IS~平凡な俺の非日常~   作:大同爽

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第170話 交渉の席

 

「おいスコール!どうなってんだよ!?」

 

「あらあら、いったいどうしたって言うの、オータム?」

 

 私が部屋に叫びながら入るとスコールはソファーに腰掛けて言う。

 

「どうしたもこうしたもあるか!もう二か月半だぞ!二か月半も何もせずに引き籠って、その間何もしていない!いい加減何かしないと――」

 

「落ち着いて、オータム」

 

 私の言葉を遮ってスコールが言う。

 

「今はそのときじゃないの。状況を見て動かないと、私たちの立場が悪くなるわ」

 

「立場が悪くなる?どういうことだ?」

 

「今はなんとも言えないわね。私の取り越し苦労かもしれないしね。――それよりも」

 

 話題を変えるように言葉を切ってスコールは私の顔を見ながら言う。

 

「この後来客があるから準備しておいて。エムにも声かけておいて頂戴」

 

「お、おう……それはいいけど、いったい誰が来るんだよ?」

 

 俺の問いにスコールはため息をつく。

 

「……ニコよ」

 

「うげっ」

 

 スコールの言葉に私は思わず顔をしかめる。

 あの男、何度か会ったが人をくったようなつかみどころのないやつだ。はっきり言って苦手だ。

 

「あいつ何しに来るって言うんだよ?」

 

「さぁ?なんでも、どうしても緊急に会って話したいことがあるんですって。まあ彼のこれまでの働きを見るに、それなりに有用な情報でしょうけど……」

 

 スコールもあいつに対してあまりいい印象ではないのか微妙な表情をしている。

 

「まあそんなわけでよろしく。エムには隣の部屋でいつでも動けるように待機するように伝えておいてくれるかしら」

 

「わかったよ……」

 

 私はため息をつきながら部屋を後にした。

 

 

 

 

 

 ニコのやつが私たちの拠点にしているホテルの部屋を訪れたのはそれから一時間後だった。

ニコはスコールの対面のソファーに腰を下ろした。

 私はいつでも動けるようにオータムの脇に控える。

 

「急にごめんなさいね。連絡に応じてくれて助かったわ」

 

「あなたが緊急だって言うからね。それで?今日はどういったご用件かしら?」

 

「ええ、今回はちょっとあなたたちに手土産を持ってきたのよ」

 

「手土産……?」

 

 言いながらスコールはニコの脇に向く。

 そこには人一人ゆうに入りそうな大きなリボンの巻かれた箱が鎮座していた。

 これはニコがこの部屋にやって来た時に台車にのせて持ってきたものだ。

 台車から降ろすとき手伝わされた。中身何入ってんだよ、ってくらい重かった。

 

「そう、実はこの間アメリカの基地の近くをウロウロしている時に面白い相手に会ってね。今回来たのはその人のことでね。その相手って言うのも、あなたたちはよく知る人物なんだけどね」

 

「私たちの……」

 

「よく知る人物……だと?」

 

 ニコの言葉にスコールも私も眉を顰める。このオカマは何を言っているんだ?

 

「まあ詳しくは――」

 

 言いながらニコは箱に手を伸ばし、箱を包んでいたリボンを掴み

 

「彼から聞いて頂戴」

 

 言いながらリボンを引く。リボンが解け、箱の四面がパタパタと開き、中には

 

「サプラ~イズ♪」

 

 椅子に縛り付けられた一人の少年が笑いながら座っていた。

 そいつは――

 

「っ!?」

 

「てめぇ!井口颯太!?」

 

 間違いなく、数か月前に私たちが暗殺対象として追っていた相手、井口颯太だった。

 

「どもども、お久しぶり~。とりあえず、お互い言いたいことは山ほどあると思うけど、まずは……この縄外してくんない?」

 

 

 

 〇

 

 

 

「……この縄外してくんない?」

 

 驚いた顔をしているオータムと初めて見た金髪の美女に言う。

 

 

 

 

 

 今日の午前中、ニコさんに荒縄で緊縛プレイに誘われた後、よくよく話を聞いてみると冗談だと言うことだった。まったくもって笑えない、と言うか目がマジだった。

 ニコさん曰く、俺がそのまま行ったのでは『亡国機業』のやつらがどう出るかもわからない、やつらを安全に交渉の席に着かせるためにも俺の自由を奪い、こちらに争う意思のないことをわからせることが目的……らしい。

 だからってここまでがっつり椅子に括り付ける必要なくない?てかそもそも俺が縛られてて交渉もクソもないじゃん。下手すればそのまま殺されるんじゃね?

 そう思ったのだが、ニコさんは俺の言い分を聞くことなくてきぱきと俺を椅子の背もたれに両手を、椅子の脚に俺の脚を縛り上げ、そのまま箱詰めにされた。そこから小一時間ほど何も見えないまま移動し、唯一聞こえる声から察するにちゃんと目的の『亡国機業』のところに来ることに成功したことだけはわかった。

 そして先程、満を持して箱から出してもらえた俺だった。俺だったのだが――

 

 

 

 

 

 

「てめぇ!よくも私たちの前に姿を現せたな!」

 

 オータムがすごい剣幕で俺を睨みつけてずんずん歩み寄って胸倉を掴んでくる。

 

「てめぇを殺すはずだったのに何度も邪魔しやがって!」

 

「バカか?自分が殺されそうなのに抵抗しないやつがいるわけないだろ?」

 

「だとしてもだ!でもお前自身がこうして私の目の前に現れ、その上自由を封じた状態だ……いまここで私の手で――」

 

「オータム」

 

 左手で俺の胸倉を掴んだまま右腕を振り上げる。その手にはベルトに収められていたナイフが握られていた。そんなオータムをソファーに腰掛けた金髪の美女が呼び止める。

 

「けどよ、スコール!」

 

 オータムが叫びながら美女に振り返る。

 どうやらあの金髪美女はスコールと言うようだ。

 スコールと呼ばれた美女は落ち着いた様子でオータムに視線を向ける。

 

「確かに今の彼を殺すことは容易いわ。でも、それは話を聞いてからでもできるわ」

 

「話を聞く必要なんてない!今ここで私の手で!」

 

「オータム?」

 

「っ!……くっ!」

 

 冷たい声音のスコールの言葉にオータムは一瞬体を震わせ、乱暴に投げ出すように俺を放す。

 

「改めて初めまして。私の名前はスコール・ミューゼル。あなたとも面識のあるこのオータムの……まあ上司みたいなものかしら?よろしくね」

 

「初めまして。知っているだろうが、俺の名前は井口颯太だ。アンタはそこのオータムよりも話が分かりそうだ」

 

「んだと!?」

 

「オータム」

 

「………チッ」

 

 俺の言葉にオータムがまた掴みかかってきそうになるが、スコールにたしなめられ、オータムが顔をしかめて引き下がる。てか今舌打しなかったか、おい?

 

「それで?あなたは自分を狙っていた私たちの前にこうして姿を現し、いったい何が目的なのかしら?」

 

「その前にスコール氏、これ外してもらえません?」

 

「それはアナタのお話次第ね」

 

「ちぇ~」

 

 俺はため息をつきながら姿勢を正す。

 

「俺が今日こうしてあんたたちの前に現れた目的は、あんたたちに提案があったからだ」

 

「提案?」

 

 俺の言葉にスコールもオータムも首を傾げる。ニコさんは楽しそうにニコニコと笑みを浮かべている。

 

「俺からの提案はたった一つ……なあスコールさん、俺と共闘しないか?」

 

「んなっ!?」

 

 俺の言葉に驚きの声を漏らしたのはオータムだった。

 

「てめぇそれはどう言う意味だ!?」

 

「そのままの意味だよ。俺とアンタらはどうやら戦うべき相手は同じなんだ。だったらお互いの因縁は一旦脇に置いておいて力を合わせるべきじゃないかな?」

 

「戦うべき相手は一緒だと!?てめぇ、何を言って――」

 

「だって、このままいくとアンタら、確実に女性権利団体に体よく尻尾切りに会うぜ?」

 

 オータムの言葉を遮って俺は言う。

 

「そもそもあいつらはなんでアンタらと手を組んでたと思う?」

 

「それは……なんでだ?」

 

 俺の言葉にオータムが首を傾げる。

 

「はぁ~、そっからか~。しょうがない、一から教えてやる。――いいでちゅか~、おーたむちゃん?」

 

「赤ん坊扱いしてんじゃねぇよ!」

 

 俺の猫撫で声にオータムが叫ぶが俺は気にせず解説を続ける。

 

「あいつらにとってアンタらと手を組む利点は、アンタたちがISを使って暴れることだ。そもそも女性権利団体が権力を持てたのはISの登場の影響だ。ISは女性にしか動かせない。ISは既存の兵器を圧倒する力を持っている。だからISを動かせる女性は各国で優遇されるようになった。そこまではわかるだろ?」

 

「お、おう……」

 

「ISを動かせるのは女性だけ。ならば仮にISが悪用されたら?それこそテロや戦争なんかに使われたら?既存の兵器を凌駕する性能のIS、それを止められるのは同じISだけ。なら――」

 

「ISを止めるためにISを使用する。世界のISへの需要が高まり、より一層女性が優遇されるようになる」

 

 俺の言葉を引き継いでスコールが言う。俺はそれに頷きながら説明を続ける。

 

「つまり、アンタたちがISを使ってテロなんかの活動を繰り返せば繰り返すほど、女性権利団体の権力はより高まっていくってわけだ。ならやつらとしてはアンタらには今後とも活動を続けてほしかった。だから協力していたってわけだ。わかりまちたか~?」

 

「だからその赤ん坊に言い聞かせるような言い方やめろって言ってんだろ!?……でもなんとなくはわかった」

 

「今の説明でなんとなくかよ」

 

「んだとこの野郎!?」

 

「オータム」

 

 三度俺に掴みかかろうとするオータムをスコールがたしなめる。

 

「あなたもわざわざ彼女を挑発するのはやめてくれないかしら?」

 

「こいつは失礼」

 

 俺は少しも悪いとは思っていないけどとりあえず謝っておく。

 

「で、だ。アンタらはこれまで女性権利団体と手を組み、恐らく向こうから金銭的な援助とかをしてもらい、アンタらからは女性権利団体の依頼してきた相手を暗殺したり、女性権利団体が行ったテロを自分たちがやったことにする、とかかな?例えば俺の暗殺や師匠を殺しかけた爆弾なんかのな」

 

「……………」

 

 俺の言葉にスコールは黙ってジッと俺の顔を見つめ

 

「フフッ、なかなかいい読みね。あなたの予想はおおむね正解よ」

 

 笑いながらスコールが口を開く。

 

「それで?そんな私たちが女性権利団体に切られると、あなたはどうして予想したのかしら?」

 

「それは、俺が今こうしてここに生きているからさ」

 

 俺はスコールの問いに二ッと笑いながら言う。

 

「アンタたちには恐らく女性権利団体から俺の暗殺依頼が来ていた。だからこそ学祭とキャノンボールの時に襲撃してきた。しかし、その両方で成果を上げられなかった。それに痺れをきらした女性権利団体は自分たちが手を下した。でも、それも失敗。しかも逆に女性権利団体と『亡国機業』との繋がり、女性権利団体が俺を殺すつもりだった証拠を掴まれた。このことはいまだ世間に発表はされていないが、恐らくその事実は国連なんかの上の方には伝わっているはずだ。このままいけば女性権利団体の地位は失墜するだろう。

 だからこそ、やつらの次の行動は読みやすい。やつらは近々こう発表するはずだ。『すべて「亡国機業」のやつらの罠だ。私たちは少しも関与していないし、やつらと繋がっているなんて事実は一切ない』ってね。アンタらとのつながりを示す証拠のすべてを処分した上でね。そして……そのことはアンタも予想しているんでしょ、スコールさん?」

 

「っ!?」

 

「…………」

 

 俺の言葉にオータムが驚いた顔で隣のスコールを見る。スコールは黙っている。

 

「恐らく最近女性権利団体からの連絡が途絶えちゃってるんじゃないですか?アンタらが最近活動を押さえ、身を潜めていたのもそのせいだ。自分たちの動き次第でそれをうけて女性権利団体のやつらがどう動くか読めないから。今後どうするかを慎重に世界中の動きを見ながら考えていた。そしてもし女性権利団体に切られた場合どうやって落とし前つけるか。そうでしょ?」

 

 俺は言いながらニッコリと笑う。

 

「だからここで最初の提案になるわけだ。俺は、俺を狙い師匠を傷つけた女性権利団体のやつらを潰したい。アンタらは自分たちを利用した上にその罪をすべてあんたたちに被せようとしている女性権利団体に落とし前をつけたい。どうですか?一緒に女性権利団体を潰しませんか?」

 

「………一つ聞かせてくれるかしら?」

 

 俺の言葉にスコールが口を開く。

 

「あなたのことを私たちは殺そうとした。なら、こうして私たちの前に姿を見せた時、私たちに殺されると思わなかったのかしら?なんなら今から殺されるとかも思ってないのかしら?」

 

「そのことか……ぶっちゃけ、そのことはアンタらと手を組むことを考えた時から心配だったし、今日アンタらに会うまでずっと考えてたさ」

 

「なら……」

 

「でも、少なくと今はすぐ殺されることはないって思ってます」

 

 俺はスコールの言葉を遮って言う。

 

「覚えてます?スコール、あなたは俺にさっき『自分を狙っていた私たちの前にこうして姿を現し、いったい何が目的なのかしら?』って訊きましたよね」

 

「そうね。それが?」

 

「〝狙っていた〟つまり、過去形だ。てことは少なくとも今すぐ殺す気はないってことだ。なによりあなたは何度も俺に掴みかかって来るオータムを制止してくれた。」

 

「なるほどね……」

 

 スコールは納得したように頷く。

 

「………オータム」

 

 数秒考え込んだスコールはゆっくりと顔を上げ、脇に立つオータムに視線を向ける。

 

「オータム、彼の縄を解いてくれるかしら?」

 

「っ!?正気かスコール!?それって――」

 

「彼の話に乗ってみるのも悪くない、むしろ面白そうじゃないかしら?」

 

 驚くオータムにスコールは優美に微笑んで言う。

 

「彼の言う通り、このままだと私たちは自分たちのしていない罪まで背負わされる。女性権利団体の尻拭いでね。そんなのはごめんだわ。だったら、私たちをいいように利用したやつらに、誰に喧嘩を売ったのか教えてあげる必要があるんじゃないかしら?」

 

「そ、それはそうだけど……だからってこいつの手を借りてなんて……!」

 

 オータムは俺の顔とスコールの顔を交互に見て顔をしかめて考え込み

 

「ん~~~~~!あぁ~、クソッ!わかったよ!」

 

 頭をガシガシと掻きむしって叫ぶとずんずんと俺の方に歩み寄ってくる。

 

「てめぇ、わかってんだろうな?少しでもおかしな真似したらすぐにぶっ殺してやるからな」

 

「おぉーこわっ!殺されないように気を付けないと」

 

 跪いて俺の脚を結び付けている荒縄を解こうと手を伸ばし、しかし、固く特殊な結び方をされているのかなかなか解けない。

 

「……………ん~~あぁ~!じれったい!」

 

 言うが早いかオータムは腰のベルトに収めていたナイフを抜き取り結び目をスパッと切る。

 

「はじめっからこうすりゃよかったんだよ」

 

「危ないなぁ~。もっと丁寧にやってくださいよ」

 

「うるせぇ!おら、次は手だ」

 

「あ、手はいいです」

 

「はぁ?何言ってんだ?手の方もほどかねぇと――」

 

「解くも何もこっちは抜けられるんで。ほら」

 

 言いながら俺は後ろに回していた両手を前に出す。

 

「……はぁ!?いや、お前……えぇ!?」

 

 俺の手と顔を交互に見ながらオータムが驚きの声を上げる。

 

「お、おまっ!?なんで!?」

 

「あぁ、これは簡単なトリックでね、結ばれるときに縄の一部を握っておくんだよ。そうするとその分縄に余裕ができて、この通り」

 

 俺は縄と手を見せながら答える。

 

「てめぇ抜けられんなら自分で解けばよかったじゃねぇか!」

 

「わかってないなぁ~。解いてもらうことに意味があるんですよ」

 

「てめぇやっぱここで殺す!」

 

 言いながらオータムが殴りかかって来るので寸でのところで躱し逆に

 

「必殺!クラックアップフィニッシュ!」

 

叫びながら飛びかかり、オータムのお腹のあたりを俺の両足で挟み蹴る。

 その勢いに俺に挟まれたままオータムが倒れる。

 両腕も一緒に挟んで締め上げているので上手く受け身をとれないまま床に倒れ伏すオータム。

 

「てめぇ、この!離せ!」

 

「ふっふっふっ……甘いなオータムよ」

 

 俺は不敵に笑いながらさらに締め上げる。

 

「飛騨の山中に篭ること十余年、あみ出したるこの技、名づけてカニバサミ。もがけばもがくほど身体にくい込むわ!どうや!?動けるもんなら動いてみぃ〜!」

 

「くっ!この……!」

 

 言いながら俺にカニバサミをされたままオータムが俺を引き摺って移動するが俺はカニバサミをしたまま離さない。

 

「フハハハ!どうだ!?苦しかろう?」

 

「てめぇふざけやがって!」

 

「ときにオータム氏、あなたいいおみ足しておりますね」

 

「あぁ?んだよ急に!?」

 

「この肉付きのいい感じ、鍛えられた筋肉質な感じ、その先にあるムチッとしたお尻がとても魅力的ですね」

 

「は、はぁっ!?てめぇ何言って!?」

 

「えい」

 

「っ!?て、てめぇなに触ってんだ!?」

 

「だって目の前にこんなにそそる脚があるんだぞ!そりゃ触るでしょ!」

 

「とか言いながら撫で続けてるんじゃねぇよ!って、おい!足だけじゃなくて――」

 

「おぉ~!押し返してくるいいヒップですね~!」

 

「人のケツ触ってんじゃねぇよ!」

 

「そいやっ!」

 

 パチ~ン!

 

「人のケツを太鼓みたいに叩いてんじゃねぇよ!」

 

「ケツくらいなんだ!こちとらそこにいるニコさんに縛られるときにあちこち撫でまわされて本気で童貞より先に処女を捨てるビジョンが見えたんだぞ!」

 

「知るかんなもん!」

 

「あぁ~!女体は最高や~!」

 

「てめぇ頬擦りしてんじゃねぇ!」

 

「ねぇペロンチョしていい?」

 

「ペロンチョが何か知らねぇがいい訳ねぇだろ!」

 

「なぁ、ええやろ?ええやろ?ちょっとだけやがな。さっきちょだけ!さきっちょだけ!」

 

「離せバカァァァァ!」

 

「――何をしてるんだお前らは?」

 

 と、いまだカニバサミをしたままオータムのお尻に頬擦りをし、ペチペチと叩き撫でまわしていた俺は扉の開く音と共に聞こえた声に視線を向ける。そこには――

 

「おぉぉぉぉおおおぉぉぉおぉぉぉぉりむらせんせぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!?」

 

 いつもより感情の見えない目で俺を見下ろす織斑先生の姿があった。

 

「ななななななななんで先生がここにいるんですか!?はっ!まさか!?まさか俺の行動をどこかで監視し、こうして亡国機業と接触したこの瞬間を狙って襲撃してきたわけですね!俺の計画の邪魔はさせませんよ!」

 

「……こいつは何を言っているんだ?」

 

 俺の言葉に答えることなく織斑先生はスコールに視線を向ける。

 

「エム、ご苦労様。もう解決したわ」

 

 スコールは微笑みながら言う。

 ん?いまスコールは織斑先生のことをエムって呼んだ?知り合い?

 てか、よく見たら織斑先生にしては何か顔が幼いし、全体的に小さい?特に胸部装甲が俺の知る織斑先生より薄いような気が――

 

「だからてめぇはいつまで人のケツに顔押し付けてやがんだ――よぉ!!!」

 

 俺の思考を遮ってオータムが叫びながら体を捻る。

 

「もるさっ!?」

 

 直後頭にガツンと何かに強く打ち付けたような衝撃とともに、俺の意識は一瞬で深い闇の中に落ちて行ったのだった。

 


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