私は実害はありませんでしたが、実家あたりとか大変みたいです。
頑張れ、家族たち!
輝く未来を~抱きしめて!
フレッフレッみんな!フレッフレッ私!
いっくよ~!!
颯太「な~んどでも~おこ~すよ~♪きらめ――」
お前が歌うんかい!
すみません関係なかったですね。
そんなわけで最新話です。
「おい大丈夫か?」
「大丈夫じゃない。こんな気持ち悪くなるなんて聞いてない」
俺を背負って移動するオータムの問いに俺はだらけながら答える。
束博士の説教を受けた俺はオータムたちを連れて痺れて動けない一夏と簪を置いて目的の場所へと向かって進行を再開した。
ただ俺はリンカーの副作用なのか体がものすごくけだるく気持ち悪いので優しい優しいオータムが背負ってくれている。まったく、ホントにマーちゃんはツンデレなんだから♡
「おいてめぇ今なんか失礼なこと考えなかったか?」
「いえなにも」
「たく、変なこと考えてるようだと自分の脚で走らせるからな!」
「え~、そんなこと言わずに~。マジで今気分最悪なんだよ~」
憎まれ口を言うオータムに俺は絶対に離れないと言う意思を示すべくより強くしがみ付く。
「もうホントに最悪の気分だ。例えるなら溜めていた聖晶石120個と呼符20枚すべて費やして金鯖はおろかイベント礼装すら手に入らなかったような……そんなけだるい倦怠感」
「例えがよくわかんないんだよ――って!!どさくさに紛れてどこ触ってんだよ!!?」
「え?おっぱい」
「ざけんな!?やっぱ降りろ!」
「やーだぁー!おんぶして~!」
「ガキかっ!?エムにでもやってもらえよ!」
「いや、エムの顔って織斑先生に似てるじゃん?なんか…ねぇ?あと、エムって……全体的にスリムじゃん――いってぇ!?」
ちらりと横を走るエムを見ながら言った俺にエムが器用に俺にだけ回し蹴りを叩きこむ。
「何すんのさ!?」
「なんだか無性に腹が立った」
「あ、はい、すいません」
ギロリとエムに睨まれ俺は素直に謝る。
「たく……こっちは心配しておぶってやってるってのに……」
「え?待って?今心配って言った?え?何、マーちゃん今デレた?ついに?ついにマーちゃんデレた?」
「あ~もう、うるせぇな!!黙っておぶされてろよ!!」
「は~い」
「ったくよ……」
ブツブツと文句を言いながらもオータムはずり落ちて来ていた俺を背負い直す。
「……まあなんだ……お前はよくやってる方だと思うぜ」
「え?」
と、オータムの言葉に俺は顔を上げる。
「まぁ……なんだ。これが終わったら、酒の一杯でも奢ってやるよ」
「オータム……」
俺はオータムの言葉に頷き
「俺まだ未成年だからコーラとかジュースの方がいいんだけど」
「降りろっ!!!」
〇
そんなこんなで進んできた俺たちはついに地下五階に到達し、とある扉の前にいた。
「この先に吉良香澄がいるはずだ」
「ああ。ついに来たな」
エムの言葉に頷きながら俺はオータムの背から下りる。オータムがここまで背負ってくれたおかげでだいぶ回復できた気がする。
「まっ、今までみたいに簡単にすむとは思えないけどな」
「…………」
オータムの言葉に俺は黙って頷く。
ここまでラウラ、セシリア、鈴、箒、簪、一夏が俺たちの前に立ちはだかった。しかし、まだ一人俺たちの前に姿を見せていない人物がいる。
一夏たちとともに〝彼女〟がここに来ていることはわかっている。なら、きっとこの先に……
「まあ考えても仕方がない。サクサク進みましょうかね」
「ああ」
「おう」
エムとオータムが頷いたのを見ながら俺は扉を開けて中に入る。
そこはこれまでラウラ達や一夏たちと遭遇し戦った場所よりも更に広い場所だった。
使う目的は一緒なのだろう。部屋の隅には一夏のとき同様に人が二、三人は入れそうな大きなコンテナが積まれていた。
天井は高く、それこそ小学校の体育館くらいあり、向かう先の正面の壁には窓のようなものがあいており
『待っていたよ、井口颯太くん』
スピーカーを通して声が聞こえる。
「やっと会えたな、吉良香澄」
俺は言いながらその正面の窓のようなものの向こうに見える人影を睨みながら言う。
それは肩甲骨のあたりまでのサラサラの長い黒髪。歳は30代前半くらいだろう。少し不思議な色気のようなものを感じさせるその女性こそ、俺がここまで追い続けていた人物、吉良香澄その人だった。
「てっきり一番奥でガタガタ震えてると思ったのに、なんだ?わざわざ殺されに来たのか?とうとう観念したか?」
『フフ、残念ながらあなたに殺されてあげるわけにはいかないの。私にはまだまだやりたいことがあるしね』
「そんなこと言わずによ、大人しく殺されてくれよ」
『フフ、嫌よ。それにあなたの相手は私じゃない。この子よ』
吉良香澄はニヤリと笑みを浮かべる。同時に吉良のいる窓の下にあった扉が開く。その向こうからゆっくりと歩いて来る人物、彼女は俺たちの対面五メートルほど前まで来ると俺をしっかりと見据えて口を開く。
「久しぶり、颯太」
「……あぁ、久しぶりだな、シャルロット」
対面の金髪の少女、シャルロット・デュノアに俺は頷く。
「この瞬間を僕は……」
「…………」
噛みしめるように言うシャルロットの言葉に俺は黙って待つ。
「颯太がここに来たってことは、みんなは止められなかったんだね」
「ああ、みんないまいち俺を止めるって意思の方向性が違ったんだよね」
「そっか……」
「お前はどうなんだ?俺を〝倒す〟覚悟があるのか?」
「……僕は……」
俺の問いにその意味を理解したらしいシャルロットは顔を俯かせる。
その表情に俺は自身の意地の悪さにため息をつく。
「……まっ、問答はいいにしよう」
「颯太……」
俺はシャルロットの答えを訊かずに言う。
「俺たちはやつを殺したい」
俺は正面の壁の窓の向こうにいる吉良を指さしながら言う。
「お前らは俺たちを止めたい」
今度は自分を指さしながら言う。
「こうも目的が対立している以上、これ以上の言葉は不要。さあ、拳で語り合おうぜ」
「……わかった」
俺の言葉にシャルトットは頷く。
「悪いがさっき引き籠りのボッチ女に説教くらったところでな、シャルロット一人に対してこっちは俺とエムとオータム、ゴーレム二基の五対一だけど、文句は受け付けないぜ?」
「いいよ。颯太たちがどれほどの戦力で来ようと、僕は全力で戦う。そう、僕とこの新しい力で!」
言いながらシャルロットは右腕を構える。その右手首には純白のリング状のブレスレッドが輝き
「行くよ!『コスモス』!」
リングの輝きが一瞬で広がり、シャルロットの身体を純白が包んでいた。
それはまるで純白のウェディングドレスのような、一夏の『白式』とは違う眩いまでに、恐ろしいほどに白だった。
「さあ、はじめよう颯太。颯太たちの目的は、ここで僕が終わらせる!」