鳳凰の舞姫   作:天神神楽

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小説を書いていると、他のを書きたくなる。そういうことです。


入学編
舞姫、入学


「深雪……」

兄と別れた深雪は、講堂の前で小さな声で呼び止められた。

振り返って、視線を少し下に向けると、そこには小柄な少女が無表情でこちらのことを見つめていた。その少女は小柄ながらも美しく、さらさらと腰元までたなびく黒髪もあいまって、人形のようにも見える。とても可愛いらしいお雛様といった表現もぴったりである。一度微笑めば、たちまちに男性を魅了し、女性をも虜にすることは間違いないだろう。

「やふー」

「舞姫(まいひめ)、あなたこっちにいたのね。そちらの用事は終わったの?」

「ん。だから、深雪のとこに来た」

「……相変わらず手際がいいわね。もぅ、なんだか恥ずかしいわ」

そう言いつつなぜか舞姫の頭をなでる深雪。舞姫もその手を払うわけではなかったが、何となくその表情がむーっとしている。

「ふふふ。では入りましょうか。静かに……ってあなたには不要ね」

舞姫の口数の少なさを承知している深雪は、そこで会話をやめると今度は鍵屋の手をとった。

講堂に入ると、式の準備をしている生徒たちが何人か動いていた。その中心で指揮をとっているのは小柄な女子生徒であった。とはいっても、舞姫よりは大きいが。

その女子生徒は深雪が入ってきたことに気がつくと、笑みを浮かべながら近づいてきた。

「おはよう司波さん。早く来てくれてありがとうございます。それと、あなたは……凰(おおとり)舞姫さんね」

総代である深雪のことは勿論、舞姫のことも知っていた様子の彼女はこの第一高校の生徒会長七草真奈美である。小柄ながらもスタイルはよく、「七草」の名に負けぬ存在感を持っていた。

「おはようございます七草会長」

「おは……」

「舞姫、きちんと挨拶しなさい」

「……おはようございます」

深雪に窘められて、少し唇をとがらせながらもう一度真奈美に挨拶をする舞姫をみて、真由美はクスクスと笑みを浮べた。

「ふふふ。本当の姉妹みたいね。これからよろしくね、学年次席さん?」

「ん、がんばる」

グッと拳を握る舞姫。声と表情とは裏腹に、やる気はあるようだった。

「七草」

「十文字君、どうしたの?」

そんな三人の所に、一人の男子生徒が声をかける。その男子生徒十文字克人は、高校生離れした肉体と圧力を発していた。

深雪はその姿に少し押されていたが、深雪よりも小柄な舞姫は全く動じていなかった。それどころか、十文字の服の裾をチョイチョイと引っ張っていた。

「む? なんだ?」

「ちょっと、舞姫!?」

深雪は慌てて舞姫を止めようとしたが、その手をするりと避け、そのまま十文字に声をかける。

「部活連の会頭さん?」

「あぁ。確かにそうだが、何か用か?」

突然話しかけられたにもかかわらず、十文字は動じず舞姫に返事をする。

「うん。風紀委員に、推薦して?」

「風紀委員に?」

「舞姫!?」

流石にこの言葉には、十文字も目を見開く。深雪に至っては、どうにかして止めようと舞姫を抑えようとするが、それを器用にスルスルと避け続けていた。

「……その辺にしておけ」

十文字の言葉に、それまでちょこちょこと動いていた舞姫はピタリと止まる。それを追いかけていた深雪はいきなり過ぎて止まれず、舞姫に激突したが、舞姫はびくともしなかった。

「ほう……。まぁ、風紀委員会については今即答は出来ない。少なくとも、その資格はありそうだがな」

「じゃあ、放課後、試験をして欲しい」

「舞姫!」

無理矢理な舞姫の物言いに、深雪はそろそろ彼女のことを叱ろうとした。しかしそれを止めたのは真由美と十文字であった。

「いいじゃない。実力者は大歓迎のはずよ。それに、摩利も補充が追いつかないってぼやいてたしね。ね、十文字君?」

「あぁ。渡辺にも俺から伝えておこう。新入生の見学を終えたら、第三演習室に来い。それでいいか?」

「ん。ありがと」

十文字の許可に、舞姫はどこか満足そうに頷いた。が、その頭に深雪の手にガシリと捕まれた。

「舞姫、お話があります」

「あぅ……」

「では、会長、会頭。私達はこれで。失礼します」

二人に頭を下げ、舞姫を引きずりながら、講堂を出て行った。その際、舞姫は引きずられながら真由美と十文字に手を振っていた。

そんな二人を見送った後、真由美は知らず知らずのうちに苦笑を浮かべていた。

「何というか……」

「今年の新入生はイロモノ揃いだな。頑張れ、七草」

「他人事みたいに言わないで頂戴……」

「他人事だからな」

 

 

 

深雪の説教にぐったりとしながら、舞姫は入学式を終えていた。

式が終わった後、舞姫は深雪に捕まらないために、急いで教室に向かった。

しかし。

「あら、随分楽しみにしていたのね。同じクラスですし、一年間よろしくね?」

深雪と舞姫は同じAクラスであった。

「逃走中。私はハンターには捕まらない」

「あっ、待ちなさい舞姫!」

深雪を見つけた瞬間、舞姫はくるりと反転し逃げ出した。それを追いかける深雪だが、小さい体でチョロチョロと生徒の間をすり抜けて逃げ回る。それを追いかける深雪も生徒達の間を通ることとなり、つかの間Aクラスは幸せに包まれた。

「し、司波さ」

「邪魔」

「ぐぼぁっ!?」

この機会を逃すまいと、果敢に深雪に話しかけようとする男子生徒の腹を、反転した舞姫が思いきりぶん殴る。あわれ、男子生徒A。

「舞姫! もう、お昼ご飯抜きにしますよ!」

「自首する」

深雪の言葉に舞姫がピタリと止まる。その光景に、舞姫と深雪の追いかけっこを眺めていた生徒達は何とも言えない空気になる。

「じゃあ、はやく見学しにいこ」

「……カリキュラムを組んでからよ。それに、今から行っても、誰もいないわ」

「じゃあ、組む」

それだけいうと、舞姫は自分に割り振られた机に座り、もの凄いスピードでカリキュラムを組んでいった。そして、瞬く間に終わらせると、一人教室を出て行った。

「だから、今から行っても仕方ないと言っているのに……。皆さん、ご迷惑をおかけしました」

深雪が頭を下げると、ちょうど、教師が教室にやってきた。

「皆さん席について下さい……おや、一人いないようですが?」

皆が席につくと、一つ席が空いていることに首を傾げる教師。

「あの、その凰は、カリキュラムを組み終えて先に見学先に行ってしまいました」

そのことを深雪が申し訳なさそうに説明する。しかし、教師は怒ることなかった。

「なるほど。随分と優秀な子もいるようですね。ともかく、やることを終えているのならばいいでしょう。皆さんもカリキュラムを組み終わったら席を立っても構いませんよ。もし分からないことがあれば、挙手をして下さい」

淡々と話を進める教師。その通りに早めに切り上げて席を立つものもいた。全員が終えると、見学に移った。

しかし、深雪が行った見学先には舞姫はいなかった。笑顔を浮かべながらも普通ではない雰囲気を放っていた深雪に、他の生徒は遠巻きにしか近寄れなかった。

そして、その当の本人はというと。

「おぉ~」

「……舞姫。深雪達の方に行かなくていいのか?」

「今行ったら、凍らされる」

逹也達と工房見学をしていた。

「その、逹也君。その子は?」

エリカたちは、逹也の周りでうろちょろする小さな少女に困惑していた。

「あぁ……小さい頃からの知り合いだ。凰舞姫。これでも同い年の一科生だ。同い年のな」

大切なことなので二回言った逹也。紹介されながらも、それを聞かずに工房の様子を張り付くように見つめていた。

「……え? 同い年?」

「こんなに可愛い子が?」

「……言いたいことは分かるが、事実だ。これでいて学年次席だぞ」

逹也が告げる衝撃の事実に、一同絶句である。他の生徒からも注目されていながら、全く気にすることなく、最後まで上級生の行う作業を見つめていた。

そのまま舞姫は逹也達と共に昼食を食べることにした。

そして、またしても舞姫は周りから注目されることとなる。

「舞姫ちゃん、その」

美月は、舞姫の前に置かれるメガ盛りご飯を見て言いづらそうにしていた。

そんな美月に一言。

「米食え米」

「「「…………」」」

舞姫と初対面のエリカたちは絶句するしかなかった。

「お兄様!」

そんなところに、深雪が駆け寄ってきた。同時に舞姫が机の下に消えた。

「あ、あぁ。深雪か」

「ご一緒させていただいてもいいでしょうか?」

「もちろんよ。さ、ここに座って」

エリカ達も異存はないようで、席を空けようとしたが、それを止めたのは深雪の後ろにいた一科生の生徒たちであった。

「司波さん、こんなところじゃなくて、もっと広いところで食べようよ」

その男子生徒森崎瞬は、朝舞姫にぶん殴られた生徒である。

「で、でも私はお兄様と」

「そこの二科生のみんな、すまないが、そこをご!?」

どいてくれ、という前に、下からのアッパーカットを喰らい、最後まで言うことが出来なかった。倒れそうになるのを後ろの生徒に受止められる森崎。一触即発の空気になりかねない事態だったが、腕を振り上げて停止している舞姫のせいで、どうすれば良いか分からないといった空気になっていた。

「……舞姫、何をしているの?」

もう呆れたという調子で舞姫に尋ねる深雪。舞姫はいつの間にか持っていた丼のご飯を食べながら言い放つ。

「米食え米」

「「「……………………」」」

もう食堂が沈黙に包まれてしまった。

「ともかく、私が食事中。何人たりとも犯すことは許さん」

言葉は凜々しいのだが、ほっぺたにご飯粒を大量につけているので締まらない。結局、気勢をそがれた一科生たちは不満げながらもその場を去って行った。

「これは……舞姫のお手柄、なのかしら?」

エリカもこれをお手柄とは言いがたいようであった。舞姫はそんな視線も気にせず、お替わりをもらいにカウンターに移動していった。

 

 

 

昼食後、深雪の裏の裏を読んで逃げ回って、会わないように午後の見学を終えた。

因みに、午後は深雪と同じ真由美の授業を見ていたのだが、舞姫はこっそりと真由美のとなりで見学していた。目立たないように。もちろん逹也は気付いていたのだが、それを深雪に伝える手段はなかったのである。

そして、放課後となり、舞姫は真由美と一緒に、第三演習室にいた。

「もぅ、本当なら一年生は入っちゃ駄目だったのよ」

「これも隠密行動の一環。言い換えれば、特訓」

「何事も言い方によりけりね。それより準備は大丈夫なの?」

真由美が心配するのも無理はない。舞姫が試験相手に指名したのは、簡単にいく人物ではない。

「もち。常在戦場」

「待たせたな。こいつ等を捕まえるのに手間取った」

舞姫がグッと親指を立てると同時に、演習室に三人の生徒が入ってきた。

風紀委員である辰巳鋼太郎と沢木碧、そして風紀委員長である渡辺摩利である。

「さっき突然呼ばれたんすから、無理ってもんですぜ、姐さん」

「まぁ、トイレの前で待ち構えられているとは思いませんでした」

「うるさい。私が呼んだら、三秒で来い。それと、姐さんと呼ぶなと言っているだろうが!」

摩利と辰巳がじゃれていると、十文字もやってきた。

「俺が最後のようだな。遅く来て悪いが、早速始めてくれ。渡辺」

十文字に声をかけられ、摩利は辰巳のことを離す。

「分かった。それにしても急だな。随分と可愛らしい挑戦者がいたものだ」

摩利は袋から竹刀を取り出しながら舞姫の体を一瞥する。流石に140cmに満たない少女相手に全力を出すのははばかられる。そんな心配を、舞姫は行動で示す。

「このアメちゃん、おいし」

「んなっ!?」

いつの間にか摩利の眼前から消え、摩利の制服のポケットからアメを抜き取り勝手に食べていた。

舞姫の挙動は摩利だけでなく、辰巳や沢木、そして真由美や十文字でさえも追うことが出来なかった。

「これでも、ダメ?(コロコロ)」

アメで頬を膨らませながら、首を傾げて問いかける舞姫。そんな舞姫の不敵な仕草に、摩利は怒るでもなく、反対に笑みを浮かべていた。

「面白い。姿形に惑わされるだなんて、私としたことが、慢心が過ぎていたようだな。十文字、お前が審査をしてくれ」

「そのつもりだ。部活連推薦候補として、凰の実力は俺が計る」

十文字が舞姫と摩利の間に立つと、摩利は竹刀を構え、CADの用意をする。対して、舞姫は、自然体のままで、摩利のように構えてはいない。

「ふむ、凰、それでいいのか?」

「ん。万事問題ナッシング」

舞姫の言葉を聞き、十文字は腕を高く上げる。

「始め!」

十文字の合図と共に、摩利は自己加速術式を即座に展開し、舞姫に突っ込む。それを舞姫は避けるのではなく、摩利の竹刀の柄に手を寄せ、そのまま摩利の足を巻き込もうとする。

しかし、摩利もそれには掛からず、空いている手で舞姫の腕を掴み、腕にもかけている加速術式を用いて、無理矢理に舞姫を引きずり出そうとする。舞姫はそれを振り払うのではなく、前に踏み込み、回転することで摩利の腕を払い、そのまま肘鉄を摩利の鳩尾にたたき込まんとし、それを外側に回転して躱す。それを逃さず、舞姫はさらに回転し摩利の襟を掴み、そのまま上方に吹き飛ばした。摩利は、空中で姿勢を整えると着地をしようとしたが、それを逃すはずもなく、舞姫は摩利の着地に合わせて、摩利の足下に蹴りをたたき込んだ。

「ぐぅっ!!」

空中での無防備の状態では、流石の摩利でも踏ん張ることは出来なかった。足下を思い切り払われ、背中から地面に落ちた。その上に舞姫は乗っかり、両腕をがっしりと押さえた。

一連の攻防の激しさに、見学していた辰巳と沢木は感心していた。そして、審判をしていた十文字は現在の状態を見て、決着と判断した。

「そこまで! 勝者、凰」

十文字が宣言をすると、舞姫は摩利の腕を放す。そして、自分が蹴った摩利の足を撫でていた。

「なでなで」

「凰? なにを?」

「いや、本気で蹴っちゃったので。いたいのいたいのとんでけー」

舞姫の素っ頓狂な行動に、辰巳や沢木は拍子抜けしてしまった。それは摩利も同様で、先程までの苛烈な動きとは真逆な行動に、思わず吹き出してしまった。

「まったく、龍かと思えば、とんだ子猫のようだな」

「ちがう」

「は?」

摩利の言葉に首を横に振る舞姫。

「私は龍じゃなくて鳳凰。正確には凰。メス。ついでに舞姫」

自分は龍ではなく鳳凰だと、大言壮語なのか違うのか分からないことを言う舞姫。そんな舞姫の頭を、摩利は思わず撫でてしまった。

「ふにゅ……」

「これは……破壊力があるな」

「姐さん……そんな趣味が……」

「うるさい! ぶった切るぞ!」

またしても騒ぎが起こりそうだったので、その前に十文字は宣言をする。

「渡辺。部活連は鳳を風紀委員として推薦することに意義はない。お前はどうだ」

辰巳に飛びつこうとしていた摩利は、十文字に声をかけられ、動きを止める。

「愚問だ。真由美に盗られては堪らないからな。辰巳、沢木。お前達も異論はないな」

「もちろんですよ。むしろ大歓迎だ」

「私も同じです。鳳さん、是非マーシャル・マジック・アーツ部に入らないか? 君ならすぐにレギュラー、いや、全国優勝も狙える」

辰巳は言わずもがな、沢木は部活への勧誘までしていた。

風紀委員会のメンバーの様子をみて、真由美、摩利、十文字の三巨頭は頷き合う。

「では、鳳舞姫。お前は今日から私達風紀委員会の仲間だ。よろしくな、舞姫」

摩利に手を差し出され、舞姫はその手を小さな手で握り返す。

「ん、よろしく」

 

 

 

摩利との戦闘を終えた後、舞姫を新たに加えた風紀委員達と、真由美は校門の方に急いでいた。

「全く……初日から問題を起こすなど……今年も元気なヤツで一杯だな」

「むしろ、恒例行事ね」

「生徒会長のいうことではないだろうが……」

真由美の言うことに摩利はため息をつく。一行が急いでいるのは、一科生と二科生が校門近くで言い争いをしているとの報告があったためである。まだ問題行動は起こしてはいないが、それも時間の問題である。

「あ、そだ」

走っている中、舞姫が不意に呟く。

「どうした舞姫?」

「私もCAD使って大丈夫?」

一応風紀委員として三巨頭に認められ、承認されている。しかし、それもさきほどのことなので、CADを使って良いのかよく分からなかったのである。

「ふむ……今は緊急出動だ。許可しよう。ただし、やり過ぎるなよ」

話している内に校舎から出た。すると、校門付近からサイオンが発動する気配がしてくる。

「む、不味いな」

「チャカ……」

「は?」

舞姫が何かを呟いたかと思うと、摩利の隣から姿を消した。

「振り回してんじゃねぇ」

「ぐふぉぁっ!?」

そして、CADを取り出し魔法を発動しようとしていた森崎の横っ腹をドロップキックで蹴り抜いていた。摩利の言うとおり手加減はしていたようで、門の柵に激突する様子はなかったようだが、それでも、地面に沈んでいた。

突然の出来事に、一瞬止まる一同。しかし、自分達の意見を代表していた森崎が倒され、それに激高した一科生達が一斉にCADを起動する。

「ダメ!!」

それを危惧したツインテールの少女が止めようとCADを起動させようとすると、そのCADを真由美が放った弾丸が打ち抜いた。

「きゃっ!?」

少女の悲鳴にひるんだのか、一科生達は動きを止める。

「そこまでよ!」

「全員CADをおけ! 風紀委員だ!」

大きな声と共に、真由美や摩利、そして辰巳と沢木が現われたため、一科生たちは慌ててCADを下ろす。しかし、発動しようとしただけで御法度である。しかもその場面を見られていては言い逃れは出来ない。中でも真由美に魔法を打ち抜かれた少女は顔を真っ青にさせていた。

そんな少女に、舞姫が近寄り手を握る。

「大丈夫?」

「え?」

真由美達が近付いてくると、舞姫が彼女たちの前に立つ。

「どうした、舞姫」

「この子は攻撃しようとしてない」

「なに? だが魔法を発動させようとしていたが」

「ん、この子は発動させる前に『ダメ』って言ってた。それに、腕を向けてたのは逹也たちじゃなくて、一科生のほうに向けてた。仲間割れをしてたのでない限り、攻撃魔法じゃない。多分、フラッシュで目くらましをさせようとしてたと思う。でしょ?」

舞姫の証言に、少女はコクコクと何度も頷く。

「ふむ……それはいいとして、だ。お前がとどめをさした森崎は明らかに攻撃魔法を人に向けて発動させようとしていた。それは覆しようもあるまい」

「そですね」

先程までとはうって変わってかばおうとしない舞姫に、がくりと肩を落とす摩利。それをフォローしたのは銃を向けられていた逹也であった。

「すみません、おふざけが過ぎました」

「なに?」

逹也の言葉に摩利は眉をひそめる。

「森崎一門といえば《早撃ち》です。それを見せてもらっていたのです。つい、彼の気迫に負けてしまい、反撃しようとしてしまいましたが」

「……もう一度聞くが、本当に違反はなかったのだな?」

「えぇ。違反はありませんでした」

きっぱりと言い放つ逹也に、摩利は思わずため息をついてしまう。そこに真由美が割り込んできた。

「まぁまぁいいじゃない。違反がなかったのなら一安心よ」

「真由美?」

「ね、逹也君。本当に違反はなかったのよね?

「えぇ」

明らかにこの場をおとがめなしにしようとしてくれている真由美に、これ幸いと逹也もそれに乗っかる。摩利も場の空気を読み取り

「会長もこう仰られていることでもあるし、今回は不問とします。以後冀をつけるように」

そう言うと、真由美たちはこの場から去ろうとした。舞姫もそれに着いていこうとしたが、摩利がそれを止める。

「お前はこのまま帰れ。初日だし、えん罪を防いでくれた礼だ」

「ん。またね、姐さん先輩」

「それは止めろ!」

沢木に宥められる摩利に手を振りつつ、残ったメンバーに向き直る。

「んじゃ、一緒に帰ろ」

今までの騒動などなかったかのように振舞う舞姫に、さすがの逹也もたじろぐ。

そんな様子の一同に、舞姫は首を傾げていた。

「舞姫、なにが会ったのか説明なさい。帰りの道すがらで構わないから」

「めんど」

「い・い・わ・ね?」

「……………………ウィ」

深雪に屈した舞姫。そのまま帰ろうとすると、逹也達の前に二人の少女が立ちふさがる。片方は先程舞姫がかばった少女。もう一人はその少女に寄り添っていた少女である。

「なにか用か?」

「その……あの……ありがとうございました!」

逹也と舞姫に向けて、深く頭を下げた。

「ん? 何のこと?」

「その、私のことをかばってくれたことと、それと今回の件を解決してくれたこと、本当にありがとうございました。お二人がいなかったら、私達、風紀委員会に処罰されてました」

「そのことならいい。実際に、えと」

「あっ、光井ほのかです!」

「ん、ほのかは事態を収めようとしてただけ。あれは姐さん先輩の早とちり。だから、ほのかは悪くない」

舞姫にとって、ほのかをかばったのは、それが正当性があったためである。現に、違反を犯そうとしていた森崎のことは、吹っ飛ばした上に、かばおうともしなかった。

「それで、なんですけど……」

お礼を言い、用件は済んだと思った逹也だったが、なおほのか達はその場を去ろうとはしなかった。逹也が首を傾げていると、ほのかの後ろにいた少女がほのかの言いたいことを告げる。

「北山雫です。ほのかは皆さんと一緒に帰りたいと言いたいんです」

「はいっ! 駅までご一緒させて下さい!」

雫に後押しされ、ほのかも自分の口でもう一度言う。

「もち。お近づきの印にクレープ奢る。美味しいよ」

他を差し置いて、ほのかの腕をとって、引っ張っていく舞姫。背の低い舞姫に引っ張られるほのかは、不安定な体勢となっていた。

「……深雪、舞姫を止めてやれ」

「は、はいっ! 舞姫!」

 




入学編はすぐに終わります。九校戦で無双させたいので。あしからず
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