IS~平凡な俺の非日常~   作:大同爽

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更新が遅くなってしまいすみません。
ちょっと七基の英霊剣豪と死闘を繰り返し、世界を救う戦いに挑んでいました。
いやぁ~なかなかの激戦だった。

さて前回の更新からお気に入り件数が3300件に行きました!
そんなわけで予告通り番外編です!
そして書いてるうちに案の定長くなったので前後編です!






お気に入り件数3300記念 「時をかける少女たち」 前編

 

 ミーンミンミンジーコジーコツクツクボウシ!

 

 木造建築が並び、さりとて少し離れたところに目を向ければビルも立ち並ぶ、そんな新旧様々が立ち並び、かと思えば街路樹などの植物も豊富も見える。そんな町中の、大きな土手道の上に楯無、簪、シャルロットの三人はIS学園の〝冬服姿〟で呆然と立ち尽くす。

 強い日差しと複数の種類の蝉の合唱が立ち尽くす三人を包む。

 

「「「暑い!!」」」

 

 三人は耐えかねた様に叫ぶ。

 

「え、ねぇどういうこと!?」

 

「私たち、さっきまで学園の、中庭にいたはず……」

 

「確か颯太が織斑先生に呼ばれて……」

 

「それを待ってる間中庭でおしゃべりしてたら……」

 

「急に、眠くなって……」

 

「気付いたらここに立ってた、と……」

 

 言いながら三人は顔を見合わせ――

 

「ていうか……ここどこよ?」

 

 楯無が呆然と呟きながら三人は周りに視線を巡らせた。

 

「こういう時は……」

 

 言いながら簪が歩を進める。そのまま近くの電柱を見上げる。

 電柱にはその電柱が立っている場所の住所が書かれている。簪はそれを確かめ――

 

「え……?」

 

「どうしたの簪ちゃん?」

 

 一足先に電柱に向かっていた簪に追いついた楯無とシャルロットは唖然とした表情で電柱の一点を見る簪に問う。

 

「……こ、これ……」

 

 簪は唖然とした表情のまま電柱を指さす。

 楯無とシャルロットはその簪の指さす一点に視線を向け

 

「は?」

 

「え?」

 

 呆けた顔になる。それもそのはず、なにせそこに書かれていたのは――

 

「この住所……ここ京都市内だ……」

 

「そ、そんな……!?」

 

「あ、ありえないわよ!さっきまでIS学園にいたのよ!?IS学園から京都市内までどう頑張っても2時間はかかるわよ!?」

 

「でも実際にここに……」

 

「な、何かの誤表示よ!こういう時は携帯の位置情報で!――え?」

 

 言いながら楯無は携帯を取り出し、その画面を見て大きく目を見開く。

 

「携帯が機能してない。最新型なのよこれ!?なのにネットに繋がらない!」

 

「あ…私のも……」

 

「ぼ、僕のもです!」

 

 楯無の言葉に簪とシャルロットもそれぞれの携帯を確認するが、結果は同じだった。

 

「い、いったいどうなってるのよ……?」

 

 呆然と呟く楯無の問いに簪もシャルロットも答えることができなかった。

 

 

 

 〇

 

 

 

「あぁ~!涼しぃ~!」

 

 店内に入り、冷たい冷房の風に吹かれた心地良さに思いのほか大きな声の出た楯無。

 あれから、呆然とその場に立ち尽くしても仕方がないということで、近くに見えた某水色がメインカラーの牛乳瓶のマークでおなじみのコンビニにやってきた三人。ここで情報収集をすることにしたのだ。

 

「いらっしゃいませ~」

 

 店員に出迎えられた三人は店内を物色する。と――

 

「ん?……ねぇ?あの時計壊れてるわね」

 

「え?どれですか?」

 

 楯無の言葉に、楯無の指さす先にシャルロットが視線を向ける。そこには壁に丸い時計がかかっていた。

 

「あ、本当ですね。僕ら6時間目の授業が終わった後の放課後に集まってたはずなのに、あの時計じゃまだ14時前になってますね」

 

「店員さ~ん?この時計狂ってるわよ?」

 

「え?そんなはずは……」

 

 楯無に言われた店員の男性は自分の腕時計を見て

 

「あってるじゃないですか」

 

「「え?」」

 

 店員の言葉に驚く二人。

 

「そんなはずないわよ。だって実際に――あれ?私の時計、止まってる」

 

「え?……あ、僕のも……」

 

 二人は自分の左腕に巻かれた時計を見て呆然と呟く。と――

 

「お、お姉ちゃん!シャルロット!た、大変っ!」

 

 大慌てで新聞を小脇に抱えて小走りでやって来る。

 

「どうしたのよ、そんな大慌てで?」

 

「こ、これ!これ見て!」

 

 言いながら簪は新聞を開く。

 

「ん?……へぇ~、この双子の赤ちゃん可愛いねぇ~」

 

「そ、そこじゃない!こ、ここ!」

 

 シャルロットの言葉に簪が否定しながら新聞の一部分を指さす。

 それは、どの新聞社の新聞にも共通して書かれているもの、その新聞の売り出された日付だった。

 

「えっと……――え?」

 

「そんな……」

 

 簪の指した日付が示していたのは――三人の記憶していた日付の八年前の八月上旬の日付だった。

 

 

 〇

 

 

 

「「「はぁぁぁぁ……」」」

 

 三人は座り込んだベンチに背中を預け、揃って大きなため息を吐く。

 あれからコンビニを後にし、近くに見つけた公園の小屋のような屋根のあるベンチに座り込んだ。八月上旬の暑い夏の日差しにうだるような生温い風に、三人は制服の上着を脱いで脇に置いている。

 そのまま現状を詳しくするためにいろいろ試したのだが

 

「携帯は通話もメールもSNSも、それどころかインターネットにも繋がらない」

 

「ISの通信も、その他機能の全てが使えない」

 

「それどころか起動させて纏うこともできない」

 

「「「……はぁぁぁぁ」」」

 

 三人は現状を再確認して再度大きくため息をつく。

 

「まったく、どういうことよこれは?本当に八年前の夏にタイムスリップしたって言うの?マンガや映画じゃあるまいし」

 

「でも、何かのドッキリとかにしてはできすぎてるし……」

 

「この暑さとか、さっきから鳴いてる蝉だって……」

 

 シャルロットは言いながら視線をすぐ近くに立つ木に向ける。木製の策に囲まれた少し大きめの木から聞こえてくる数種類の鳴き声に三人は顔をしかめる。

 元気な蝉の大合唱に体感気温が一、二度上がった気がする。

 

「考えても仕方がない!とりあえず現状八年前にタイムスリップしたと考えて、まず私たちがすべきことは!」

 

「すべきことは……?」

 

「………(ゴクリ)」

 

 楯無の言葉にシャルロットが訊き、簪が緊張でつばを飲み込む。

 

「……何か飲まない?私のど乾いちゃって」

 

「「…………はぁ」」

 

 楯無がぺろりと舌を出しながら言うと、真剣な顔で聞こうとしていたふたりはため息をつく。

 

「何よ?重要でしょ?熱中症対策でちゃんと水分とらないと。とりあえずさっきのコンビニで何か――」

 

「それはやめておいた方がいいと思うよ、お姉ちゃん」

 

「なんでやめた方がいいの?」

 

「バタフライ効果……」

 

「バタフライ効果?」

 

 簪の言葉に聞き慣れないシャルロットは首を傾げる。

 

「確か、カオス理論の用語よね。気象学者のエドワード・ローレンツが1972年に行った講義のタイトル、『ブラジルの1匹の蝶の羽ばたきはテキサスで竜巻を引き起こすか?』ってところから由来してるのよね」

 

 楯無の言葉に簪が頷く。

 

「このバタフライ効果、昔からタイムスリップものの映画とかアニメで扱われているの。この場合、過去にいる私たちの起こす行動が蝶の羽ばたき。私たちの行動の結果、未来にどれほどの影響がでるか予想もつかないってこと」

 

「それって……」

 

「例えばもし、私たちがここでコンビニでジュースやお菓子を買ったとする。そうすると、もしかしたら、私たちが買ったことで、本来その商品を買うはずだった人にいきわたらないかもしれない。そのことが回りまわって、未来の私たちに大きく影響するかもしれない」

 

「でも、そうならないかもしれないし……」

 

「でも、そうならないって、言いきれない」

 

 楯無の言葉に簪が返す。

 

「つまり、私たちが本当に過去に来ていると仮定するなら、私たちの些細な行動一個一個が未来に大きな影響を起こすかもしれない」

 

「で、でも水分補給しなきゃこの天気じゃ三体のミイラが出来上がるわよ?」

 

「そこに水道がある……」

 

「……それしかないか……」

 

 簪の指さす先に普通の水道と水が飲めるように上に向けている水道があった。

 楯無はため息をつきながら水道の元に行き、上に向けて出る水道を捻り、喉を潤し、ついでに顔も軽く洗う。

 

「――ふう。二人もちゃんと水分とった方がいいわよ。顔も洗うとすっきりするわよ」

 

 ポケットから取り出したハンカチで顔を拭きながら楯無が言う。

 楯無の言葉に二人も立ち上がり順番に喉を潤し、同じように軽く顔を洗う。

 

「でも、これからどうします?」

 

 水を飲んで一息ついたシャルロットは二人に訊く。

 

「どうするって言われてもねぇ~……」

 

「そもそもどうやってここに来たのかもわからないし……」

 

「ですよね……」

 

 三人で何度目かもわからないため息をつきながら顔を見合わせる。と――

 

「ねぇ、お姉ちゃんたち!そこどいてよ!僕も水飲みたいんだけど!」

 

 三人の背後から少年の声が聞こえる。

 振り返ると8歳くらいの少年が立っていた。

 少年は緑のTシャツに紺のハーフパンツ、頭には某トラの野球チームの黒の帽子を目深に被っているので顔は隠れている。背中には水色のリュックサックを背負い、リュックの口からはプラスチックのバットの柄の部分が飛び出していた。

 

「あ、ご、ごめんね」

 

 簪が謝りながら一歩退くと少年はそこから水道に駆け寄り、ゴクゴクと喉を鳴らしておいしそうに飲む。

 

「――ぷはぁ!生き返った!」

 

 グイッと口元を手の甲で拭き、満面の笑みで言う少年。そのままその場を後にしようとした少年の視線が三人を見て、シャルロットで止まる。

 

「うおっ!?よく見たらそこのお姉ちゃん外国人だ!は、ハロー」

 

 少年が驚いた顔で恐る恐ると言った様子で左手を軽く上げながら挨拶する。

 

「あ、アハハ……Hello」

 

 シャルロットはどうしたものかと苦笑いを浮かべながら、発音よく英語で返す。

 

「え、えっと……こういう時どういうんだっけ……?一学期にAETの先生に習ったんだけど……えっと、えっと……」

 

 少年は楽しそうに呟きながら思い出そうと腕を組み

 

「あっ!そうだ!名前!えっと確か………ま、まいねーむいず、そうた・いぐち!」

 

「Oh、ソウタ。My name is――ん?」

 

 微笑ましく思いながら少年に目線を合わせて、少年のつたない、しかし元気な自己紹介に英語で返そうとして、ふと違和感を覚え、少年の言葉を頭の中で反復する。簪と楯無も同じように違和感を覚えたらしく顔を見合わせる。

 

「ねぇ、この子……」

 

「『いぐちそうた』って……」

 

「言ったよね……?」

 

 三人は言いながらバッと少年に顔を向ける。

 

「………ん?」

 

 三人の視線に首を傾げる少年。

 

「もしかして……」

 

「この子……」

 

「八年前の……」

 

「「「颯太ぁぁぁぁぁぁ!?」」」

 




質問コーナーは後編で!
続きもお楽しみに!
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