

「俺のターン。ドロー。

 スタンバイフェイズに、俺はリバースカードを開示する。

 永続トラップ『魔法少女の円環』。

 このカードは自分フィールドに『魔法少女』シンクロモンスターが存在する時、発動できる。

 1ターンに一度、『魔法少女』シンクロモンスターをリリースし、リリースしたモンスターに記される素材とは異なる『少女』魔法使い族モンスターをデッキから手札に加える」

 

 

『魔法少女の円環』

 永続罠

『魔法少女の円環』の効果は1ターンに一度しか使用できない。

(1)このカードは自分フィールド上に『魔法少女』Sモンスターが存在する場合のみ発動できる。

 自分フィールド上の『魔法少女』Sモンスター1体をリリースし、そのカードに記された素材以外の『少女』魔法使い族モンスターを手札に加える。

(2)このカードが表側表示で存在する限り、自分は『少女』魔法使い族モンスターしか特殊召喚できない。

 

 このデッキのキーカードである『魂の宝玉』を特殊召喚できなくなるのは痛いが、このデッキの安定性を高めるには必要な物である。

 それに『魂の宝玉』の特殊召喚に依存する『因果集いし約束の魔法少女』はもう召喚済み、後は墓地に置けば使い回せる。

 

 

「俺は『因果集いし約束の魔法少女』をリリースし、デッキから……・って、おい、なんだこの構築はッ!?」

 俺はデッキのカードを確認し、思わず目を剥いた。

 なにせ、俺が今まで見たことのないようなデッキの構築をしていたからだ。

 

「遊助が言ったんじゃない、遊びの無い構築なんて面白くないって……」

「言った、言ったが……それにしてもこれは極端すぎるだろう。道理であんなカードが手札に来るわけだ」

 流石に今日のデッキ交換デュエルを見越してこんな構築したわけではなかろうが、それにしたってこれはなんていうか……ロマンすぎる。

 

 一言でいえば、ある程度戦えるようにしつつ、『因果集いし約束の魔法少女』の特殊勝利条件を満たすためのデッキ構築だったのだ。

 あんなの、俺ですらお互いに事故りに事故った末に一度だけ成功するのを見たことがある程度の難しさだぞ。

 

 

「遊助。早く続けてよ」

「あ、ああ、『魔法少女の円環』の処理を続ける。

 俺は『悲壮なる覚悟秘める少女』を手札に加える。

 そしてメインフェイズに移行。

 俺は今手札に加えた『悲壮なる覚悟秘める少女』を特殊召喚する。

 このカードの効果で、俺はデッキから『魂の宝玉』を一枚手札に加える。

 さて、言うまでもないことだがこのカードの特殊召喚成功時、お前は次の自分のバトルフェイズをスキップすることでこのカードを手札に戻せるが?」

「私はそのカードを手札に戻させない」

「了解、これでこのカードの処理は終わりだ」

 

 

『悲壮なる覚悟秘める少女』

 ☆4 闇属性 魔法使い族 攻守0/0

『悲壮なる覚悟秘める少女』の(2)の効果による特殊召喚は、1ターンに一度しか使用できない。

(1)このカードは通常召喚できず、デッキから特殊召喚もできない。

(2)このカードは手札から表側攻撃表示で特殊召喚できる。

 この効果で手札からの特殊召喚に成功した時、デッキから『魂の宝玉』を一枚手札に加えることが出来る。

(3)このカードが特殊召喚に成功した場合に発動する。相手は次の自分のバトルフェイズをスキップすることで、このカードを手札に戻すことが出来る。

 

 

「続けて『魂の宝玉』を召喚する。

 そして、俺はレベル4の『悲壮なる決意秘める少女』に、レベル4の『魂の宝玉』をチューニング。

 終わり見えぬ旅路を歩む、決意と覚悟が明日を信じる希望となるッ!!

 ―――シンクロ召喚、レベル8『時迷い運命抗う魔法少女』!!」

 黒髪靡かせ、颯爽と盾を携えた魔法少女が現れる。

 

 強力な効果とこのデッキで屈指の場持ちの良さから、対処法を知っていても除去するのも容易ではない。こいつには何度手を焼かされたことか。

 専用サポートを多数抱え、超強い『ゼンマイラビット』みたいな効果。

 維持されればされるほど不利になって泥仕合の末に負けるなんてことも多かった。

 

 

「このカードがシンクロ召喚に成功した時、相手フィールド上の魔法・罠は全てデッキに戻す。

『時迷い運命抗う魔法少女』よ、その身に降りかかる災いを振り払え!!」

 

 

『時迷い運命抗う魔法少女』

 レベル8 闇属性 魔法使い族 攻守 2500/1000

 シンクロ・効果モンスター

『魂の宝玉』+『悲壮なる決意秘める少女』

『因果集いし約束の魔法少女』はフィールドに一枚しか存在できない。

(1)このカードがS召喚に成功した時に発動できる。

 相手フィールド上に存在する魔法・罠ゾーンのカードを全てデッキに戻す。

(2)このカードは1ターンに一度、以下の効果からそれぞれ一度ずつ適用できる。

 ●このカードをゲームから除外できる。この効果は相手のターンでも使用できる。

 ●除外されているこのカードは、自分のメインフェイズまたはバトルフェイズにのみ、除外ゾーンからフィールドに戻すことが出来る。。

(3)このカードが戦闘を行う場合、相手モンスターの効果は無効となり、ダメージステップ終了時まで相手はカードの効果を発動できない。

 

 

「私は『時迷い運命抗う魔法少女』の効果に対し、速攻魔法『スライム・ストライク』を発動!!

 このターン、戦闘する『スライム』モンスターは、ダメージ計算を行わず相手モンスターを破壊する!!」

「ちッ、だが『恐怖!? スライム地獄の部屋』と『バリアブルー・スライム』はデッキに戻してもらう」

「当然、その前に『スライム地獄の部屋』の効果を使用させて貰うわ。

 これ以上のチェーンは無いわね? じゃあ処理を始めましょう。

 まず、デッキから『スライム・レッド』を墓地に送り、遊助に500ポイントのダメージ」

 

 遊助 LP3500→3000

 

「続けて『スライム・ストライク』の処理が終わり、二枚のカードがデッキに戻る」

 これであいつの墓地肥しカードを除去できた。

 維持されると危ないんだよな、どちらも。墓地が肥えるほど強いデッキだから。

 

「俺はこのままバトルせずにカードを一枚伏せ、ターンエンドする」

 

 

 遊助 LP3000

 場  『時迷い運命抗うの魔法少女』

 魔罠 ■■■■□ 『魔法少女の円環』『魂の宝玉』『魂の宝玉』セット

 手札 □□□

 

 

「じゃあ、次は私のターンね。ドロー。

 ……うーん、味方なら安心感この上ないけど、相手にするとこの上なく厄介……」

「ははは、悩ましかろう悩ましかろう。

 俺はいつもこいつを出される度にそんな風に処理する手段を模索してるもんだ」

 くっくっく、と意地の悪い笑みを浮かべて俺は腕を組んで彼女の行動を待ち受ける。

 

 

 正直こいつのデッキなんて気乗りしなかったが、デッキの構築がさっき確認した通りなら話は別である。

 やってやろうじゃないか、特殊勝利。

 初めてこのデッキを使って、しかも難しい特殊勝利を決められる。

 

 そんなこの上ない屈辱の末に、貴様は負けるのだ、翔子ぉ、はははははははは。

 

 

 

 

 

 

 

 




それにしてもこの主人公、ノリノリである。
魔法少女ものとか、最初は見るの嫌がってたけど、見てみると普通に面白くていつの間にか嵌っているなんてことありますよね。

自分も中学の頃部活でプリキュア好きを公言している後輩が居たものですが、何こいつ気持ち悪い、なんて思っていた私が数年後まどマギのアニメ最終回を深夜に見てて大喝采するなんて、世の中分からないモノですね。

さてさて、なんだか知らないけどこんなイロモノ小説をお気に入りに十五人も登録してくれているんですが。
日に何万人も利用するサイトとなれば、これくらいの物好きは出てくるもんなんですね!! (歓喜

まあまあ、こんな小説でも需要があるってことは平和でいいことです。
願わくば遊戯王の環境もそんな感じで平和であり続けると嬉しいです・・。

それでは、需要があれば続けます。また次回、お楽しみに。


※今回の前篇後編で根幹となる『因果集いし約束の魔法少女』のレベル上昇効果を書き忘れていました、あってはならない見落としです、すみません(泣
すぐに修正しましたが、こんな小説にもミスを指摘してくださる方がいらっしゃるようになったんですね・・感涙です。

それではまた、需要があるなら続きます!!

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