IS~平凡な俺の非日常~   作:大同爽

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第98話 部活

「まー、キャノンボール・ファストのことは置いておいて――ねぇ、一夏の貸し出しってまだなわけ?」

 

 と、鈴がふと思い出したように聞く。

 

「今は抽選と調整してる。もう少々お待ちください」

 

「ふーん……」

 

 俺が答えると鈴はなんでもなさそうに麻婆豆腐を食べるが、たぶん内心興味津々なんだろうな……。

 

「ああ、そういえばみんな部活に入ったんだって?」

 

 と、一夏もふと思い出したように言う。

 一夏の部活貸し出しが公表されると同時にみんな何かしらの部活に所属した。

 

「私は最初から剣道部だ」

 

 憮然と答えてるが、箒?お前一学期はほとんど幽霊部員だっただろ?まあ最近はちゃんと部活に顔を出してるらしいが……。

 

「鈴は?」

 

「ら、ラクロスよ」

 

「へぇ!ラクロスか!似合いそうだな!」

 

 ラクロス……あぁ…あの柴咲コウが主演してた少林寺拳法のあれね。

 

「ま、まあね。あたしってば入部早々期待のルーキーなわけよ。参っちゃうわね」

 

 さすが専用機持ちだけあって身体能力は高いようだ。グランドを走り回りながらステッキを振り回す鈴の姿は確かに似合っていた。

 

「セシリアは?」

 

「わたくしは英国が生んだスポーツ、テニス部ですわ」

 

 テニス……あのミニスカートから除く太ももが健康的で非常に素晴らしいスポーツだと思います、はい。

 

「へえ。もしかしてイギリスにいた時からやってたとか?」

 

「その通りですわ。一夏さん、よろしければ今度ご一緒にいかがですか?」

 

「んー、俺テニスってやったことないんだよなぁ」

 

「で、でしたら!わ、わたくしが直接教えてあげてもよろしいですわよ?と、特別に」

 

「おお、それはいいな。じゃあいつか頼む。……そういえば颯太って中学の時テニス部だっけ?」

 

「「「え?」」」

 

 一夏が思い出したように言うと箒、セシリア、鈴が意外そうに俺を見る。

 

「ソフトな、ソフトテニス部。硬式テニスは細かいルールとか違ったりするから知らんぞ」

 

「颯太がテニス……」

 

「なんと言うか……」

 

「似合わないわね!」

 

 言いづらそうにする箒とセシリアとは裏腹に鈴は爆笑しながら言う。

 

「うるせぇ!ほっとけ!」

 

 鈴の言葉にフンッとそっぽを向きながらお茶をすする。

 

「そういえばシャルロットもなんか部活入ったんだっけ?」

 

「うん……料理部にね」

 

「へ~…料理部かぁ~。でもシャルロットってもともと料理上手いのに」

 

「うん…夏休みに颯太のお母さんに料理教えてもらって、ちょっと日本食に興味が出たんだ」

 

「なるほどね~。また何か覚えたら食べさせてくれよ」

 

「う、うん!何かリクエストある?」

 

「ん~……肉じゃがかな」

 

「肉じゃがって……そういえば実家から帰る最終日にもリクエストしてたね」

 

「ああ。単純に好きだし。昔から日本じゃ肉じゃがのうまい女と結婚しろ、なんて女子の必須スキルだったし」

 

「け、結婚っ!?」

 

「あぁ~そういえば言うよな。あれなんでなんだろうな~」

 

 俺の言葉に驚愕しながらも興味深そうなシャルロットと、笑いながら頷く一夏。

 

「う、うん!頑張って覚えてみるね!」

 

「ん。楽しみにしとくよ」

 

 やけに気合いを入れるシャルロットに俺は笑いながら頷く。

 

「簪は……無所属だっけ?」

 

「うん……IS完成させなきゃいけなかったし…部活してる余裕なかったから……」

 

「そっか……でもこれからはできるんじゃないか?なんか興味ある部活とかないのか?」

 

「ん~……特には……」

 

「そっか~。そういえばこの学園、漫画研究会とかアニメ同好会ってないよな。あったら俺もいの一番に所属したのに」

 

 俺は入学当初に配られた部活動一覧を見た時の衝撃を思い出した。

 

「……ないなら作るか」

 

「え?」

 

「ないなら作ればいいんだよ。俺と簪で」

 

「でも…新設部活動の規定人数は確か五人って……」

 

「そんなもん適当に名前借りりゃぁいいんだよ。とりあえずのほほんさんと一夏は確定として」

 

「え?俺!?」

 

 俺の言葉に一夏が驚くが無視。

 

「ぼ、僕もその部活入るよ!最近二人の影響か、アニメとか興味あるし!」

 

「おっ!?いいねぇシャルロット!これで五人!」

 

「でも…他にも顧問の問題が……」

 

「俺、生徒会副会長。権力、ある。どうとでも、なる。OK?」

 

「うっわ!わる~い。汚職役員よ、汚職役員」

 

「なんとでも言え。人は目的のためならばなんだってできる生き物さ」

 

 鈴の言葉にやれやれと肩をすくめながら答える。

 

「でも…颯太そもそも生徒会役員だから他の部活に参加って難しいんじゃ……」

 

「…………この計画は失敗だな」

 

 作る以前の問題だった。

 

「ま、まあ…アニメとか漫画の話ならいつでもできるし……部活があってもなくてもあまり変わらないよ?私は…いつでも付き合うし……」

 

「……そうだな。じゃあいいや」

 

 簪が少しまごまごしながら言った言葉に納得し、笑いながら頷く。

 

「そういえば、ラウラは?」

 

「私か?私は茶道部だ」

 

「茶道部か。ラウラ、日本文化好きだなぁ」

 

 それは果たして日本文化が好きなのか、織斑姉弟の故郷だから好きなのか……卵が先か鶏が先か。

 

「……あれ?そういえば茶道部の顧問って――」

 

「教官……いや、織斑先生だな」

 

 あぁ~そういえば前に聞いて違和感を覚えたんだ。

 織斑先生と茶道部ってなんか不思議な組み合わせだ。

 確かファンの女生徒が一斉に殺到して、正座二時間でふるいにかけたとかなんとか。……二時間かぁ。たぶん無理だな。

 

「ラウラは正座平気なのか?」

 

 一夏が訊く。そういえば外国の人って正座苦手だって聞いた気がする。

 

「無論だ。あの程度の痺れなど、拷問に比べれば容易い」

 

 比べるもんがおかしいだろ。てかドイツ軍そんなことしてんの!?

 

「しかし、ラウラの着物姿って全然想像できないな。今度見せてくれよ」

 

「な、なに?そ、そうか……。いいだろう……機会があれば、な」

 

 ラウラが着物……スレンダーだし似合いそうだな。

 

「い、一着ぐらいはあるといいかもしれんな……。今度買うとしよう……」

 

「ん?わざわざ買うのか?」

 

「着物って結構高いぜ?」

 

「気にするな。今後、使う機会がないともいえないことだしな」

 

「ふーん。そっか。……おお、着物なら初詣の時とかいいなよな。あ、でも年末年始は国に帰るのか?」

 

「い、いや。日本にいるとしよう。……お前がいることだしな……」

 

 ラウラの最後の呟きは残念ながら一夏には聞こえなかったらしい。

 

「お、それならみんなも一緒に行こうぜ。せっかくだから除夜の鐘からな」

 

「悪いがパス。俺年末年始は実家だ」

 

「あぁ~そっか……みんなはどうするんだ?」

 

「僕は颯太の実家にお邪魔すると思う。夏休みにそういう話になったから」

 

「私とお姉ちゃんも……」

 

「不本意ながら、な」

 

 ため息をつきながら不本意を全面に顔に出して訴えるが二人は素知らぬ顔だ。

 

「わたくしは残りますわ!」

 

「まあ、帰国しても面白いことないしね」

 

 セシリアと鈴は残るようだ。まあ予想通りか。後は――

 

「箒は神社の手伝いするのか?」

 

 と、俺と同じ相手に行き当たったらしい一夏が訊く。

 

「夏休みもしてたよな。また終わったら一緒に――」

 

「ば、馬鹿者!」

 

 べしっ!と箒が一夏を叩く。――ん?

 

『〝また〟?』

 

 俺が訊くと、同時に一夏と箒以外の全員が訊き返す。

 

「一夏ぁ!夏休みに何してたか言いなさいよ!」

 

「一夏さん!箒さんとそのような――見損ないましたわ!」

 

「私に隠れてコソコソと……許せんな」

 

 ガタタッと音を立てて三人が立ち上がる。

 

「わぁっ!待て待て!別にやましいことは……なあ、箒!なあ!?」

 

「……なぜそこまで否定する……」

 

「え?」

 

 ぱしん!と一夏が頭を叩かれる。

 

「ふん!」

 

 食事の終わった箒はトレーを持って不機嫌な様子でさっさと立ち去って行った。

 

「……じゃあ、俺も食べ終わったし、部屋に帰――ぶべっ!」

 

 立ち上がった一夏は鈴に強引に椅子に座らされる。

 

「一夏!夏休みに何があったのよ!」

 

「説明を要求しますわ!」

 

「貴様には一度体に教えないといかんようだな」

 

 あ、これ長くなるやつだな。

 

「さて、俺は食い終わったし、みんなは積もる話があるようだ。シャルロット、簪、さっそく三人だけでオタク活動するか。ちょうど面白いアニメ映画のBlu-ray手に入れたんだ」

 

「あ、いいね」

 

「お邪魔する…」

 

「あ、ちょ!待って!」

 

「一夏~、みんな~、あんまり騒がしくしちゃだめだぜ~」

 

 言いながら俺たちはトレーを手に席を立ったのだった。

 

 

 〇

 

 

 さて、三人で俺の部屋にやって来たのだが――

 

「おかえりなさーい♪」

 

 なぜか俺のベッドに寝転がりくつろぐ師匠の姿があった。

 

「ん?どうしたの?」

 

「いや……なんか自分の部屋の様にくつろいでるなぁ~って思いまして……」

 

「お姉ちゃん……不法侵入だよ」

 

「生徒会長権限」

 

「生徒会副会長権限で阻止したいんですが」

 

「認められないわぁ!」

 

「ちくしょうやっぱりかぁ~!!」

 

 俺はガックシとうなだれる。

 

「まあいいや。師匠も見ます?アニメ映画」

 

「うん!見る見る~!颯太君のオススメはハズレないからね~」

 

 楽しそうに言いながら座る師匠。

あぁ~あぁ~僕の枕抱きしめて。寝るときに師匠のにおいがして興奮しちゃうでしょうが!!

 

「あ!映画で思い出した。三人は今度の休み暇っすかね?」

 

 俺はふと思い出し机の引き出しから封筒を取り出す。

 

「私は空いてるけど」

 

「私も……」

 

「僕も特には予定はないかな」

 

「それはよかった。この間うちの社長に映画の無料券四枚、ちょうど見たい話題のアニメ映画の貰ったんですよ」

 

「へ~、いいわね!」

 

 師匠が言い、二人も頷く。

 

「ついでに一夏の誕生日も近いんで誕生日プレゼントも見繕いに行きましょうか」

 

「うん、いいわね」

 

「楽しそうだね」

 

「映画は何見るの…?」

 

「ん~?映画はね~…これ!」

 

 と、三人に映画のチケットを見せる。

 チケットに書かれているタイトルは――『ワシの名は』

 




「ずっと何かを……探してる……」







 明治を生きる人斬り――沖田総司

 戦国を生きる武将――織田信長



「これってもしかして!」

「私たちは夢の中で!」

「「入れ替わってるぅぅぅ!!?」」



 心と身体が入れ替わった二人――



「部下の視線!菓子の買い食い注意!」

「ちょっとノッブ!私の人間関係変えないでくださいよ!」

「「あの人斬り/うつけものはぁぁぁ!!!」」



「伯母上…今、夢を見てる?」



 見ていたはずの夢



「私は……何を……?」

「このままだと今夜……ワシは死ぬ!」



「違う……夢じゃ……なかった!」



 それは星が降った日の奇跡の物語



「ノッブはあの時!」

「ワシは……あの時……」



 あったことのない君を、



「大丈夫……まだきっと間に合う」



探している。



「ノッブ!!!」

「あの人斬りの名が思い出せん!」




「言おうと思ったんです……ノッブが世界のどこにいても、必ず会いに行くって!」



「あの人斬りは誰じゃ!?」

「忘れたくない人!」

「忘れたくなかった人!」

「忘れちゃダメな人!」



「おぬしの名前は!」

「名前は!!」





 奈須きのこ監督  最新作品
      ワシの名は。




















え?君の名は。の予告2に似てる?
まっ!是非もないよネ!

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