「どうやら、ここまでのようだな。流石に人道支援を表向きにされては無下にするわけにもいかん。無理をさせるが頼む」
鳳翔を前に父が頭を下げる。
「十分です、いつかはやらなければいけなかった事ですし、今ならまだ助けられる可能性があります」
孤立してしまった島嶼から本土への避難、それが私達の前に提示された依頼であった。
命令ではなく、依頼である所に司令部の葛藤が感じられる。
「練度が致命的に足りない事は誰しもが理解してはいるのだ。それに戦力の逐次投入が下策である事もな」
幸いにも、エープリルフール以降、大っぴらに姿を現しだした、妖精さん有志が、各地に編成してくれた飛行隊と、艦娘が産み出される前に実験的に作られた航行能力を持たない簡易艦娘ともいえる沿岸砲台で、過去の世界で言われる領海までの沿岸部の安全は確保されている。
その先の海は未知の世界と化しているのだが。
鳳翔が私達を見て言葉を出した。
「今回の作戦は、高速艦主体で行います。最大戦速が二十五ノット以下の子は学園でお留守番です」
「それは酷くないか?陸奥はよくて私だけお留守番だなんて?」
長門の言葉に鳳翔は首をふる。
「戦艦は、もともと連れていく予定はありませんから。速度を最重視して編成します。今回旗艦をつとめて貰うのは、羽黒、次席に神通、島風、舞風、叢雲、不知火が護衛艦隊です」
私はあわてて鳳翔に問いかけた。
「まだ私も羽黒も、射撃訓練の途中の筈よ」
鳳翔は、長門と羽黒に問い掛けるような視線を向ける。
…何で羽黒と長門は視線を反らす ?
直接照準距離、ニヤゼロならほぼ百%、ファーゼロなら90%、遠距離砲戦なら初弾夾叉率80%が私と羽黒の現在の砲撃訓練での成績だ。
長門のように各砲塔で別々の目標を砲撃して、初弾から命中させることもできなければ、対空訓練で吹き流しに攻撃しても70%も命中させることが出来ない。
そんな事を切々と訴える私に駆逐艦代表でこの場にいる不知火が尊敬の視線を向けてくる。
何故だ?
私が長門(一部羽黒)に騙され一般的とはかけ離れた訓練をおこなわされていた事に気づかされたのは、それから直ぐの事だった。
後から何故、そんな事をしたか長門に問い詰めた所、反ってきた答えは私を絶句させた。
「神通、貴女には必ずこの訓練が必要になる」
まあ、その後に追加された言葉の方が長門の本音だったと私は信じたい。
「それに、スポンジのように技術を吸収して、その身に私の指導が花開いていくのを見るのは、何とも言えない快感でな」
やっぱり、友達に預言者は遠慮したいと一般的には、思うものではないだろうか?
結局、攻められて戦うのではなく、こちらからうって出る能動的に行われる深海棲艦との最初の戦いに、私は参加する事になる。