IS~平凡な俺の非日常~   作:大同爽

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IS~平凡な俺の非日常~、前回までの三つの出来事!

1つ!
吉良香澄の護衛のために一夏、箒、セシリア、鈴、ラウラ、シャルロット、簪の七人は北海道の女性権利団体所有の施設へ。

2つ!
宣戦布告から十日後。ついに吉良香澄が身を寄せる施設を颯太たちが強襲!

そして3つ!
大同爽、沖田オルタを狙ってガチャをまわすも盛大に爆死!


颯太「おいちょっと待て三つ目関係ないだろ」

Count the Mdals!
現在颯太の使えるメd――

颯太「聞けよ!てかメダルなんてねぇよ!」






北海道決戦編
第184話 着地と布教と遭遇


 

「しかし、こうして見ると……『キルシュバオム』ってチャッチ~な」

 

 俺は目の前でガションガションと行進する六基の無人機、キルシュバオムたちに視線を向けながら言う。

 

「まああれは私の無人機、ゴーレムの劣悪な模造品だからね。むしろよくあのレベルのものを作れたと思うよ。私の百分の……いや千分の一くらいの頭のいい奴がいるのかもね」

 

 俺の言葉に肩をすくめながら束博士が言う。

 今の言葉でもわかる通り束博士曰く『ゴーレム』は束博士の完全オリジナル。それを真似しようと試行錯誤してできたのが『キルシュバオム』らしい。まあその性能は著しく劣るらしいのだが。

 

「おい、暢気に世間話してる場合かよ。とっととこっちの戦力も準備しろよ」

 

 俺と束博士にオータムがため息をつきながら言う。

 

「そう慌てなくても、もうそろそろ……あ、来た」

 

「は?来たって――あぁ!?」

 

 言いながら後ろに視線を向けた束博士に首を傾げながら続いたオータムは何かを視界にとらえる。

 オータムの視線の先では黒い何かが六基、高速でやって来て、並んでいる俺たち六人の両脇に滑るように降り立つ。

 

「うおぉぉぉぉ!!すげぇ!スーパーヒーロー着地だ!!」

 

「「「…………」」」

 

「ふっふ~ん!どうよ!」

 

 興奮する俺をよそにスコール、エム、オータムの三人は冷めた目で見ている。そんな中束博士は誇らしげに胸を張る。

 

「これぞ私の現最高傑作!『ゴーレムmkⅧ』!!両腕に加え両足、さらには胸部中央より超火力の荷電粒子砲を放ち、その腕部はブレード状にも変化可能!遠近両方に特化しその両腕と両足の荷電粒子砲を推進力へと転換し高速での飛行も可能!これぞ最高にして最強!」

 

「すっげ~~~!!!!」

 

「すげーけど……」

 

「なんだかどこかで見たような飛び方をしていましたが……?」

 

 興奮する俺をよそにオータムとスコールは冷静にツッコむ。

 

「はぁ?いったい何のことを言ってるのかわからないけど?」

 

「でもあれは明らかに……」

 

「まあ強いて言えば、アイアンマンって面白いよね~」

 

「それのことだよ!」

 

 笑いながら言った言葉にオータムがツッコむ。

 

「いやぁ~騙されたと思って見てみろって熱心に勧められるから嫌々見てみたんだけど思いのほか面白くてさぁ~。インスピレーションが湯水の如く!」

 

「一体そんなもの誰が……?」

 

 エムの問いに束博士はにこやかに隣にいる人物――俺を指さし

 

「こいつに勧められました~」

 

「勧めちゃいました~」

 

「やっぱお前か!」

 

「それ以外にいませんものね」

 

「だって布教したかったんだもん!」

 

「だって面白かったんだもん!」

 

「可愛い子ぶってんじゃなぇよ!後そっちのはただただ気持ち悪い!」

 

 揃って、てへぺろっ♡と舌を出してコツンと額に拳を当てる俺と束博士にオータムが叫び、俺を指さす。

 

「てかお前らやっぱり仲いいじゃねぇか」

 

「はぁ?何言ってんだよ?」

 

「目玉腐ってんじゃない?」

 

「ホント息ぴったりだなぁおい!」

 

 オータムが叫ぶ。

 

「まあ冗談はさておき、そろそろ……」

 

「ああ、行こうか」

 

 言いながら俺たちは視線を進行方向に戻す。

 

「この程度なら、まあ二基もいれば十分かな」

 

 言いながら束博士は指をパチンと鳴らす。と、それに呼応して一番両端にいたゴーレムが二基、前に歩み出る。

 

「焼き払え!!」

 

 言いながら束博士が右手を突き出すように前に出すと、前に出た二基のゴーレムが腰を落とし、両腕を引き絞るように構え、胸を張る。と、その胸の中央の円形のクリアパーツが輝き――

 

 チュドーン!!!

 

 胸部から放たれた大型の荷電粒子砲によって大爆発が起こる。

 

「すっげ~~~!!!!」

 

「さっ!道は開けた!サクサク進むよ~!」

 

「お~!!」

 

 目を輝かせる俺の隣で束博士が朗らかに言い、俺はこぶしを突き上げながら歩き出す。

 クロエ、エム、スコールがそれに続く中で呆然と立っていたオータムが疲れた顔で呟く。

 

「いい加減ツッコむのも面倒だ……」

 

 

 

 〇

 

 

 大抵の障害物を物ともしない火力の化け物を六基つれた俺たちは順調に進み、地下二階に到達した。と――

 

「っ!止まってください!」

 

 スコールの鋭い言葉とともにISを展開しながら前に出る。

 

 ドゴン!

 

 重い衝撃音とともに衝撃がふわりとやって来る。

 

「一体何が……?」

 

 俺の言葉に目の前で展開されているスコールのISの先に視線を向ける。そこには――

 

「悪いが、ここから先は通行止めだ」

 

「ラウラ……」

 

「ラウラだけじゃないわよ」

 

 俺の視線の先に立つ漆黒のISを纏った人物、ラウラの言葉に俺は呟く。と、別の声がどこからか聞こえてくる。

 開けた一室の奥、開けたドアの先、暗い通路の向こうからゆっくりと人影が現れる。それは――

 

「久しぶりね、颯太」

 

「できればこんな風に再会したくはありませんでしたわ」

 

「悪の道に落ちたお前を、いま一度私たちが連れ戻す!」

 

「鈴、セシリア、箒……」

 

 現れた三人。半年ぶりに顔を合わせた学友たちに俺は視線を一層細める。

 俺の視線を受けながら箒は束博士へと視線を向ける。

 

「久しぶりですね、姉さん」

 

「うん、久しぶりだね~!元気してた~?」

 

 鋭い視線を向ける箒。片や朗らかに笑う束博士。

 

「まさか颯太と姉さんが手を組むとは思いませんでした」

 

「成り行きでね~」

 

「色々と訊きたいことはありますが……今は……」

 

 言いながらラウラ同様三人もその身にそれぞれのISを纏う。

 

「颯太さん!大人しく同行してください!今なら私たちが口添えをして何とかしますわ!」

 

 セシリアが言う。

 

「セシリア、その申し出は嬉しいが、俺はやめるつもりはないぞ」

 

「そうですか……それじゃあ――」

 

 言いながらセシリアが構える。と、その両手にこちらに銃口を向けたスターライトmkⅢが現れる。直後

 

「グエッ!」

 

 後ろから俺のコートのフードが掴まれ引っ張られ、変な声が漏れる。

 一瞬後にセシリアのレーザーが飛ぶ。

 見ると俺のコートを掴んだのは束博士だった。

 

「さあ踊ってくださいまし!私たちの奏でる四重奏で!」

 

「アンタはここで、アタシたちが!」

 

「ブッ潰す!」

 

「尋常に、勝負!」

 

 掛け声とともに箒と鈴が接近し、セシリアとラウラがそれぞれ構える。

 

「「はぁぁぁぁぁぁぁ!!」」

 

「ほい、オータムちゃんパス!」

 

「おう!」

 

 それぞれ近接ブレードと大型の青竜刀を手に振りかぶった二人から逃げるように後方に飛んだ束博士はそのままの勢いでオータムへと俺をまるでボールのように投げる。

 束博士のパスに返事をしながら俺を受け止めたオータムはIS、アラクネを纏い、そのまま移動し四人の攻撃を回避する。

 束博士の方もまるでウサギのようにピョンピョンと飛び跳ねながら攻撃を避ける。

 特に心配はしていなかったがスコールやエム、クロエも問題なさそうだ。

 

「さて、お前らの熱烈歓迎は嬉しいが、悪いが予定が押しててな。こいつらと遊んでてくれ」

 

 言いながら束博士にアイコンタクトする。

 俺の意を汲んだらしい束博士がパチリと指を鳴らす。と、連れていたゴーレムのうち四基がそれぞれに襲い掛かる。

 

「くっ!」

 

「これは!?」

 

「おのれ!」

 

「このぉ!」

 

 それぞれ攻撃を受け止めながら苦悶の表情を浮かべる四人を尻目に俺を連れたままオータムは突き進み、その背後からエム、クロエ、束博士が続く。

 

「それでは、手筈通り、私はここで万が一の時のために彼女たちの足止めを」

 

「ああ、頼んだ」

 

 スコールの言葉に頷きながら俺は進行方向に視線を向ける。

 

「待て、颯太!」

 

 と、背後から聞こえた声に振り返る。そこにはゴーレムからの攻撃を防ぎ、掻い潜る四人、そのなかでラウラが叫んでいた。

 

「絶対にお前は――!」

 

「悪いな」

 

 叫ぶラウラに、そして他の三人に笑いながら

 

「また会えたら会おうぜ。Ciao!」

 

 フリフリと手を振り、進む。そのまま俺は振り返ることはなかった。

 




そんなわけで復活です!
帰ってきましたよ、読者の皆様!
ついに始まった決戦!

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