今回は魔法開発についての独自解釈がありますがご了承下さい。
原作に書いてないからよく分かりません。書いてあっても、よく分かりませんが。
深雪と愛梨も順調に予選を突破し、決勝に進出する六人中三人が、舞姫と縁のある人物となった。
そんな中、予選第二試合において深雪が使用した飛行術式に、会場は驚愕に包まれていた。
そして、大会委員からの要請で調査を受けた飛行術式は、他の各校に提供され、技術者達を悩ませていた。
三高では、愛梨が真紅郎や自身のエンジニアと頭を抱えていた。
「結論から言えば、一色さんなら飛行術式を使える」
真紅郎の言葉に、愛梨は喜ぶことなく顔をしかめたままであった。
「だけど、一試合フルで動くとなると別だ。ここ術式は、断続的にサイオンを吸い上げられるから、使いこなすには、並外れたサイオン量がなくちゃいけないね」
「そうね。私も自信がないわけじゃないけど、難しいわ。でも、他の選手も使ってくるとなれば」
「うん。優勝するのは難しくなる。それに、一高の司波選手は勿論だけど、二高の鳳選手が怖い」
一度飛行術式を使った深雪は当然脅威だが、輝夜こそ、さらに警戒しなければならない選手であった。
「吉祥寺くんなら知っていると思うけど、輝夜さんは十七家の若手の方々でもトップクラスの実力をお持ちよ。そんな方が、飛行術式を使いこなせないとは思えない」
愛梨の表情を見れば、彼女がどう思っているかは一目瞭然であった。
真紅郎と愛梨のエンジニアはお互いに苦笑を浮かべ頷きあった。
「なら、僕たちは一色さんが優勝出来るよう全力を尽くすだけだ」
「絶対に勝ちましょうね」
絶対的な存在とも言えるような存在がいるにも拘わらず愛梨の勝利を信じている二人に、愛梨は笑顔を浮かべて礼を言う。
「ありがとう二人とも。必ず勝たないとね」
そんな愛梨の表情は、真紅郎が少し頬を熱くさせる程に魅力的なものであった。
そして、優勝候補筆頭である輝夜は、提供された飛行術式ではなく、とある術式を持ち出していた。
その術式を見た二高のエンジニアは、困惑していた。
「その、鳳様。本当に大丈夫なのですか?」
「ふふふ。そう心配しなくても大丈夫ですよ。確かに初御披露目ではありますが、鳳の秘伝というわけではありません。鵬の術式ですから、世のためにもなりますしね」
輝夜は大会から提供された、達也の飛行術式を使うつもりはなかった。
その言葉を聞いた他の二高の生徒達は輝夜を説得しようとしたが、理由を聞いた途端、その声は忽ちに消えてしまった。
「それに、私は一高に《天神》になると言ってしまいましたから。ならば、限界を超える位でなければ失礼でしょう」
口調こそ穏やかであったが、輝夜からは聖気ともいえる程の気が迸っていたのであった。
一方一高のテントでは、舞姫が達也と深雪、そして一高の首脳陣を集めていた。
真剣な舞姫の様子に、何事かと思っていたが、次の発言により一同息を呑む。
「輝夜は、多分鵬の飛行術式を使ってくると思う」
「っ!!」
この言葉に、真由美や深雪、そして達也でさえもすぐに声を出すことが出来なかった。
そんな中で、問い返したのは達也である。
「どのようなものか、聞いてもいいか?」
「うん。元々十七家の中にはBS級の魔法を使える人達がいる。そんな人達の魔法を元に作ったのが《羽衣》なんだけど、これは十七家の他には使える人がいないし、大会の基準的に使えないはず。そもそも祭事用の側面があるし」
「……そのような術式があったこと自体驚きだが、では、鳳選手が使うというものは何なんだ?」
十文字の言葉に促され、舞姫は話を続ける。
「FLTが飛行術式を発表してから、鵬では大詰めだった公開飛行術式を開発したの。コンセプト自体は似ていたから、一般化するのはスムーズにいったみたい」
「流石は鵬技研だな。まさか発表されて一月で改良術式を出すとは」
達也は素直に鵬技研の技術力の高さを称賛していた。開発者である達也からしてみれば、盗用されたとも言えるものだったが、彼自身が名を売ろうとしたものではないことに加え、鵬技研の高潔さを知っていたからである。
「鵬の人達はFLTの術式を見て狂喜乱舞してたけど。で、その飛行術式を御披露目するのが九校戦。因みに開発者は輝夜の名前になっているはず」
「こ、高校生の鳳さんが開発者なの!?」
トーラス・シルバーも片方は高校生だったが、そんなことを知らない真由美は、輝夜の偉業に叫び声をあげた。
「輝夜は十七家の《至宝》を受け継いだ一人。《天神》という名前はその証。奇跡を起こすことが出来る輝夜が《天神》になるといったのなら、必ず輝夜は《月詠》を使ってくるはず」
間違いだ、などとは微塵も思ってもいないかのように言い切る舞姫。その姿に、真由美達の横に控えていた服部が問いかける。
「凰。その術式を見ることは出来るのか?」
「ん。私も受け取ってるから。CADにも入れてある」
舞姫は深雪が使っているものと同じタイプのCADを取り出す。
「確認の為に、分かりやすくやるね」
舞姫は、CADを構えると詠唱を始めた。
「《穢れなき月夜、舞うは陽の弟なりて、いと美し》」
三節と短い詠唱ながらも、室内の空気がガラリと変わる。そして、舞姫の周りを細やかな燐光が包み込み、舞姫の体がふわりと浮かび上がる。
「感覚的にはどうだ?」
空中でクルクルと軽やかに舞う舞姫に、達也が声をかける。
「FLTのよりもスピードが出る分、サイオンの消費が早いかな。《月詠》を使った輝夜とFLTの術式を使った深雪とが戦ったら互角だと思う」
深雪と互角だという言葉に、達也は考え込む。そんな達也に、舞姫が一言。
「つまりは、真っ向からのタイマン勝負。《天神》の輝夜は、まさしく幻想の住人だから、深雪でも勝つのは難しいよ」
一高生徒としてではなく、十七家の者として、深雪を挑発する舞姫。
そんな舞姫に、深雪は好戦的な笑みを浮かべて答えた。
「それでこそ九校戦よ。それに鳳選手は三年生で、直接競えるのは最初で最後。こんなに恵まれた試合はないわ」
強者と競えることに歓喜している深雪に、達也や舞姫だけでなく、その場にいる全員が頼もしさを覚える。
「それなら私は深雪を勝たせる。輝夜が《天神》になるのなら、私は深雪を《羽衣天女》にしてあげる」
「《羽衣天女》? 何だそれは?」
舞姫の出した言葉に、全員が首を傾げた。それを尻目に、舞姫は飛行術式が入力されているCADを手にとった。
「《羽衣天女》は、未発表の飛行術式。私達《凰》が、FLTの飛行術式を改良したもの。勝手にしたものだから大々的に公開したら問題だけど、まぁ、悠陽様にFLTに連絡してもらったから、今回は大丈夫」
舞姫のとんでもない発言に、全員が噴き出す中、達也は別の意味で叫びそうになるのを堪えていた。
少なからず苦労して作り上げた飛行術式を、意図も簡単に改良されたことにも驚いていたが、舞姫が煌武院の名前を使ってFLTに連絡をとったことに驚いたのである。
周りに勘ぐられないように端末を確認してみると、膨大な量の着信と、様々な宛先からのメールが届いていた。
達也がこの後の苦労に辟易している隣で、真由美が慌てた様子で舞姫に質問した。
「で、でも、そんな高度な術式を舞姫さんが調整出来るの? いえ、それ以前に、大会に則したものでないと……」
真由美の懸念は最もなものであったが、舞姫はあっさりと頷いた。
「《羽衣天女》は、深雪のCADに入ってる術式が母体だから、レギュレーション的には問題ない。そして、それを組むことについては、私以上に適任者はいない」
「え?」
自信に溢れた舞姫の言葉に、真由美は思わず聞き返してしまう。
そして、新たな舞姫の言葉に、再び室内は驚愕に包まれた。
「《羽衣天女》の作成者は、私」
それは、今回の九校戦で実力を見せつけた達也と同等の技術を持つことを示しており、真由美は頼もしすぎる後輩に、知らぬうちに冷や汗をかいてしまった。