あなた方は気を失って起きた時、お風呂にはいっていた事はあるだろうか?
そんなに可哀想な子を見るような目で見ないで欲しい。私だって自分が何を言っているのか良く分からないのだから。
ズキズキする頭を抱えて裸の私が目を開けた時、最初に見たのは、4頭身、小指の先程の背の高さの、今はなき言葉になってしまったミニチュア看護婦さんの集団。泣き顔の律子改め、自称長門。
予想以上に私はダメージを受けているようだ。起きたと思ったのに幻覚が見えるなんて。
許すまじ、ながもん。お前なんか、一生、ながもんで十分だ。
「すまない…本当に良かった…目を覚ましてくれたのか。神通、お前の好きに呼ぶがよい。そなたが死にかけた時、二度と私は人に手を上げぬ事を誓ったのだから」
死にかけた?あと、神通って誰?
「長門、後は私から説明するから部屋に戻って休みなさい。もう2日も寝てないでしょう」
「鳳翔。嫌な事を押し付ける。済まない」
「大丈夫、この程度で潰れるようなやわな教育はしてないから」
お母さんの声?
森林の色をしたお湯に全身を浸し、酸素マスクと何本ものケーブルとチューブを付けられた身体はだるく、指を動かす事さえ困難に思える。
私は頭の後ろから聞こえてくる声に疑問を持ちつつも振り返ることさえできずにいた。
「生体維持装置と活性化装置、外すね。ちょっと痛いかもしれないけどすぐだから」
痛いかもしれない?待って?今の声が母さんなら、痛いってのは、っ!
「っ!!」
声を出す事さえ出来ない程の激痛に襲われ、のたうちまわる私、浴槽から勢いよく溢れ出すお湯。
様々な器具を持って、走り回っているちっちゃな少女達が嬉しそうな声を上げて押し流されていく。
あー、悪い事をしてしまったかな?びしょ濡れじゃない。
そんな私の思いもお母さんの次の言葉を聞く迄の命だった。
「今のが楽しかった?もう一度して?うーんどうしようか?」
「まっ待って!それってしゃれにならないから!」
さっきまでの倦怠感が嘘のように消えた体で慌てふためいて立ち上がった。
勢いよく振り返った私は、ほぼ半年ぶりに母親と対面する事になった。
「…何のコスプレ?」
ドレスのようなヒラヒラした服しか着ているのを見た事のなかった母親の和装は、それだけで私的には違和感の塊以外の何物でもなかった…でも似合ってる。
「お父さまのお手伝いでね」
大きなバスタオルを私にかけてくれた母は、小さめのタオルで私の私の髪から丁寧に水気をふき取ってくれながら起こった事を話してくれた。
母が妖精さんと呼ぶ小さな生き物の事。そして私達の父親である人物のこれまでの奮闘を。
海上自衛隊、造船技術士官、佐藤 譲、それが私達の父親だ。
大戦中にいた平賀 譲とは異なり、譲りのゆずると揶揄されていた程に影が薄く人畜無害を地で行く人物。
深海棲艦がこの世界に現れなければ、その評価が覆る事はなかった筈の人、そんな人物が、狂気にも似た計画に係わる事になったのは全て母親の為だった。