「あ、そ、颯太…お、おはよう……!」
教室に登校した俺はなぜか俺の席で待ち構えていた簪と会った。
「…………」
「な、なんで警戒したように鞄を抱えるの……?」
「このカバンには何もないぞ。持ち物検査しても簪の思っているようなものは――」
「し、しないよ!」
一昨日の家宅捜索もあって警戒していた俺に簪が慌てて否定する。
「ふむ……ならよし。おはよう、簪」
「う、うん。おはよう……」
ニッと笑い、挨拶をすると改めてあいさつを返してくる簪。
「で?どうしたんだこんな早くに?」
簪に訊きながら俺は席に座りカバンの中身を移す。
「うん…その……颯太は掲示板見た?」
「掲示板?………そう言えば今朝は見るの忘れてた。なんかお知らせでもあったのか?」
「うん……」
俺の言葉に頷きながら簪は何か言いづらそうにもじもじとしながら口を開く。
「その…この間のキャノンボール・ファストの一件があったから…各専用機持ちのレベルアップを図るために今度全学年合同のタッグマッチがあるの……」
「あぁ……そう言えば昨日生徒会の仕事の時、師匠が言ってたな」
確かその時に今日から全校生徒に通知するって言ってたな。
「それでその…………」
言いながら、しかしそこから先の言葉がなかなか出てこない。
「……簪?どったの?体調が悪いようなら保健室に――」
「あの!……私と…私とタッグを組んでくれない!?」
簪の体調を気遣って言おうとした言葉は簪の言葉に遮られた。
「……………」
「そ、その……ダメ……かな?」
「いや……ダメじゃないけど……俺でいいのか?てっきり簪は師匠と組むのかと思ってたけど……」
「それも考えたけど……その……」
俺の言葉に頷きながら簪はゆっくりと言葉を紡いでいく。
「その……ずっとお姉ちゃんとは仲悪かったけど…颯太のおかげで仲直りできた……。それからずっと昔みたいに過ごしてきたけど……お姉ちゃんはやっぱりすごいしずっとずっと私の目標だから……その…私、少しでもお姉ちゃんに追いつきたい!お姉ちゃんに私がどれだけ成長したか見てほしいの!」
「…………」
「うまく言えないけど……そんな感じ…です……」
最後の方は尻すぼみしていきながら俯き加減で簪は呟く。
「そっか……よし!やるか!」
「え?」
俺は立ちあがり俯く簪の頭にポンと手を置く。
「俺もそろそろ師匠に弟子としてこれまでの成果見せてやりたいしな。妹として、弟子として、あの人に俺たちがどれだけ強くなってるか見せてやろうぜ!」
「う、うん!」
身長の関係で上目遣いに微笑む簪の頭を撫でながら俺は笑いながら頷く。
「じゃあ改めてよろしくな、簪」
「うん。よ、よろしく…颯太……」
簪の頭から手を放して握手をする俺たち。
「あれ?颯太に簪、おはよう。はやいね」
と、そのタイミングでシャルロットが登校してくる。
「……なんで握手してるの?」
少しじとっとした目で見ながら言うシャルロット。
「おう。同じ志で立ち上がった同士だからな」
「??? どういうこと?」
俺の言葉にシャルロットは首を傾げる。
「今朝から掲示板で通知されたんだが、今度タッグマッチがあるだろ?俺は簪とタッグを組んで出ることになった」
「ええ!?」
シャルロットが驚愕の声をあげる。
「簪は師匠と戦いたいらしくてな。これまでの成長の成果を見せたいらしい。俺も師匠に挑みたいし志が一致したんだ」
「そんなわけで…颯太と出ることに……」
少し照れたように簪が言う。
「そっか……僕も颯太を誘おうと思ってたんだけど……」
「そうなのか?悪いな、先に簪と決めちゃったし今回は……」
「うん、いいよ。しょうがないよ、タイミングだしね。僕は…そうだな、ラウラでも誘ってみようかな」
「そいつは強敵そうだな……」
「フフッ。楯無さんばかり見てたら僕らが足元すくっちゃうからね」
「ああ。シャルロットたちだけじゃなく、出場する全員にしっかり対策練ってやるぜ」
「絶対…負けない……!」
俺たちは顔を見合わせ笑みを浮かべながら頷き合った。
〇
昼休み。
「颯太く~ん♪ちょっといいかな~?」
「あ、師匠。どうしました?何かありましたか?」
授業が終わってすぐに師匠が教室を訪ねてきた。
「うん。昨日も生徒会でも言ったし掲示板にも掲示してたけど、今度タッグマッチがあるじゃない?」
「はい、ありますね」
「そこで!颯太君、私と出ない?師匠と弟子、マッスル・ブラザーズのような息の合った戦いを見せてあげましょう!」
「マッスル・ブラザーズって……また古いネタを」
師匠の言葉に苦笑いを浮かべる俺。
「そういうのはいいの!それでどう?一緒に頑張りましょう!」
「あぁ…お話はありがたいんですが……俺もうペア決めてるんですよ」
「え、そうなの?相手は?一夏君とザ・マシンガンズでも結成したの?」
「だから全体的にネタが古いですって……。俺は――」
「颯太……今朝話してたことで相談が……って、お姉ちゃんっ?」
「おお!ナイスタイミングだよ簪!」
タイミングよく現れた簪。
俺はそんな簪のとなりに行き、簪の肩に手を置きながら師匠をまっすぐ見据えて口を開く。
「簪と組むことにしました」
「簪ちゃんと?」
「はい。俺も簪も目標が――師匠に挑戦するって言う目標が一致したので」
「私に!?」
俺の言葉に師匠が困惑したように言う。
「ええ。弟子として、妹として、俺たちは師匠に成長の成果を見せたいんです」
「…………」
俺と俺の言葉に力強く頷く簪に師匠はジッと視線を巡らせ。
「そう……」
フッと口元に笑みを浮かべ、師匠が頷く。
「そっかそっか。二人が私にねぇ~」
嬉しそうに頷く師匠。
「そういうことならいいわ。颯太君も簪ちゃんも、相手してあげるわ!私も超頼りになる相方を見つけてヘル・ミッショネルズとしてあなたたちニュー・マシンガンズを叩き潰してあげるわ!」
「お姉ちゃん……ネタが古い……」
「さっきからマッスル・ブラザーズとかザ・マシンガンズとかニュー・マシンガンズ……俺はキン肉マンなのかテリーマンなのかどっちなんですか?」
師匠の言葉に俺も簪も苦笑いを浮かべる。
「細かいことはいいの!とにかく!私はあなたたちの挑戦を待ってるわ!当日は存分にあなたたちの成長を見せてもらうからね!」
「望むところですよ!ほら、簪!お前からもなんか言ってやれ!」
「えっ!?えっと……えっと………あ、頭洗って待っててよ、お姉ちゃん!」
「「………」」
簪の言葉に一瞬俺も師匠も押し黙り
「簪ちゃん?洗うのは首じゃないかしら?」
「頭を洗うのは衛生上の問題じゃないか?」
「~~~~~っ!」
俺たちの言葉にテンパって間違えてしまったことに顔を赤く染める簪。
そんな簪をほほえましく思いながら俺は決意新たにタッグマッチへ思いをはせるのだった。
どうも大同爽です。
ついこの間お気に入り件数2900で番外編を書いたはずなのに気付けばもうすぐお気に入り件数が3000です。
これも日頃から読んでくださっている皆様のおかげです。
と言うわけで、お気に入り件数が3000件になったらまた番外編をやろうと思うのでお楽しみに。