私は遊園地が苦手だ。
コーヒーカップのグルグル回るのも好きにはなれないし、ジェットコースターに乗る等、狂気の沙汰としか思えない。
そんな私が何故、バンジージャンプ等という狂気を通り越して恐怖の代名詞になっている遊具に括りつけられているのか?
高々度投下、低高度開傘、俗にHALO降下と呼ばれている戦術。これが全ての原因である。
少しでも安全な作戦をという譲統括官と鳳翔副司令の意を汲んで仕上げられてきた作戦案を見た時の驚き。
弾道ミサイルで救出目標である島の近くに直接放り込む。そうする事で片道分の危険をカットすると共に。作戦時間も大幅に短縮、生存者救助の可能性をもたかめる。
確かに良いとこづくしにも、思えるけど、作戦案のそこかしこに張られた付箋とその注釈が拭いがたい、いかがわさしさを醸しだしている。
例えばこんな感じだ。高度一万メートル、マイナス50度、気圧が四分の一という高々度では酸素マスクと防寒着が必須と書かれている。
羽黒の用意しますか?とかかれた付箋の注釈が彼女自身の手で消され、必要ありませんでしたの言葉が書かれていたり、何があった羽黒?
私達が載せられるミサイルにどの程度の安全マージンを持たせるかとの質問には、爆発しなければ大丈夫と子供の時から見慣れた筆跡で書かれており、それさえ、爆発しても大丈夫でしたと上から訂正してある。
訓練はしますか?の質問には「度胸試し位はしておいた方が良いのではない?」と続き、止めにこう結ばれていた。
「確か何とかハイランドって所なら艦娘特権で一時間位、顔出しをすればタダで入れたような気がするな。度胸試しを兼ねてジェットコースターでも乗りに行こうか ?」
「皆で行きません?」
鳳翔の書いた文章に羽黒が誘いの言葉をかきくわえている。
どうして目の前にお互いがいるのに、交換日記じみたやり取りを行う事になっているのやら。
グダグダになりかけた会議は、長門の一言で元の方向性を取り戻すかと思えた。
「もう少し真面目にやろうではないか」
「そうね、話しを戻しましょう…?」
「最初に決めなければいけないのは、集合時間だな」
「集合時間?」
長門の方に振り返った私の目の前に、黒板一杯にかかれたマルマルハイランド、市民交歓会及び自主的訓練計画の文字が踊る
ながもんよ、お前もか?
現在の危機的状態から意識して思考をそらそうとしていた私は、過去の思い出に無意識のうちに救いを求めていたようだ。
後ろから掛けられた地獄の使者の声にびくりと体を震わせる。
「これで飛んでいない人は、神通だけになりましたね」
羽黒、言葉を間違えるんじゃない。自主的に飛んだのは君だけで、他は皆、君に突き落とされたんだ。
この日で、平和な日常は終わる