IS~平凡な俺の非日常~   作:大同爽

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前回から少しあいてしまってすみません。
別件で忙しかったりと、少しバタバタとしていました。
そんなわけで少し開いての更新です!
どうぞ!






第180話 申し出

 颯太の宣戦布告から二日が経った。

 その間に吉良香澄を標的とした爆弾テロなどが数度行われたが、それで吉良香澄が殺されることもなく、しかし、警備の穴をつく攻撃に、確実に状況は変化しつつある。

 そして、今日、僕は――

 

「お待ちしておりました、シャルロット・デュノア様とミハエル・エルフリード様ですね。こちらへどうぞ」

 

 やって来たとある会社の受付で用向きを伝えると、数分待ったところでやって来たスーツ姿の女性に受付横のエレベーターを示される。

 

「……大丈夫か?」

 

 その女性の後をついて行く僕に隣に立つミハエルさんがいつもと変わらない冷静な声で訊く。

 

「はい、大丈夫ですよ」

 

「………そうか」

 

 僕の言葉にミハエルさんは少し考えるようなそぶりを見せながら、しかし何も言わず頷く。

 今日こうしてこの会社にミハエルさんと一緒にやって来たのは先方からの申し出でやって来たのだ。

 正直今日のこの訪問は社長の翔子さんにも春人さんにも反対された。

 しかし、色々考えたうえでこうしてやって来た。

 本当は翔子さんも絶対に着いて行くと言っていたのだが、今日はどうしても外せない会合があったらしく、それに春人さんも着いて行く関係でミハエルさんが一緒にやって来てくれたのだ。

 さて、今日こうして僕らがやって来た先、そしてその会いに来た相手とは

 

「社長、シャルロット・デュノア様とミハエル・エルフリード様をお連れしました」

 

『入ってもらってください』

 

「はい」

 

 僕らを案内した女性が大きなドアの前で止まり、ノックをしながら呼びかけると、ドアの向こうから返事が聞こえる。

 女性が一瞬僕らに視線を向け、ゆっくりとドアを開ける。

 ドアの向こうには豪華なテーブルとソファーが置かれ、その奥には翔子さんが使っているようなしっかりとした机が置かれ、そこに向かって椅子に座る一人の女性がいた。

 その女性は立ち上がり、きりっと引き締められた美しい顔に笑顔を浮かべる。

 

「こんにちは。久しぶりね、シャルロット」

 

「………お久しぶりですね……ロゼンダ社長」

 

 女性、ロゼンダ社長の言葉にお辞儀をしながら僕は答える。

 

「今日は急なこちらの申し出に来てもらってごめんなさいね」

 

「いえ……」

 

「まあとにかく、立話もなんですので、座ってください」

 

 ロゼンダ社長の示したソファーにミハエルさんとともに移動し、腰を下ろす。

 今日この会社に僕らがやって来た目的は、この社長、ロゼンダ・ヴァレーズ氏に会うためだ。

しかし、このヴァレーズという姓は旧姓で、つい数か月前まで別の名前を名乗っていた。その名前は、〝デュノア〟。彼女の数か月前までの名前は『ロゼンダ・デュノア』、僕の父、アルベール・デュノアの元本妻にして、現デュノア社の社長。僕の義理の母だった女性である。

 

 

 〇

 

 

 

「改めて、久しぶりね、シャルロット」

 

「はい、お久しぶりです」

 

 ソファーに対面に座り、ミハエルさんの自己紹介も終えた頃、ロゼンダ社長の言葉に僕は会釈する。

 

「指南さんの会社に移動するとき、デュノア社の本社に挨拶に来た時以来だから……」

 

「10か月ぶり、くらいですね……」

 

「そうね。IS学園での生活はどう?不自由はないかしら?」

 

「はい……お陰様で」

 

「そう。それはよかったわ」

 

「んんっ!」

 

 ロゼンダ社長の言葉を遮るようにミハエルさんが咳払いをし、ロゼンダ社長に視線を向ける。

 

「それで、世間話はこの辺にして、本題に入らせていただきたい。今日はどういったご用件でしょうか?」

 

「あら、すみません。つい……」

 

 ロゼンダ社長はミハエルさんの言葉に頷き姿勢を正す。

 

「今日シャルロットとミハエルさんにこうしてわざわざおこしいただいた要件、それは……我が社で現在開発している第三世代IS『コスモス』の試験運用の操縦者をシャルロットにお願いしたいと言うことをお話ししたく来ていただきました」

 

「っ!?」

 

「……………」

 

 ロゼンダ社長の言葉に僕は息を呑み、隣に座るミハエルさんも一瞬眉を動かし、しかし、表情を変えずにロゼンダ社長に続きを示すように黙って視線を向ける。

 

「詳細はこちらに」

 

 言いながら脇に控えている秘書の女性、僕らをここに案内した方が手に持っていたファイルから僕とミハエルさんの前に冊子になった書類を置く。

 

「この『コスモス』は前社長の代から行われているプロジェクトで、我が社初の第三世代機の成功例となります」

 

「それならそちらの会社で最後まで行えばいいでしょう?なぜうちのデュノアにお話を?」

 

 ロゼンダ社長の言葉にミハエルさんが訊く。

 

「……嘘を言ってもしょうがないので正直に本音を言いましょう。今回のこのお話は、私からの罪滅ぼしのようなものです」

 

「罪滅ぼし、ですか?」

 

「ええ」

 

 ミハエルさんの問いにロゼンダさんは頷く。

 

「私と前社長、アルベール・デュノアはあまりいい夫婦生活を送れていたとは言えません。関係は冷えきり、そのせいで彼は他の女性と関係を持ちました。結果その相手の女性は子どもを身ごもりました。その相手がカーラさんであり、その子どもと言うのがシャルロットです」

 

「……………」

 

「カーラさんが亡くなり、シャルロットの存在が発覚したとき、私はどうしようもない怒りと憎しみで、あなたにひどいことを言ってしまった……そのことを、私はずっと後悔していました」

 

 ロゼンダ社長は少しうつむき、悲しそうな表情で僕に視線を向ける。

 

「私はあなたにずっと謝りたかったの。あなたはあの時、最愛の母を亡くしたばかりで何もわからないまま連れてこられたのに……あなたは何も悪くないのに、私はあなたにひどいことをしてしまった。悪いのはアルベールだったのに……。しかも彼は実の娘であるあなたを性別を偽って、スパイのようにIS学園に送り込んだ。まるで捨て駒のように……私にはそれが許せなかったんです」

 

「しかし、それがなぜ今回のお話に?」

 

 呆然とする僕の代わりにミハエルさんが訊く。

 

「先日、全世界に向けて女性権利団体の現トップの方を暗殺すると言う宣言をした人物がいましたね?」

 

「っ!?」

 

 ロゼンダ社長の言葉に僕は息を呑む。

 

「彼の名前は井口颯太。聞けば、彼はもともとシャルロットの学友で、あなたを『指南コーポレーション』に引き入れるように、アルベールと交渉した人物らしいですね?」

 

「それは……」

 

 ロゼンダ社長の言葉に僕は言い淀む。

 

「今回のこの話はシャルロットにひどいことをした私のせめてもの気持ちです。友達を助けようと動くシャルロットの、少しでも助けになればと思ってのことなんです」

 

「……そうですか」

 

 ロゼンダ社長の言葉にミハエルさんは頷く。

 

「……お返事には、少しお時間をいただいてもいいでしょうか?持ち帰って社長や他の者ともしっかりと話したいと思います」

 

「もちろんすぐにお返事をもらおうとは思っていません。そちらの資料も持ち帰っていただいて構いませんので、ご精査していただいて、よい返事がいただけると嬉しいです」

 

 ミハエルさんの言葉にロゼンダ社長は頷く。

 

「それでは、さっそくこの件を持ち帰って相談をさせていただきたいので、今日はこの辺で失礼させていただきます」

 

「はい。よろしくお願いします」

 

 立ち上がったミハエルさんとともに僕も立ち上がりお辞儀する。

 

「それでは、失礼します」

 

「失礼します」

 

「あ、シャルロット!」

 

 と、ドアに向かう僕らに、と言うか僕にロゼンダ社長が呼びかける。

 

「その……これで私のしたことが許されるなんて思わないわ。でも、このことがあなたの少しでも助けになればと思ってるの」

 

「はい」

 

「だから、少しあなたも考えてくれると嬉しいわ」

 

「……はい、ありがとうございます」

 

 

 

 〇

 

 

 

「それじゃあ、俺は先に会社に電話してくるから、少しここで待っててくれ」

 

「はい」

 

 電話を片手にその場を離れるミハエルさんを見送りながら、僕はため息をつきながら近くのソファーに――

 

「おっと!?」

 

「あっ!」

 

 ちょうど近くを通りかかった男性にぶつかる。

 男性はそれでバランスを崩したらしく手に持っていた書類を数枚落とす。

 

「す、すみません!」

 

「いやいや、大丈夫だよ。こちらこそすまないね、少し考え事をしていたものでね」

 

 男性はにこやかに笑いながら書類を拾う。

 僕も慌てて書類を拾うのを手伝う。

 拾いながら男性の様子を見る。

 男性は少しぼさぼさの髪に口元に髭を生やしている。服装は黒っぽいシャツの上に白衣を着ていた。

 

「いやー、すまないね。ありがとう」

 

「いえ、こちらも不注意ですみませんでした」

 

 拾った書類を男性に渡すと男性はニコニコと笑いながら言う。

 

「それじゃあ、私はここで失礼するよ。本当に悪かったね」

 

「いえ、こちらこそ」

 

 言いながら去って行く男性を見送りながら、僕はふと今の男性がどこかで見たことがあったような気がして――

 

「すまない。待たせたな」

 

 と、電話を終えたミハエルさんが戻って来る。

 

「どうかしたのか?」

 

「あ、いえ、なんでもないです」

 

「そうか。では、行くとしよう」

 

「はい」

 

 ミハエルさんの言葉に頷き、僕らはデュノア社を後にした。

 

 

 〇

 

 

 

「――ええ、問題なく。………はい、結論は出しませんでしたが、このままいけば予定通りに進むかと思われます。………はい、そのように。失礼します」

 

 ロゼンダ・ヴァレーズは言いながら電話を切り、一つ息を吐く。

 彼女の机の上には先ほどシャルロットとミハエルに渡した『コスモス』の資料。加えてシャルロットのことが詳細に書かれた書類などが並んでいた。

 と、部屋のドアをノックする音がする。

 

『社長、技術部主任がお話があると』

 

「通してちょうだい」

 

『はい』

 

 ドアの向こうから聞こえた返答の後、ドアがゆっくりと開き

 

「失礼します」

 

「失礼しますよ」

 

 シャルロットとミハエルを案内した秘書と、先ほどシャルロットがぶつかった男が入室する。

 

「社長。以前より話に合った例の件」

 

「その様子だと、完成したのかしら?」

 

「ええ、もちろんですよ。これがその資料になります」

 

 言いながら男は持っていた資料をロゼンダに渡す。

 

「……ふむ」

 

 受け取ったロゼンダは資料に目を通し

 

「………なるほど、どうやら問題ないようですね。さすが〝ソウイチ・トキシマ〟。あなたを技術部主任にして、間違いなかったようね」

 

「いやいや、なかなか大変でしたが、このくらい造作もないことですよ」

 

 ロゼンダの言葉に男、時縞宗一は嬉しそうに笑う。

 

「これで必要なものは揃った、というわけね」

 

 ロゼンダはニヤリと笑う。

 その笑みは先ほどシャルロットにみけていた慈愛に満ちた笑みとは比べ物にならないような、邪悪なものだった。

 

「さあ、これからのことを思うと、楽しみで仕方ないわね。ねぇ?シャルロット?」

 

 言いながらロゼンダは机の上のシャルロットの資料、その中のシャルロットの写真に視線を向け

 

 ドスッ

 

 握ったボールペンを写真に突き立てたのだった。

 




GWも気付けば終わってしまいましたね。
結局僕はGWはアヴェンジャーズの新作、インフィニティー・ウォーを見に行ったくらいでした。
でも、十分楽しみましたとも。
ネタバレになるので多くは言いませんが、とにかく面白かったですよ。
まだ見てない人は必見!
圧倒的なスケールで描かれる宇宙規模のバトルで最高でした。
ちなみに僕はあのメンバーではキャプテン・アメリカ推しです。
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