妖精さん達に会ってから二週間、私は、彼女達と会話する王女殿下の言葉をサンプルデータとして取り込みつつ、この世界についての理解を深めてきた。
王女殿下の頭の上からこの世界に到達した時点からの視覚と聴覚を使用しての記録を再検分、再検証する。
強制的に次元転移させられるなり、受けたハッキング。
ほとんど瞬間的に私は全ての外部パスを切断していた。
同時に対抗戦術として、私に侵入してこようとした正体不明の敵性思念体を罠にかける。
通信機器制御系統の回路を本体から物理的に切断、切り離した通信デバイスをシステム本体に偽装させ、本体制御デバイスエミュレータを走らせる。
元艦隊教導部隊旗艦、現教育護衛隊の特級サーバーダインを甘く見られては困ります。通常のダインが三日と持たず音を上げた王女殿下づとめを5年間、務めたのですよ?王女殿下と暮らした5年間の方が、10年務めた教導部隊より遥かに経験値が積め、戦闘経験さえ積めるなんて私自身、考えてもいませんでしたが
通信デバイスへの一方通行のデータバスと制御システムへのアクセスポートに見せかけたロジックボム。
私を攻撃している敵の意識体あるいは何物からか送られたオートボットを仕留め損ない、システムが乗っ取られた場合の可能性をも考慮に入れて体組織の制御中枢にデッドマンスイッチ式の物理ボムとロジックボムを生成する。
私が意識を失ったり、死んだり、システムから切り離された場合、自動起動する設定にする。
本来なら、王女を守る為に私の兵装を物理展開するべきなのだけど、端末の制御を奪われたら敵に攻撃手段をプレゼン卜する事になる以上、自力でしばらく頑張って貰う事にする。
まあ、最悪の場合には、EMPパラージを大出力でかければ、半径50キロ以内の私以外の電子生命体、電子機器は軒並み全滅させられるのだから、実の所、ダインの脅威はさほどのものではないのだ。
ただ下手に王女殿下に声をかけ、安心されてしまえば、本当に最終手段を取らざるをえなくなるから。
そうなれば、私が苦労して集めたデータベースとその知識は全てお亡くなりになる。ましてや王女殿下と会ってからの5年間の記録は何物にも替えの効かない物なのだ。王女殿下には出来る限り自力救済を期待しよう。
幸いにもこちらに近づいて来ている未確認の竜がいるようだし、あのお人好しの種族が間違っても困っている人を放って置くとも思えないから。
攻撃を行なってきた敵を通信制御デバイスごと物理的に破砕した私は愕然とする。
通信機器制御中枢に、一般言語デバイスを移設して、中枢制御デバイスから一般言語デバイスを削除した大馬鹿者がいる。私の出した依頼は助長度、生存率を上げる為の言語エンジン複数の設置だから、指示の一部だけを曲解したとは言え、まるで狙ったような間の悪さ。
これでは王女殿下を心配させてしまう。
私が自分の手で言語デバイスを1からくみ上げ終わるのは神通に密航がばれて突き出される未来を待たなくてはならなかった。
王女殿下を救出してくれた竜の艦隊。
神通と呼ばれると後で知った艦娘に助けられ、吹き飛ばされた煽りでその艤装に到達し、それにしがみつく私。
二人現れた竜に軽々と助けられ艤装の中に避難させられる。
私が守護すべき王女殿下、彼女は気付いていないが、自称妖精さん、彼女達は私達の世界で言うところの竜である。
気まぐれでありながら、義理堅く、悪戯好きなのに、どんな生き物にも屈せず優しい親愛なる隣人も、この世界でまとった姿では威厳も何もあったものでは無い。
だが、その内包するエネルギーは私が知るどんな竜と比べても遜色の無いものだ。
会話のすべを失い、王女殿下の安全を確保できた私は敵の正体を知る事に全力を上げた。
その存在に私が気が着いたのは偶然だった、私のいた世界では忘れさられていた古い存在。今となっては伝説ともなっている概念。
人や物につき、悪意と破壊を世界に撒き散らした精神寄生存在、神や悪魔として知られるそれがこの世界で、生きている可能性に