「ヲッ」
「をっ?」
私は思わず首を傾げた。
そんな私に思わぬ場所から声をかけられた。
被り物とばかり思っていたクラゲの口が開き綺麗な日本語を話し出す。
「失礼しました。ラタン=ヲ王女殿下に代わりまして助けて頂いたお礼と感謝を捧げさせて頂きます」
ポカンとした顔で私、妖精さん、王女殿下が喋るクラゲを見つめる。
ちょっと待て、何で王女様まで驚いているんだ?
早口の小鳥の囀りのような会話を交わす王女様とクラゲの被り物。
あっクラゲの奴、王女様を泣かせた。
アッパーにフック、キックにエルボー、王女様にしとくのが惜しいくらいの戦い慣れした攻撃。その攻撃の鋭さといい、躊躇いの無さといい、うちの妹といい勝負。
その攻撃をことごとくかわし、いなすクラゲ。
まあこっちのクラゲは戦闘のプロね。恐らく鳳翔の同類で間違いない。
なら、私がどちらに味方をするかなんて決まっている。
後ろから、クラゲをとっ捕まえる。
「何故?」
疑問の声に後ろから囁く事で答える。
どこが耳だかわからないから適当だけど
「いいから、一発くらい殴られてあげなさい。例え貴女が正しい事をやっていたのだとしても女の子を泣かせてしまったら責任をとるものよ」
「理不尽です」
「王女様にバラすわよ」
「はっ?」
あっこいつ鼻で笑いやがった。
なら、遠慮なく
「データストレージ」
ピクリと触手のような物が震えた
「王女殿下の動画と写真」
「おっ王女殿下の筆頭メイドとして記録を残すのは王や王妃にも依頼されている。正式なお仕事です」
「入浴」
完全に凍りついているクラゲ。
コールドリーディングの応用に引っかかり面白いほど簡単に墓穴をほってくれた。
「わっわかりました。一発だけですよ。後、王女殿下にはくれぐれも内密に」
「大丈夫、それ以上は必要ないから」
一発いいのをもらって追撃を警戒するクラゲに王女様が抱きついて泣き出す。
まあ、こうなるとは思っていたのよ。
王女様がしゃべっている言葉の意味は判らなかったけど、嬉しい気持ちは分りすぎるくらい良く分かったからね。
艦隊指揮用ヲ級サーバーダイン(本人は王女殿下直属のメイドだと言い張ってはいるが)が私達に語った王女様の現状と救助要請は私達を心底、困惑させた
とんでもない嘘と断じたいのに、そう出来ない。
何より、心あたりがありすぎる。
急に増えた深海棲艦の数と種別ですって?
「最前の深海棲艦による奇襲攻撃の原因が、王女様救出の為に組織された救助艦隊だったという可能性に賛成の方は挙手お願いします」
羽黒の質問に対して私を含めホノルル、妹達、ついでに王女様とヲ級、全員の手が上げられる。
うん。王女様は私達の言葉がまだ良く分かっていないから員数外でいいわね。
羽黒の質問に王女様に後ろから抱き抱えられた状態のヲ級はよどみなく答える。
「救助艦隊がハッキングを受けた可能性?間違い無く受けています。そうでなければ、敵味方識別もされていないような、この世界の艦娘を攻撃する筈がありませんから、それに潜水艦ですか?これは私達の世界には居ない存在です」
ヲ級は羽黒の質問に今度は暫く答える事をためらっていた。
「全艦隊が乗っ取られたか?私の教え子達であれば、中枢制御まで乗っ取られるような子はいない筈です。艦隊旗艦でもない戦艦までの艦では余程の技量と経験がなければ侵入されて乗っ取られていたとしてもヲ級以上の艦であれば、異変に気付いた段階で逃げる事が出来たと信じています」