第153話 新体制
颯太が消えたあの日、あれから織斑先生から颯太がIS学園を自主退学したことが知らされた。
事情を詳しく聞こうと織斑先生に詰め寄った僕たち、その中でも特に興奮した様子で捲し立てる一夏に拳骨をくらわした織斑先生から詳しい事情が語られた。
曰く、初めからこういう約束だったそうだ。
颯太は一週間の時間をもらって動き準備していた間に学園長ととある取り決めをしていたらしい。
「颯太が生徒会長代理としてその権力を持って行うことに口を出さないこと」「生徒会長に勝ったものが次の生徒会長になると言うことを代理には適応しないこと」これが颯太が学園長に約束させたこと。
そして、「学園の生徒からの挑戦を先着で一名のみ受け付けること」「その挑戦者が勝った場合その人物に生徒会長代理の座をあけわたすこと」「颯太が挑戦者に負けた場合颯太はIS学園を自主退学すること」これが颯太の出した条件を学園長が飲む代わりに颯太が提示したことだった。
学園長は颯太の計画の内容を聞きよく考えたうえで、その条件を受け入れた。それがIS学園の平穏のために最適だと考えたようだ。何よりその条件を飲まなければ颯太がどう動くかわからなかった。颯太の行動をある程度コントロールするためにもその条件を飲んだそうだ。
颯太がこの条件を出して生徒会長代理に就任したことを知っていたのは学園の中では学園長を除けば一人だけ、織斑先生だけだったらしい。
織斑先生は最後まで颯太の計画に反対だったらしい。が、学園長も颯太もその主張を曲げず、最終的にはどうあっても止まらないことを悟り静観する道を選んだようだ。
正直学園長が織斑先生にすべてを教えていたかどうかはわからない。颯太がどこまでその計画の概要を学園長に話していたのかはわからない。
ただ、学園長の想定外は、予想よりも早く一夏が颯太に挑戦したこと、颯太が相川さんに刺され、しかもそのまま負傷した上で一夏と戦ったことだった。
颯太が負けたことで条件通り颯太はIS学園を自主退学、颯太の行動を縛るものはなくなった。
そして――半年経った今現在、颯太は依然行方不明のままだった。
颯太がいなくなってから、IS学園は半年と言う時間の中で、確実に変わっていっていた。
「シャルロット……シャルロット……?シャルロット・デュノア委員長!」
「っ!?」
ぼんやりと窓の外を眺めていた僕は隣で聞こえた大声に慌ててその声の方向に顔を向ける。
そこには呆れた表情で簪が立っていた。
「もう……話、聞いてなかったでしょ…?」
「あ、アハハ……ごめん、なんだっけ?」
「まったくもう……そろそろ会議の時間だから移動しないと遅刻するって言ったの……!」
「あ、あぁ~……」
ため息をつきながら言う簪の言葉に僕は頬を掻きながら時計を確認する。
確かに簪の言う通り予定していた会議の時間までもう少し、そろそろ移動しなければいけない時間だ。
「そうだね、そろそろ行こうか」
「まったく、新学期が始まって忙しいのはわかるけど、ちゃんと体を休めないとだめだよ。〝シャルロット風紀部委員長〟?」
「ごめんごめん。ご心配をおかけしてます〝簪副委員長〟」
ため息をつきながら言う簪の言葉に僕は苦笑いを浮かべる。簪が僕のことを堅苦しい肩書をつけて呼ぶ場合、たいていは冗談を籠めたおふざけの場合が多い。だからこそ僕も同じように肩書をつけて簪に答える。
風紀部。それは颯太が去った後で新たにIS学園で発足された団体だ。風紀委員会は以前からあったが風紀部の職務は風紀委員会の物とは違う。
風紀部の主な役職はIS学園内の風紀の取り締まりだ。そして、その取り締まりの対象は生徒会にまで及ぶ。
今回の颯太の行動で生徒会には権力がありすぎることが問題となった。生徒会長やその代理が今回の颯太のように行き過ぎた行動をしたとき、それをとめる術がない。
だからこその風紀部だ。
生徒会が行き過ぎた行動をとったとき、風紀部が取り締まる。
逆に風紀部が行き過ぎた取り締まりをしたとき、生徒会がその責任を追及する。
生徒会と風紀部、これはお互いがお互いにストッパーとなるようにしたのだ。
だからこそ風紀部の委員長と副委員長は生徒会の会議に出席、その会議での決定権の一端を担う。
そんな風紀部は年が明け、三学期が始まると同時に発足、その仕事が始まった。
責任重大で前例のない風紀部の栄えある初代委員長と副委員長には、紆余曲折あってそれぞれ僕と簪が任命された。
そんなわけで、四月某日、入学式から二週間ほどたった今日、僕と簪は生徒会との会議に出席する――んだが、少しボーっとしすぎてギリギリになってしまったわけで……
「ごめん!ちょっとギリギリになった!」
「お待たせ…しました……!」
慌てて、しかし学園の風紀を取り締まる風紀部のツートップが廊下を走るわけにもいかず、結果競歩の世界記録更新できるんじゃないかって言う速度で小走りで生徒会室に僕と簪は飛び込む。
「ああ、大丈夫だ。まだギリ予定時間前だからな」
言いながら頷いて僕らを出迎えたのはラウラだった。
「シャルロットさんが遅刻とは珍しいですわね。どこかの誰かさんと違って約束の時間の最低でも五分前にはいつもいらっしゃるのに」
「ちょっと!その誰かさんってもしかしてあたしじゃないでしょうね!?」
「あら?自覚があるのなら次回から直してほしいですわね~」
セシリアの言葉に鈴が言うが、どこ吹く風でセシリアが笑う。
「さあ、二人も早く座れ。私事で悪いが、時間があれば私はこの後剣道部にも顔を出さないといけなくてな」
僕らに席を示しながら箒が言う。
僕らが風紀部の委員長副委員長に就任したようにこの面々もそれぞれ生徒会役員に就任した。
そして、生徒会長には――
「おっし!これで全員揃ったな!」
そう言って一夏はニッと笑う。
「それじゃあ、これから第……えーっと……何回目かわからないけどとにかく生徒会会議を始める!」
こうしてIS学園生徒会長織斑一夏の号令で生徒会会議が始まった。