ハワイに来てからの日課となりつつあるオアフ島沖合い対潜哨戒任務。
夜間哨戒から戻った私達の代わりに、カタリナ哨戒機が目の前の洋上から飛び立って行った。妖精さん達が哨戒機の窓から手を振ってくれる。
「神通!」
ホノルルが子犬のように駆け寄ってくる。
「今日も稽古つけて」
真珠湾奇襲から一週間、私達は今だハワイにいた。
無理をすれば(最悪、弾道弾で射出してもらうと言う方法もある)帰る事が出来ない訳では無いのだか、対潜戦闘と対空戦闘をアメリカの艦娘に指導する為に、残っていたのだ。
響と羽黒が私に飛び付こうとしたホノルルをはたき落とし説教を始める。
「姉さんに抱き付いていいのは、妹だけです」
「ホノルル?抱きつこうとするのはやり過ぎですよ」
その言葉の後、羽黒がホノルルの耳元に口を近づけ囁き声で告げる。
艦娘になってから飛躍的に増した聴覚でも本来なら聞き取れない程に小さな声。
「私と長門は、神通とキスをした事もあるんですからね」
ぶっなっ何を言い出すのよ
「はっ羽黒!誤解を招くような発言はしないで!あれはキスじゃなくて人工呼吸でしょう!」
「なっなんで聞こえているんですか!?」
羽黒、あなた、妖精さんが私達に作ってくれた対潜装備の事を忘れていたでしょ?
あーそうか、重巡洋艦には、使えない装備だからどんなものか実感出来なかった訳ね
どちらかと言えば、嫌われていると思っていた、ホノルルに懐かれまくってしまったのは、真珠湾奇襲での夜間対空戦で私がやらかした事のせいだと羽黒も響も口を揃えて訴えて来る。
多くの艦娘がパニック状態に陥る中、他の皆に言わせると私は一人冷静に見えたらしい。
「奴等は一匹見たら、100匹いると思いなさい!大丈夫!良く狙って、一匹ずつ確実に仕止めていけば、殲滅できるから!」
私の声に従い、その時、ホノルルは至近距離に迫ってきたGに高角砲と主砲を向けて射撃する。
面白いように外れまくる射撃。
迫りくるGにホノルルはかんぜんに硬直してしまったという。
終わりを半ば確信した彼女の耳元に囁かれた力強い声
「大丈夫、貴女は私が守るから」
彼女の前に庇うように立った私は、ただ一発の砲撃でGを消し去っていた、と言う。
何故、伝聞か?そんなの私が一番パニックに陥っていたからに決まっているじゃない。
その夜の事はほとんどと言っていいほどに記憶に無いのだから。
確かに、妖精さんから提出された対空射撃の射撃数と命中率が、私の知る限りでは最強に近い長門のそれを追い抜いていたり、私に救われたという、アメリカ艦娘の一部からは、お姉さまになってくれと頼まれたりしたが、そんなのは欠片も覚えてもいない。
ちなみにホノルルは助けた私の事を王子様みたいだったと言ってくれました。