ウェーク島への輸送任務についていた、レキシントンが無事に真珠湾に戻ってくると、私達の日本への帰還が真面目に検討されるようになった。
現在のハワイは、深海棲艦が現れる前と比べれば、格段に人口が減ってこそいるが、艦娘の拠点として整備された事で、決して少なくない人々がそこに暮らすようになってきていたのだ。
まして補給品の一部や、艤装用の精密部品は日本から定期的に訪れていた艦娘が運びこんでいたのだ、航路を再開する事が出来るかどうかは、ハワイという多分に戦略な拠点が維持出来るかどうかとも、同義語であった。
「先行偵察および横浜までの緊急輸送任務に私達、第2水雷戦隊も参加する事になりました」
羽黒が嫌々という顔を隠しもせずにホノルルを紹介する。
「その間の連絡および観戦武官として、ホノルルが当戦隊に帰属する事になります。また無事に横浜に着いた後の話ですが、ホノルルは学園に転籍する事が内定しています」
私はパクパクと口を開閉させていた。
言いたい事が多すぎて声にならない
「実はお姉さまに着いて行かせてくれなければ、親子の縁を切って家をでると父にお話しをしましたの。そうしたら、父が大統領をしている伯父様にお願いしてくれたようで」
「伯父様には、直ぐ、何とかしてみようと、約束して頂けました」
私が尋ねるように羽黒をみると答えてくれた。
「彼女の実家は銀行系の財閥です。多分、世界でも有数の規模と資産を誇る」
オアフ島を出れば解放されると思っていたのに。どうして?
ホノルルが聞きたくもない情報を開示してくる。
「お姉さまの事は、生涯私がお仕えするご主人様だと父に話してあります。お姉さまがご都合のいい折りに是非とも挨拶にお伺いしたいと言っておりますが、いかがいたしましょう?」
「こっ断って下さい」
「かしこまりました。父には二度とお姉さまを煩わさないようにきつく言っておきますので」
一礼して退室しようとするホノルルを慌てて私は呼び止める。
幾らなんでも、これ以上、状況を悪化させてどうする?
「…待って気が変わったわ。ホノルル、近い内に此方からお伺いすると伝えてもらってもいいかしら?」
「宜しいので?」
無言で頷く私。
毒くらば、皿までなんて言葉が一瞬、頭の中に思い浮かぶ。
本当の事を話したなら信じて貰えるものかしら?
…駄目ね、私なら信じない。
羽黒と響が余計な事を呟いてくれる。
「確か、ハワイは同性婚を認めていましたっけ?」
「出来たらあの人をお義姉さんとは呼びたくないんだけど」
「そんな事があるわけないでしょう!?」
うん。多分、彼女にキスをされた時点でこうなる事は決まっていたんだ。
ホノルルの父と出会いそこで何があったかは割愛する。結果だけ話すなら、結婚する事だけはかろうじてではあるが避けられた。
代わりに、ホノルルの婚約者という称号がついてきてしまったが。
ハワイの州法がどうなっているかは調べていません。あくまでもフィクションの世界のハワイです。