神通の憂鬱   作:zenke

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陥穽

 大淀副司令(事務方)と、鳳翔副司令が、取っ組み合いの喧嘩を繰り広げている。

 はからずもそんな場所に足を踏み入れてしまった私は、すぐさま回れ右をしてそこから逃げ出そうとした。

 

「「神通」」

 殆ど同時に発せられた怒りの声が私の足を釘付けにする。

 大淀副司令が私に命じてくる。

「お願いだから、この馬鹿に世間的常識と言うものを叩き込んでくれない!?」

「それは私に奇跡を望まれていると解釈していいのでしょうか?」

「誰が常識はずれで馬鹿なのよ!馬鹿って言う方がモガガ」

 ナイスアシスト。長門が鳳翔の開けた口をさりげなく後ろに回って塞いでくれたお陰で大淀副司令と普通の会話が出来る。

 私の顔を少し落ち着きを取り戻した目で見つめてくる大淀副司令。

「ごめん、さっきの言葉は忘れて、確かに不可能なことは頼めないわね。でも、ちょっとだけ愚痴を言うのにはつき合って貰うわよ」

「慎んで拝命致します」

「神通、私はいつまで、鳳翔の口を塞いでなくてはいけないのだ?」

 私と大淀副司令がユニゾンで答える

 

「「出来たら、話が終るまでは、そうしておいてくれる?」」

 

 とことん組織に向かない筈の鳳翔お母さんが、戦闘及び糧食関連を司る副司令官を勤めていると聞かされた私は頭を抱える他は無かった。正直、たちの悪い冗談としか思えない。

 お父さんは何を考えているのかしら?

 

「この馬鹿が寄越した来週分の糧食費用」

「艦娘、一人当たり、通常の自衛官で換算して3倍から10倍?の費用」

「こんなの普通に考えて通せる訳が無いでしょう?毎日フルコースでも食べるつもりなのかしら?」

「確かに」

 長門がもの言いたげに私を見つめているがとりあえず無視する。

「今週迄の糧食費用を見せて頂けますか?」

 ざっと見て私は大淀副司令に確認する。

「現在この学園にいる艦娘が10人、費用は通常兵士の2倍程度と言うのが今週までの集計で間違いありませんね?事前訓練を終え、来週艤装とのマッチングを行う予定が約10名。今週の費用の二倍で良いのではないでしょうか?」

 我が意を得たりという風に頷く大淀副司令。

 

 長門がお母さんに何事か耳打ちする。

 

 あ~すごくいい笑顔のお母さんがいる。なにか私達が致命的な間違いをしているような気がする。

 

「大淀、確か貴女、艦娘になってから基礎課程しかやってないよね。来週、戦闘訓練参加しなさい」

「嫌がらせ?」

「参加するなら、来週の費用、そっちの言い分を飲んでもいい」

「…本当なのね」

「嘘は言わない。貴女がいない間の事務作業の手助けには、神通を貸し出してあげる。今週一杯かけて仕込んだら?」

 私は恐る恐る鳳翔にお伺いをたてる。

「その間の私の艤装訓練は免除と考えても?」

「他の人より下手なのにさぼる気?朝三時間、夜三時間こっちにも顔を出しなさい。いいわね?」

「ですよね~」

 

 

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