IS~平凡な俺の非日常~   作:大同爽

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第95話 王冠の行方

「ぐ……がはっ……。まだ……まだだ!」

 

「だろうね!」

 

 爆発のダメージを耐え、立ち上がろうとするオータムに俺は追撃を加えるべく瞬時加速で急接近する。

 

「てめぇ!?このっ――」

 

「甘い!!」

 

 俺の攻撃を防ぐために八本の装甲脚を集中させるが、そんなオータムに向けて、俺は『八咫烏』の装着された左腕を振りかぶる。

 

 バキッ!!

 

 金属の折れる音と共に『八咫烏』のエキゾースト・ヒートのよって八本の装甲脚が砕け散り、後方へとオータムが吹き飛び――

 

「もういっちょ!!」

 

 が、それを《火神鳴》で掴み、強引に引き戻しながら『八咫烏』の装着された右腕で再度殴る。

 

「ぶっ飛びな!」

 

 俺へと帰って来る衝撃を抑え込みながら見ると二発目のエキゾースト・ヒートによって後方へと吹き飛び、そのまま壁の一部を崩しながら倒れるオータム。

 

「颯太君!そいつ――」

 

「はい!わかってます!」

 

「く、くそ……ここまでか……」

 

 ブシュッ!と圧縮空気の音を響かせてオータムのISが本体から離れる。

 

「なっ!?」

 

「颯太君!」

 

 光を放ち始めたそれに嫌な予感がして咄嗟に体の前に《火打羽》を広げる、と、同時に師匠が俺に覆いかぶさる。

 コンマ数秒後、それは大爆発をした。

 

「大丈夫?颯太君」

 

「な、何とか……」

 

 俺に覆いかぶさる師匠、その後ろで《火打羽》を広げ、さらに最大展開された水のヴェールが俺たちを包んでいた。

 

「あっ!あの女は!?」

 

 俺は周りを見渡そうと身を起こすがどこにもオータムの姿はなかった。

 

「逃げられたわ。ISのコアも直前に取り出してるわね。装甲と装備だけを爆破したみたい。無茶するわね。下手すれば自分だって危なかったでしょうに」

 

「くそうっ!」

 

 俺はどうしようもない悔しさを籠めて拳を地面に叩きつける。

 

「でも颯太君も一夏君も無事でよかったわ」

 

「……まあそうですね…あっ!一夏は!?」

 

「安心して。ちゃんと保護したわ」

 

「よかった……」

 

「颯太君もよくやるわね。自分が相手してる間に一夏君に援軍を呼びに行かせるなんて」

 

「まあ『火焔』の方が《火打羽》があるんで足止めはできるかな…と」

 

「そっか……ところで………」

 

「はい?」

 

「いつまで私の胸に顔を押し付けて話してるのかな?」

 

 

 

 〇

 

 

 あれから逃げたオータムを一度はセシリアやラウラ達が追い詰めたが、新たに現れたISによって取り逃がしたそうだ。

 今回自爆したIS『アラクネ』に加え、その援軍としてやって来たIS、『サイレント・ゼフィルス』はそれぞれアメリカとイギリスからの盗難機だったらしい。

 特に『サイレント・ゼフィルス』はセシリアの機体、『ブルー・ティアーズ』の姉妹機であり、その基礎データには一号機である『ブルー・ティアーズ』のデータが使われていたらしい。

 これは余談であるが、その報告を聞いた時、セシリアの様子が少しおかしかった気がしたのが少し気になった。

 

 

 〇

 

 

 

「今日は悪かったな、バタバタして」

 

 井口家の面々に加え潮を見送るためにIS学園の校門まで来ていた。

 

「それはいいけど……」

 

「兄さん大丈夫?」

 

「まあこのくらいは平気だよ」

 

 四人の視線は俺の包帯の巻かれた左腕に向いている。

 オータムに蹴り飛ばされたときの怪我は威力はある程度殺したおかげで骨に異常はなかったが、軽い打撲だった。

 学園にテロリストが来た、しかも俺と一夏が襲われた、なんて言えるわけもなく。結果俺の左腕の負傷は俺がビーストモードになったことでどこかで転んで怪我をしたということにしてある。

 

「まあなんだ……一応は元気にやってるみたいだな。父さん安心した」

 

「あれを見て元気で済ませる父さんすげぇな」

 

 父さんの言葉に海斗が呆れ半分といった顔で笑う。

 

「潮も悪かったな学園の中案内してやれればよかったんだけど……」

 

「い、いえ!その…楽しかったです……先輩のウェイター姿も見れましたし……」

 

「俺のウェイター姿云々はさておき、楽しんでもらえたなら幸いだ。受験頑張れよ」

 

「はい!」

 

 嬉しそうに頷く潮に俺は笑いかける。

 

「父さんたちは今日はどうすんの?」

 

「お義父様たちは私たちが手配しておいたホテルに泊まって明日京都に帰ることになってるわよ」

 

 俺の問いに横にいた師匠が答える。

 

「そうですか。なんかすいません、ホテルの手配までしてもらってたとは」

 

「まあ呼んだのは僕たちだしね」

 

「これくらいは……ね」

 

 と、師匠と同じく見送りに来ていたシャルロットと簪が言う。

 

「なんか何から何までお世話になったみたいで……」

 

「感謝しろよ?」

 

「いや、なんで海斗が威張ってんだよ?」

 

「こまけぇことはいいじゃんよ」

 

 やれやれと言った顔でため息をつく海斗に無性に腹立つ。

 

「兄さん明日の午前中とかは……」

 

「悪い、明日は学祭の片付けがあるから」

 

「そっか……てことは次に会えるのは年末になるのかな……」

 

「よっぽど何かなければな」

 

「そっか……」

 

「……まあ年末なんてあっという間だよ」

 

「……それもそうだな!」

 

 俺の言葉に三人が頷く。

 

「潮も、今度帰るときはちゃんと連絡するよ」

 

「はい!ぜひそうしてください」

 

 潮が嬉しそうに頷く。

 

「おっと、そろそろ行かないとホテルのチェックインまだなんだ」

 

 父さんが時計を見ながら言う。

 

「それじゃあ父さんたちはもう行くけど……まあ体には気を付けろよ」

 

「あんまり危ないことしないようにね」

 

「え?」

 

 二人の言葉に俺は一瞬呆ける。

 

「何年お前の親やってると思ってんだ?」

 

「言わないってことは何かあるんだろうけど…あんまり心配させないでね?」

 

「なんかよくわかんないけど……まあ姉ちゃんたちと仲良くね」

 

「私も…そろそろ父たちと合流します。今日はありがとうございました……」

 

「あ、うん……みんな今日はありがとう……」

 

 手を振りながら去って行く四人を見送りながら、四人の姿が見えなくなるまで俺は手を振り続けた。

 

「………Oh…バレテーラ」

 

「さすが親ね」

 

「颯太の事わかってる……」

 

「なんか羨ましい」

 

 振っていた手を下ろしてため息をつくと、三人も笑いながら言う。

 

「ホント、いいご家族ネ」

 

「…………なんでまだいるんですか?ニコさん」

 

「あら、つれないわネ♡」

 

 視線を横に向けると体をくねらせるケツ顎のオカマがいた。

 

「今回の件で使われたISがうちの『アラクネ』だったってことで、いろいろ調べなきゃいけないのよ。ってわけでもうニ、三日学園に残ることになりそうよ」

 

「そ、そうですか……」

 

 俺はニコさんに警戒を向けながら師匠たちの影に隠れるようにしながら頷く。

 

「じゃあ……ニコさん、これあげます」

 

「ん?これは?」

 

「一夏が今日の劇で被ってた王冠です」

 

 今日のテロリストとのごたごたの時に最終的に俺が手に入れたこの王冠。実はこれを手に入れた人は向こう一週間一夏と同室になる権利を得るのである。

 これを手に入れるためにシンデレラに扮装した女子たちが右往左往する、というのが今回の生徒会の出し物のテーマだったのである。

 

「これがあれば織斑一夏の部屋に寝泊まりできますよ」

 

「あらそうなの?」

 

「あのイケメン織斑一夏との同室になる権利、この学園の女子が喉から手が出るほど欲しがる代物です。お納め下さい」

 

「ふ~ん………」

 

 俺の顔と王冠を交互に見たニコさんは

 

「いらない」

 

 フフッと笑いながら首を振る。

 

「え?なんで……」

 

「だってあの織斑一夏君、確かにイケメンだけど私の好みじゃないんですもの。颯太君と同室になれるなら喜んでもらうけど――」

 

「「「っ!!」」」

 

「あら、怖い。まあ学園近くにホテルとったし、寝泊まりは問題ないわ」

 

 師匠たちに睨まれてものらりくらりとかわしながらニコさんは俺に視線を向ける。

 

「それじゃあ颯太君、また会いましょうね。チュッ♡」

 

「ふんっ!!」

 

 ニコさんの飛ばした投げキッスを真剣白羽どりの様に顔の前で捕まえる。

 そんな俺に微笑みながらニコさんはふりふりと手を振りながら去って行った。

 

「一夏よりモテたのは初めてだけど……嬉しくねぇぇぇぇぇぇ!!!!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「くそっ!あのガキふざけやがって!!」

 

 とある高級マンションの最上階。豪華な飾りであふれかえるその部屋でオータムは苛立たし気に手近なソファを蹴りつけていた。

 

「ふん……無様だな……」

 

「んだとてめぇ!?どういう意味だ!?」

 

 近くの壁にもたれかかっていた少女の言葉にオータムが掴みかかる。

 

「…………」

 

「なんとか言え!このガキが!」

 

「はぁ……織斑一夏のISを奪取に失敗し、井口颯太の暗殺も失敗…〝依頼〟をどちらも失敗したうえ癇癪を起して手あたり次第八つ当たり……これを無様と言わずしてなんと言う?」

 

「っ!てめぇ…その顔切り刻んでやる……!」

 

 鼻で笑う少女に腰からナイフを抜くオータム。

 

「やめなさい、オータム。うるさいわよ」

 

 そんなオータムをいさめるように言った声の主はバスルームから現れた美しい容貌の女性だった。薄い金髪が灯りに照らされ、キラキラと輝いていた。

 

「スコール……!」

 

「怒ってばかりいると老けるわよ。落ち着きなさい、オータム」

 

 スコールと呼ばれた女性はバスローブのままソファーに腰を下ろす。

 

「でもよぉ!」

 

「あなたが〝依頼〟を完遂できなかったのは事実でしょう?事実はちゃんと受け止めないと」

 

「くっ!」

 

 スコールの言葉に悔しそうに顔を歪ませるオータム。

 

「安心しなさい。まだチャンスはあるわ。次こそ完遂して汚名返上しなさい。あなたの実力は私がちゃんとわかってるから」

 

「………ああ」

 

 納得はいかないがとりあえずは落ち着いたようで、オータムはゆっくりと頷く。

 

「今日は疲れたでしょうから、ゆっくり休みなさい」

 

「…………」

 

 不貞腐れたように不満をにじませる顔のままずんずんとバスルームへと歩いて行くオータム。

 

「……まったく、あなたも少しあの子を煽りすぎよ」

 

「事実を言ったまでだ」

 

「………はぁ」

 

 少女の言葉にため息をつくスコール。

 そんなスコールを尻目に少女は部屋を出て行く。

 

「エム、ISを整備に回しておいて頂戴。『サイレント・ゼフィルス』はまだ奪って間もない機体だから、再度調整が必要よ」

 

「わかった」

 

「次はあなたにももっと働いてもらわないといけないわ。万全にしておきなさい」

 

「……………」

 

 スコールの言葉に返事を返さず、少女、エムは部屋を後にした。

 

「……………」

 

 一人部屋に残ったスコールは一つ息を吐き出す。

 

「井口颯太……聞いてた以上の子のようね」

 

 言いながらフフッと口元に笑みを浮かべる。

 

「なかなか面白そうね、彼」

 




今回の話で文化祭のお話もひと段落、次回で一連のお話にも一区切りつけられると思います。

さて、読んでいて気付いたかもしれませんが、実は『亡国機業』の設定に若干オリジナル設定を加えてあります。
どう設定を加えたかは話が進んでいけばわかると思いますのでお楽しみに。


そう言えばいつの間にかお気に入り件数が2900件にいっていたので番外編を描こうと思うのですが、もうすぐ本編話数が100話になるのでそれも一緒にしたいと思います。
なので本編話数が100話になったらお気に入り件数2900件&本編話数100話記念で番外編をしようと思いますのでお楽しみに( ´艸`)
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