12月7日、オアフ島沖にある艦娘専用演習場でのアメリカ艦娘との合同演習。
羽黒、私、暁、響、雷、電の順番で海面を滑るように疾走する。
アリゾナからの艦砲射撃を避ける。
演習弾とは言え、戦艦級のは当たると地味に痛いのよ。
「何で重巡洋艦と軽巡洋艦、駆逐艦を相手に、あっちは戦艦、空母を出して来るのよ!?それにあっちの艦娘、多くない!?」
私の抗議の声に、羽黒が青く澄んだ空を見上げてから淡々と答えてくれる。
「やっぱり昨日の歓迎パーティーでフルーツサラダを私達だけで全滅させたのが効いているんじゃないかしら?」
「いや、だってあれって私達の学園では空母なら一人分の量じゃない?」
響がひょいと片足をあげて航空魚雷を器用に避けながら答えてくれる。
「アメリカの艦娘は、食事はともかく、デザートやお菓子関係は普通の人並みの量に押さえられているとエンタープライズが言っていた」
「私がいくらレディでもそれなら怒るかも」
暁の言葉に私は反論する。
「怒る対象が間違っている!私達を怒るのではなく、そんな理不尽な制限をした人を怒るべきで」
「そんな事は今はどうでも良いのです!今の彼女達はデザートを取られた赤城さんです」
あっ納得、それは死亡フラグだわ。
雷がふと思い付いたような顔で私達に言う。
「まあ、赤城さんなら、間違えたとか言って実弾混ぜてきたりしますけど」
「あっ」
何かを感じとった私達は、羽黒が言葉を出すその前にその場から逃げ出していた。
「ぜっ全艦っ待避っ!」
戦艦四隻、実弾混じりの砲撃。盛り上がり砕け散る海面。
頭から海水をかぶった艦娘達。
羽黒がいい笑顔で言う。
「これは、謝ったって許してもらえませんね」
あっ本気で怒ってる。
「てっここまでされて、謝れるかあっ!これ以上、アメリカ娘達になめられて黙っていられるのみんなっ?全員ぶっちめるよっ!」
羽黒の檄に私達はこれまで意識して使わないでいたゼロ距離戦闘術(拳と足とも言う)を解放する。
この日の演習が結局、どちらの勝利に終わったのかは関係者の誰も語ろうとはしない。
演習後の親睦会に参加した艦娘のほとんど全てがアオタンを顔に付けていたと言えば、私達の奮戦が判って貰えるのではないだろうか?
ニコニコと私達が提供した羊羮を丸かじりしながらホノルルが私の肩を叩いて話しかけてくる。
聞き取った英語を頭のなかで翻訳。
いいパンチだったが、私の蹴りはどうだった?
お前か!?
お腹を押さえていた手を相手に向けたとたん増した痛みにうずくまる。
「大丈夫?」
カリフォルニアが私をささえてくれる。
「それにしても、神通と羽黒は何か格闘技とかしているの?貴女達、二人でここにいる半数を倒すなんて。まさか、ここまでぐたぐたな展開になるなんてね。完敗よ。それにお菓子の差し入れありがとう」
演習終了後に、電と雷の提案で艤装にしまってあった日本直輸入のお菓子を提供したとたん空気が変わったのだ。
スナック菓子からチョコレートまで、質、量ともにかなりの量のそれは、アメリカ艦娘に分配され、それまでの仏頂面を笑顔に変えた。