妖精さんが手助けする事で艤装の中に人が入れるという事実は驚きを持って受け入れられた。
四次元ポケット?聞こえない聞こえない。
今は最終確認をかね、海上自衛官の有志が羽黒の艤装に乗り込み、安全を確認している。
羽黒の中にいる海道艦長から携帯電話が私の携帯にかかってくる。
「どうやら、問題ないようだ。だが大戦中の重巡洋艦だなここはまるで、乗り心地も悪くない」
あっそれは
「羽黒、戦闘機動入ります」
今まで聞いたことが無かったような陽気な声。
久しぶりに会ったかつての指導教官に良いとこを見せようとしているのか、羽黒は海上でフィギュアスケート、あるいは新体操かという動きをみせる。
宙返りに、5回転アクセル。艦娘の能力を使った機動を私が止める前に一瞬で行った羽黒が得意気な顔で私を見る。
私は羽黒から視線を反らして携帯電話の向こう側に問いかけた。
「大丈夫ですか?」
「…幸い、軽い打撲程度だ。あ~今、部下が一人吐いた、後で羽黒に顔をだすように伝えてくれるか?それと戦闘中の艦娘に人が乗るなら、安全ベルトをつけたシートが必須だな」
艤装妖精さんにポカスカと頭を殴られている羽黒。
なるほど、私があれをやったら、とんでもないことになるって訳ね。
この実験結果を受けて乗船割りが決定される。
最初、リスク分散する意味でも他の艦娘にも避難民を乗せる案が提案されたが、戦闘機動が阻害されるという事で私の艤装のみに避難民を乗せる事になった。
展開していた祥鳳の艤装を何時もの神通のそれに切り替える。艤装の切り替えを行うのは、生き物がのっている時は避けた方がいいとの妖精さんの助言に則って誰もが外に出た事を確認してからの行動。
妖精さんに案内されて島民がやってくる。
一人一人、私達に頭を下げ、励ましと感謝の気持ちを伝えて妖精さんと一緒に消える。
最後に残っていた海道艦長が私の前に立ち言う。
「貴艦への乗艦許可を願う」
「…私はどう答えるのが正しいのでしょう?」
優しい目で私を見つめた。海道艦長は豊かな笑い声を口からこぼした。
「なるほど、君らは私が知る軍隊ではないのだな。これが譲が語った第三の選択という事か」
敬礼を私にして、妖精さんを伴って消える海道艦長。
「神通を中心に輪形陣を」
旗艦、羽黒の言葉に私を守るように艦娘が展開する。
朝焼けの空を背に一日に満たない短時間しか滞在しなかった島がゆっくりと遠ざかって行く。
安全が確保出来る本土まで20ノットの巡航速度で約八時間、私達にとって初めての実戦が目の前に迫っていた。