妖精さん先導で私の艤装から出てくる避難民の人達。150人、一人も、欠かすことなく日本に連れて戻る事ができた。
今回の戦いは錯誤の連続で最初から最後まで思い通りになる事の方が少なかったが、結果は最善の物になったと言えるのではないだろうか?
そうとでも思わなければ、反省文50枚を明日までにという課題を鳳翔に押し付けられた鬱憤をどうやって晴らせばいいのか判らない。
正座から解放され私は羽黒と伴にそそくさと鳳翔の執務室を退去しようとしていた。
「羽黒、不知火達が入渠から戻ったら此方に顔を出すように伝えて貰る?其までの間、神通はお説教タイムです」
「えっ?」
羽黒は私の助けを求める視線に片手をあげて謝る仕草をして素早く部屋から退室していた。逃げられた?
「座りなさい神通」
「何故、私?」
「反省文、明日までに十枚」
「うっ」
「彼女が抱えている思いに気がついた後、あなたは何をしました?」
「人には触れられたく無い記憶もあると思うのよ」
「二十枚。放っておいたら化膿し、自身を傷つけるような記憶でも?」
「だからって触れていいかどうかなんて…誰が決めるのよ?誰にも決められない…」
本当にそうなの?
「彼女が望むなら?」
「それでは答えの半分ね。30枚」
「私やお母さんが望んでいるから?」
「おしい。40枚」
思い出して、お母さんの行動原理は?
「父さんも心配しているの?」
「50枚で手を打ちましょう」
羽黒が口には出さなくとも、何かを抱えている事には気がついてはいた。ただそれに私がかかわるのが正しいのかどうか迷っていたのだ。でも、もう迷ってはいられない。
行動を起こさなければ、50枚ではきかない反省文がまっているのは確実なのだ。
不知火達をつれて羽黒が戻って来たのは、それから直ぐの事だった。逃げたのではなく、少しでも私のお説教タイムを短縮する為に、頑張ってくれたのは明らかだった。
全員、荒い息を隠しもせずに整列する。
そうね。言葉にしないと伝わらない物がある。
行動した人と、行動しなかった人がいるなら、私は行動する人である事を選択する。例え後悔したとしても、私が後悔するのは行動を起こさなかった事ではない。
鳳翔が背中を押してくれなくとも、いつかは同じ選択をした筈だけど今は母に感謝しよう。
当たって砕けろ。勿論、砕けない方がもっといいんだけど
鳳翔から普通に労いと感謝の言葉を受け解散する。
「羽黒、この後、時間は取れる?」
「長門さんも一緒でいいですか?多分、神通と長門が聞きたいのは同じ事でしょうから」
「長門?」
「まえから聞かれていたんです。艦娘になる前に何があったのかって。余りにしつこかったから。この作戦から帰ってきたら話すと約束しました。帰ってくるつもり無かったから、それでいいと思って」