引っかき回します
ブランシェの事件の余波もすっかり消え去り、現在一高は九校戦ムード一色であった。
お祭りモードの中、生徒会室で真由美はため息をついていた。
「はぁ……」
「大丈夫ですか、会長?」
流石に気になったのか、逹也が声をかける。
「あぁ、ごめんなさい。九校戦のことでちょっとね」
「出場選手は決まったはずでしたよね?」
逹也の言うとおり、九校戦出場メンバーは既に決定していた。
「うん。私、アイス・ピラーズ・ブレイクとバトル・ボード。姐さん先輩には負けない。目指せ、優勝」
舞姫は二種目にエントリーしている。しかも、一年生ながら本戦に出場するのである。
「まぁ、選手の方は十文字君と舞姫さんのお陰ですんなり決まったのだけど、技術者が不足してて」
「私は自分でやってるから大丈夫だけど」
舞姫のCADは自分で調整をしている。その言葉に、摩利は目を逸らす。
「ねえ、リンちゃん。やっぱり技術スタッフになれない?」
「無理です。私の腕では、皆の足を引っ張ってしまいます」
鈴音のにべもない答えに、真由美は机の上に泣き崩れる。そんな真由美の頭を撫でていると、舞姫は何かに気が付く。
「じゃあ、逹也に頼んだら? 深雪のCAD調整してるの、逹也なんだし」
舞姫の言葉に、逹也と真由美が立ち上がる。もちろん正反対の意向を持って。
「それだわ! 盲点だった……っ!!」
「ちょっと待って下さい。俺は二科生なんですよ! それに、二科生が九校戦メンバーだなんて前例もない」
「何事にも初めてはある」
「そうそう。大切なのは一歩踏み出すことよ」
逹也は断るつもりなのか反論しているが、真由美と摩利は逃がすつもりはないようだ。一度は一科生からの反発の問題を指摘され引き気味になったが、それは深雪の一言で覆された。
「私は、お兄様に調整をしていただきたいのですが……」
この言葉に真由美達が乗っかり、これでもう逹也は逆転不可能となってしまった。
少し肩を落として深雪と部屋を出て行く逹也を見送る生徒会(+2)一同。
「いやー本当に盲点だったわ。魔工技師志望だって言ってたし、どうして気付かなかったんだろう」
「風紀委員のCADもアイツが管理しているからな。舞姫も早く教えてくれれば良かったのに」
「聞かれてなかったし。それに、逹也の言うとおり、二科生だからどうなのかなって思って」
意外にも舞姫もしっかりと考えていたようだった。
「しかし、舞姫さんのプログラム技術は素晴らしいですよね」
「舞姫さんの? そういえば、しっかりと見たことはなかったわね。舞姫さん、見せてもらってもいい?」
「いいよ」
舞姫は腕に付けているCADを外そうとしたが、ふと思い出したように、持ってきていた鞄の中から大きめの桐の箱を取り出した。
「舞姫さん、それは?」
「アイス・ピラーズ・ブレイク用のCAD。せっかくだし、ウチで新しくもう一本作ってもらったから、調整しようと思って持ってきた」
箱を開けると、そこには神楽鈴が二つ入っていた。その内一つを取り出すと、それを真由美に渡す。
「まぁ、綺麗。一応汎用型なのね」
「うん。あと、鈴の部分も刻印があるから、サイオンを流して鳴らすと発動できる」
鈴を見ると、それぞれに細かく刻印が刻まれていた。
「凄いですね……、CADのとしても素晴らしいですが、これ自体も美術品のように美しいです」
鈴音も舞姫のCADの見事さに嘆息していた。
「これって……もしかして鵬技研のCADですか?」
「うん。ウチで作ってもらったから」
「見せてもらってもいいですか!」
小動物のようなあずさは、舞姫に詰め寄る。舞姫があずさに渡すと、目をキラキラさせながら眺めていた。
「わぁ……まさしく芸術品といえる美しさに加え、刻印の精緻さ。流石はCAD開発の最古参にして最先端ですぅ……」
見ている側が不安になるくらいに顔をとろけさせているあずさ。そんなあずさに、舞姫はもう一つのCADを差し出した。
「そんなにCADが好きならこっちも見て」
舞姫があずさに渡したのは、箱に入っていたもう一つの方のCADである。
「これは?」
「舞を踊るときのCAD。今回は富士山の所に行くから、木花咲耶姫と磐長姫に捧げる舞を踊るから、それ用。こっちは刻印魔法だけだけど、サイオンの流し方を変えることで、いくつかの魔法を発動できる」
舞に使うものとして、先に渡したものよりも更に美しい装飾が為されている。桜や磐をかたどった装飾が多く散りばめられていた。
「凄い……こんなに精巧で複雑な刻印術式、初めて見ました……。五十里君の家のよりも凄いかも……」
五十里君とは、あずさの同級生で今回の技術スタッフの一人である五十里啓である。彼の実家の五十里家は百家であり、刻印魔法を得意とする家である。
「五十里の家は、昔から私達の家で修行をしていた。とはいっても、現代魔法における刻印術式のセンスは凄いと思う」
舞姫はそういうが、いま持っているCADは、現在存在しているCADの中で最高傑作といっても過言ではないだろう。
「まぁ、富士に捧げる舞は奈良時代からやってるみたいだし、特に力の入ったCADなのは間違いない。少し、動かしてみる?」
「えっ? 大丈夫なの?」
真由美の疑問は、魔法を発動させていいのか、ということよりも、自分達に見せてもいいのか、ということであった。
「大丈夫。魔法を使うこと自体は慣れてる。それに、演出魔法だから、被害はない」
舞姫はあずさからCADを受け取ると、その場でCADにサイオンを注ぐ。すると、生徒会室は桜に包まれた。
「わぁぁ……」
「綺麗……」
真由美とあずさが思わず感嘆をもらす。摩利と鈴音も夢のような光景に心を奪われていた。
舞姫は四人の様子をチラリとみると、サイオンの流れを変える。すると、今度は桜から水の流れが生徒会室に溢れ、岩々の間を流れる水の流れは、心が落ち着くほど美しいものであった。
まさしく夢のような風景を魅せた舞姫は、魔法を切る。生徒会室の幻想が霧散し、普段の生徒会室に戻る。
「これが基本のヤツ。舞をするときは、舞いながらだから、自分の位置とか色々考えながら魔法を使うから、もっとたくさん演出する」
「本当に素晴らしいですね。これも舞姫さんが?」
「うん。舞に使う方はメンテナンス程度だけど。競技用の方は、九校戦のレギュレーションに合わせてるから、私がプログラミングしてる。癖があるから、私か鵬の人じゃないと難しいかも」
クセがあるどころではなく、もはやワンオフものである。
「ふむ、では誰を舞姫に付けるか、悩みものだな」
「そうね。いくら舞姫さんしか出来ないと言っても、一人でやらせるわけにはいかないものね」
「しかし、ヘタな人物を付けては逆に舞姫さんの妨げになってしまいます」
三人が悩んでいると、あずさが控えめに手をあげる。
「あ、あのっ、私、舞姫さんのCADを担当したいです!」
「あーちゃんが? 確かにあーちゃんなら問題ないと思うけど」
「それに関しては、放課後の選定会議後に決めることですね。私としても、中条さんが適任かと思います」
一応の賛成を受け、喜ぶあずさ。しかし、舞姫が見つけたあずさの席にあった端末に触れられた時、あずさは悲鳴をあげた。
「ん? あずさ、レポート終わったの?」
「え゛?」
あずさが濁った声を上げた瞬間、無情にも昼休み終了のチャイムがなった。
「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁーっ!!!!」
「南無」
放課後となり、九校戦メンバー選定会議が開かれる。あずさが少し追い込み気味なのは、幸先の不安からである。
「それでは選定会議を始めます」
真由美が開始を告げると、一人の生徒が立ち上がる。
「待って下さい会長! どうして内定メンバーの席に一年生、それも片方は二科生なのに座っているのですか!」
案の定というか、やはり逹也に対する不満は発生した。加えて舞姫に対しても批判が注がれる。
「私、一科生」
「そうではない! どうして一年生が、新人戦ではなく、本戦メンバーの席に座っているのですか!」
逹也は二科生であることで批判されているが、舞姫は一科生にもかかわらず批判されている。ルール上問題はないのだが、部活動に所属しているわけでもなく、過去の実績も特にない舞姫を本戦に出場させるわけにはいかない、というのが反対派の生徒達の言い分である。随分と言われている当の本人は気にした様子はないが、真由美達は困った様に眉をひそめる。
「しかし、二人は風紀委員だし、問題ないだろう」
「そういうことを言っているのではない! 前代未聞だと言っているんだ!」
意外にも二人を擁護する声は多いが、反対する声もまた多い。
「皆さん! 静粛に! 落ち着いて下さい!」
真由美が場を鎮めるべく声を上げるが、中々落ち着かない。それを見かねたのか、十文字が口を開く。
「要するに」
十文字の低く威圧のある声に、白熱していた舌戦がピタリと止まる。
「司波に関しては、司波の実力が分からないからこうして口論となっていると言うことだ。ならば、その実力が証明できれば文句がないということだな」
「ま、まぁ、そうですが。しかし、司波はともかく凰に関してはどうするのですか?」
十文字の意見に、反対派の生徒も納得したが、舞姫の件に関しては不満げである。
「それならば必要ない。それは俺や渡辺、そして生徒会長である七草が確認している。凰に関しては俺から推薦した。これ以上確認するだけ無駄というものだ」
三巨頭の全てから推薦を受けたと聞き、全員が驚きどよめいた。舞姫は少し自慢げにVサインをしていた。
「ともかく司波の件だ。司波の技術を確認するならば、実際に調整をすればいい。何なら俺が実験台となろう」
「なっ!? き、危険です!」
「それならば彼を推薦した私が」
「会長。その役目、俺にやらせて下さい」
真由美が立ち上がろうとすると、それを桐原が止めた。
桐原が立候補したことで、先程までとは違ったざわめきが広がる中、調整機の用意が終わる。
「それでは今から司波君には課題に取り組んでもらいます」
逹也に課せられた課題は、九校戦で実際に使う調整機で、桐原のCADを競技用のものにコピーして、即時使用可能な状態に調整することだった。
「……スペックの違うCADの設定をコピーするのはお勧めできないのですが」
「え?」
逹也の呟きに真由美が首を傾げたが、逹也はそれに答えることなく、桐原からCADを受け取り作業を始める。
桐原が調整機にサイオンを注ぐと、逹也側のモニターに不規則な数字の羅列が流れ始める。それを眺め、キーボードに打ち込む姿を、あずさを始めとした技術スタッフが見つめていた。訝しげに見つめているものが多いが、何人かの技術スタッフは感心して見つめていた。
「終了しました」
調整が終わり、CADを桐原に渡す。
「それじゃあ桐原君。テストを始めて下さい」
桐原は竹刀を持ち、高周波ブレードを発動させる。魔法はぶれることなく、素早く発動した。
「調子はどうだ、桐原」
「はい。何の問題も違和感もありませんね。いつも通りです」
桐原の言葉に、あずさは顔を明るくする。しかし、他の技術スタッフが疑問を投げかける。
「一応の技術はあるようですが、代表レベルとまでは言わないのでは?」
「仕上がり時間も平凡ですし」
逹也のやっていた作業に疑問を抱いているものも少なくなかった。
「わ、わたしは司波君のチーム入りを強く指示します!」
逹也を支持するあずさに視線が注目する。
「司波君は、桐原君のサイオン波の計測結果を原データから調節理解して、それを最大限反映させる為に、全てマニュアルで調整をしていました。高校生レベルをはるかに超えた高度な技術です!」
「そうかもしれないけど、出来上がりが平凡なら意味がないのでは?」
「中身は違います! あれだけ安全マージンを取りつつ、効率を低下させないことは凄いことです!」
「でもそれなら、その分を効率アップに向ける方が適切じゃないか?」
反対の意見を言われて、反論が出来ないあずさ。そこで服部が動こうとすると、その前に舞姫が前に出る。
「凰? どうした?」
いきなり出てきた舞姫に、今まで反論していた生徒が少したじろぐ。そんな生徒に舞姫は神楽鈴のCADを持たせる。
「な、何だいきなり」
「今回、九校戦で使うCAD。まだ、組み上げたばかりだから、殆どまっさら。これに、普段使ってる術式をコピーしてもらえば、逹也の実力も分かる」
「し、しかし、それだけでは誰でも出来るのでは?」
真っ新なCADに術式をプログラミングすることは、この生徒の言うとおり殆どの者が出来ることである。
しかし、舞姫は首を横に振った。
「これは、CADの中でも最難関。刻印魔術も入ってる。それに影響させず、魔法を組み込むのは慣れてないと難しいはず。今回はスペックを落としたCADだから、普段使ってるCADはオートクチュールだから、競技用と比べものにならないスペック。それに、私が違和感を覚えないレベルで使えるようにするのは、今回の九校戦でのCAD調整の中でも、最難関だと思う」
舞姫の言っていることは、一歩間違えると傲慢と受け取られても仕方がない。しかし、あずさが呟いたことによって、そのように取られることはなかった。
「舞姫さんのCADって、鵬技研の……」
「鵬技研って、本当に!?」
「そこのオートクチュールだなんて、嘘じゃないのか!?」
日本が世界に誇る鵬技研の名に、先程舞姫が言っていたことが嘘でないことを知る一同。
「……舞姫のCADは俺でも難しいのだが」
「嘘。逹也ならいける。じゃあ、よろしく」
舞姫は渋る逹也を余所に、CADを二機テーブルに置くと、一人で調整機の所へ行ってしまった。
逹也はため息をつきつつ、真由美に目で確認を取る。真由美も舞姫が疑惑を晴らしてくれようとしているので許可をした。
「舞姫、初めてくれ」
「ん」
小さく返事をすると、舞姫は調整機にサイオンを流す。先程と同じようにスクリーンに無数の文字列が現れ始めるが、その量が違う。調整機がデータを読み込むだけで数分の時間が掛かっている。
「す、凄い情報量」
スクリーンを見つめていたあずさが絶句するほどの情報量を、逹也は少し考えると迷うことなく指を動かし始めた。流石の逹也も、舞姫が最高難度というCADの調整には時間が掛かる。しかし、それでもこの難易度を考えれば、十分早いものであった。
「ふぅ……。終わったぞ、舞姫」
「ありがと。ごしゅ……会長。魔法試していい?」
流石にご主人様は自重した様だ。
「えぇ。でも、破壊力が強いのは止めて下さいね」
真由美の不安げな問いかけに、舞姫はこくりと頷く。そして、CADを手に取り、柄の部分のボタンを操作し、魔法を発動させた。
「きゃっ」
その瞬間、急に感じた冷気に、あずさが小さな悲鳴を上げる。その声に、もしくは冷気に見学していた者皆が驚く。
「完了。流石は逹也。完璧」
「ありがとう」
舞姫と逹也は、この結果に満足していたようだが、これといって結果が見えず、真由美は慌てて何が起きたのか、舞姫に尋ねる。
「ま、舞姫さん。今ので分かったの?」
「うん。証拠は……これ」
舞姫は、真由美の席に置いてあったコップに入ったお茶を手に取り、それを何の前触れもなく、逆さにひっくり返す。
何をしているのかと慌てた一同だったが、中に入っていたお茶は、一滴たりともこぼれていなかった。
「部屋にあるお茶を全部凍らせた。簡単な冷却魔法だけど、情報処理速度も、何の違和感もなかった。精度もバッチリ。やっぱり出来た」
「随分と苦労したぞ。普通のCADとは、まるでコンセプトが違う。鵬技研独特のプログラミングだな? 同型のものだったから助かったが……」
やはり逹也でも難しい作業ではあったようだが、それを難なくこなしたのだから、逹也の腕は確かに証明されたといっていいだろう。
「いや、しかし特殊すぎるというか……」
反対していた者達も認めつつあるようだが、まだ渋っていた。実力云々ということよりも、二科生ということに対して不満があるのだろう。
「私は司波のメンバー入りに賛成いたします」
それを服部が賛成を示すことで封殺する。
「桐原のCADは競技用のものよりもハイスペックです。それにも拘わらず、使用者に違和感を感じさせなかったことは、高く評価されるべきです。加えて、凰のCADは、桐原のものを凌ぐエキスパート級、いえ、オートクチュールのもの。しかも、調整の難しい鵬技研のCADを、はるかに劣る競技用のものとして違和感なく使えるようにした。それほどの実力をもつ者を、一年生だとか前例がないなどといって省く余裕は、今の一高にはありません」
逹也を風紀委員に所属することに異を唱えた服部のまさかの支援に、真由美はもちろん逹也も驚いた表情をしていた。
「服部の意見は尤もだ。司波は代表としてふさわしい実力を見せた。俺も司波のエンジニアメンバー入りを指示する」
十師族でもあり、会頭でもある十文字の言葉に、反論する者は現われず、逹也の九校戦エンジニアメンバー入りが正式に決定したのであった。
逹也のメンバー入りが決定した日の放課後。深雪は一足先に帰宅していた。一人ではなく、舞姫と一緒に。
「……もう少し砂糖入れて?」
「えぇ。……このくらいかしら?」
「うん。逹也ならこのくらいがいいと思う。頭使ってばっかりだし、糖分必須」
確かにそうなのだが、深雪は舞姫の言い方にクスリとしてしまう。
「後は焼くだけ。コーヒー淹れる」
舞姫はオーブンのことを深雪に任せ、豆を挽き始める。キッチンにクッキーの焼ける匂いと、コーヒーの香りが漂い始める。
舞姫がコーヒーを手で落としていると、それを深雪が後ろから眺めていた。
「終わった」
ポットを持ってリビングに向かう。深雪が用意していたコーヒーカップにコーヒーを注ぐと、リビングの中はコーヒーの香りで溢れた。
「じゃあいただくわ。……あぁ、やっぱり舞姫の淹れたコーヒーには敵わないわ。とても美味しいわよ」
「良かった。……うん、おいし。今日は少し疲れたからすっきりめに淹れたけど、ちょうどよかった」
舞姫も自分自身の淹れたコーヒーの出来映えに満足のようだ。
「それにしても、舞姫が自分から出てくるなんて、今日はどうしたの?」
話は選抜会議のことに移る。
「うじうじしすぎで面倒くさそうだったから。それに、技術者スタッフの実力も気になったし」
「では、あなたから見たその実力はどうだったの?」
「まぁまぁ、かな? というか、逹也は反則」
舞姫の言うとおり、逹也がエンジニアとして動くと言うことは、他校の一歩も二歩も先を行くことを意味する。
「それをいうなら、あなたが選手として出場するのも反則じゃないかしら? 凰の方々もいらっしゃるのかしら?」
「うん。《みんな》で来るって。だから頑張る」
むんと力を込める舞姫だったが、深雪は舞姫の言葉に頬を引きつらせる。
「その……あなたの鳳凰の凰(おう)家の方々、なのかしら?」
「ううん。四家みんな。分家の人達は何人かしか来ないみたいだけど」
舞姫は実家の者達が来てくれることを楽しみにしている様だったが、深雪は九校戦が荒れることを確信したのであった。
この一年、やりたい放題である