鳳凰の舞姫   作:天神神楽

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何よりも面白いのは、設定を考えているときで、
何よりも後悔するのは、文章におこすとき。
と言うわけで、とある作品からとある人物が登場します。
京都の名家といえばこの人かなと。
誰が話しているか分かりにくいですが、ご容赦を。
また、日刊ランキング11位となりました。
ありがとうございます。


守護者の力

呆然とする花音を余所に、輝夜は一礼をすると、一高の控え室の方向に向かって、笑みを投げかけた。それを見た真由美はゾクリと背筋を震え上がらせた。それは真由美だけではなく、あずさや鈴音達も同様であった。

そんな中、舞姫だけはワクワクと心を躍らせていた。

「ふふふ、楽しみになってきた」

それだけ言うと、舞姫は会場に向かおうとする。

「舞姫さん、まだ一時間もあるのよ? 早すぎるわ」

マシントラブルがあったようで、休憩時間が一時間に変更されたとアナウンスがあったばかりである。しかし、舞姫はそれを聞こうとはしなかった。

それをフォローしたのは姉の刹那である。

「真由美さん、行かせてあげて。集中するなら室内より外の方がいいから」

「え?」

「ん、そういうこと。見てて、輝夜に勝ってくる」

そういうと舞姫は本当に会場に上がってしまった。

「あぁ、行っちゃったわ」

「確かにルール上は問題ありませんが……」

確かに会場に出るタイミングは自由であるが、試合終了直後に出て行くことはない。しかし、舞姫は会場の視線に物怖じすることなく、ジッと目を閉じて集中していた。

「凄い集中していますね」

あずさも集中する舞姫に息を飲む。

「ここは富士山のすぐそこだからね。集中するには外にいる方がいいの」

「富士山のですか?」

刹那の言葉に、鈴音が尋ね返す。

「えぇ。舞姫は富士の奉納舞をやっているから、その恩恵に預かれるのも大きいわ。まぁ、輝夜ちゃんもだけど」

刹那の言うとおり、試合を終えてすぐの輝夜も会場に戻ってきていた。まだまだ氷柱の準備も終わっていないのに、両選手が出そろっているという事態に、会場はざわついていた。その二人が同じ紺色の舞装束に包んでいるのだから、浮き世離れした雰囲気が漂っていた。

「……何だかこっちが緊張して来ちゃうわね」

「はい」

真由美とあずさは二人の雰囲気に飲まれ、いつの間にか息を潜めてしまっていた。

「あらあら、二人とも本気ね。これは面白くなりそうね」

そんな中で刹那だけは二人の激突を楽しみに待っていた。

そして、異様な雰囲気の中、試合の準備も整い、あっという間に休憩時間は過ぎ去った。

優勝決定戦ということもあり、二人を紹介するアナウンスにも熱が入る。その声に、ようやく気を取り直した観客達が歓声を上げるが、舞姫と輝夜はそれでもなお目を閉じ集中していた。

少し戸惑ったような開始を告げるアナウンスの後に、シグナルが点灯し始める。

そして、赤から青に変わった瞬間、舞姫と輝夜は目を開き、鈴にサイオンを流し、シャンと鳴らした。

その音が響くと共に、両者の全面四本の氷柱が砕け散り、自分達の陣内に氷の欠片が舞い散った。

「相打ち!?」

「いや、これは、自分でっ!?」

真由美は、二人が互いに攻撃し合った結果だと思ったが、逹也がそれを否定する。逹也の言うとおり、二人は自分自身の陣の氷柱を粉々に砕いたのであった。

「そんな!? どうしてそんなこと」

真由美は逹也の声を聞き、信じられないとでもいうかのように、逹也に詰め寄った。

「確かに、鈴に刻まれた刻印術式は振動系のものでした。俺は、相手に対する牽制用だと思っていましたが、違うようですね」

そう言って、逹也は目の前の会場を指さす。

「え? どういうこと……って、あれは……」

真由美は視線を逹也から会場へと戻す。するとそこでは宙に舞った氷が渦を巻いていた。そして、その渦はだんだんと何かを象っていき、渦が収まるとそこには二つの大きな鳥が君臨していた。

「あれは……」

「鳳凰よ。舞姫ちゃんのが《氷凰》、輝夜ちゃんのが《氷鳳》。ともに、氷を核にした魔法よ」

目の前の光景に言葉を失う真由美に、刹那が二人の魔法の名前を教える。

「本来の形はあんなものじゃないけど、それでも災害すら防ぐ鳳凰二家の魔法。目を離しちゃ、ダメよ」

刹那の言葉は聞こえていないはずだが、刹那がそう言い終えた途端、二つの氷鳥は大きく翼を振り抜き、互いの陣の氷柱を打ち抜かんと氷の弾丸を撃ち出した。

互いの氷がぶつかり合い、陣の境目でダイヤモンドダストのようにキラキラと光る煙が生まれる。視界が阻まれたにも拘わらず、二人は問答無用にCADにサイオンを流し込んだ。

隙あらば直接氷柱を狙い、その合間に相手の鳳凰自体を倒さんと氷の刃をたたきつける。氷と氷がぶつかるごとに、会場に氷の欠片が舞い散った。

目の前で始まった幻獣大戦争に、会場のボルテージは上がりっぱなしだったが、一高控え室では、みなポカンと口を開けてしまっていた。

「なに、あれ……」

「まるでお伽噺の中の魔法みたい」

あずさの言うとおり、二人が繰り広げている魔法は、現代魔法の枠を逸している。

「あらあら、二人ともサービス精神旺盛ね」

「サービス、ですか?」

雪菜のサービスと言う言葉に、真由美が尋ね返す。

「えぇ。だって、あの魔法は本来防御用だもの」

刹那の言葉を真由美は信じられなかった。

「そんな……、あんなに激しい攻撃をしているのにですか?」

「だから、あれは二人が張り切ってるからね。ほら、氷柱は一切傷付いてないでしょ?」

雪菜の言うとおり、二人の残った氷柱は傷付いていなかった。氷弾は当たっているのにも拘わらず、全て弾かれていた。

「あの魔法はね、京に来る災いをはねのけた魔法なの。本体、今のなら鳳凰ね。それを核にして、他のものを固定するもの。まぁ、あれは少し派手だけど、舞姫ちゃんも輝夜ちゃんも本気みたいだからあれほどになっちゃってるのね」

刹那の説明に、そんな魔法もあるのかと驚愕する。

「ふふふ、あなたも気になることがあるみたいね、司波君?」

まさか自分に声を掛けてくるとは思っていなかった逹也だったが、せっかくの機会に疑問を口にした。

「あれほど大規模な防御魔法というのなら、どのように決着をつけるのか気になりまして」

「そうね。私や母様では難しいけど、あの二人なら大丈夫よ」

説明になっていない説明だったが、その答えはすぐにその当人達が証明した。

「えっ!? CADの同時操作!?」

真由美の視線の先では、舞姫と輝夜がもう一つのCADを袖から取り出していた。

「そう。特A級魔法《ヴォルケイノ》と《ダウンフォース》。もう天外魔境ね」

クスリと笑みをこぼす刹那とは対照的に、会場には圧倒的な熱と冷気が吹き荒れていた。

特A級魔法《ヴォルケイノ》と同じく特A級魔法《ダウンフォース》。共に振動系魔法の最高峰である。区分としては振動系とされているが、《ダウンフォース》は深雪でも行使が出来ない程である。それほどの魔法を二つのCADを同時に操作しながら発動させている舞姫と輝夜を、逹也や深雪は息を飲んでいた。

「でも、今回は舞姫ちゃんに軍配が上がったみたいね」

刹那がそう呟くと、会場に立ちこめる水蒸気が払われた。そこには傷付きながらもしっかりと立っている氷の柱が一つ。

その柱は舞姫の正面にそびえ立っていた。

「舞姫さんの……勝ち?」

初めは理解出来ていなかった真由美も、目の前の結末を段々に認識していった。

「えぇ。舞姫の、一高の選手の優勝よ」

刹那の言葉に導かれ、一高控え室は爆発したような歓声に包まれた。

同様に観客席からも壮絶な勝負を繰り広げた舞姫と輝夜に盛大な拍手が送られた。

そんな中から控え室に戻ると、再び真由美の抱擁に出迎えられた。

「わぷっ」

「凄いわ! 舞姫さんのお陰で、今までの競技、全て一高の優勝よ!」

「おめでとうございます、舞姫さん。見事でした」

鈴音も拍手をしながら舞姫を称讃した。逹也やあずさ、スタッフ皆が拍手で舞姫の優勝を祝福していた。

「舞姫! 優勝おめでとー!」

控え室に観戦していた英美やほのかたちも駆けつけ、舞姫に抱きついたり、手を握って飛び跳ねたりと思い思いに喜びを表現していた。

そんな興奮に包まれる控え室の扉がノックされる。あずさが扉を開けると、思わぬ人物に声を上げてしまった。何事かと皆が視線を向けると、そこには愛梨と先程まで舞姫と戦っていた輝夜がいた。

「輝夜っ」

輝夜が来たことに気が付いた舞姫は輝夜に飛び込んだ。二人とも着物を着ていたため、その光景に女子生徒は幸せそうな顔を浮かべた。

「あら、リンちゃん?」

後ろから鈴音に声を掛ける真由美。声を掛けられた鈴音はビクリと肩を跳ねさせたが、何も言わずその場に立っているだけだった。

そんなやりとりは知らない舞姫は、輝夜に頭を撫でられていた。

「お見事でした、舞姫様。灼熱の焔、勝負中ながら心が震えました」

「輝夜の空気も凄かった。とっても綺麗だった」

お互いが相手のことを称讃していた。負けたはずの輝夜も舞姫の勝利を本当に喜んでいるようだった。

「私からも言わせて。おめでとう舞姫。そして輝夜さんも芸術的とも言える見事な魔法、素晴らしかったです」

愛梨も先程の試合に感動したのか、心からの称讃を送っていた。

「ありがと、愛梨」

「ありがとうございます愛梨さん。愛梨さんは明日から本番ですね。頑張って下さいね」

愛梨は本戦ミラージ・バットの他に、新人戦クラウド・ボールに出場する。

「はい。でも、本戦では輝夜さんにも負けませんわ」

輝夜がこれまで出場しているのは、この本戦アイス・ピラーズ・ブレイクのみ。そしてもう一種目は、愛梨と、そして深雪と同じ本戦ミラージ・バットである。

「私こそ。でもそれまでは楽しませてもらいますね」

翌日からは新人戦である。舞姫は種目を全て終え、輝夜もミラージ・バットのみ。舞姫は新人戦では技術スタッフとして参加するが、クラウド・ボールの一種目だけである。

「明日はフリーだから、一緒にアイス・ピラーズ・ブレイクの試合を見よ」

「えぇ、必ず。今夜はそちらでお過ごし下さい。その代わり、夜まで一緒にいてくれますか?」

「うん。あ、大丈夫?」

一度は頷いたが、真由美に確認を取る。明日はエンジニアとして仕事はあるものの、今から動く必要もない。真由美は大丈夫と頷いた。

「ありがとうございます真由美さん。それでは行きましょう」

「ん。じゃあ、また夜に」

舞姫は手を振ると部屋から出る。九校戦史上に残る激戦を繰り広げた二人が手を繋いでいる様子は注目されていた。その二人ともかなりの美少女である。男女問わず二人の姿に見惚れていた。

「それにしても、舞姫様のエンジニアとしてのお力を見られるのは楽しみです」

「それよりも、逹也の方が必見。あれは芸術」

「そちらもチェック済みです。今年の一高の入試結果と試験結果、しっかりと拝見していますから。そんな彼がエンジニアとしているのですもの。注目しないわけがありません」

輝夜は要チェック要員をしっかりと把握していた。

「流石は輝夜。それでも一高は負けないよ」

「それは二高も同じです。とはいえ、今年の一高の一年生は玉の集まりのようですけど。それに、三高も」

「来年も楽しみ」

クスクスと笑い合っていると、そこに一人の男が近付いてくる。二人ほどの美貌ならば、あわよくばと考える男も少なくないが、今回に限ってはそうではなかった。

「やあ、僕もご一緒してもいいかな?」

「あ、神楽。もちろん。輝夜もいい?」

「もちろんです。むしろ、私こそお邪魔かしら?」

クスクスと笑う輝夜に、神楽は肩をすくめる。

「まさか。輝夜さんといる時の舞姫は殊更可愛いからね。どうだろう、ここはケーキをご馳走させてくれないかな?」

「店員さん、オペラとフルーツタルト一つずつ。輝夜は?」

ケーキと聞いて、すぐに店員を止めて注文する。

「もぅ。ではベリータルトを。神楽さん、ご馳走様です」

神楽は自分もチーズケーキを頼む。すぐに届いたケーキを舞姫はもぐもぐと頬張った。

「むぐむぐむぐむぐ」

「あ、舞姫様ほっぺたに。失礼します」

甲斐甲斐しく舞姫のお世話をする輝夜。その姿を微笑ましそうに眺める神楽。三人が三人とも相当な美男美女である。そんな三人が微笑ましくしている姿は、周囲の者達を幸せにしていた。

「そうだ、遅くなってしまったが、優勝おめでとう舞姫。輝夜さんも見事だったよ」

「ありがと」

「ありがとうございます。ふふふ、でも冷泉の《舞姫》様にそのように言って頂けるなんて嬉しいです」

冷泉の《舞姫》。冷泉家は京都の名門である。それは魔法に関するものに限るものではなく凰鵬鴻(オオトリ)の三家同様、京の都を護り続けてきた守護四家の下で護りを担う一家である。

京都には《護国十七家》と呼ばれる十七の名家が存在する。内四家は守護四家。凰・羽林(うりん)・斑鳩・愛宕の四家である。

その四家の下につく十二従家。

鳳・鵬・鴻

難波・冷泉・水無瀬

崇司・斉御司・九條

堀川・神泉・羅城

これら十二の家々は守護四家が創立された時から現代まで四家を支え続けた家である。現代においても陰日向で己の主家を支えている。

そして、十六家を束ねる家。存在こそ知られているが、内情は守護四家以上に秘密が多い家。

「お久しぶりです、舞姫さん」

《至光》煌武院家現当主――煌武院悠陽。名と顔を知られていなくとも、全身から溢れるオーラは、見るもの全てに畏怖を与えていた。

「ゆ、悠陽様!?」

「あ、悠陽様。久しぶり」

スーツに身を包んだ悠陽は、店員に紅茶とケーキを頼むと空いている席に腰掛けた。

「先程の試合、拝見いたしましたわ。舞姫さん、輝夜さん、お二人とも素晴らしい試合でした」

「あ、ありがとうございます。光栄です」

常に冷静な輝夜には珍しく、動揺しきっていた。

「ありがと。悠陽様はいつから来ていたの?」

対して、舞姫はいつも通りであった。流石にフォークを置いてはいたが。

「今日からです。バトル・ボードも見たかったのですが、どうしても予定が合わず申しわけありませんでした」

「今日来てくれただけでも嬉しい。いつまでいられるの?」

「一応最終日までいられますわ。今日は……ご学友方とご一緒ですわね。明日の夜、お時間を頂けますか?」

「もちろん。ふふっ、楽しみ」

ニコニコしながらケーキを頬張る舞姫。そんな舞姫を見て悠陽も微笑んでいた。

「それにしても、悠陽様もいきなり過ぎます。崇司達から泣きの電話がかかってきましたよ」

神楽の言葉に、悠陽は口元に手を当てて微笑んだ。

「あら。では、帰ったら美味しいお茶をご馳走しなければなりませんわね」

「……それは皆も喜ぶでしょう。警備は冷泉が中心になって行います。というか行っていますので。ホテルは取ってありますから、そちらで。いいですね?」

「分かりました。ではそれまで舞姫さん達と楽しむことにしましょう」

舞姫の頭を撫でながら微笑む悠陽の姿は、心底楽しそうであった。

 




はくのんISの方もそうですが、マヴラブは他作品と絡めやすいですね。
あちらほど沢山は出しませんが。
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