今年もよろしくお願いします!
今回のお話は新年一発目ではありますが前回予告していた通り番外編でございます。
しかも内容は年越し前と言う少しずれたものですがご了承ください。
それではどうぞ!
終業式も終わり、クリスマスも終わり、学園全体が年越しに向けて大掃除や帰省に向けてざわざわとしている中、普段から掃除もしている上に実家も近い一夏はと言うと……
「はぁ……もうあと少しで年越しか……はやいなぁ……」
寮の自室に持ち込んだコタツに入りながらだれた様子で言う。
一夏の部屋には一夏と同じように鈴、セシリア、ラウラがコタツに入り、備え付けのキッチンでは箒がお茶を淹れていた。
「そう言えば一夏さん、先ほど颯太さんと話していたようでしたが、何を話していたのですか?」
と、ふと思い出したようにセシリアがコタツの上のミカンに手を伸ばしながら訊く。
「あぁ、実はなんか年末にあるイベントに行きたいから帰省を遅らせたらしい。で、一緒に行かないかって誘われたんだ。俺からみんなにも声かけてほしいらしくて、それも頼まれた」
「私たちもか?」
ラウラが首を傾げながら言う。
大き目のコタツとはいえ五人では狭いので箒の入るスペースを空けるために小柄なラウラは同じく小柄な鈴とともに四角いコタツのいっぺんに収まっている。
「おう。なんでも、今年もいろいろ事件とか騒動があったから、来年もそういうのがあった時にみんなで一致団結できるようにみんなで同じイベントに出て士気を高めようってことらしい」
「へ~、颯太にしてはいろいろ考えてるのね」
一夏の言葉に鈴が感心したように言う。
「もう楯無会長や簪さん、シャルロットは行くって言ってるらしい」
「まあ颯太が行くならあの三人はそうだろうな」
「ん?どういうことだ?」
お茶を淹れた急須と人数分の湯飲をお盆にのせた箒が言いながらやって来ると、一夏がその言葉に首を傾げる。
「どういうって、それはあの三人は……いや、やっぱりなんでもない」
「???」
言いかけた箒は数秒考えて言葉を飲み込む。その様子に首を傾げる。
「で?どうするんだ?」
「俺も迷ってるんだよな。みんなはどうする?」
「わたくしは一夏さんが行くのでしたら、行きますわ」
「そのイベントってのがどこでやるかわからないけど、あたしは寒いし遠慮したいわね。まあ一夏が行くならあたしも考えなくもないわね」
「私はそれなりに興味があるぞ。あの颯太が行きたがるくらいだ。それなりの大規模なものなのではないか?まあ私も年末は実家の神社の仕事もあるが……」
「せっかくの申し出だし行けばいいんじゃないか?今年はお前も大変だったし息抜きと言う面でも人間にも冬眠は必要だぞ」
一夏の言葉にセシリア、鈴、箒が言い、ラウラの言葉に一夏は少し考え込み、
「ん~……年末っていろいろ年越しに向けてやることあるし、ゆっくり休んでもいられないんだよな……てか俺冬眠動物じゃないし……」
言いながらコタツの上のミカンに手を伸ばし、皮を剥――
パンッ!
「「「「っ!?」」」」
突如、銃声ともに一夏が脇に倒れる。
「い、一夏!?」
突然のことに箒が叫ぶ。
「冬眠が嫌ならここで永眠しろ」
見ると一夏のとなりにいつの間にか銃を構えた少年、井口颯太が立っていた。
「牙を休めることを知らん獣に年を越すことはできねぇ」
「そ、颯太!?」
セシリアが驚いた様子で叫ぶ。
うっすらと煙を立てる銃を構えたまま颯太は冷たく一夏を見下ろす。
「おめぇ一人ならいいさ、一夏。だがお前は一年一組と言う群れを率いるボス。さらに言えば生徒たちのリーダーたる生徒会のメンバーだ」
颯太に言われながら一夏がゆっくりと体を起こす。
見ると一夏の咥えるミカンに抉れたような跡がついている。
「あ、あぶねぇ……」
「お前の判断で群れは雪の中に消える。それでもそのひび割れた牙で行くというのなら、俺が今ここで……その牙を折る」
言いながら颯太は銃を構え直す。
「明日ある眠りにつくか、明日の無い眠りにつくか……今ここで選べ。三秒以内に選ばんとどたまぶち抜く。――い~ち……」
パンッパンッ!
「2と3は!!?」
1を数え終えるや否や銃を撃つ颯太に頭を抱えながら倒れて叫ぶ一夏。
「知らねぇなそんな数字。男は1だけ覚えておけば生きていけるんだよ」
「てか学園でそんなもんぶっ放して、あとで千冬姉ぇに殺されるぞ!?」
「安心しろ、許可はとってる」
一夏の言葉に颯太は冷静に返す。
「それで?お前ら四人はどうする。休むのか死ぬのかはっきりしろ。ハキハキしろ!」
「わ、私は神社の仕事もあるのだが……」
「ダメだ、てめぇも休め」
パンッ!
颯太の撃った弾が箒の手元のミカンを抉る。
「ていうかそんなものまで持ち出して来て、何考えてんのよ!絶対何かあるでしょ!」
「俺はおめぇたちを労わってるだけだ!なんの他意もねぇっつってんだろ!」
「とても労わっているようには見えませんわ……」
鈴の言葉に今度は鈴に銃を向けながら颯太が言うと、その様子にセシリアが呆れ顔で呟く。
「よし、じゃあ全員参加ってことで決定だな!」
言いながら上着の内側にあるホルスターに銃を収めて颯太が踵を返す。
「ま、待て!行くのはいいが一つ問題があるぞ!イベントということは人がたくさんいるんだろ!?そんなところにお前や一夏が来たら警備とかいろんな面で大変なんじゃないのか!?」
「ふっ、安心しろ」
箒の心配そうな言葉に颯太は自信満々に答える。
「その辺は抜かりはない。しっかりと準備してある。お前らはただ30日に向けて準備しておくだけでいい」
そう言って颯太はさっさと去って行った。
「………嵐のようにやって来て、嵐のように去って行きましたわね」
そんな様子をセシリアが呆れた様子で呟く。
「てかラウラ、あんた一夏に銃向けられてたのにやけに落ち着いてたわね。アンタならAICでも起動するような場面じゃないの?」
「ん?なんだ、気付いていなかったのか?」
鈴の疑問に先ほどから黙ってミカンを食べていたラウラが首を傾げる。
「さっきから颯太がバカスカ撃っていた銃、あれ、本物ではないぞ」
「「「「……は?」」」」
ラウラの言葉に今度は四人が唖然とする。
「ほら、これを見ろ」
言いながら一夏の咥えていた抉れたミカンを見せるラウラ。
見ると抉れた中心には先ほど颯太の銃から放たれたであろう弾丸が残っていた。残っていたが――
「これ……BB弾だ」
小さなオレンジ色の玉がころころとコタツの上を転がる。
「大体銃を見ればすぐに分かった。よくできてはいたがモデルガンの類だったのだろうな」
言いながらミカンを頬張るラウラに、四人は流石軍人と感心しつつ
「………いや、BB弾でも明らかにモデルガンで出していい威力じゃないだろこれ!」
と、思ったが一夏以外それを口にする者はいなかった。
〇
――そして時は流れ、30日の朝。
「てかさ、朝早くに叩き起こされて電車乗り継いでこさせられたと思ったら……」
鈴はため息をつきながら言う。
「ここって……」
「東京ビッグ〇イトだけど?」
「だよね!?」
颯太がきょとんと首を傾げながら言うと鈴がため息とともに叫ぶ。
早朝、もはや深夜ともいうべき時間に全員叩き起こされた面々は眠い目を擦りながら電車を乗り継ぎ、特徴的な逆三角形が二つ並んだような建物の前にできた長蛇の列に並び、やっと建物の中には入れたと思ったら、颯太と一夏、シャルロット、簪、楯無が着替えると言ってどこかに行き、戻ってきたところで現在となる。
「私も気づくべきだったわ。オタクの颯太が行きたがるイベントで年末最後にあるビッグイベントなんてそうそうないわよね……」
「わざわざ早朝に叩き起こされて着いて来てみれば……」
鈴も箒も呆れ顔で呟くが、ラウラとセシリアは興味深そうに周りを見回している。
「ていうかさ、それがアンタの言ってた準備ってやつなの?」
「ああ。木を隠すなら森の中、人を隠すなら人ごみの中、変装しているやつは多少変な衣装の人がいても浮いてしまわないようにとことんやってしまえばいいのさ!」
そう自信満々に言う颯太、その横の一夏は普段とは一風変わっていた。
一夏は逆立った白髪に黒い神父のような服に赤いマントのようなものを羽織り、首元には金の十字架のネックレス。服から出ている手や顔はファンデーションか何かで褐色に染められている。
颯太は真っ白な髪を短いオールバックにし、黒い上下の服にブーツ。赤い外套を羽織って一夏と同じく見えている肌を褐色に染めている。
「まあここでそうやってコスプレしてたら確かに紛れるだろうからいいんだけどさ。……そっちの三人はなんでコスプレで参加してるの?」
「「「ん?」」」
鈴の言葉に三人――シャルロットと簪と楯無が首を傾げる。
三人も鈴の言葉通り私服と言うには明らかに一風変わった服装をしていた。
シャルロットは白のワンピースのような上下一体の服に黒いネクタイを巻き、薄緑の丈の短い上着。上着からは薄いベールのようなオレンジの布が伸びている。髪は肩甲骨のあたりまである長い黒髪で後頭部のあたりに白いリボンが結ばれていた。
簪は紺色のブレザーに赤と青のチェックのリボンのネクタイを首に着け、青と水色と赤のチェックの膝頭上までのスカート。深い海のような濃い青色の長い腰までありそうなロングのウィッグ姿で、いつもとは違い眼鏡をはずしている。
楯無はピンクと赤の変わった形の学生服のような服に紫のネクタイ。ネクタイと同じ色の膝頭ほどまでのスカート。紫の普段と変わらないくらいの長さのウィッグを付けている。
「そりゃ……」
「なんでって言われたら……」
「その方が断然面白いじゃない!」
鈴の言葉に簪、シャルロット、楯無が答える。
「それに、この二人だけコスプレで他の一緒にいるメンバーがみんな私服よりは、何人か同じようにコスプレでいる方がいいでしょ」
「な、なるほど……」
シャルロットの言葉に箒が納得したように頷く。
「とか言いつつ三人がやりたかっただけなのでは……」
「「「…………いやいや、そんなわけないよ(でしょ)」」」
「今変な間がありませんでした?」
「それはさておき、一夏君のコスプレを選んだのは颯太君だけど、一夏君が天草四郎なのはわかるけど、颯太君自身なんでエミヤ?」
話を変えるように楯無が訊く。
「ん?え?だって俺のCV.って諏訪部順一じゃないですか」
「いやいや、颯太君の声はあんなイケボでも色気も何もない平凡な声よ?大丈夫?耳鼻科行く?」
「おっと、心は硝子だぞ?」
「あ、そうね。この場合は脳外科かしら」
肩をすくめる颯太にさらに楯無は口撃する。
「なんか楯無会長、いつもより颯太さんに当たり強くありません?」
「それは楯無さんのしてるコスプレの元ネタのキャラが毒舌キャラだからよ」
セシリアの問いにシャルロットが答える。
「ふむ。シャルロットのその喋り方もキャラ作りと言う訳か」
「まあそういうことですね。コスプレはキャラになりきらないと……」
ラウラの言葉に簪はハキハキとした声で丁寧な口調で頷く。
「さて、こうしてやって来ても、一夏たちはよくわからないだろうからとりあえず一緒に見て回ろう。私たちはこうして朝早く来た以上目当てのブースの物をゲットしておきたいからな」
「お、おう。じゃあとりあえず着いて行くか」
一夏の言葉に四人が頷き
「まあみての通り人がすごいから周りよく見てないとすぐにはぐれてしまう。十分気を付けるのだぞ」
と、颯太が五人を見てしっかりと言い
「気を付けろって言ったんだがな……」
数分後、案の定一夏たち五人は完全にはぐれてしまっていた。
それぞれに連絡を取ったところ五人もそれぞれバラバラになってしまっているらしい。
この人ごみなので、テキトーにそれぞれで見て回ることにし、ある程度の時間でそこかで集まることにしたのであった。
「みんな初参加だし、私たちはちゃんと注意事項とか目を通してたけど、あの五人は大丈夫かしらね?」
「正直かなり不安ね」
「速めにほしいサークルや企業のブースを回ってしまって、できるだけ早く合流できるようにするのがいいかもしれませんね」
「まあこれもこの聖戦の洗礼と言うものだろう」
そんなこんなでそれぞれ回ることにしたのだが……
「クラリッサ、私だ。先日相談していた件だが、お前の言っていたイベントで間違っていなかったようだ。…………ああ、その『こみけ』とかいうイベントらしい。………ふむ?そのぶーす?とかいうところのしんかん?を買ってくればいいのか?ああ、わかった。………なぁに、構わん。いつも世話になっている副官への少し遅れたクリスマスプレゼントと言うものだ」
あるところではお使いを頼まれ
「それにしても、いろいろな方がそれぞれ各々好きなものを出店してらっしゃるんですのね……あら?これ……なんだか一夏さんと颯太さんに似てらっしゃいますわね………え?手に取ってみてもいいんですの?それでは失礼して……あら、中身もとてもお上手で………え?そんな!?なぜ男同士で!?……あっ!あぁ!そんな!?颯太さんの手が一夏さんのそんなところを!?ええぇ!?そんな…そんなところをそんな……あぁ!!………………………………あ、あの……これ、一つください……」
あるところでは新たな扉を開き
「はぁ……よくわからないまま歩き回って来ちゃったけど、みんなどこ行ったんだよ………え?写真ですか?――確か颯太が撮影を頼まれたらとりあえずOKしとけって言ってたな――は、はい、いいですよ。……え?声が似てる?そ、そうですか?あ、ありがとうございます(?)………はい?ポーズ?え、えっと、じゃあ、こ、こうとか?……………え?別パターンも?じゃあ、こうとか………あ、一緒にですか?いいですけど………え?目線?こ、こうですか?」
あるところではクオリティの高いコスプレとイケメンな顔に撮影会で(主に女性から)大人気になっていたり
「おい一夏!姿が見えなくて探してみれば!」
「何知らない女の子に囲まれてデレデレしてんのよ!?」
「えっ!?箒に鈴!?」
「写真まで撮らせて!」
「ご、誤解だ!これは颯太から写真撮影を頼まれたら笑顔で応えろって!」
「だ、だからって一緒にとらなくてもいいじゃない!」
「しかも、なんだ!少し近すぎるんじゃないのか!?」
「い、いや、これは……」
「「問答無用!!」
あるところでは自分たちの思い人が見ず知らずの人たちに囲まれ(大半が女性)写真を撮られている様に怒り心頭で飛びかかり
「すみません、コレください」
「新刊、全部ください」
「これ、差し入れの扇子です」
「これ、俺の名刺です」
「あの~、今日のこと、呟いてもいいですか?」
「先生、ずっと前から大好きでした。これからも応援しています」
「あ、先生のことずっとT〇itterでフォローしてました。何度かやりとりもさせていただきました」
「あ、撮影ですか?いいですよ~」
「ラブアローシュート!あなたのハート、撃ち抜くぞ!バ~ン!」
「熾天覆う七つの円環(ロー・アイアス)!!」
「あ、鼻眼鏡もありますけど着けますか?」
あるところでは四人かたまって移動し、心行くまで楽しみ
そして、場所を示し合わせて集合することになったのだが――
「さて、集合場所に来てみたけど……誰もまだ来ていないな」
「まあこの人ごみなら移動も一苦労でしょうね~」
「仕方がないわ。私たちも近くにいたから来れたのでしょうし」
「必要ならまた連絡してみればいいのではないのですか?」
颯太、シャルロット、楯無、簪の四人は集合場所として決めた場所に集まったのだが、そこにはまだ五人の姿はなかった。
と――
「あの~、撮影いいですか?」
「あ、はい。いいですよ。えっと誰を……」
「あ、エミヤさんお願いします」
「はい。じゃあポーズを――」
「あ、あの、あっちでもいいですか?」
「はい?」
颯太に声を掛けてきた男の言葉に首を傾げる。
「あそこに桜のコスしてる人がいて、出来ればあわせて撮りたいな、と思って……」
見ると、男の指さす方には大きな人だかりができていた。
「ええ、いいですよ。行きましょう」
「ありがとうございます!」
颯太の応答に嬉しそうに頭を下げた男とともに四人は移動し、
「あ、すみません〝ヤマヤ〟さん。エミヤのコスの方がいらっしゃったんで一緒に撮らせていただいても……」
「あ、いいですよ。どうぞどうぞ~」
「ありがとうございます!じゃあエミヤさんもお願いします!」
「あ、はい」
男の言葉に優しそうな女性の声が聞こえる。
男に言われて前に歩み出ると男女問わずいろいろな人に囲まれた中心に女性が立っていた。
その女性は白い半そでの胸の下に黒い紐のような細いリボンの飾りのついたワンピースに素足に白いサンダル。紫の肩にかかるくらいの髪に顔の左側には赤いリボンが留められていた。
この寒い真冬にあえて「Heaven's Feel」のキービジュアルの桜コスをしているその女性の姿がそこにはあった。
「あ、すみません。よろしくお願いしますね」
「あ、はい。こちらこそよろし――ヴェ!?」
と、カメラに視線を向けていた女性に声を掛けると女性がこちらに視線を向け、どこから出したの?と言いたくなるようなものすごい声を出して驚愕に表情を歪める。
「あ、あの……どうかしましたか……?」
「はっ!!い、いえ!その…すごくクオリティの高いエミヤさんだったので驚いてしまって……」
「アハハ……でも明らかに身長足りてないですけどね……」
桜コスの女性の言葉に苦笑いを浮かべながら俺は答える。
「ポーズと目線お願いしまーす!」
と、人垣の中から声がかかる。
「あ、はーい!それじゃあエミヤさん、よろしくお願いしますね」
「あ、はい」
桜コスの女性の言葉に頷き、俺は女性に合わせてポーズをとる。
「………あ、あのすみません」
「はい?」
人だかりの外側にいた三人のうち、楯無が近くにいたカメラを構える女性に声を掛ける。
「あの桜のコスプレしている女性って有名な方なんですか?」
「知らないんですか?あの人はコスプレ業界でも結構な有名人の方ですよ。〝ヤマヤ〟さんって言って、コミケとか大きなイベントにはよく現れて、毎回クオリティの高いコスや今回みたいな気合入ったコスプレを毎回見せてくれるんですよ。しかも人当たりいいんですごく人気ありますよ」
「〝ヤマヤ〟さん……そう言えば名前だけ聞いたことある気がしますね……」
「結構な有名人だったんですね」
女性の言葉に簪とシャルロットは納得したように頷く。
「……そうですか。ありがとうございます」
楯無がお礼を言うと女性も笑顔で頷き、撮影に戻って行った。
「……お姉ちゃんどうかしたの?」
楯無の様子に簪は口調を戻して訊く。
「うん……なんだかあの〝ヤマヤ〟って人、どこかで見たことがある気がして……」
「そう言えば……」
「言われてみれば……」
楯無の言葉に二人も気づいたようにハッとし
「う~ん、でも有名な人みたいだし、ネットとかで見たのかも……」
「ん~……でもそれにしてはよく見たことのある気がして……」
「でも、僕らイベント自体初参加ですし……」
「「「ん~………」」」
三人は揃って首を傾げるのだった。
それから数分間の撮影後
「あ、颯太くん!一夏くん来たみたいよ!」
「あ、はい!」
楯無の言葉に視線を向けると見覚えのある天草四郎と箒たち四人が見えた。
「それじゃあすみません。連れが来てしまったので」
「あ、はい」
俺が言うと桜コスの女性が頷く。
その後女性の声かけで周りのカメラを持った人たちは数枚写真を撮った後に散っていく。
「それでは、ありがとうございました」
「こちらこそ一緒に撮っていただいてありがとうございます。――あの!」
お辞儀をして一夏たちと合流しようとしたところで桜コスの女性から声を掛けられる。
「あの、こういうイベントは初めてですか?」
「ええ、コスプレ自体初めてでした」
「そうですか……私、〝ヤマヤ〟っていいます。またイベントで会うことがあればよろしくお願いしますね」
「はい!俺は……特に名前とかないんでソウタで!」
「ソウタさん………また会ったときはよろしくお願いしますね」
俺の名前を反復するように少し考え込むように黙った女性――ヤマヤさんは笑顔でそう言うと手を振って去って行った。
「………おっと一夏たちと合流しないと」
その背中を見送り、俺は師匠たちとともに一夏たちの方に向かった。
「あぁ……ビックリしました……まさか井口君たちに出会うなんて……」
颯太の前から去ってから颯太たちから完全に姿が見えないところまで来たところで壁に背中を預けながら〝ヤマヤ〟こと山田真耶は大きく息を吐く。
「あ、あの様子なら私のことは気付いてないようでしたが……」
言いながら真耶はそっと陰から顔を出す。
視線の先では教え子である颯太たち専用機持ちの面々が何やら話しているのが見える。
「きょ、教師である私がこんなことをしているとばれては、私の教師としての威厳が……絶対にばれるわけには……」
「あ、すみません。写真いいですか?」
「あ、はい!いいですよ~」
ブツブツと思考していた真耶は声を掛けてきた女性に笑顔で振り返りながら答える。
(と、とにかく、今後は十分気を付けないと!)
IS学園一年一組副担任の山田真耶、人気コスプレイヤー〝ヤマヤ〟は決意新たに、しかしその考えを一切表情に出さず、笑顔で撮影に応じるのだった。
改めましてあけましておめでとうございます!!
今年もよろしくお願いします!!
年が明けましたね。
ていうか年が明けましたが特あまり実感がわきませんがとりあえず新年ですね。
さてさて今回の番外編の舞台はコミケ!
読者の方の中にも実際に参加した方もいるかもしれませんね。
ちなみにお気づきかと思いますがわたくしは生れてこの方参加したことがございません!!
この番外編もマンガやアニメの知識と言ったことのある友人から聞きかじった知識で描きました。
なので
あれ?ここ、こうなんじゃない?
ここがそうなのはおかしいでしょ
等々あるかと思いますが、そこは多めに見てやってください。
いつか行きたいとは思っていますが、そのいつかはいつ来るのか……
それではみなさんまた次回!