神通の憂鬱   作:zenke

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かなりグロテスクな表現があります。




蠢き交り合う。

蛇の交尾のように深海棲艦同士がお互いの体を貪り交り合う。

そこに蠢く生き物達に知性は無く、それらは飢えと憎しみ、そして何物かに与えられた殺戮への抑えきれない欲望だけを感じている。

 

絶え間なく続く密やかな調子の外れた嗤いのような音。

粘液と肉が交わる濡れた音。

溺死した人、そして沈められた艦娘も、その場所に引き寄せられ意識を黒く染め替えられる。

破壊された艤装に妖精は宿らず、艤装に妖精がついていない艦娘はただの人の肉でしか無く、抵抗する事さえ出来ずに新たな体と心を受肉する。

 

深海棲艦と死人、艦娘と深海棲艦、深海棲艦同士、ありとあらゆる組み合わせによる機械的な交わり。

そこから絶え間なく産みだされる新たな深海棲艦。

狂った笑い声が響き渡る。

水膨れした溺死者の死体が突然ビクリと動き、白く濁りきった瞳が左右別々の動きをする。

 

深海棲艦が乱暴にそのかりそめの命をえた死者を引きずると、腐乱した左手が簡単に外れ海中を漂いだす。

 

漆黒の闇を時たま照らす蛍光虫や深海魚の光が、その溺死者が唯一の例外では無い事をあきらかにする。

 

海中に漂う死体の部分、手や足、内臓の一部。

 

それらを喰らい、癒着させ、まるでブロックであるかのように新たな形を作り出す人ならざる物。

 

地獄の工廠、そんな言葉が頭の片隅をよぎった。

 

吐き気に耐えられずトイレに駆け込んだ羽黒が戻ってくると、廊下から室内をごわごわと伺う。

映像が終了している事を確認して露骨にホッとしたような顔で部屋に入ってくる。

 

いつもならいい玩具にされるような羽黒の子兎じみた行動を誰もからかわない。

 

レ王女とヲ級から見せられた映像は、それほどの衝撃を私達に与えてくれた。

 

回収されたダインの一部に映像記憶部分が残されている物があると聞いたのが一昨日の事、そのダインからヲ級がサルベージした記憶映像。

 

その映像は、薄々私達が抱いていた懸念が現実の物である事を知らす物に他ならなかった。

 

ラタン王家の王女達から話しを聞き、彼女達の世界で行方不明となったダインの数と世界に出没する深海棲艦の数が余りに異なる事に疑問を抱いて数日。

 

撃破した深海棲艦は特に目新しい物でなければ放置していた私達に下された命令が、出来る限り無傷に近い深海棲艦の確保だった。

 

当然の様に私と羽黒、島風と舞風、不知火と叢雲が呼び出される。

手渡される、思い出深いとも言える手作り感溢れる格闘戦用艤装。そして盾に極太のピックを取り付けたパイルバンカーとしか思えないような装備。

レ王女からの言葉は簡単かつ逃げ出したくなる物だった。

 

「説明した通り、脊椎にこのパイルバンカーを打ち込めば、動けなくなる筈だから、生体脳は出来る限り傷をつけずに持ち帰ってね。いいお土産を期待している」

 

そんな軽口を叩いていたレ王女が青ざめた顔で映像が映されていたホワイトボードを睨み付けている。

 

「…許さない」

 

誰の言葉だったのかは判らない。

判る必要も無い。その言葉は室内にいた全ての人々の思いだったのだから。

 

 

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