IS~平凡な俺の非日常~   作:大同爽

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続きです。


すいません、今日中にあげるとか前回言っていたのにFGOのCCCコラボ周回してたら気付いたら日付変わってました(^^;
殺生院が倒せない(´;ω;`)ウゥゥ
とりあえずKP溜めてます。


さてこれは前回同様番外編、前回の続きです。
まだ前編を読んでいない方はすぐに前編に戻ってください。


お気に入り件数2900&本編話数100話記念番外編「俺が私で彼女が彼で」後編

 俺の一言で凍り付いた空気は全速力で帰って来た一花の登場でとりあえず終止符を打つこととなった。

 その後とりあえずなんとか午前の授業を受け終えた。基本的な知識がISと同じで助かった。

 そして、何とか昼休みを迎え、朝から続く緊張の時間も一時的に休息の時を迎えた。

 

「楓子~ご飯いこ~」

 

 一花が俺の元にやって来る。その一花に続いて三人のイケメン男子とシャルルもやって来る。

 

「その…楓子は体調はもういいのか?」

 

 と、イケメンの中の黒髪のどこかキリッとした侍を思わせる雰囲気の少年が言った。

 さっき携帯の連絡先を確認したときに見覚えのある名前をいくつか思い出す。

 こいつ……箒だな。こっちの名前で言えばたしか≪篠ノ之総司≫だ。

 

「うん、ありがとう。大丈夫大丈夫」

 

「朝から変だったから心配したが、平気そうで安心したよ」

 

 と、短い金髪が少しカールした、透き通るようなブルーの瞳の少年が言った。

 こいつは……セシリアかな?確か名前は≪セシル・オルコット≫。

 

「まあ女の子の日は大変だと聞くし、無理はするなよ?」

 

「なあラインハルト?それセクハラだと思うよ?」

 

 と、銀髪の片目に眼帯を付けた少年にシャルルが言う。

 こっちのラウラと思われる≪ラインハルト・ボーデヴィッヒ≫は向こうと同じくシャルルと仲がいいようだ。

 

「お~い何してんだ?さっさと食堂行こうぜ」

 

 と、現れた黒髪の活発そうな少年が一花の肩に手をかけて言う。

 この感じ…鈴か。たしか≪鳳・小龍(シャオロン)≫だったかな?

 

「ん~……悪いけどおr――じゃない、私、今日はあまり食欲ないからみんなで行ってきて」

 

「え?大丈夫なの?」

 

「う、うん」

 

 と笑顔で答えるが、正直朝からいろいろと起こりすぎて食欲も出ない。

 

「あんまり無理しちゃだめだよ?」

 

 そういう一花を笑顔で見送る。

 ゾロゾロと一花の後をみんなが着いて行く。

 

「………ふぅ~」

 

 俺はため息をつきながら机に突っ伏す。

 やっと少し気を抜ける。

 

「………楓子?」

 

「ん?」

 

 と、机に突っ伏す俺の肩を控えめにつつく人物がいた。俺は顔を上げると

 

「大丈夫?その……借りてたマンガ返しに来たけど……改めた方がいいかな?」

 

「………………」

 

 誰かっぽいとかそういうのは置いておいて俺はぼんやりと思う。

 何この可愛い生物は。男だよね?

 八幡の戸塚への気持ちってきっとこんな感じなんだろうな。

 

「その…大丈夫?」

 

「はっ!」

 

 心配そうに俺の顔を覗き込む少年の顔でぼんやりしていた思考が少し戻る。

 その少年は少し長めの癖っ毛の髪の小柄な眼鏡をかけた少年だった。

 

「……なあ、少年。ぶしつけで悪いが……抱きしめてもよかですか?」

 

「ええ、楓子!?きゅ、急に何!?」

 

 俺の言葉にワタワタと顔を赤く染めて慌てる少年。やばい可愛いなおい。

 なんていうか小動物系草食男子って感じだ。

 

「楓子~」

 

 と、話してるとシャルルが帰ってきた。

 

「あれ?釵も来てたんだ――ってどうした?顔赤いよ?」

 

「い、いや!何でもない!いつもの楓子の悪ふざけだと思うから!」

 

「ふ~ん。楓子も大概にした方がいいよ。反応が面白いのかもしれないけどやりすぎちゃだめだよ」

 

 と、輝かんばかりの貴公子スマイルを浮かべるシャルル。

 てか今〝カンザシ〟って言いました?

 そういえば携帯の連絡先に≪更識釵(かんざし)≫ってのがあったな……つまりこの小動物系草食男子がこっちの世界の簪か!!?

 

「……どうしたの、楓子?」

 

 自分の発言のアレ具合に思わず顔を覆ってしまう。

 釵くん=簪だとしたら、俺は簪に向かって「抱きしめてもいい?」と言ったのと同義であるということ。想像しただけで羞恥で死にたくなった。

 

「うん……まあ自分の発言には責任を持たないと……って自己嫌悪してるところ?」

 

「よくわからないけど、大丈夫?」

 

「大丈夫じゃない……ごめん釵くん。これからはもっと自分の言葉に責任持ちます……」

 

「あ……うん……。なんか楓子…いつもと違う?いつもなら〝くん〟なんてつけないし……」

 

 頷きながらも首を傾げる釵くん。

 

「と、ところで!シャルルはなんで戻ってきたんだ?みんなで食堂に行ったんじゃなかったか…な?」

 

 急いで話題を変えようとしたせいで口調に気を遣うのを忘れて無理矢理修正する。

 

「あ、うん。楓子が食欲ないって言ってたのが気になったから、適当にパン買ってきたんだ。楓子もよかったら1個くらい食べておいたら?」

 

「あ、ありがとう……」

 

「体調の悪い楓子を一人にしておけないからね」

 

 うおぉ!なんだこの爽やかイケメンは、井口颯太には絶対にできない!

 

「え?楓子…体調悪いの……?」

 

「ん?うん…まあ……」

 

 心配そうに訊く釵に頷く。

 

「だから…僕が来た時机に突っ伏してたんだ……ごめんね、体調悪いのに……」

 

 シュンとなる釵になんとも言えない感情を感じる。

おかしい、おかしいぞ。なんだか動悸が激しい。もしかしたら本当に風邪かもしれない。この子は男子。落ち着け、落ち着いて一句読むんだ。

『病気かな? 病気じゃないよ 病気だよ(病気)』

これは病気ですね。まず一句読んでる時点でもう病気。

 

「大丈夫大丈夫!気にしなくてもいいから!」

 

「うん…ありがとう」

 

 と、俺の言葉に釵が笑みを浮かべる。守りたい、この笑顔。

 

「さて、せっかくだしシャルルが買ってきてくれたパンを――」

 

「おや?楓子ちゃんが体調悪いって聞いて来てみたが…案外平気そうだね」

 

 シャルルからパンを受け取ろうとしていると、新たな人物がやって来た。

 

「やあ、楓子ちゃん。調子はどうだい?」

 

 そう言うその男は遊び人風の年上の色気のある男だった。右手に持った扇子を口元にあてていてその仕草もどこか色っぽい。

 

「楯無さん、相変わらず情報が早いですね」

 

「やあ、シャルル。大事な弟子のことにはいつでもアンテナを張ってるのさ」

 

 おい、待て。楯無さんつった!?楯無さんつった!?楯無さんって言いました!?シャルルさん楯無さんって言いました!?

 そう言えば携帯の連絡先でも楯無さんだけは元のままで、あれ~?とは思ったけど……この色っぽいイケメンが楯無さん!?この!遊び人風の色男が!!?

 

「おいおい…俺の顔をジッと見つめて…お兄さんに見惚れちゃってたか?」

 

 楯無さんだぁぁぁぁぁぁ!!!!!

 この人絶対楯無さんだぁぁぁぁぁぁ!!!!!

 この言い方、一人称が「お兄さん」なあたり楯無さんっぽい!!!!!

 

「……あれ?無反応かい?いつもの楓子ちゃんならもうちょっと、こう……」

 

「それで!師匠…はなんでここに?」

 

「ああ…まあ楓子ちゃんが心配でね。思ったより元気そうで安心したよ」

 

 言いながら自然な流れで俺の頭をポンポンと撫でる。

 なるほど、この自然な流れがイケメンのなせる技か。凡人でフツメンの俺には決してまねできねぇ!

 

「さて……せっかく来たわけだし俺も一緒にお昼にしようかな。釵もどうだ?」

 

「いい…かな……?」

 

「もちろん。ね?楓子」

 

「あ?…ああ……」

 

 と言うわけで昼飯は四人で食べた。

 なんかメンバー的には普段と変わらないのにものすごく落ち着かなかった。

 

 

 〇

 

 

 昼飯の後は一つ授業を挟んで体育だった――のだが

 

「井口さんは……あの…つらいようなら見学でもいいですよ?」

 

 と、顔を赤らめて言いにくそうに言ってくれた山田先生のご厚意に甘えることにした。

 というか下手に参加してなんかやらかすのはこれ以上楓子ちゃんの格を貶めそうなので助かった。

 そんなわけで体育の授業は見学、授業が終わってからは一花の着替えを待って教室へ戻る。

 

「でも大丈夫?もう体調はいいの?」

 

「あぁ…うん。まあ…ぼちぼちかな……」

 

 一花の言葉に曖昧に濁す俺。

 

「ホントに~?なんか朝から変だよ?」

 

「だ、大丈夫大丈夫!ホントに!ね!?」

 

「ん~……まあそういうならいいけど……」

 

 と、訝しげにつぶやきながらも最後に笑みを浮かべて

 

「ホントにしんどい時はちゃんと言ってね」

 

俺の額をツンとつつく一花。

 可愛いなぁちきしょう!!!!素でやってんだもんな!!!!!

 これが箒たちの見え方を俺目線に変えた一夏なんだろうなぁ。そりゃ惚れるわ。

 ――そんなことをやっているうちに俺たちは教室に帰って来たのだが

 

「きゃあぁぁぁ!!!」

 

 ドアを開けた一花は悲鳴とともにすぐにドアを閉める。

 と言うのも、ドアの向こうの教室ではまだ大半の男子たちが着替えの途中の半裸だったのだ。半裸って言うかむしろパンイチだった。

 

「もぉ…ホント男子って最低!ちゃんと着替えててよ!」

 

 プンスカ起こる一花ちゃんの脇で俺はちらりと見えた景色に驚愕していた。

 総司とかシャルル細身のくせに胸筋やべぇ!あれはもはや雄っぱいだよ!雄っぱい!

 あれか!?おっぱいの大きな人はこっちでは雄っぱいが大きいのか!?

 

「お待たせ~。もう入っても大丈夫だよ~」

 

 俺のしょうもない思考はのほほんさん(男)がドアを開けて変わらぬ間延びした雰囲気でダボダボの袖を振るまで続いた。

 

 

 〇

 

 

 

「だぁぁぁぁ!疲れたぁぁぁぁ!!」

 

 夕食後、総司たちとゲームをすると言って出て行った一花を見送った俺は一人ベッドに倒れ込む。

 

「きつかったぁぁぁぁ!もう何なんだよこの世界!周りは男男男!気が変になりそうだよ!」

 

 俺はバタバタと手足をばたつかせたのち、起きあがる。ちなみに夕食後に部屋に帰って来てから動きやすいジャージに着替えてある。

 

「とりあえず……マンガでも読んで気分替えよ」

 

 言いながら本棚を見る。

 本棚には数種類の少女漫画は混じっているものの、そのラインナップの傾向はそれほど俺と差はないようだった。

 楓子ちゃんと俺の趣味嗜好は結構似通っているようだ。

 

「さてさて……どれ読もうかな………ん?なんだこれ?」

 

 本棚を物色していた俺は一番下の段に収められた大きな段ボール箱に視線を向ける。

 

「でかい箱だな……何入ってんだろう?」

 

 俺は箱を出し、ふたを開けてみる。

 中に入っていたのは大量の小説や漫画だった。

 

「なんでこいつらだけ本棚に入れてないんだろう?入れるスペースがなくなったとか?」

 

 疑問に思いながら俺はその中から一冊を手に取る。サイズ的にライトノベルかな?

 

「えっとタイトルは……『鬼畜ギャルソン ハーフボーイをハフハフ!』――これライトノベルのライトじゃないやつだ!!」

 

 しかもよく見たら帯に「シリーズ第21弾!待望の書籍化!」なんて書いてある。いや、シリーズ続きすぎだろ!!!

 他にも出るわ出るわ。全体的にピンク色の表紙の物、タイトルからして明らかにアレな物、薄い本、様々な漫画・小説がその箱の中に収められていた。

 ジャンルは様々だったが内容に共通点を挙げるならそれは、すべてBでLな物ばかりだということ、しかもほとんどがもはやエロ本だった。

 

「ダメだコイツ、腐ってやがった」

 

 楓子はどうやら腐女子だったようだ。

 まあ別に?俺はBLを否定するわけではない。

 俺はノーマルなのでアメリカの時のようなことが無い限り、人の趣味にとやかく言うつもりは全くない。

本を元通り収め、段ボール箱を戻そうとすると、俺はふと段ボールの中に一つ異質なものを見つけた。

 

「これは……ノート?なんでこんなところに……」

 

 俺は気になり中を開いてみた。するとそこにはびっしりと文字が書きこまれていた。

 どうやら何かの物語のようだ。

 俺は内容に視線を巡らせる。

 

 

 

 

 

 

『だ、ダメですよ織部先生!僕たちは男同士なのに!』

 

『それが何だって言うんだい?君だってそう言いながら、ここをこんなに熱くさせてるじゃないか……』

 

『あっ!』

 

 意地悪い笑みを浮かべながら織部の手が佐藤の下腹部を下着の上から這う様に撫でると、佐藤の口から熱っぽい声が漏れる。

 

『まったく……小柄な割に、君のここはずいぶんと自己主張が激しいようだね、佐藤先生?』

 

『ああ!やめて…やめてください織部先生!先生にそんなことをされたら……僕はもうおかしくなってしまいそうです!』

 

『おかしくなってしまえばいいじゃないか。そのまま何もかも忘れて、俺に身をゆだねるんだ』

 

 そう言いながら、まるで焦らすように、ゆっくりと織部の手が佐藤の下着の中に侵入して行く。

 

『あぁ!!!織部先生…織部先生!!!!』

 

『いいぞ、佐藤君。そのまま…そのまま素直になってしまえ!さぁ?君はどうしてほしいんだい?』

 

『先生!僕は…僕は……!!』

 

 佐藤は今だ自身の欲求とその身に残った少しの理性の狭間で揺れる。

 しかし、織部はそんな佐藤をあざ笑うかのように、その佐藤のいきり立った――

 

 

 

 

 

 

「自作のBL小説じゃねぇかぁぁぁぁ!!!」

 

 俺は読んでいたノートを地面に叩きつける。

 

「何やってんだこの女ぁぁぁぁぁ!これ…織部と佐藤って……織斑先生と山田先生じゃねぇかぁぁぁぁぁぁ!!」

 

 俺の女バージョン腐女子じゃねぇ!貴腐人クラスだ!!

 

「しかもこれただのBL小説じゃねぇ!R-18指定の小説じゃねぇか!自分の身の回りの人間でここまで妄想できるってある意味すげぇわ!悪い意味で!!」

 

 人の趣味にとやかく言うつもりはない、と言ったが、前言撤回!ここまでの物は受け止めきれません!!

 俺は叩きつけたノートを段ボール箱に押し込み元通り本棚に戻す。

 この箱がなんで一番下に押し込んであったかわかった。さすがにこれは見られるとマズいって楓子ちゃんも分かってたんだ。

 

「なんか余計疲れた」

 

 俺はノロノロとベッドに倒れ込む。と――

 

 コンコン

 

「楓子ちゃんいるかい?おいしいハーブティーがあるんだが一緒にどうだい?」

 

 ノックの音と共に楯無さんの声が聞こえる。

 

「鍵あいてるんでどうぞ~」

 

 俺は起き上がるのも億劫に答える。

 

「では、失礼するよ。途中で会ったから釵とシャルルも連れて来たよ」

 

「お邪魔するね、楓子」

 

「お邪魔…します」

 

「は~い……どうぞどうぞ~」

 

 俺はベッドに突っ伏したまま言う。

 

「おや?どうしたんだい、楓子ちゃん?」

 

「なんだか夕食の時より元気ないね?」

 

「体調が悪化した……?」

 

 三人が心配そうにのぞき込んでくる。

 

「いやぁ……なんと言いますか、精神的に疲れたと言いますか……何だろうこの気持ち………例えるならずっと純粋華憐な文学少女だと思ってた幼なじみが実はヤリマンビッチだった、とでも言えばいいのだろうか?そんななんとも言えない気持ちです」

 

「なんだかよくわからないけど、大変なことがあったのはわかったよ」

 

 言いながらシャルルはベッドに腰を下ろし俺の頭を優しく撫でる。

 

「元気出して……おすすめのマンガ持ってきたから、よかったら読んで?」

 

 釵も心配そうにしながらベッドサイドに数冊の漫画を置く。

 

「このハーブティー、ちょうどいいことに疲れによく効くらしい。これを飲んで落ち着きなさい」

 

 と、楯無さんも優しい笑みを浮かべてティーカップを差し出してくれる。

 

「みんな…ありがとう」

 

 俺は体を起こし、お礼を言いながら楯無さんからカップを受け取り口を付ける。

 

「あ、おいしい……」

 

 そのハーブティーはどこか虚先輩が淹れてくれる紅茶に似ている気がした。

 もしかしたらこっちの虚先輩からもらった茶葉だったのかもしれない。

 それから俺はそのお茶を飲み終えるころにはすっかり落ち着き、むしろ急激な眠気に襲われていた。

 

「おや?眠くなってきたかな?」

 

「やっぱり疲れが溜まっていたんじゃない?」

 

「僕たちのことは気にせず、今日はもうゆっくり休みなよ」

 

 三人の言葉に頷き、もぞもぞとベッドにもぐりこむ。

 

「そうだ、よく眠れるように俺が添い寝してやろうか?」

 

「楯無さん、抜け駆けはズルいですよ。添い寝なら僕がします」

 

「ズルい!ぼ、僕だって立候補…する……!」

 

 三人の声を聴きながら俺はだんだんと眠りの世界に――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「って!男子三人いる部屋で寝るとか無防備すぎんだろ俺!楓子ちゃんの貞操の危機!!」

 

「「「うわぁぁぁぁ!?」」」

 

 ガバッと起きあがりながら俺が叫ぶとすぐ真横から三人分の驚きの声が上がる。

 ――あれ?今俺の声……

 

「目が覚めたのね、颯太君?」

 

「体の調子…どう?」

 

「変なところない?」

 

 横を向くと師匠、簪、シャルロットが心配そうに俺を見ていた。

 周りに視線を向けると寮の部屋のようだ。

 

「あれ?俺……戻った?」

 

 俺は首を傾げながら再度三人に視線を向ける。

 

「師匠。ここはIS学園ですよね?」

 

「うん。そうだけど……」

 

「簪。俺は井口颯太だよな?」

 

「それ以外にないけど……?」

 

「シャルロット。俺は男か?女か?」

 

「そりゃぁ男でしょ?」

 

 三人は俺の質問の意図が見えないようで訝し気に首を傾げている。

 

「どうしたの、颯太君?朝から変だったけど今も十分変よ?」

 

「いやぁ変な夢を見たというか……ていうか三人おそろいでなんで俺の部屋にいるんですか?」

 

「覚えて…ないの?」

 

「うん」

 

 俺の言葉に三人はさらに不思議なものを見るような目で俺を見る。

 

「今日の颯太、朝から変だったんだよ。で、夜、いい加減目に余るって、織斑先生に拳骨で殴られたら気絶しちゃって、三人で看病してたんだよ」

 

「そっか……ぜんぜん覚えてない……俺どう変だったの?」

 

 俺の問いに三人はんーっと考え込みながら

 

「なんか〝こっち〟がどうの〝あっち〟がどうの言ってたわね」

 

「〝こっち〟のみんなは美少女だぁ、とかなんとか……」

 

「なんかやけに一夏にくっついては『一夏×颯太の誘い受け、これは薄い本も厚くなるなぁ~!』とかなんとかブツブツ言ってたよ」

 

 三人の言葉で俺は理解した。

 俺が向こうに、楓子の身体に入っていたように、どうやら俺の身体には楓子が入っていたようだ。

 

「あの……他にアイt――じゃなかった、俺はなんかやらかしませんでした?」

 

「ん~……なんかいつもの颯太君と雰囲気違ったよね。別人みたいって言うか喋り方がたまに女の子みたいだったし」

 

「やけに距離感が近かった」

 

「スキンシップもっていうかボディタッチも多かった気がする」

 

「くおぉぉぉぉぉ……」

 

 俺は三人の言葉に頭を抱える。

 そりゃ女の子だろうけどもうちょっと考えてくれませんかねぇ、楓子さん!?身体は俺なんだからさ!

 

「でも何より一番変だったのは最後の〝アレ〟よね?」

 

「あぁ……」

 

「〝アレ〟…ですね」

 

「なんですか〝アレ〟って……?」

 

 俺の言葉に三人はジト目で睨んでくる。

 

「ねぇ、颯太君。ホントに覚えてないの?」

 

「え?は、はい……」

 

「ホントに?」

 

「ホントにホント」

 

「まったくもって全然?」

 

「まったくもってミジンコほども憶えてない」

 

 三人の圧に俺は気圧されながらも答える。

 

「「「…………」」」

 

「あ、あの……俺最後に何したんですか?」

 

 俺の問いに三人は大きくため息をつく。

 

「いい笑顔で……」

 

「私たちに三人に……」

 

「まるで天気でも聞くみたいに……」

 

「「「すいませんけど、おっぱい揉んでいいですか?って言ってきた」」」

 

「…………」

 

 俺は三人の言葉を受け、思考し

 

「……俺が?」

 

「「「(コクリ)」」」

 

「三人に?」

 

「「「(コクリ)」」」

 

「おっぱい揉ませて、と?」

 

「「「(コクリ)」」」

 

「………………」

 

 俺は事実をゆっくり受け止め

 

「ホントすいませんでしたぁぁぁぁぁぁっ!!!!!」

 

 全力で土下座した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あれ?楓子何してるの?ノートに何か書いてるけど……宿題なんて出てないよね?」

 

「うん?うん。これは……まあ趣味みたいなもの」

 

「趣味?何それ?」

 

「ん~……なんていうか、新しい可能性を見つけたって感じ?私もまだまだだったよ」

 

「……よくわかんないけど、楽しそうだね」

 

「まぁね~!自分の男体化ってのもなかなかに滾るシチュですよ!男の人の〝アレ〟も生で見れたし、これからは今まで以上に妄想がはかどりますわ~!」

 

「楓子の言ってることってたまによくわかんないわ」

 

「一花にはまだちょ~っち速いかな~。でも才能はあると思うな~」

 

「何それ?」

 

「まあそのうち教えてあげる。めくるめく愛の世界ってやつだよ」

 




さて、そんなわけで番外編これにて終了です。
楓子ちゃん……我ながらとんでもない化け物を生み出してしまいましたわ(;^ω^)

さてさて、実はこの番外編を書くにあたって、実は楓子、一花、楯無、釵、シャルルのキャラ設定は結構しっかり作ったんですがこのまま寝かせておくのももったいない気がするのでそれもアップしちゃいます。
夕方ごろにアップしたいと思います。本編にはまったくもって関係のないものなので別に見なくても支障はありません。
ただ個人的に寝かせとくのがもったいないと思っただけです。


さて、ここまで読んできていただいた皆様、本当にありがとうございます。
これからも応援や感想よろしくお願いします。
それでは次々回より通常の本編に戻りますので、よろしくお願いします。

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