赤城指揮、作曲鳳翔の学園食料倉庫襲撃事件は、お腹を空かせた艦娘がいかに危険な存在になる事ができるかを大淀副司令に身をもって体験してもらった事で、落ちつくべき場所に落ちつく事になった。
具体的には、艦種毎の糧食基準の見直し、戦闘配置時、訓練時の食料の割当ての増配。副食の量的基準変更。おやつやお菓子の追加充実 。
まあ、最後のは、私達もさすがにやり過ぎかと思ったのだが、お父さんは、最後の項目に目をやると微かに微笑んでこうのたまった。
「一番大事な物だな」
手早く印鑑を押して決裁された書類は、来週からの充実した食生活を約束するものだった。
だからこそ、忘れていたのだ。今週分の食料が根こそぎ赤城達の胃袋に消えていた事を。
そして、翌日、この事件の関係者は揃って頭を抱えることになる。
量だけは大量にある握り飯と漬け物に味噌汁。玉子焼き一切れがその日の朝の献立だった。
そしてこれがこれから一週間の献立になりかねない事にこの時点で気が付いていたのは恐らく、大淀副司令と私だけだっただろう。
だからこそ、赤城がお握りの山を前にしてニコニコしながら言った一言に欠片も反応せずにいられた大淀副司令を私は心から尊敬するのだ。
私はその言葉を聞いた瞬間、お味噌汁を喉に詰めむせかえったのだから。
「焼肉パーティーの後だからこそ、こうゆうサッパリした物も良いですね」
加賀の言葉に赤城は軽く頷いた。
「確かにそうね。たまになら美味しいかも、でも毎回こんな感じだと暴れたくなるかも。お昼のご飯が楽しみ」
ヤバイ、絶対、判って言ってる。
「神通、長門、羽黒は食事が終わったら私の執務室に」
「えっ?」
私は関係ありませんという顔でいた羽黒は突然の呼び出しに首を傾げていた。
「何で私はここにいるのでしょう?」
携帯で何処かと連絡をとっている大淀の代わりに私が答える
「羽黒の古巣に用があるからよ。それに昨日の焼肉パーティーに途中から参加していたのは知っている。少しは責任を感じなさい。時間が惜しいから現状の確認を最初に行うわよ」
何かを言いかける長門を一言で黙らせる。
「友達でしょう?手伝って」
「そうか友達か、友達なら仕方ないな」
チョロすぎる。でも何でそんなに嬉しそうなんだろう?
「お役所仕事のせいで今週分の糧食手配は正規の方法では不可能に近い状態です。ですから、他の基地に恩をうって差し当たりの副食を手に入れます。幸いにもお米だけは売るほどありますから考えなくて良いのが不幸中の幸いですね」
「艦娘が表敬訪問を行うと言えば、今なら大判ぶるまいで歓迎してくれてお土産もゴッソリ頂けます。そう言うわけでお昼ご飯は他の基地にタカらせます」
「みもふたもない」
「明日以降の食事は今日中に何とかするとして、問題は今日の晩ご飯です。最悪、高くついても外のお店で食材を調達するという方法もありますが」
「そう言えば、大淀、父さんは牛肉の時雨煮缶詰なんてどこから出してきたの?食料倉庫では見たこと無いんだけど ?」
ちょっとだけ頬を紅くした大淀は頭の中で何かを考えている。
「あっそう言えば」
非常時用備蓄倉庫、それが私達の苦境を救ってくれた。
牛肉と竹の子の炊き込みご飯に、缶詰の沢庵、副食にたっぷりの餡掛け蟹玉。
ほとんど缶詰で出来ているとはいえ量と味は誇れる物だった。
私には、夕食を食べている艦娘達の笑顔がその証拠に思えた。