IS~平凡な俺の非日常~   作:大同爽

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第157話 ≠(ノットイコール)

「みんなよく集まってくれた」

 

 夕方17時。あれから大急ぎで学園に戻った僕と簪は同じく先生からの連絡で大急ぎで帰ってきた箒たち、四人とは別に出かけていた一夏と合流し、現在IS学園の地下に作られた会議室に集まっていた。

 円形の机にみんな座り、その中で一番奥、大きなディスプレイの前に座る織斑先生が口を開く。

 

「先の連絡で聞いたと思うが、『亡国機業』のやつらが動いた」

 

「また……」

 

「今月に入って二度目よね」

 

 織斑先生の言葉に簪と鈴が言う。

 

 

 

 この半年の間で『亡国機業』の活動は活発になった。

 颯太がいなくなってから、颯太が行方をくらませたという情報のせいか『亡国機業』によるIS学園への攻撃はピタリとやんだ。それから年を超えるまでは特に活動を見せず静かなものだった。

 しかし、『亡国機業』が動きを見せたのは一月の末だった。

 一月の末、突如として『亡国機業』の名義でネット上にサイトが立ちあげられ、その日のうちに全世界に向けて動画が配信された。

 その中で登場したのが先の動画にも現れた『安木里マユ(やすきさとまゆ)』と名乗る人物である。

 白いキツネのお面で顔を隠し、特徴的な和洋折衷の服――簪によると『Fate/GrandOrder』と言うゲームに登場する刑部姫の服装らしい――に身を包み、朗らかな口調でしゃべるその姿はこれまでの『亡国機業』のイメージを一変するものだった。

 その『安木里マユ』を名乗る人物は自身を『亡国機業』のボスを名乗り、これまで各国の上層部や一部の人物しかその存在を知らなかった組織の活動内容を語り、そのまま衝撃の宣戦布告をした。

 

『この動画を見ている全世界の老若男女、紳士淑女の皆様!私たちはこれまで表舞台に姿を出さず、世界の裏で暗躍してきました。しかし!この度私たちを利用するだけ利用し、その上自分たちの邪魔になると判断した途端私たちを切り捨てた女性権利団体を、私たちは今ここで告発する!今この瞬間より女性権利団体は私たちの最大の敵であり、私たちの全戦力を持って叩き潰すべき相手と定めたことを宣言します!』

 

 その宣言の動画をアップした次の日、女性権利団体傘下のIS関連企業の施設が壊滅的な被害を受けた。

 その現場にはIS学園を襲撃した『アラクネ』さらに謎のIS――便宜上『黒騎士』と名付けられた――の姿が見られたことから、宣戦布告の人物が『亡国機業』の関係者であることが疑う余地のないものとなった。

 さらに驚いたことにその壊滅的な被害を受けた施設には設備以外の被害はなく、死者・重傷者はともに0だった。

 二本目の動画はテロの起きたその日のうちにアップされた。

 

『わかってもらえたかな~?この調子で私たちは今後もこの活動を続けていくよ~。と、同時に今後も活動の後にはこうして動画をアップしていくのでお楽しみに~。――あ、そうそう。このサイトにハッキングかけて無理矢理閉鎖させようとか考えた輩がいたみたいだけど、そこを足がかりにいろいろ情報抜き取らせていただきましたこと、いまここでお礼申し上げます。ありがとね~♡次は、あなたの国の情報をいただいちゃうかもよ~?』

 

 と言い、実際に今日まで二月には四ヶ所、三月には五か所、今月に入ってからは鈴の言う通り今日で二度目のテロ行為を行い、その都度テロ行為の一時間後には動画を更新するということを繰り返していた。

 そのうえ、サイト上に質問コーナーなども開設し、動画の中で答えるなども行い、世間の関心は一気にそのサイトと『亡国機業』の一挙手一投足に注がれていった。

 

 

 

 

「これで被害を受けた施設は計十一か所。それに対して死傷者は0」

 

「やつらはその施設内で人が減る時間帯を狙って襲っているな」

 

「いったいどこから情報手に入れてるんだか……」

 

 箒、ラウラ、一夏がディスプレイに映し出された今回の情報に目を通しながら呟く。

 

「それはたぶん二回目の動画で言っていたことだと思う……」

 

 一夏の呟きに簪が答える。

 

「たぶん、一回目の動画以降にも各国や民間、いろんな団体や組織がクラッキングを仕掛けてるはず……公表されてないけど」

 

「そこから各国の情勢などの情報を抜き出して、各施設の内部情報を取り出してるんだろうね」

 

「なるほど、その情報をもとに次に仕掛ける施設を決めてるのか……」

 

 簪の解説に加え、僕の言葉に一夏は納得したように言う。

 

「このサイトを立ち上げた人、すごい……。私もさわりの部分だけ見てみたけど、とてもじゃないけど無理……」

 

「そんなにすごいの?」

 

 鈴の問いに簪が頷く。

 

「これならまだ、この学園にクラッキングしかける方が可能性がある、ってくらいには難関……」

 

「そんなにですの……」

 

 簪の言葉にみんな息を呑む。

 

「しかし、情報があったからと言ってここまでの、死傷者0なんて言うことが本当にできるのか?一回や二回ならともかく、十一か所全部でなんて……」

 

 一夏がふと呟く。

 

「まあ普通にやっていれば無理だろうな」

 

 一夏の言葉に織斑先生が答える。

 

「ただ、やつらのやり方は普通じゃない」

 

「襲われた施設の職員には軒並み箝口令が敷かれてしまっているので、これは裏の取れていない不確かな情報なのですが……その……」

 

 織斑先生の言葉に先生のとなりに座っていた山田先生が言い淀みながら言う。

 

「助かった施設職員を名乗る人物がネットにあげた情報によると、助けられたそうなんです――『亡国機業』のメンバーに」

 

『なっ!?』

 

 山田先生の言葉に僕らはが驚きの声を漏らす。

 それはそうだろう。まさか襲った本人が救助活動をしてるなんてそんなおかしな話はない。

 

「正直それらの情報も出てすぐに抹消されてしまうので裏が取れず、また、本当にその施設職員なのかどうかもわからないもので……」

 

「でも、それが本当なら……」

 

「ますます私たちの知ってる『亡国機業』と違う……」

 

 山田先生の言葉に僕と簪が言う。

 

「確かに、二度も学園を襲った『亡国機業』と人命救助したりハイテンションで動画配信するYou〇uberみたいなやつはイコールで結びつかないな」

 

 ラウラの言葉にみんなが頷く。

 

「この変化に原因があるとすれば……」

 

 僕の言葉にその場の全員の視線がディスプレイに向く。

 そこにはキツネのお面の女性が映っている。

 

「『安木里マユ』……」

 

「まあこいつの登場からだしな、普通に考えればこの女が何か関係していると考えるのが妥当だ」

 

「いったい何者なんでしょうか……?」

 

 セシリアの言葉に誰も答えられる者はいない。

 

「そう言えば、前にデュノアと更識の言っていたこと、一応一通り調べてみたが……」

 

「それって……!?」

 

「何かわかりましたか!?」

 

 織斑先生が思い出したように言うので僕と簪は訊く。

 

「いや、残念ながらめぼしい成果はなかった」

 

「そう…ですか……」

 

 首を振る織斑先生の言葉に僕らは少し落胆する。

 

「なんなんだ、二人の言ったことって?」

 

 と、一夏が訊く。

 

「そう言えば、織斑先生と山田先生にしか言ってなかったね」

 

「実は……私たち二人で春休みに、颯太の実家に行ってきたの……」

 

 

 

 颯太は現在世間的にはとある組織に暗殺未遂され身を隠していることになっている。

 どの組織による暗殺かは情報規制のために公表されていないが、この場にいる全員はその組織については情報が開示されている。

 その情報は僕ら以外には一部の人間しか知らない。その一部の人間には、颯太の家族は含まれていない。

 颯太の家族は現在も変わらず京都北部にある家で生活している。が、その警備状態は以前よりも強化されている。

 年末にはIS学園のことでバタバタしていたので行くことはできなかったが、春休みに颯太の実家を訪ねた僕らを颯太の家族は夏休みの時と変わらず温かく迎えてくれた。

 家族の皆さんは颯太のことを心配しつつも颯太のことは信頼しているからどんなことになっても変わらず迎えてやるのだと言っていた。

 お母さんとしか家族の記憶がない僕には、その言葉がすごく羨ましかった。

 それから学園のことなどを話している過程で、話題は世間を騒がせている『亡国機業』の話になった。

 そんな中で海斗君がふと思い出したように言ったのだ。

 

「そう言えばさ、あの『亡国機業』のボスって名乗ってる『安木里マユ』って人。その人の名前さ…俺、どっかで聞いた気がするんだよね……」

 

 ――と。

 しかし、漫画だったのか、アニメだったのか。いったい海斗君がその名前をどこで見聞きしたのかはどうしても思い出せないと言うことだった。

 頑張って思い出してほしいところだが、本人もどうしても思い出せないと言うことだった。

 結局僕らが颯太の実家にいる間には思い出すことができず、思い出せたらすぐに連絡をくれると言うことで、今日に至る。

 学園に帰って来てからすぐにその事を織斑先生に話し、その線から『安木里マユ』の名前を探したのだ。が――

 

 

 

 

「結局見つからなかったみたいだね。僕らでもできるだけ調べてみたけど見つけられなかったし……」

 

 説明し終えた僕はため息をつく。

 

「結局海斗君の思い違いだったってことでしょうか?」

 

「ん~…そうなのかな……?」

 

 セシリアが言い、僕と簪は呟きながら首を傾げる。

 

「結局『安木里マユ』については新しい情報はないまま、ですね……」

 

「何かわかるかと少し期待したんだがな……」

 

 山田先生と織斑先生も僕らほどではないにしろ、少し落胆した様子だ。

 目頭を揉みながら織斑先生は鋭い視線でディスプレイに映る『安木里マユ』の姿を睨む。

 

「いったい、お前は何が目的なんだ……?」

 




ここでこの小説と原作との違いを一応確認。

原作だとワールドパージの後には修学旅行の下見で亡国機業とドンパチしたりとかクリスマスのあたりにも(原作未読の方がいる可能性を考慮して詳細は伏せます)一大事件がありましたが
この小説だとそれらの事件は起こっていないものとします。
理由は僕がこの展開を考えている時にはまだその辺の話が出ていなかったからです!
まあその辺で出てきた設定とかは盛り込むかもしれませんが……。
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