羽黒が三機、私が一機、カタパルトを使って偵察機を射出する。下駄履きとも呼ばれる水上偵察機が大空に向かって舞い上がる。
彼女達が帰還する時には、静海面を作る為に、艦隊全体を単縦陣にし、大きく旋回しなければならない。
それでも、現行レーダーでは見つける事さえ困難な深海棲艦を発見するには、偵察機が何よりの力になるのだ。
島を出る私達に並走してくれていたイルカが何かに怯えたかのような鳴き声をあげる。
一拍おいて矢継ぎ早に無線がはいり始めた。
フェイルセーフをかねて羽黒の使用する無線に合わせておいた無線にはひっきりなしに敵の艦種と数を知らせる妖精さんの声。
羽黒の指示に従い大きく舵を切る。
「全艦オールウエポンズフリー、旗艦羽黒の発砲に合わせ神通は砲撃を開始。駆逐艦は不知火の指揮に従って全艦突撃、砲雷撃戦を行って下さい」
学園を立つ前の予定では、私が水雷戦では先頭を務める事になっていた。
だが、私が傷つく事を許されなくなった現状ではこれが最善の手段なのだろう。納得はいかなくとも。
「予想会敵時間まで五分」
百メートルほど離れた羽黒から無線がはいる。
「神通、長門から伝言を預かっています。必ず生きて帰れ。後、追伸がありますね。うん?私はながもんではない?ってどうゆう意味です?」
「この戦いが終わったら、羽黒にも教えてあげる」
「楽しみです。それではいつも通り合わせて下さい」
長門に何度も行わされた羽黒との合同訓練。
羽黒が敵旗艦を狙い。私が2番艦を狙う。
声がなくとも、いつ発砲するかは判る。
羽黒が波をいなし、20.3センチ連装砲五基を敵艦に向ける。
私も14センチ単装砲塔七基を準備する。
カウントダウンもなく、告げられる言葉。
「今」
私と羽黒の砲弾が敵艦を包みこみ、敵艦隊の旗艦が居ると推定される場所が鋭い閃光を発した。
弾着観測を行う必要もない。
見事な一撃、私の方は弾着観測を待ち、次弾を撃つために待機していた。
「神通、次弾は必要ありません。戦闘体勢を一時解除します」
2番艦から爆炎があがったのは羽黒が言葉を発したつぎの瞬間だった。
「まだ四体残って…る?」
私が言葉を終える前に連続した爆発音が響いてきた。「島風以外は満点ですね」
私の言葉にしない疑問を感じ取ったのか、羽黒は教えてくれた。
「突撃中に島風が不知火を追い越したようですから」
「叱らないの?」
「不知火がもうやってくれています。あっ島風を殴りました。これは仕方ないですね」
「慰めた方がいいかな?」
「あの島風ですよ?落ち込んでいるかどうか見てからにした方が…えっ?後ろから連装砲ちゃんで殴り返したあ?」
「あーそういう子だった」
無傷で戦闘には勝利した筈なのに何故か負傷者が出ている不思議。