鳳凰の舞姫   作:天神神楽

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原作でのクラウド・ボールは真由美無双で殆ど描写が無かった為、ほぼオリジナルです。ご注意下さい。
また、優等生要素は、作者が原作最新話をしっかりと読んでいないため、ここから先は想像で書いています。

あと、ダンまちとアカメの話も近いうちに挙げるかもしれません。ダンまちは殆ど練っていないので未定ですが、アカメの方は、前から書きたいと構想を練っていたので、早めに挙げるかも。
例によって年上女性が主人公。女性にもてる女なタイプです。浅川さんのエスデスも聞きたかったなぁ。さんざんみなとラジオで言っていただろうTAKAHIRO。


クラウド・ボール

 

ホテルから会場に戻ってきた舞姫と輝夜は、バトル・ボードの会場に来ていた。

「舞姫様。先ほどのことですが、悠陽様にいただいたお守りをお譲りしてしまってもよろしかったのですか?」

「うん。私の勝負は終わったから。それに、深雪たちには達也がついてるし、それなら、倒れそうになってる友達のためになって欲しいって思ったの」

舞姫にとっても、一高が総合優勝することは大切な目標である。しかし、その目標は決して他者を蹴落としてまで得るものではなく、反対に、誠心誠意、正々堂々と競い合った先に得るものである。

たとえ、敵に塩を送る行為だとしても、それを味方から非難されようとも、そこを譲る気は無かった。

輝夜も舞姫の言葉を聞いて納得したのか、それ以上のことを聞こうとはしなかった。

「では、ゆっくりと試合を観戦いたしましょう。一高の光井ほのかさん、舞姫様のお友達でしたよね」

「うん。ほのかの魔法はとっても綺麗。栞のとは違って、とっても綺麗な輝きを持ってる。悠陽様の魔法に近いかも」

舞姫のこの評価には、輝夜も目を見開いた。十七家の中には“強力な”魔法を操る魔法師はたくさんいる。先ほど輝夜も栞の魔法が深螺の魔法と似通っていると評したように、守護四家系列の魔法と比せられることはままある。

しかし、煌武院家の魔法ほど“美しい”魔法はほとんどない。特に“至光”とまで讃えられた悠陽と比べられる魔法師など、他の十六家にも存在していなかった。

「《光井》……ということは、光のエレメント、ですね。いえそれだけではないですか」

「うん。ほのかの光はとても暖かくて優しい光。実は九校戦が終わったら、京都に来て欲しいと思ってるの」

「そうですね。そのときは私たちも歓迎しなければいけませんね。お披露目では美禰達も舞いますから、皆にも喜んでいただけるでしょうね」

「うん。私達も踊るし、頑張らなくちゃね」

八月のお披露目とは、夏期休暇に合わせて、十七家の若手が身内に舞を披露する機会である。身内の行事なため、原則非公開であるが、招待客がいることもある。舞姫が舞う富士の舞や、京都の煌武院家至光神社の奉納舞など、折々に披露される舞が一堂に会するこの行事に招待されることは、地位あるものにとって垂涎の的なのである。

完全に身内の行事であるため、招待する客の選定は、それぞれの自由に任されている。時には招待客が数人ということも多い。そのような行事に、ほのか、というよりも一高の友人を呼ぼうと言っているのである。

「折角だから、皆にも舞を踊ってもらいたいね」

「えぇ。ふふふ、今年のお披露目はとても豪華なものになりそうですわ」

十七家には《舞姫》以外にも舞の担い手は存在する。舞姫や神楽が担っている《舞姫》の名はその中でも最上位である。彼らの舞は殆ど一般の目には触れられない。《舞姫》としての舞ではないとはいえども、九校戦の開会式で披露された舞姫の舞は、歴史上でも初めてに近い一般公開のものであった。因みにこの時、世界中の政府高官がテレビに齧りついていたとか。

「じゃあ早速連絡しよ。とりあえずメールで」

悠陽にその旨をメールで連絡する。最高権力者である悠陽に連絡する辺り、舞姫も強かである。

「あ、出てきましたよ」

バトル・ボードも第六レース。ほのかの出番である。緊張しがちなほのかだが、サングラスを掛けているすがたは少し以外であった。

「四十九院さんもそうですが、面白い魔法が多いですね」

「沓子のは私のにも似てる。水に関しては水無瀬にも通じる」

「えぇ。白河の名は伊達ではありませんね」

ほのかに策を授けたのは逹也である。そうある以上、ほのかが負ける要素はなかった。

舞姫は輝夜にサングラスを渡す。作戦を聞いていたため、予め用意していたものである。

「あら、よいデザインですね。これは舞姫様が?」

「うん。お姉ちゃんに聞いてお勧めのお店を教えて貰った」

「それでしたら納得です。では失礼しますね」

輝夜は舞姫から受け取ったサングラスを掛ける。二人の周りにはサングラスを掛けているものはいなかったが、その理由は試合開始と共に判明した。

「あらあら、これは何とも思い切った作戦ですね」

「うん。ほのかの得意な魔法は光。まあ、作戦というか奇策と言った方が正しいけど」

「当たり前と言えば当たり前ですが、それだけにいざやろうとしても思いつかないものですね。まさしく九島老師の言うとおりですね」

ほのかが行ったのはレース開始直後水面に向けて光学系魔法を打ち込むという簡単なものであった。

しかし、その効果は絶大であり、ほのかとその他の生徒との差はみるみるうちに広がっていった。

「まさしく必勝の一手。これだけの差が開いてしまえば勝利は確実ですね」

輝夜の言うとおり、真っ先に飛び出したほのかはその後一度も首位を譲らず、そのまま圧勝で勝負を決めたのであった。

「今回は技術や才能ではなく、作戦によっての勝利ですね。それだけに素晴らしい」

「うん。これが一高が最強といった理由」

優勝候補である一高にとって、“才能”や“技術”といった要素は九校中でも最高レベルである。真由美達三巨頭に加え、三年生にはA級ライセンス相当の実力を持つ魔法師もいる。それだけでも恐ろしいのに、今回のような奇策も織り交ぜてくるとなれば、手の出しようもないと言われてもおかしくはなかった。

「確かにそうですね。でも、私達だって第二の数字を担う者達。そう簡単には負けませんわ」

そう言い放つ輝夜。舞姫もその言葉を嬉しそうに聞いていた。

 

 

 

大会五日目。この日舞姫は担当に割り振られている二人とともに朝食を食べ終え、早々にCADの調整をしていた。

「ん、二人ともしっかり休めてる。これなら体力はバッチリ」

選手の体調を確認し、それに合わせてCADを調整する。

「うん。舞姫さんに貰ったポプリが効いたから」

「すごくリラックスして眠れたよ」

倉敷楓と柳千夜もすでに着替えを終え、準備運動をしていた。クラウド・ボールは他の競技に比べて運動量が多い競技である。真由美のような例外は存在するが、それを出来るものは一握りである。

二人が準備体操をしている間に、CADのチェックも済ませ、テントから控え室に戻ろうとすると、そこには愛梨が立っていた。

「舞姫。少しだけ時間をくれないかしら?」

「……ん。少しだけなら」

二人は人目が少ない場所に移動する。

「そうだ、栞は大丈夫?」

二人にとって一番心配なのは栞の状態である。しかし、愛梨は昨日のような悲壮な表情は浮かべていなかった。

「栞は出場するわ。あなたの渡したお守りがどのようなものかは聞いていないけれど、栞は顔を上げてくれたわ」

「そっか。良かった」

短い言葉ではあったが、愛梨は舞姫が心から安堵していることに気が付いていた。

「栞からの伝言よ。『貴女への感謝の気持ちは、貴女が担当する選手に勝利することで返す』とのことよ」

「ん、分かった。じゃあ、私はそんな栞を……ううん、栞と愛梨を倒してワンツーフィニッシュをするって言っておいて」

愛梨と栞。三高一年生女子における最強のペアである。スピード・シューティングの敗北により出場が危ぶまれていた栞もこうして復活した以上、一高女子にとって最強クラスの相手である。

「ふふっ、分かったわ。あぁ、それとこれは私からの返事よ。私達は負けないわ。全力でお相手いたします」

お互いに好戦的な笑みを交わし、それぞれの部屋に戻っていく。

「あ、舞姫さん。CAD、大丈夫だった?」

「うん。大丈夫だよ。まだ試合まで時間があるし、お茶でも飲んでリラックスして」

予め湧かしてあったお湯で煎茶を淹れる舞姫。舞姫ファンクラブにとってアムリタよりも尊い舞姫の淹れたお茶を飲み、心から癒される倉敷と柳。

「それと、二人に伝言」

「伝言? 会長から?」

突然の言葉に、首を傾げる倉敷。そんな倉敷の疑問に舞姫は首を横に振る。

「ううん。愛梨と栞から」

「その二人って、まさか三高の!?」

思わぬ名前が出てきたことに、驚きの声を上げる柳。倉敷に至っては硬直していた。

「うん。さっき愛梨から宣戦布告された。二人と当たるのはどっちも準決勝。だから、一高と三高のタイマンになると思うけど、そこで全力でくるって言ってた」

「一色と十七夜の全力……」

栞の実力に関しては先日の試合でありありと見せ付けられている。愛梨の実力はまだ目にしていないものの、一年生ながら本戦ミラージ・バットにエントリーしていることから想像することは容易かった。つまり、一高一年生最強の二大巨頭である深雪と舞姫と同等の相手である。

そんな自分達よりも遙かに上にいる人物が全力でかかってくるという事実に、柳は自分でも気付かぬうちに震えていた。

そんな柳を舞姫は優しく抱きしめる。それは佐保にしたときのように、震える体を瞬時に落ち着かせた。

「大丈夫だよ。やなぎんもくららも十分に優勝を狙える。だって、《凰の舞姫》がついてるんだから」

いつもよりも柔らかい舞姫の声に、震えていた柳も、強張っていた倉敷も不思議と安心していた。

「……そうね。戦う前から負けているようじゃ、情けないわよね」

俯いていた顔を上げた倉敷の表情は、晴れ晴れとしたものとなっていた。それは柳も同じ。それを確認出来た舞姫は柳から離れ、お茶を入れ直す。

「じゃあ、改めて乾杯。えと……二人の勝利に」

「えぇ。乾杯」

「乾杯!」

やがて、最初に倉敷、次に柳が試合に挑み、順調に勝ち進み準決勝まで駒を進めたのであった。

 

準決勝第一試合、第一高校:倉敷楓VS第三高校:一色愛梨

準決勝第二試合、第一高校:柳千夜VS第三高校:十七夜栞

 

スピード・シューティングでは第一高校の完勝。その雪辱を果たすための第三高校との一騎打ちとなったのであった。

 

 

 

第一高校と第三高校との対決となった新人戦クラウド・ボール。この展開に会場のボルテージは高まっていた。

そんな中、深雪は準決勝と続く決勝戦を見届ける為に、天幕の中で真由美達とともに観戦していた。アイス・ピラーズ・ブレイクに出場する雫と英美、そしてもちろん逹也とも一緒である。

「まさか、こんなに分かりやすい形になるとはな。倉敷も柳の二人とも素晴らしいな」

「えぇ。どちらも大胆な魔法なのにすばらしい効率で運用しているから、スタミナも残っているし、これは期待できるわね」

「はい。三高の二人がいるため難しいと予測していましたが、ここまで来られたことは喜ばしいことです」

この競技に関しては上位入賞は難しいと予測されていた。しかし、その予想に反して二人とも準決勝まで出場し、鈴音にとっては嬉しい誤算となっていた。

「しかし、十七夜選手が予想以上に調子を戻してきていますね。スピード・シューティングの時とは全然違います。準々決勝までの力を取り戻しています」

ここまでの栞の成績はほぼ完勝。三位決定戦のときの崩れ方は完全に姿を消していた。その様子は本戦バトル・ボードのことを連想される。

と、そこで鈴音たちは一つの予感にたどり着いた。

「ねぇ、リンちゃん。たしか舞姫さんって、三高の子達と仲良くなっていたわよね?」

「えぇ。一色選手を始め、四十九院選手、水尾選手、そして十七夜選手とも仲が良かったはずです」

「「「……………………」」」

フェアプレイの精神としては間違っていないのだが、またしても何も告げられておらず、戻ってきたら聞くことが出来たと考える一高首脳陣であった。

そんな三年生達とはことなり、深雪達は試合が始めるのを待ちわびていた。

「ねぇ、司波君。二人とも勝てるのかな?」

英美の言うとおり、三高の二人はどちらも優勝候補である。倉敷も柳も弱くは無いものの、愛梨と栞と比べれば実力が劣るのは間違いなかった。

「これもまたエンジニアの力、ということか」

気を取り直すためか、摩利が口を挟む。

「それもあるでしょうが、舞姫に関してはメンタル的なサポートが大きいでしょう。二人は、その」

逹也が言い淀んでいるのは、倉敷と柳が舞姫のファンクラブであるということである。とはいえ、それだけでここにいる全員理解出来ていた

「舞姫はすぐに抱きつくから」

「そういえば、温泉でもほのかにも抱きついてたっけ」

英美も温泉での出来事を思い出す。

「そんなことをしていたのね舞姫さんったら……」

「まぁ、確かにメンタル面におけるケアに関して舞姫さんに匹敵するエンジニアは他にいないでしょう。現にその結果がこうして出ているのですから」

「そうね。……って、リンちゃんっもしっかり把握していたのね」

真由美としては特に意識して質問した訳ではなかったのだが、鈴音はピタリと止まった。

「リンちゃん?」

「……えぇ。作戦スタッフとして選手と話をしていましたから。エンジニアとして専任してもらうかどうか本気で迷いました」

「…………。そうね」

気になっていたが、それ以上追及するのを諦めた真由美であった。

「それで、明智さんも言っていたけど、二人が勝つ要素はどこなのかしら?」

気を取り直すかのように、改めて話を戻す。

「そうですね。倉敷さん達の実力は残念ながら三高の二人には及びません。しかし、倉敷さんたちの状態は最高です。それに、三高の十七夜選手の状態は、幾ら取り直したといっても、先日までの力は取り戻していないように見えます」

「私にはそうは見えなかったが?」

「それはクラウド・ボールがスピード・シューティングほど複雑ではありません。なので強敵なのに変わりはありませんが、柳さんが勝機を見いだすとしたらそこかと」

「じゃあ倉敷さんについては?」

「それについてはどうとも言えませんね。俺が一色選手の試合を見るのはこれが初めてです。それに、舞姫同様本戦に出場する選手です。それだけが判断材料になるわけではありませんが、強敵なのは間違いないでしょう」

逹也の評価は真由美達も想像していたものだったので、大きなショックは受けていなかった。

「とはいえ、倉敷と柳の調子がすこぶる良いのは事実だ。二人の奮戦に期待しようじゃないか」

摩利の言うとおり、ここで出来ることといえば、同級生の勝利を祈ることだけである。

そして、準決勝第一試合が始まった。

 

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