IS~平凡な俺の非日常~   作:大同爽

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はじまるよ♪


プロローグ

 二月中旬。行きたい高校も推薦を貰い、同級生たちがうんうん唸りながら勉強してる中、俺は毎日をぐうたら生きていた。

 学校では入試対策がほとんどのため、推薦で進路の決まった俺にはほぼ関係ない。最後の定期テストも先週終わった。家に帰ればパソコンでゲームしながら深夜アニメの録画を見る。まったくもって天国だ。

 そんな俺の元に届いた知らせ。なんでも女性にしか動かせないはずのISを動かした男性が現れた。

 ISの正式名称は『インフィニット・ストラトス』。宇宙空間での活動を想定して作られたマルチフォーム・スーツ。

 だが製作者の意図とは別に宇宙進出は一向に進まなく、とんでもないスペックを持っている機械は兵器へと変わってしまった。戦略兵器と呼ばれるほどに。だがそれは各国の思惑によりスポーツへと落ち着いた飛行パワードスーツとなっている。

 そんなISを動かした男性が現れたことで全国の未成年者を対象にISの起動実験を行うらしい。ちなみに強制参加。成人男性は希望者のみ参加らしい。

 そんなわけで今日、俺は自分の通う中学校の体育館にて全校男子生徒の並ぶ長蛇の列に並んでいた。いい加減立ちっぱなしで足が痛くなってきた。

 

「へい、颯太。どうするどうする?もし俺らがIS動かしてみ?一躍時の人になれるぜ?」

 

 俺の後ろから声をかけてきたのは親友の山本卓也。この学校でよくつるむメンバーの一人。ちなみに俺が特に仲がいいのはこいつを入れて三人。後の二人は、

 

「卓也、そんなマンガみたいなこと起こると思うか?」

 

 俺の前に並んでいる眼鏡をかけた少しぽっちゃりとした体形の大下信久が言った。後の二人のうちの一人だ。

 

「ちょっとは考えるんじゃね?だってIS動かせば、あのIS学園に入学だぜ?女の園だぜ?こんな片田舎の高校じゃなくて、各国のエリートたちが集まる超名門だぜ?しかも今なら男子は自分とあの織斑なんたらってやつだけだぜ?ハーレムじゃん」

 

「確かにな。IS学園に来るやつは各国のエリート、しかも大金持ちな奴だっている。代表候補生や国家代表になればそれだけで収入があったりするらしいから。そんなやつと付き合えば、逆玉だな」

 

 卓也の言葉に同意したのは、卓也の後ろに並んでいる加山智一だ。俺の仲のいい友人最後の刺客。

 

「でもまあ、現実的に考えれば普通の高校に行く方が楽しいだろうけどな。IS学園に行けば確かにハーレムだけど、その分勉強とか大変だと思うぞ。普通の高校の勉強に加えてISの勉強も出てくるんだからさ」

 

「「ですよねー」」

 

 俺の言葉に後ろ二人が落胆の顔をする。

 

「勉強を取るべきか、ハーレムを取るべきか。そこが問題だ」

 

「……うん、まあまずは動かせないと意味ないけどな」

 

 本気で苦悩する卓也に信久が呆れ顔で言う。

 

「でも、夢ではあるよな。女の園のハーレム」

 

「「「なー」」」

 

 俺たち四人は毎日だいたいこんな感じだ。思春期真っ只中な男子四人。昨日見た深夜アニメの話で盛り上がったり、どのアニメのどのキャラがかわいいだとか、こんな漫画の主人公みたいになりたいだとか、このラノベが面白いだとか。

 何も非日常なことなど起きない。起きるといえば誰か(主に卓也)がフラれ、それを他三人で慰める。その程度のことだ。平凡だけど楽しい毎日を送っている。ちなみに四人とも彼女いない歴=年齢だ。

 さて、そんな馬鹿話をしているといつの間にか順番は信久の番になる。

 

「では、次の方」

 

「はい」

 

 監視員の女性に呼ばれて一歩前に出る信久。

 そこにあったのはまるで鎮座するように置かれたIS。日本の量産型IS『打鉄』だ。

 

「これに手を置いてください。適性があれば起動します」

 

「はい」

 

 説明を受けた信久が手を伸ばし、打鉄に触れる。

 もちろんうんともすんとも言わない。

 

「まあ、そりゃそうだ」

 

 俺たちの方を向き、笑いながら言った信久。

 

「はい。ありがとうございます。では、次の方」

 

 信久が指示に従って避ける。そして、俺の番が来る。

 

「では、これに手を置いてください。適性があれば起動します」

 

 目の前にやってくるとそのISのなんとも言えな雰囲気を感じる。

 

「えい」

 

 冗談めかして手を伸ばし、ISに触れる。

 

「へ?」

 

 てっきり先ほどの信久のように何も反応がないと思っていた俺の頭の中に突然、キンッと金属質の音が響いた。それと同時に頭の中に流れてくる膨大な量の情報。

 ISの基本動作、操縦方法、性能、特性、現在の装備、可能な活動時間、行動範囲、センサー精度、レーダーレベル、アーマー残量、出力限界等の情報が入って来る。

 そして、その情報を理解し把握できる。視覚野に接続されたセンサーが直接意識にパラメータを浮かび上がらせて、周囲の状況が数値で知覚出来た。

 

「こ、これは!」

 

 横にいた監視員の女性も驚愕している。

 

 

 こうして俺の平凡な日常は終わりを告げた。




さあ始まりました。
これからお付き合いのほど、お願いします。

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