IS~平凡な俺の非日常~   作:大同爽

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少し前にお気に入り件数が3500件を超えていました!
記念の番外編は考えていますが、今やるとキリが悪いのでもう少し後にしたいと思います。
何はともあれこれからも応援よろしくお願いします!
そんなわけで本編、ついに始まった颯太VS一夏戦です!
どうぞ!






第149話 血肉滾るほどHEAT!

 

「はぁぁぁぁ!!!」

 

「やぁぁぁぁ!!!」

 

 二人の気合いの声とともに互いのブレードがぶつかり甲高い金属音を立てる。

 数秒の鍔迫り合いの後、唐突に一夏が背後に飛ぶ。直後、一瞬前まで一夏のいたところに《火神鳴》の右アームが叩きつけられる。

 

「せいっ!」

 

 そのまま勢いにのせて《火神鳴》の左のアームを一夏を追って振るうがギリギリのところをかすめるが当たらない。

 

「フッ!」

 

 《火神鳴》が空ぶったことで一瞬隙の見えた颯太に《雪片弐型》を振るうが

 

 ガギンッ!

 

 一夏の振り下ろした《雪片弐型》は《火打羽》で防がれる。

 

「はぁぁぁ!!」

 

 気合いの声とともに右手に握った紫の装備、《火遊》を斬り上げるように振るう。

 

「っ!」

 

 颯太に斬りかかっていた体勢のままだった一夏は一瞬反応が遅れ、左の脇腹に《火遊》を受ける。《火遊》のナノマシンによって動きを止められた一夏。その隙だらけの一夏に《火神鳴》の四門の砲門を向け

 

「まずは先制攻撃!」

 

 颯太の言葉とともに四門の砲門が荷電粒子砲を放つ。

 四つの砲撃を受けて地面を転がりながら吹き飛ぶ一夏。

 

「まずは俺の先制パンチだ。さぁ立てよ一夏。第二ラウンドと行こうや」

 

「くっ……おう!」

 

 顔を振って立ち上がった一夏は《雪片弐型》を構え直す。

 

「いいの貰ったから、今度はこっちの番――だな」

 

 言いながら一夏の構えていた《雪片弐型》が輝く。

 

「へぇ…『零落白夜』か……結構早くに出すな。もっと温存するかと思ったよ」

 

「出し惜しんでたら勝てないからな。全力で行く!」

 

 一夏の言葉に颯太はニッと笑いながら《火人》を構える。

 

「そうか……なら俺も死力を尽くしてお前の全力を打ち負かす!」

 

 

 

 〇

 

 

 

「始まりましたわね……」

 

「ああ……」

 

 ピットの中でモニターを見ながらセシリアと箒が言う。

 ピットの中ではモニターを前に、セシリアと箒の他に鈴とラウラ、シャルロットと簪に貴生川、千冬と真耶がいた。

 

「今のところさっきの颯太の荷電粒子砲の攻撃が決まってからは一進一退の攻防ね」

 

「ダメージの総量では颯太の方が有利ではあるが、『零落白夜』を出されては《火打羽》では防げない」

 

「ここから颯太さんは『零落白夜』を《火打羽》を使わずにかわし続けなければいけないわけですわね」

 

「一夏もそれをわかっているうえでこの序盤から『零落白夜』を出したんだろうな」

 

「短期決戦狙いの一夏。颯太は一夏の自滅を狙って長期戦に持ち込むはず」

 

「得意の、《火打羽》を使った防御を封じられて…どこまでもつか……」

 

 四人に加えてシャルロットと簪も心配そうにモニターを見つめる。

 

「……………」

 

 心配そうにモニターを見つめる六人をよそに落ち着かない様子で貴生川はモニターを見つめる。

 モニターを見ながら貴生川はちらりと白衣の袖をめくって腕時計を見る。

 

「あの……貴生川さん?」

 

「――あっはい!なんでしょうか!?」

 

 急に声を掛けられて慌てて答える貴生川。思いのほか大きな声の出たことに少し内心苦笑いを浮かべながら自分に声を掛けた相手、真耶に視線を向ける。

 

「い、いえ…その……何か他に気になることでも?さっきから時間を気にされてるようですが……」

 

「い、いえ、まあなんと言いますか……」

 

 貴生川が言い淀む。と――

 

「っ!颯太が動いた!」

 

 シャルロットの言葉に真耶も貴生川も急いで視線を戻す。

 モニターの向こうでは一夏の『零落白夜』を受けないように距離をとっていた颯太が唐突に『瞬時加速』で一気に距離を詰める。

 突然のことに《雪片弐型》を構え直して防御の体制をとる一夏に構わず《火人》を下から斬り上げるように振る。

 颯太の斬り上げに構えていた《雪片弐型》が一瞬浮く。その隙を逃さず颯太は右手に呼び出した《インパクト・ブースター》を装着して振りかぶる。

 鈍い衝撃音とともに一夏が吹き飛ぶ。

 地面を転がりながら体勢を立て直す一夏を尻目に、《インパクト・ブースター》のカートリッジを飛ばしながら《火人》を構える颯太。颯太の周りには接続を解除されたものも含め四基の《インパクト・ブースター》が主の命令を待つように周りを旋回している。

 

「颯太が攻めた……」

 

「短期決戦を狙ってる一夏に真っ向からぶつかる気だ」

 

 颯太の攻撃に驚く簪とシャルロット。

 

「《火打羽》で防げないのに」

 

「何か策でもあるって言うのか?」

 

 鈴とラウラが声を漏らす。

 皆颯太の攻撃に少なからず驚いているようだった。

 

「颯太君……」

 

「……………」

 

 モニターを落ち着かない様子で見る貴生川とその貴生川に少し視線を向けながら何も言わず黙ってモニターに鋭い視線を向ける千冬だったが、その千冬の様子は誰も見ていないようだった。

 

 

 〇

 

 

 甲高い金属音がアリーナの中に連続で響く。

 もう何度目かもわからない斬り合い、鍔迫り合いを繰り返すふたり。

 隙をついて攻撃を当てる颯太と、一発一発のダメージは少ないながらも確実に少しずつ颯太のエネルギーを削っていく一夏。

 どちらも決定打を撃つことができず攻めあぐねている。

 颯太の最初の二回の攻撃以降一夏もより集中し、できるだけ隙を作らないように立ちまわる。

 武装が多く手数が多い分颯太の方が余裕があるとはいえ、一夏の『零落白夜』と《雪羅》を警戒する颯太も攻めてはいるものの決定打に欠ける。

 

「はぁぁぁ!!」

 

「っ!!」

 

 膠着状態を打開すべく先に動いたのは一夏だった。

 後ろに飛び退き距離をとるそぶりを見せ、距離を詰めようと地面を蹴った颯太を迎え撃つように、逆に颯太に向かって《雪片弐型》を振りかぶる。

 振り下ろされた《雪片弐型》と頭上に真横に構えてそれを受け止めた《火人》が甲高い音を立てながら一瞬火花が散る。

 

「っ!!」

 

 受け止めた《火人》を持ち上げるように両手で押し上げながら、しかし、切先はそのままに、《雪片弐型》を受け止める《火人》を傾ける。

 

「っ!?」

 

 真上から力を込めていたため、斜めになった《火人》の刀身を《雪片弐型》が滑り落ち、地面に着く。

 その一瞬を見逃さず、一夏が動くよりも先に《雪片弐型》を上から《火神鳴》の左のアームで押さえつける。

 一夏が《雪片弐型》引き抜こうとしたところで、今度は逆に颯太が《火人》を振り下ろす。

 

「せいっ!」

 

「このっ!」

 

 掛け声とともに振り下ろす、が、一夏も左手を《雪片弐型》から離して《雪羅》のシールドを展開、《火人》を受け止める。

 

「っ!!」

 

「させるか!」

 

 《火人》を引いて追撃を仕掛けようとしたが、一瞬の隙のできた颯太の空いていた左の脇腹に《雪片弐型》から離した右手で拳を叩きこむ。

 

「フグッ!――チィッ!」

 

 颯太は舌打ちをしながらバックステップで飛び退く。が――

 

「まだだ!」

 

 そんな颯太に一夏は《雪片弐型》を拾い上げ『瞬時加速』で距離を詰めて《雪羅》をクロー状態で振りかぶる。

 

「くっ!」

 

 颯太は苦悶の声を漏らしながら一夏の《雪羅》のクロー状の指と指の間に滑り込ませるように《火人》で受け止める。

 

「そこだぁぁ!!」

 

 接近する前に拾い上げた《雪片弐型》を構え、左から斬りかかる一夏。

《雪羅》を受け止めているせいで両手は使えず、ダメもとで《火打羽》を使うか、《火神鳴》で押さえるか、考えを巡らせた颯太は一瞬判断が遅れる。結果――

 

「ガハッ!?」

 

 先ほど一夏の拳を受けた左の脇腹に、今度は『零落白夜』を帯びた《雪片弐型》の一撃を受ける。

 苦悶の表情を浮かべながら後ろに吹き飛ぶ颯太。地面を転がりながら体勢を立て直す。

 

「くっ、浅いか……」

 

「…………」

 

 片膝を立てた状態で《火人》を構える颯太に一夏は悔しそうにつぶやく。

 脇腹に一撃を受ける瞬間、咄嗟に体を捻り後ろに飛ぶことで直撃を避けたようで、完璧には決まらなかった、が、『零落白夜』の効果で颯太のIS『火焔』は大幅にエネルギーを削られていた。

 

「……やってくれるな、一夏」

 

「俺だってやられっぱなしじゃないんだよ」

 

 一夏を睨みながら言う颯太に一夏はニッと口元に笑みを浮かべながら答える。

 

「……いいね……滾る……滾って来るぜ一夏!血が滾る!文字通りなぁ!」

 

 斬られた脇腹を一度撫でてから口元を歪めるように笑って立ち上がる颯太。

 

「さぁ続きと行こうか!俺の灼熱と化した血肉をもっと熱く、もっと愉しませろ!!一夏!!!」

 

 そう叫ぶ颯太の表情には何か鬼気迫る異様な雰囲気を帯びていた。

 


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