IS~平凡な俺の非日常~   作:大同爽

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第121話 穢れたバベルの塔

 

「あっ!あそこだ!」

 

 サイレンの音を聞きつけてやって来た弾は人だかりの向こうに目的の人物、虚が捕まっていることに気付く。

 

「そ、颯太!?」

 

「誰に捕まってるの!?」

 

「えぇ!?颯太!?」

 

 弾の後を追ってきた三人は同じように捕まっている颯太の姿に驚愕の声をあげ、思わぬ名前が飛び出したことに弾も驚く。

 四人は急いで人だかりの前に出る。

 

「あ、みんなぁ~、やっほ~」

 

「そ、颯太君!?」

 

「な、なんで、颯太が……!?」

 

「てか、なんだよその格好!?」

 

 のほほんと暢気に手を振る颯太に弾が訊く。

 

「フニュ~……プハッ!――いやぁ~俺が捕まっちゃいました。『ミイラ盗りがミイラになった』という見本だねぇ~。アッハッハ~!」

 

「うるせぇぞお前!暢気すぎんだろ!」

 

 ストッキングを引っ張って取った颯太はのほほんと笑いながら説明すると、颯太を羽交い絞めにしている強盗が怒鳴る。

 

「虚さん!!」

 

「だ、弾君!ごめんなさい、せっかくのお買い物中だったのに。なんだかよくわからないうちにこうなってしまって……」

 

「お前も悠長にしゃべってんじゃねぇよ!」

 

 虚を人質にしている兄貴分の強盗が怒鳴る。

 

「そ、颯太!これも颯太の作戦のうちなの!?」

 

「颯太、いつの間にこんな仕込みを……?」

 

「いんや、リアルハプニングだよ~」

 

「虚さん!大丈夫ですか!?」

 

「え、ええ、私は特には……」

 

「シャルロット~!記念に写真撮ってよ~!」

 

「そんな場合じゃないでしょ!?」

 

「おいおぉぉい!普通に会話すんなよ!お前らは人質なんだからもっと危機感持てよ!!」

 

「三人とも~!計画狂っちゃったけどそのまま進めちゃおう!あとできるだけ巻きで!男に羽交い絞めにされてるって状況がそろそろきつくなってきた!」

 

「っ!」

 

「え?予定――」

 

「弾君!」

 

「は、はい!?」

 

 颯太の言葉に引っ掛かりを感じた弾だったがそれを遮るように楯無に名前を呼ばれて無意識に返事をする。

 

「弾君、今よ!」

 

「はい!?」

 

「虚ちゃんをカッコよく助け出してときめかせるのよ!そうすればもう虚ちゃんも弾君にメロメロよ!このチャンスをものにするのよ!」

 

「えっ!?」

 

 楯無の言葉に弾は驚きの声をあげる。

 

「た、助けるって言っても、犯人は銃を持ってるし……素人が動くよりもここは警察に任せた方が……」

 

「じゃあなんで虚ちゃんの危機にこうしてここまでやって来たの!?」

 

 弾が言うと、そんな弾の首根っこを掴んで楯無が叫ぶ。

 

「我を忘れてここまで走ったのは好きな女の子を助けるためでしょ!?」

 

「っ!?」

 

「逃げないで全力でぶつかってあなたの想いを彼女にぶつけるのよ!」

 

「お、俺は………」

 

「弾君……」

 

 悩む弾の様子に虚は困惑した様子でそのやり取りを呆然と見ている。

 

「だからお前らは――」

 

「脇役は黙ってて!!」

 

「わ、脇役!?」

 

 何かを言おうとした強盗の兄貴は楯無の言葉に顔を怒りに震わせる。

 

「誰が脇役だ!どう考えたって今日のニュースの主役は俺たちだろうがぁ!!」

 

 叫びながら強盗は拳銃を構え、引き金を引く。

 

 パンッ

 

 乾いた音があたりに響く。

 

「あ、兄貴!本当に撃つなんて……!」

 

「だ、だってよぉ……」

 

 撃ってしまった後悔と恐怖に二人の強盗は震える。が――

 

「この程度の豆鉄砲でどうにかなると思ってるの?」

 

 楯無はどこからか取り出した金属製の特殊警棒を振りぬいた体勢で言う。

 

「お、お姉ちゃん、そんなもの持ってたの!?」

 

「当たり前でしょ?私たち今IS修理中で機能のほとんど使えないんだからこういうものをちゃんと用意しておかないと物騒じゃない」

 

 ふふんと、得意げに言う楯無。

 

「銃弾を警棒で弾くなんて、あの女、何者――」

 

「おいてめぇ!ふざけんなよ!人に拳銃ぶっ放してんじゃなぇよ!」

 

 驚きに震える二人の強盗に颯太が怒鳴る。

 

「っ!う、うるせぇ!てめぇ暴れるんじゃなえぇよ!」

 

「んだと!?こちとらこんな状況で銃向けられて暴れるわけねぇだろ、ボケェ!」

 

「うるせぇ!!おい!そいつもっとしっかり押さえてろ!!」

 

「へ、へい、兄貴!」

 

 兄貴分の言葉に強盗がさらにきつく颯太を拘束する。と、徐々に颯太の顔色が悪くなっていく。

 

「ギャァァァァ!お尻に!お尻に当たってる!グニュって!グニュって当たってる!押し付けられてる!俺の貞操がぁぁ!襲われる!穢れたバベルの塔で蹂躙される!ごつごつした身体は嫌だぁぁぁぁ!!!」

 

「あ!お、おい!暴れるんじゃねぇ!!」

 

「おい、ちゃんと押さえてろよ!!」

 

「っ!だ、弾君今よ!」

 

 と、暴れはじめた颯太に強盗たちが慌てだしたすきに強盗の拳銃を持った手を掴み虚が叫ぶ。

 

「そ、その人を放せぇぇぇぇ!!」

 

 虚の言葉に一歩踏み出した弾は右手を振りかぶり、強盗に向かって拳を叩きこむ。

 

「ゲフッ!?」

 

 顔面に弾の拳がめり込んだ強盗はそのまま吹き飛び地面に大の字に倒れ込む。

 

「あ、兄貴!?」

 

 その様子に子分が慌てる。と――

 

「てめぇは、いつまでその汚いもんを押し付けてんだコラァ!!!」

 

 颯太は叫ぶと同時に思い切り自分を羽交い絞めにする強盗の右足を踏みつける。

 

「いでぇぇぇぇぇ!!?」

 

 強盗が叫ぶ。と、颯太を羽交い絞めにする手が緩む。

 

「フンッ!」

 

 そのまま颯太は拘束から無理矢理脱出し、振り向きざまに相手の顎に掌底打ちを叩きこみ

 

「オラァァァ!!!」

 

 ダメ押しとばかりに膝蹴りをがら空きのボディに放つ。

 

「げふぅぅ!!?」

 

 颯太を拘束していた強盗は先ほど弾に殴られた強盗よりも大きく吹き飛ぶ。

 

「キシャァァァァ!!」

 

「颯太君落ち着いて!」

 

「大丈夫だよ!」

 

「颯太は、何もされてないよ!」

 

 追撃を仕掛けようとする颯太を三人が全力で抑え込む。

 

「てめぇ!二度と俺のケツをもてあそぶんじゃねぇ!」

 

 鼻息荒く颯太が叫ぶ。

 

「な、なんだありゃ……?」

 

「井口君、まだ治ってなかったんですね……」

 

 そんな大暴走の颯太の様子に弾と虚が呆然と呟く。

 

「っ!そ、そうだ!虚さん大丈夫でしたか!?」

 

 と、先ほどまでの状況を思い出し、弾が虚に詰め寄る。

 

「は、はい…お陰様で……」

 

「よ、よかった~!」

 

 弾が安堵したようにため息をつく。

 

「………あ、あの、弾君?」

 

「はい?」

 

 そんな弾に虚が恐る恐ると言った様子で口を開く。

 

「その…さっきお嬢様が言っていたこと……」

 

「え……?」

 

「私にぶつけたい想いって……?」

 

「っ!?そ、それは……」

 

 虚の言葉に息を呑む弾。少し考え込むように顔を歪ませるが、覚悟を決めたように顔を上げる。

 

「う、虚さん!!」

 

「は、はい!!」

 

 弾の声量につられて虚も大きな声で返事をする。

 

「その…聞いてほしいことがあるんです……!」

 

「は、はい」

 

 神妙な面持ちで言う弾に虚が頷く。

 

「虚さん!俺…初めて会ったときから虚さんのことが好きでした!お、俺と、付き合ってください!!」

 

「っ!」

 

 弾の言葉に体を震わせる虚。その顔を徐々にしかし確実に赤く染めていき、小さく頷く。

 

「その……はい……」

 

「え?」

 

「その…これからよろしくお願いします」

 

「っ!?」

 

 顔を赤く染めて、しっかりと弾の目を見て言った虚の言葉に弾は顎が外れんばかりに開き、その顔を徐々に笑み変えていき

 

「いぃぃぃぃよっしゃぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

 感極まった様子でガッツポーズをする。

 同時に周りでできていた人だかりから徐々に拍手が始まりその拍手は人だかり全体に広がる。

 

「いや~よかったよかった!」

 

 と、そんな弾と虚の横から拍手とともに颯太が笑顔で歩み寄る。

 

「あ、颯太」

 

「正気に戻ったんですね」

 

「おかげさまで」

 

 弾と虚の言葉に颯太が頷く。

 

「虚先輩、おめでとうございます」

 

「ありがとうございます」

 

「弾、虚先輩を泣かせたら俺と師匠と簪とのほほんさんがお前を殺しに行くから覚悟しておけよ」

 

「こわっ!!怖いけど当たり前だ!任せろ!虚さんは俺が幸せにする!」

 

「弾君……」

 

 力強く頷いた弾に照れながらも嬉しそうに微笑む虚。

 

「うんうん。いろいろあったけどこれでめでたしめでたしだな」

 

「ああ――そう言えば颯太ってなんであんなに取り乱してたんだ?」

 

 と、弾がふと疑問に思ったことを訊く。

 

「ああ、なんていうか、話すと長いんだけど結論から言うとアメリカでゲイに掘られかけて男性恐怖症になってたんだ」

 

「はぁぁ!?」

 

 颯太の言葉に弾が驚きの声をあげる。

 

「ま、マジなんですか?」

 

「ええ…まぁ……」

 

 弾が信じられないように虚に訊くと虚も若干苦笑いを浮かべて頷く。

 

「まあ最近は結構治まってたんだけど……」

 

「今回はちょっと無理だったみたいだね」

 

「しょうがないと言えば、しょうがない、かな……?」

 

「しょうがなかったんだよ!怖かったんだから!」

 

 言いながら颯太はキッと先ほどまで自分を拘束していた強盗を睨む。

 

「だいたいふざけんなよ!べたべた撫でまわすように触りやがって!俺のケツにゴリゴリ押し付けやがって!ゲイかてめぇ!」

 

「っ!お前今なって言った!?」

 

 颯太の言葉に颯太に殴られた強盗が叫ぶ。

 

「ゲイだと!?お前今俺のことをゲイって言ったか!?お前、俺がゲイだから殴ったって言うのか!?」

 

 強盗は怒りに体を震わせ叫ぶ。

 

「お前ゲイだったら殴るって言うのか!?お前、俺がゲイだから殴ったのか!?」

 

「颯太君、それはよくないわ」

 

「颯太、ゲイだから殴るなんてよくないよ」

 

「いくらゲイにいい思い出がないからって……」

 

「ちょっと待ってよ、三人ともそっち側!?」

 

 強盗の言葉に三人が言う。

 

「ちょっと待って!違う!ゲイだから殴ったんじゃない!殴ったやつがたまたまゲイだったんだ!」

 

「でも殴ったんでしょう?」

 

「そうですけど!でもゲイだから殴らないって方がゲイ差別っぽくないですか!?」

 

 フォローになってるのかよくわからないことを言いながら颯太が周りを見渡す。と――

 

「君、ちょっといいか?」

 

 颯太の肩にポンと手を置く男性と、その横に立つ女性。

 男性は切れ長の目にぼさぼさの黒髪、黒いスーツ姿。女性は青い警官の制服を着ていた。

 

「警視庁の御剣と――」

 

「君原です。ちょっとお話を伺いたいのですが」

 

 そう言って二人は胸ポケットから取り出した警察手帳を見せる。

 

「ちょっと待ってくださいよ!確かに俺はゲイを殴りましたけど!それは正当防衛ですよ!?それにゲイだからと殴らない方が差別だと――」

 

「ああ、いや。その事じゃないんだ」

 

 慌てて早口に言う颯太に、御剣と名乗った警官は頭を掻きながら言う。

 

「君、さっきこいつらの人質になってる時、最初頭にこれ被ってたよね?」

 

 と、御剣が指さしたもの、それは颯太が先ほどまで被っていた女性用のストッキングだった。先ほどのどさくさで颯太が落としたものを拾ったらしく、君原と名乗った女性が見えるように突き出していた。

 

「君、なんでこんなの被ってたの?」

 

「えっと……それは………」

 

「すこしお話を聞きたいので、署までご同行願えますか?」

 

 口籠る颯太に君原が言う。

 

「他にもいろいろと、今回のことについて事情聴取が必要なんで、とりあえずみなさんご同行願えますか?」

 

 有無を言わせぬ御剣の雰囲気に

 

『はい……』

 

 全員頷くしかなかった。

 




はい、と言うわけでめでたくカップル成立です。
おめでとう虚さん!
弾は末永く爆発しろ


さてさてやってきました第二回質問コーナー!
今回質問は椿翼さんからの質問です!
「颯太に質問です。エクシアとooライザーどっち派ですか?」
とのことですが、どないです颯太君?

颯太「ん~、迷うね。どっちかと言われたら……エクシアかな」

ほうほう。
理由は?

颯太「なんていうかOOの物語の中で一番シンプルな見た目してる気がするんだよね。あの大きなGNソードとかカッコいいじゃん」

なるほどね

颯太「まあOOライザーも好きだけどね。どっちかと言うとエクシアだな」

とのことです!椿翼さん!
そんなわけで今回の質問コーナーはここまで!
また次回!
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