IS~平凡な俺の非日常~   作:大同爽

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前回の後書きについて、私の言葉が足らず何人かの方からご指摘をいただきましたが
井口海斗君の小説は私ではなく、私の知り合いが書いてくれています。
私が複数のアカウントを使って投稿しているわけではありません。
後書きについてはそのことについては修正しましたが、私の言葉が足らずすみませんでした。






第162話 最後の放送

『やあみんな、久しぶり』

 

 そう言いながらディスプレイの向こうから笑みを浮かべる少年、井口颯太の登場にディスプレイを見つめていた全員が言葉もなく息を呑む。

 

「なん…なんで……」

 

 一夏が呆然と呟く。

 一夏の呟きが聞こえたようで、颯太が微笑みながら口を開く。

 

『う~ん、俺ももう少し久しぶりに顔を合わせた友人たちと語り合っていたいけど……あ、顔を合わせてはないか』

 

 ハッとしながら颯太が笑う。

 

『もう少し話していたいが残念、時間切れだ』

 

「時間切れ?」

 

 颯太の言葉にディスプレイを見つめる一夏たちが首を傾げる。

 そんな一夏たちの問いには答えず、颯太はゆっくりと喋り出す。

 

『さて、こうして皆さんにお付き合いしてもらってきた『Y♡Mチャンネル』、なんと今日で最終回となりました』

 

「「「「「「「「っ!?」」」」」」」」

 

 颯太の言葉に全員が驚愕の表情を浮かべる。

 

『俺もこうして顔を出したし、何より必要な情報は揃った。今日のこの特別放送は最後のこの瞬間のための放送と言っても過言ではありません』

 

 そう言って颯太は椅子から腰を上げ姿勢を正す。

 

『次の標的こそが俺の最終目的であり、『亡国機業』と手を組んでまで到達したかったことだ』

 

 颯太はディスプレイの向こうから鋭い視線で高らかに宣言する。

 

『俺たちの最後の標的、それは――女性権利団体現最高責任者、吉良香純の命だ。この世界を歪め、自分たちの私利私欲を満たすためにたくさんのものを犠牲にした罪、その命で償ってもらう』

 

 その鋭く冷たい視線でディスプレイ越しに、その先で見ているであろう吉良香純その人を睨みつけるように言う颯太。

 

『守りたければ守るがいい。俺たちは相手が誰であろうと、どんな手を使ってでも吉良香純の命をいただくまで止まることはない。例え最後の一人になっても、心臓がその動きを止めたとしても吉良のその喉笛に食らいついてその息の根を止める』

 

 颯太が鋭い視線のまま口元を歪ませるように笑みを浮かべる。

 

『さあゲームを始めよう。俺たちを潰すのが先か、吉良香純が潰れるのが先か。楽しい楽しいゲームの始まりだ』

 

 そう言い放ち、姿勢を正した颯太は恭しくお辞儀をする。

 

『それでは、今この瞬間をもって俺たちの最後の攻撃を開始する。吉良香純、昼も夜もなくいついかなる時、どこから、誰からお前の命を狩り取るための攻撃が来るかもわからない状況を存分にお楽しみください』

 

 そう言って笑った颯太の笑顔を最後に、ディスプレイは暗転した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……本当によかったのか?」

 

 動画の配信を終え、椅子に座り体を預けた俺にオータムがやって来て訊く。

 

「……よかったって?」

 

「現状は本当はてめぇの目指していたものとは違う。てめぇは――」

 

『おやおや~?ひひっ!もしかしてマーちゃん、私の事心配してくれてるの~?やぁ~ん!マーちゃんってばやっさし~!♡』

 

「おい茶化すんじゃねえよ!てか〝マーちゃん〟って呼ぶな!」

 

 お面を被り、口元に取り付けられたボイスチェンジャーによって変換された〝安木里マユ〟の声で茶化す俺にマーちゃんことオータムが俺の頭を殴ろうとする。

 

「……安心しなよ」

 

 俺は椅子から立ち上がりながらオータムの拳をするりと避ける。

 

「俺に迷いはない。さっきの動画で言った通り、例え最後の一人になっても、心臓がその動きを止めたとしても吉良のその喉笛に食らいついてやつの息の根を止める」

 

「………」

 

「それがこの戦い(ゲーム)を始めた俺の責任だ」

 

 オータムの鋭い視線を正面から受け止めながら俺は笑う。

 

「さぁ行こうか。スコールたちが待ってる。計画の最終確認だ」

 

「……ああ」

 

「行くぞ、クロエ」

 

「はい、颯太さん」

 

 俺の言葉に頷いたオータムから視線を外し、俺は部屋の奥に呼びかける。

 動画配信の機械を操作していたクロエが頷く。

 俺はキツネのお面を椅子に置いて部屋を後にする。

 

 

 

 例え予定していた結果と違っても、これが俺の選択だ。

 立ち止まるわけにはいかない。

 目を逸らすことはできない。

 もはや軌道修正することもできない。

 坂を転がり始めた石は加速する。

 もう誰にも止められない、それを転がし始めた俺にも。

 そのことに後悔はない。

 してたまるものか。

 ここで後悔してしまっては、この半年が無駄になる。

 無駄にしてなるものか、この積み重ねた半年と言う時間を。

 その一分一秒を。

 

 それでもふと思ってしまう。

 いったいどこでこうなってしまったのだろうか。

 もっとうまくやれていたはずなのに。

 

 もはや何度目ともわからない自問自答をしながら、俺はこの半年に思いを馳せる。

 


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