IS~平凡な俺の非日常~   作:大同爽

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第187話 説教タイム

 

「束……さん……」

 

「はぁ~い!みんなのアイドル!ラブリー束さんだぞ~♪」

 

 呆然と呟いた一夏に満面の笑みで言う束。

 

「いや~、ホントは出張ってくる気なかったんだけどね~。私もやることあったしさ。で・も……」

 

 やれやれと肩をすくめながらため息をついた束はゆっくりと視線を床に寝転び上半身だけを起こした状態の颯太に視線を向ける。

 

「お前、ちょっとそこに正座」

 

「は?いや、なんで――」

 

「IS解除して正座しろって言ってんだよ、とっととやれよ」

 

「…………」

 

 束の迫力に颯太はしぶしぶ『火焔』を解除して正座する。

 

「私がちょ~~~~~っと期待してみれば、何遊んでんだよ?え?」

 

「……別に遊んでるつもりは――」

 

「お前になくてもこっちはそう見えんだよ」

 

 颯太の言葉を遮って冷たい目で見下ろしながら束は言う。

 

「ちょっと小突き合う程度なら私だって黙ってたけどさ、長々と戦って、リンカーまで使ってさ~。しかも何?最後どうしようとした?」

 

「それは……」

 

「いっくんにとどめさそうとしたよね?もう一回訊くよ?遊んでる?」

 

「いや別に遊んでるつもりは――」

 

「じゃあどういうつもりなんだよ?」

 

 冷たい視線で見下ろされながら颯太は答えるがそれを遮ってさらに圧迫する束。

 

「だいたいさ、お前ちゃんと計画覚えてる?自分で立てた計画だろ?」

 

「そりゃもちろん――」

 

「じゃあなんでここで戦ってる?お前最後まで温存するんじゃなかったのかよ?」

 

「それは……」

 

「まあそれは百万歩譲って良しとしよう」

 

「あ、いいんだ」

 

「百万歩譲ってって言っただろ。まぁ私だってちーちゃんが来たら全力で相手すると思うし」

 

「あ、そっすか……」

 

「今私が言いたいのはそこじゃないんだよ。お前リンカーまで使ったくせに何ダラダラと続けてんだって話だよ。ねぇ、バカなの?死ぬの?とっとと決着着けてとっとと行けよ。こんなところで長々と戦って吉良に逃げられたらどうすんの?」

 

「うぐっ……それは……」

 

「もう一回訊くけどさ?何?バカなの?死ぬの?死んどく?処す?ねぇ処す?」

 

「あの~……束さん?」

 

 と、これまでずっと蚊帳の外にされて呆然とした一夏が話に入ろうと口を挟む。と、先ほどまで冷たい表情だった束が笑みを浮かべて振り返る。

 

「あ、ごめんね~いっくん。今大事な話してるからさ――ちょっと黙ってて」

 

「へっ?」

 

「ほいっ」

 

 束の言葉に首を傾げた一夏。が、その直後束が右腕を振る。すると一瞬で束の右腕から細い管のようなものが伸び

 

はれ(あれ)……らんか(なんか)……きゅうり(きゅうに)……?」

 

 鞭のようにしなりながら伸びたそれの先端が一夏の首筋に触れた瞬間、呂律の回っていない口調で言いながらゆっくりと倒れる。同時に一夏を包んでいた『白式』がかき消える。

 

「織斑君!?」

 

「よっと」

 

 急に倒れた一夏に簪が驚きの声を上げ、そんな簪に見向きもせず束は右腕を振る。と、一夏の首に刺さっていた管が一瞬で縮み、束の右腕のブレスレッドに収まる。

 

「お、織斑君に何を……!?」

 

「安心しなよ。死んじゃいないから。ただちょ~っと痺れてるだけだから。ねぇ~いっくん?」

 

 言いながら束は笑みを浮かべながら一夏に問う。

 床に倒れた一夏は答えず――と言うか応えられない様子で、しかし緩慢とした動きで顔を束に向ける。

 

「束さん特性の痺れ薬でね~、ぶっちゃけ最近作ったものだからまだいまいち使ってないんだけど……まあ死ぬことはないからダイジョビダイジョビ♪」

 

「え……!?」

 

 束の言葉に慌てて一夏に駆け寄った簪はその首筋や腕に手を当て脈拍などを測り、数秒後安心したようにため息をつく。

 

「………ついでに君も自由奪っとくか」

 

「え……?」

 

「ほいっ」

 

 ぼそりと呟いた束の言葉に顔を強張らせた直後、先ほどと同じように右手を振った束のその手から伸びた管が一瞬で伸び、簪の首筋にその先端が触れる。

 そのまま一夏同様倒れる簪。

 

「アンタ見境なしか……」

 

「君らがさっさと決着着けないからだろ?」

 

 呆れた表情を浮かべる颯太にため息をつきながら肩をすくめる束。

 

「おら、これで大丈夫だろ?さっさと行けよ」

 

「あ、はい……っ!」

 

「今度こそちゃんと――ってどうしたの?」

 

 立ち上がりながら頷いた颯太に睨みを利かせながら言いかけた束は颯太の様子がおかしいことに気付く。

 ヒョコヒョコフラフラと立つ颯太は

 

「あ……いや、その……足が痺れて……」

 

「ふぅ~ん………えいっ」

 

 颯太の答えに数秒颯太の脚を見つめた束はニヤリと意地悪い笑みを浮かべると同時に颯太の脚をつつく。

 

「ニャッ!?」

 

「『ニャッ!?』だってwww猫かよwww」

 

「おま、ふざけん――」

 

「うりうり」

 

「ちょ!?だからっ!や、やめ、やめろ~!!」

 

 痺れた足を突かれ転んでしまった颯太に追い打ちをかける束。

 それを呆然と眺めながらエムとオータムは

 

「……おい、お前行けよ」

 

「断る。あれに混ざるのはごめんだ」

 

 面倒事を押し付け合っていた。

 




あれ?おかしいな?
昨日まではちゃんとシリアスしてたのに……

今日のはいつもの半分くらいで短めですが、話の展開上キリが悪いんでここで!
そんなわけで次回もお楽しみに!

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