ラタン王家との外交樹立、人類側にたっての参戦表明。
戦いの中、ギリギリの所まで押しこまれ、先の見えない閉塞感に囚われていた世界の人々に対して与えられた嬉しいプレゼント。
そして失われたと思われていた艦娘達の大量復帰。
当初、敵と思われていた深海棲艦上位がほとんどラタン王家に連なる者達であり、彼女達はレ王女と同様に敵に乗っ取られる事なく、乗っ取られたダインと、襲いかかって来た艦娘達を、命を奪う事もなく苦もなく殲滅してのけたのだった。
レ王女が外交の樹立を世界に向けて表明し、洗脳されたダイン災害への共闘をよびかける事で一人、二人とレ王女の元に彼女達は集い、彼女達に捕虜にされた、或いは救われた艦娘達も戦いに復帰していた。
そんな世間を浮きたたせている世情をよそに、学園では今日も今日とて恐怖と暴虐の嵐が吹き荒れている。
響の恐怖に歪んだ表情。8インチ三連裝砲塔2門から放たれた砲弾の直撃を受け艤装が弾け飛び、彼女は空中に投げ出された。
諦めに似た色を浮かべた響の瞳が、次の瞬間に驚愕に大きく見開かれた。
22インチ魚雷が空を飛び、彼女のお腹に突き刺さったのだ。
第六駆逐隊、最後の生き残りが爆散して体感ネットワーク演習は終了した。
リン公女が私に向かって得意気に手を振ってくる。
「神通!見ていてくれました?夕立がやっているのを見て真似してみましたの」
最近の流行なのか、魚雷を空中に力まかせに放り投げて直撃させるのが流行っている。魚雷はミサイルでは無いんだけど。
私は苦笑して手を振り返す。
つい先日、私の脚に着いた艤装の魚雷発射管が故障した。その時、チャンスとばかりに襲いかかってくる夕立に対して、故障した発射管をパージし、外れたそれを蹴りつけ、夕立ごと発射管を砲撃して演習に勝った事がある。
たしかその後からだよね。夕立が魚雷をミサイル替わりにしだしたのって。
レ王女にバレたら淑女教育がいっそう激しく厳しくなりそうだから、絶対に言わないけど。
淑女教育とは名ばかりのガチンコの戦闘訓練をかせられて一週間、リン公女には勝てるようになった私だが、レ王女には、今だ一人では勝てる気もしなかった。
リン公女、或いは羽黒と一緒なら何とか戦えるレベル。
レ王女と互角に戦えている長門はどこかおかしい。
その日も最後にはラスボス二体にボロボロにされる私達。
何処の誰がレ王女と長門を組ませる何て鬼畜な事を考えたのよ?
鳳翔か父か、どちらにせよこんなの無理ゲーだと言った私に鳳翔はたった一人でレ王女と長門に対して完勝して見せてくれる事で私の言葉を否定してくれた。
それを見ていた私達は開いた口が塞がらなかった。何というチート。
疲れ切った私は学園から与えられた部屋のドアを開ける。
満面の笑みを浮かべ駆け寄って来る懐かしい笑顔。
「ヲッちゃん?」
何が起こっているのか、一瞬、理解出来ずに硬直してしまった私。
ヲッちゃんは外交使節と言う名のアイドルとして、那珂ちゃんと一緒に世界各地を巡業していた筈。
その時、ホノルルがヲッちゃんの警護を自主的に引き受けてくれて私から離れてくれていたのだから。ある意味、私にとって嬉しい誤算だったのだから、間違いない。
そのホノルルがメイド服でヲ王女の元に控えている。
嫌な予感しかしない。
そんな私の予感は裏切られ無い。
「わたしも姉様達と神通と一緒に戦います」