IS~平凡な俺の非日常~   作:大同爽

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最新話だと思った方、すみません。
息抜き&箸休めの番外編です。
番外編と言いつつ話は若干繋がっていますので。

これはとあるいつか使おうと思ったセリフがありまして。
今後の展開上きっと一生使うことはないと思ったのでこのタイミングで使ってしまおうと思ったのが始まりです。
いったいどのセリフのことなのか!
こうご期待!
そんなわけで番外編です!






番外編 拠点防衛訓練

 これは学園祭も終わった頃、九月の終わりにあったお話……

 

 

 

 

 

 

『拠点防衛演習!?』

 

「ああ、その通りだ」

 

 日曜の朝、早朝にたたき起こされた俺たちは都内のとある私有地の山の中にやって来ていた。

 俺を含めて一年生の専用機持ち全員と師匠の目の前に立つ織斑先生生徒山田先生が頷く。

 

「先日の学園祭での襲撃を受け、専用機持ちの連携などのスキルアップを目的とした訓練です」

 

 山田先生が解説する。

 ちなみにフォルテ先輩とダリル先輩は所用により欠席中である。

 

「今回はこのIS学園が所有する山中で行います。ルールは簡単、皆さんはこれから5対4のチームに分かれてもらい、それぞれA地点B地点を防衛。お互いに自身の地点にあるフラッグを防衛しながら敵陣のフラッグを奪取することを目指してください。制限時間は夕方五時まで。ISの使用は禁止。食料や水等はその都度支給します」

 

「5対4って、数的に不利だったりしないんですか?」

 

「ああ、不利になるかもしれないな。しかし、それもこの特訓の一部だ。この特訓では寝返りを有効にする。寝返るときには相手チームのメンバーと交渉し、相手チームが認めれば我々のところに申告に来い。私たちは両陣営の中間地点に常にいる」

 

 箒の問いに織斑先生が答える。

 

「ちなみに相手チームにフラッグをとられる、もしくはどっちも制限時間内に相手陣営のフラッグを奪取できなかった場合どうなるんですか?」

 

「片方の陣営が相手陣営のフラッグを奪取した時点で訓練終了。負けた陣営は織斑先生による特別特訓メニューを行ってもらいます。制限時間内に勝利チームが出なかった場合は全員に特訓に参加してもらいます」

 

 俺の問いに答えた山田先生の言葉にその場の全員が青ざめたのが尻目にもわかった。

 

「と言うわけで、さっそくくじ引きをして訓練を始めましょうか」

 

 

 

 

 と、言うわけで、公平なくじ引きの結果チーム分けは以下の通り

 

 チームA

 井口颯太、更識楯無、凰鈴音、ラウラ・ボーデヴィッヒ、

 

 チームB

 織斑一夏、更識簪、シャルロット・デュノア、篠ノ之箒、セシリア・オルコット

 

 と、なった。数的には俺たちのチームが不利だが、こっちには師匠も、現役軍人のラウラもいる。

 そして、俺たちはそれぞれの陣地へと向かい、陣地防衛訓練を開始した。

 

 

 

 

 そして現在俺は

 

「ぬおおおおおおおおお!!」

 

「待ってぇ!颯太ぁぁぁぁ!」

 

「逃げても無駄だよ!」

 

 絶賛一夏とシャルロットに追いかけられていた。

 と言うのも、俺たちのチームは作戦会議の結果、まずは周りの地形も込みで情報収集をしようと言うことになり、ラウラと鈴はフラッグの防衛、俺と師匠は情報収集しようとこうしてやって来たのだ。

 やって来たのだが、数分で箒を除く一夏チームの四人と遭遇してしまったのだ。

 この訓練では一人一つずつ確保用のテープが支給されている。これを相手チームのメンバーの身体に巻くことでその人物はゲームオーバー、訓練から退場になるらしい。

 俺と師匠はこの序盤に退場にならないように揃って逃げる選択をし、途中から二手に分かれて逃げている真っ最中である。

 

「……てなわけでもしかしたら誰かがそっち行くかも!」

 

『了解した。くれぐれも気を付けろ』

 

「あいよ!」

 

 と、許可されている味方への通信でラウラに現状を報告しながら俺は逃げ続ける。

 ガタガタの山道をダッシュで逃げ回りながら後方に注意を向ける。

 後方から一夏とシャルロットが追いかけてくる。

 

「さて、とは言ったものの、この状況、かなりピンチ!」

 

 俺は笑いながら走る。

 師匠の特訓メニューのおかげで体力がついたおかげでスタミナにはまだまだ余裕があるが、2対1ではさすがにどこかで追い詰められるだろう。

 

「こうなったら、覚悟を決めるか……」

 

 俺はここから逃げ延びる案を考え、先ほど見て回った中で使える地形に向けて走り出す。

 

「待てぇ、颯太!」

 

 後方に視線を向けると一夏とシャルロットは変わらず追いかけてくる。

 どうやら俺の意図には気付いていないようだ。

 俺はほくそ笑みながら走り続け――

 

「もう逃げられないぜ、颯太!」

 

「観念しなよ!」

 

 俺は追い詰められていた。

 俺の目の前には崖のようなった地形、高さは学校の校舎一回分くらいだろうか。俺の逃げ道を塞ぐように一夏とシャルロットがにじり寄ってくる。

 

「ふっ……本当に逃げられないかな?」

 

「何?」

 

「っ!」

 

 俺の不敵な笑みを浮かべて言った言葉に一夏が疑問の声を上げ、シャルロットは何かに気付いたようにハッとする。

 

「一夏!颯太を早く捕まえて!」

 

「え?お、おう!」

 

 シャルロットの言葉に一夏は俺に歩み寄って来るが

 

「甘い。気付くのが遅かったな!」

 

 俺は言いながらふたりに背中を向けて走り出し

 

「あでゅ~!」

 

 叫びながら最後の一歩を踏み出した。

 俺の足元から地面が消え、学校の一階分はありそうな高さを飛び降りる。って!

 

「思ったより高~い!」

 

 俺は予想外の高さにビビりながらも手を伸ばす。俺の飛び降りたすぐ隣に生えていた大きな木から垂れる太めのツルを掴み、勢いを殺しながら華麗に着地を決める。

 

「またな~、一夏、シャルロット~!」

 

 そのまま上から見下ろす二人に手を振りながら走る。

 二人は俺と同じく飛び降りるか迂回するかで迷っているようだ。悩んでいる間に俺はダッシュで逃げる。

 伊達に田舎で生きていない。小さい頃からの山を駆けまわってたからこの程度慣れたものである。

 都会のもやしっ子には負けませんよ!

 ――そう言えば、師匠は大丈夫だろうか……まあ師匠だし、心配するだけ杞憂か。

 

 

 〇

 

 

 

『もしもし、颯太!?無事!?』

 

「おう、鈴。悪い、連絡遅れた」

 

 一夏たちを巻き、一息ついた俺は報告がてら鈴に連絡したのだが、少し時間が空いてしまったせいで少し心配させてしまったようだ。

 

『それで?そっちの状況は?』

 

「俺の方なんとか二人を巻いた。もしかしたらまだ近くにいるかもしれんが、今のところ大丈夫そうだ。そっちは?誰か来たか?」

 

『いや、平和なものだよ。様子見でさっきラウラも周辺を探索に行ったわ』

 

「OK」

 

俺は周りに視線を向けながら頷く。

 

「そっちには師匠、楯無さんから何か連絡来たか?」

 

『……いや、まだない。ないんだけど……』

 

 俺の問いに鈴は少し間を空けて含みのある様子で言う。

 

「なんだ?何かあったのか?」

 

『答える前にこっちからも訊きたいんだけど、そっちには何か連絡はあった?』

 

「??? いや、特には無いが……」

 

『そう……』

 

 鈴が呟くように言う。

 

「いったいどうしたって言うんだ?」

 

『……先ほど見回りに行ったラウラから連絡が来たんだけど、楯無さんが簪とセシリアと一緒にいるところを見たらしいの』

 

「??? そりゃ二人から逃げてんだからそうだろ?」

 

『そうじゃないの』

 

 俺の言葉を遮るように鈴が言う。

 

『逃げている様子じゃなくて、どちらかと言うと仲間みたいに一緒に歩いてたって』

 

「なっ!?」

 

 鈴の言葉に俺は驚愕の声を漏らす。

 

「それって……」

 

『もしかしたら、楯無さんは向こうのチームに寝返ってるのかも』

 

「そんなバカな!」

 

 俺は思わず叫んでしまい、慌てて視線を巡らせるが、近くにいなかったようで誰かの気配はない。しかし、俺は念を入れて移動する。

 

「師匠が裏切るなんて、そんな……」

 

『まだ確定じゃないからなんとも言えないけど、とにかく颯太も覚悟だけはしておいて』

 

「………わかった」

 

 鈴の言葉に俺は頷く。

 

『それで?今後の動きは?』

 

「そうだな……こっちには攻められたから、今度はこっちから攻めてみようと思う。鈴とラウラはそのままフラッグの防衛を頼む。俺は一夏たちのチームの周辺を探ってみる」

 

『大丈夫?無理しないでよ』

 

「ああ、危なくなったらすぐに逃げるさ」

 

 

 

 

 

 と、言っていたんだが――

 

 

 

 

 

「よう、颯太。さっきぶりだな」

 

 俺の対面で片手に確保用のテープを握った一夏が身構えている。

 こっそりと動いていたんだが、やはり見つかってしまった。

 逃げようにも距離が近い、背を向ければすぐに捕まってしまうだろう。

 俺は応戦するように身構える。

 

「……――っ!」

 

 と、一夏がいっきに距離を詰める。

 俺は転がるように避けて手を一夏の手をかわす。

 

「やるなぁ!」

 

「これでも俺は更識楯無の弟子だぜ?」

 

 一夏の言葉に俺も余裕の笑みで頷く。

 そのまま一夏との攻防を繰り広げながら、チャンスを見つけて逃げるために周りに視線を巡らせる。と――

 

「っ?」

 

 一瞬俺の視界に何かが見えた気がした。

 一夏に攻撃から逃れ地面を転がりなら距離を置き、先ほど何かを見た方向に視線を向けると、そこには木に自身の半身を隠すようにこちらを見る楯無師匠の姿があった。

 

「師匠!楯無師匠!無事だったんですね!」

 

 俺はほっと胸をなでおろしながら叫ぶ。

 しかし、師匠は俺の言葉に答えず、ただ黙ってこちらを見ているだけだった。

 

「師匠?楯無師匠!!」

 

 何度も呼ぶが師匠は何も反応しない。

 

「ダデェナーザァーン!!ナズェミテルンディス!?」

 

 一夏に注意を向けながらなので滑舌が悪くなるがそんなのは気にしていられない。

 師匠は俺の問いが聞き取れなかったのか、それとも聞き取れたが答える気がないのか、とにかく師匠は微動だにしない。

 そのとき先ほどの鈴との会話を思い出す。

 

「ダデェナーザァーン!!オンドゥルルラギッタンディスカー!!?」

 

 しかし、師匠は俺の問いに答えず踵を返す。

 そのまま師匠は一切振り返らず去って行く。

 

「そんな……待ってください!」

 

 俺は師匠を追いかけようと走り出すが、

 

「行かせるか!」

 

 俺の隙をついて飛びかかって来た一夏に掴まれ、そのまま引き倒される。

 

「ウソだ……ウソダドンドコドーン!!」

 

 俺の叫びも虚しく、師匠は去って行き、俺は一夏に確保された。

 

 

 

 

 

 その数十分後、俺たちのチームはフラッグを奪われ、敗北した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――なんてことがあったよね」

 

「そうでしたわね」

 

 鈴の言葉にセシリアが笑いながら頷く。

 

「あれ、あとから森の各所に設置されてた監視カメラの動画で見たけど、颯太何言ってるかわからなかったわよね」

 

「ですわね。本人は『ウソだこんなこと!』って言ってるつもりだったらしいですけど、『ウソダドンドコドーン!』としか聞き取れませんでしたものね」

 

「そう言えばそうだったね」

 

 セシリアの言葉にシャルロットも頷き、みな一様に笑う。

 とある施設の一室で一堂に集まって皆笑う。この部屋にはセシリア、鈴、シャルロットの他に、一夏、箒、ラウラ、簪の姿もある。

 

「あの時は半分は遊びみたいな特訓だったけど、今回は本当の防衛戦なんだな」

 

 笑いながらふと、箒が呟くように言う。

 

「本当に颯太は来るんだろうか……」

 

「来る、きっと……」

 

 ラウラの言葉に簪が真剣な声で頷く。

 

「きっと……颯太は必ず現れる……」

 

「そうだね。楯無さんの予想だと、そろそろ来るはずだよ」

 

「そうか……」

 

 簪とシャルロットの言葉に一夏が呟く。

 

「颯太が着たら……必ず俺たちで止めような」

 

「うん」

 

「ああ」

 

 一夏の言葉にみな一様に頷いた。

 

 

 

 颯太が宣戦布告をしてから九日目、颯太の襲撃予定日の前日に差し迫った日。

 その日、七人は決意も新たに元同級生の友人と戦う覚悟を新たにしたのであった。

 




そんなわけで番外編兼若干本編にも関係したお話でした!


そうです、オンドゥル語がやりたかっただけです。
だって剣崎のあのセリフで楯無さんと橘さんがからめられそうだって思ってしまったんですもん!
そんなわけで次回から本編に戻りますが、ここでお知らせです。
私、六月は丸まる一か月間忙しくなるため更新ができなくなると思います。
暇を見つけて更新するかもしれませんが、お約束はできないのでご了承ください。

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