ちなみに前回の魔法について、細かい原理は特に設定していないので、「なんか凄い原理の古式魔法をぶっ放していた」と考えて下さい。
三日目も一高の成績は上々となった。夕食時、舞姫は一高生徒とではなく、華耶達と食事をとっていた。この場には、華耶や刹那だけではなく、輝夜や神楽もいる。
それに加えて、《護国十七家》の顔ぶれが勢揃いしていた。
煌武院家当主、煌武院悠陽。
凰家当主、凰刹那
羽林家当主、羽林兼康(かねやす)
斑鳩家当主、斑鳩六瓢
愛宕家当主、愛宕幸(さち)
鳳家当主、鳳晃
鵬家当主、鵬慎也
鴻家当主、鴻香雅里(かがり)
難波家当主、難波京
冷泉家当主、冷泉猛
水無瀬家当主、水無瀬深螺(しんら)
崇司家当主、崇司聖璃(ひじり)
斉御司家当主、斉御司曉月(あかつき)
九條家当主、九條義実(よしざね)
堀川家当主、堀川英雄(ひでお)
神泉家当主、神泉翠
羅城家当主、羅城葵
日本を代表する家々の当主が一堂に会しているこの部屋では今。
「舞姫ちゃん二冠おめでとう、輝夜ちゃんミラージ・バット頑張ってパーティー開幕―!!!!」
「「「おーっ!!!」」」
どんちゃん騒ぎをしていた。上座で舞姫と並んで座っている輝夜は苦笑をしていた。舞姫は女性当主達に次々料理を食べさせられていた。
「はい、舞姫ちゃん。次はお野菜よ」
「むぐ。ありがと、聖璃」
「ん~っ、さ、お魚もあるわよ」
「あ、ズルいわ聖璃。次は私よ。はい、あーん」
「んむっ。ん、とろける。ありがと、深螺。とってもおいし」
「「「きゃ~~~!!!」」」
女性陣は舞姫にメロメロである。男性陣も羨ましそうにしていたが、流石にこの場には割り込めないようであった。
「輝夜輝夜、このお魚美味しい。輝夜もたべてみて」
スッと差し出された魚を、輝夜は心底幸せそうに口にした。
「おいしい?」
「は、はい。とても美味しいです。こんなにも美味しいお魚は初めてです」
「ん、よかった。ほら、もっと」
次々と輝夜に料理を食べさせる舞姫。輝夜はそれを断ることなくたべ、自分も舞姫に料理を食べさせていた。その様子を周りの女性陣は羨ましそうに眺めていた。
「羨ましいわ輝夜ちゃん」
「ふふふ、いくら刹那様といえども、この幸せは分けられません」
今夜の主役である輝夜の言葉には逆らえず、女性陣も自分の席に戻っていく。そこでようやく男性陣も舞姫達に声を掛けることが出来た。
「いやはや、二人とも見事だったよ。言われ続けてイヤになるかも知れないが、おめでとう」
「ありがとうございます六瓢様」
「いっぱい言って貰えて嬉しい。ありがと」
六瓢の言葉を皮切りに、皆改めて舞姫と輝夜に向けての労いの言葉合戦が開始される。二十人近い挨拶にも拘わらず、二人はイヤな顔一つせずにそれぞれに感謝の言葉を述べていた。
「それにしても輝夜君は今年で最後か。毎年九校戦は楽しみにしていたが、華が一つ減ってしまうな」
「あら、義実さま。来年は煌武院から美禰、斑鳩から玉藻が魔法科高校に入学するではありませんか。私はそれが楽しみで仕方ありませんわ」
悠陽の言うとおり、来年は煌武院・斑鳩両家から二人魔法科高校に入学予定の娘が出る。それを思い出した晃は、六瓢に話しかけた。
「そういえば六瓢殿。玉藻殿はどこの魔法科高校に入学するのですか? やはり第二高校?」
「いや、玉藻は第一高校に入ると言って聞かないんだ。今日も二人の試合を見て興奮していてね。あぁ、二人とも時間があるときに、玉藻に会ってくれると嬉しいのだけど」
「もちろんですわ。私は新人戦の時はヒマですから、舞姫様の都合の良いときに。舞姫様、ご予定は大丈夫ですか?」
「うん。クラウド・ボールだけだから、六日目からはフリー。玉藻と会うのも久しぶりだから、楽しみ」
舞姫にとって、数少ない年下である美禰や玉藻は、とても可愛い存在であった。
「あら、では美禰とも会ってあげてくださいな。あの子も第一高校に入りたがっていますから」
「ん。楽しみにしてる」
この後、舞姫と輝夜に会えると連絡を受けた二人の小さな令嬢は、令嬢にあるまじき喜びの声を上げたとか何とか。
身内での食事を終え、舞姫は受け取ったお土産を持って、真由美の部屋に訪れていた。
「二冠おめでとう舞姫さん。って、これはさっきの食事会で言われたのかしら?」
「ううん。ありがとご主人様。これでご主人様とお揃い。二冠コンビ」
いえーいと真由美と小さくハイタッチする舞姫。そんな舞姫の仕草に、鈴音や摩利はクスクスと笑っていた。
「しかし、舞姫さんのお陰で、前半戦は素晴らしい結果となりましたね。明日からの新人戦も少しはリラックスして挑めるでしょう」
鈴音の言うとおり、摩利の棄権という大きなトラブルに見舞われながらも、舞姫の活躍のお陰でいそう通りの得点を得ることが出来ている。そのため、明日からの新人戦にも余裕が生まれていた。
「そうね。一年生の子達も幾分やりやすくなると思うわ。深雪さんも、アイス・ピラーズ・ブレイク頑張ってね」
「はい。私も舞姫には負けていられませんから。舞姫も見ててね?」
「ん。輝夜、というか十七家みんな楽しみにしてた。だから頑張って」
舞姫の言葉に、真由美達はピシリと固まった。
「ま、舞姫さん? 観戦に来るのって、オオトリ家の方々だけじゃなかったの?」
「違う。煌武院の人が来たから、皆も来たみたい。みんな一高のこと褒めてたよ」
日本屈指の名家の当主たちに注目されていることを聞き、真由美達は冷や汗を流した。
「あ、明後日のアイス・ピラーズ・ブレイクは皆とみたいんだけど、大丈夫?」
「え、えぇ。舞姫さんはクラウド・ボールだけですから大丈夫です。一応何かあったときのために連絡だけはすぐにとれるようにしておいてください」
「了解。クラウド・ボールでは全力でフォローする」
自信満々の舞姫の様子に、真由美や鈴音は安心した。
「新人戦女子クラウド・ボールは、A組の倉敷さんとC組の柳さんですね。二人とも突出した方ではありませんが、十分入賞圏内かと思われます」
「うん、くららもやなぎんも安定してる。ペース配分が上手いから、クラウド・ボールには有利だと思う」
「それなら良かったわ。……因みに、くららとやなぎんって」
「倉敷さんと柳さんのことです。初対面の時からそう呼んでいて。お二人とも気にしていないから良かったものの」
「二人とも喜んでくれたよ?」
舞姫の言うとおり、二人とも舞姫にあだ名で呼ばれたことを喜んでいた。何せ、舞姫は摩利のことを《姐さん先輩》、鈴音のことを《リンちゃん先輩》、挙げ句の果てには真由美のことを《ご主人様》と呼んでいる。そんな舞姫にあだ名で呼ばれることは、親衛隊にとっては名誉なことで有り、件の二人もこのたび親衛隊入りした。
「まぁ、パートナーとの仲が良好なことは良いことか。そう言えば明日はどうするんだ? 一応フリーのはずだが」
「輝夜と一緒に観戦するつもり。特にスピード・シューティングは雫も出るし、楽しみ」
「そう。舞姫さんなら心配ないと思うけど、あまり目立つ行動はしないでね? ただでさえ三高に対して色々しているのだし」
真由美はバトル・ボードにおける舞姫の行動について三高に謝罪をしていた。それ自体は佐保が感謝の言葉を述べており、逆に感謝されてしまっていたが、真由美は改めて舞姫に厳重注意していた。
「ん、輝夜とだけで、二高のテントには行かない」
「それならいいわ。三日間頑張ったんだもの。明日はゆっくりとしていてちょうだい」
真由美は舞姫の返事に満足すると、笑みを浮かべて舞姫の頭を撫でた。
「今の一高の原動力は間違いなくアナタよ。だから、私達は舞姫さんの努力を無駄にしないために、全力でいくわ」
「ん。私も全力で行く。チアリーダーの衣装もあるから、応援もバッチリ」
グッと親指を立てる舞姫に、相変わらずだと部屋の皆は笑ってしまったのであった。
舞姫が真由美の部屋にいる頃、刹那達十七家の面々は東京都内の斑鳩家経営のホテルの大きな一室に集っていた。その雰囲気は先のパーティーとは異なり、抜き身の刀のように鋭いものであった。
「……では、今年の九校戦には老龍が紛れ込んでいる、と?」
悠陽は六瓢からの報告を改めて確認する。
「はい。本戦バトル・ボードにおける第一高校の渡辺選手の事故の件です。舞姫殿の意見を聞く限り、あれは何者かの妨害を受けたものと判断して間違いないでしょう」
六瓢の言葉に、室内の空気は一段と鋭くなる。
「……その賊の名は?」
美しいその顔に似合わぬ剣呑に満ちたその声に、六瓢は一拍おいて答える。
「無頭龍。大亜連合の組織です」
無頭龍。その組織の名に、十七家の老将、羽林兼康と堀川英雄の二人が殺気を強めた。そんな二人のことを水無瀬深螺が宥める。
「兼康様、英雄様。今はおさえて下さいませ」
「……すまぬな。その名を聞くと、ついな」
「……兼康様の心中、理解をしているつもりです。ですが、今回は国防軍がことの始末に当たるようで」
六瓢の報告に、兼康は拳を強く握りしめる。その様子を六瓢は苦しい表情で見つめつつも報告を続けた。
「今回のこの行動について、あちら側は手出し無用と言ってきました。とはいえ、此度の一件についての不始末をついたため、こちらの身はこちらで守ることを飲ませました。此度我らが属するのは第一高校と第二高校。舞姫殿と輝夜殿が“何らかの被害を受けぬ為”にも、頻繁に激励に行かせていただきましょう」
現在十七家の人間が在籍しているのは第一高校と第二高校のみ。六瓢が飲ませた《こちらの身はこちらで守る》という条件は、舞姫と輝夜のいるこの二校に降り注ぐ災厄しか払うことが出来ない。
その報告に、一同不満そうな表情を浮かべていたが、そんな中兼康が刹那に話しかける。
「刹那、明日は共に第一高校の試合を観戦せんか? 我らの孫娘の学友の試合を応援してあげたいのだが」
「……そうですね。ですが、中々席を取れないかもしれませんよ?」
「なに、それならば立ち見でも構わんよ。そうだ、英雄殿もいかがかな?」
兼康の誘いに、英雄は首を横に振る。
「いや、師弟の邪魔はせぬよ。そうじゃな、晃、どうせだから共に輝夜の後輩を応援しないか?」
「そうですね。たまには師と行動を共にするのもいいでしょう。とはいえ、男二人ではあまりにも華がない。そうですね、深螺殿、我らとご一緒してくれませんか?」
水無瀬深螺は刹那の一つ年上の女性である。その姿はまさに大和撫子。同じく大和撫子と名高い輝夜にはない妖艶さを持っている女性である。深螺は着物の袖を口元に当てて微笑んだ。
「あら、華だなんて嬉しいことを言ってくれますね。もちろん、喜んでご一緒させて頂きますわ」
そう言いながら微笑んでいる深螺だったが、目は笑ってはおらず、鋭いままである。それは深螺ではなくこの場にいる全員が同じであった。
わかりにくくてすみませんでした。