IS~平凡な俺の非日常~   作:大同爽

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難産!
戦闘描写は超絶苦手なので読みづらいかもしれませんがとにかく最新話です!





第190話 魔剣ダーインスレイヴ

「吉良香澄ぃぃぃぃぃ!!」

 

斬りかかって来たシャルロットの攻撃をバックステップで避け、同時にシャルロットを押さえようとオータムとエムが残りのゴーレムとともに攻撃を仕掛ける。

そんな面々を尻目に俺は叫びながら上の硝子の向こうで意地悪く笑う人物を睨みながら叫ぶ。

 

『あら、気安く呼んでくれるじゃないの?』

 

 俺の怒声にも特に慌てた様子もなく微笑む吉良香澄。

 

『フフ、さっきまであんなに余裕綽々としてたのに、何か問題でもあったかしら?』

 

「とぼけるんじゃねぇ!!シャルロットのISに何仕込みやがった!?」

 

『さっきも言ったでしょ?スイッチを押したのはあなただって』

 

『あの子がああなったのはあなたのせいでもあるのよ、井口颯太君?』

 

「テメェ……ロゼンダ・ヴァレーズ!」

 

 吉良香澄の隣に現れた女性、ロゼンダ・ヴァレーズを睨む。

 

『私たちはただある新システムを彼女のISに仕込んでいただけ。その起動条件はそのISを身に着けている人物の強い思いと――ある一定数のダメージを受けること』

 

「っ!」

 

『そう……あなたがさっき放った一撃が最後のトリガーだったのよ』

 

 気付いた俺にロゼンダはニヤリと笑う。

 

『あれはね、VTシステムを元により強力に、より進化させたもの。名前を、『ダーインスレイヴ・システム』。誰かのコピーではなく本人の意識をある程度残したまま扱える代物よ。スピードも火力も、既存のISと一線を画すわ』

 

「ダーインスレイヴ・システム……」

 

 ダーインスレイヴ、確か北欧神話に登場する魔剣で、一度鞘から抜くと生き血を浴びて完全に吸うまで鞘に収まらないっていう魔剣の名前だ。

 

『だいたい、VTシステム自体失敗作だったのよね。操縦者の意識がないんじゃいくら強い人物のコピーでも限界があるわ。ね、そうは思わないかしら?』

 

「ざけんな!意識がある?明らかにシャルロットの意識に何かしら変調きたしてるじゃないか!」

 

『私たちがしたことなんて些細な物よ。〝アレ〟は操縦者の精神に働きかけ、強い破壊衝動を植え付け、操縦者の強い思いへとその破壊衝動を繋げる。彼女の場合はそれがアナタへの想いだった、と言うことね』

 

 睨みつける俺に肩をすくめながらロゼンダは答える。

 

『すごいわね、あの子がアナタに特別な感情を持っていることは知っていたけど、まさかここまでになるとはね』

 

『愛されてるわね、井口颯太君?』

 

「ふざけんな!!」

 

 ニヤリと笑うロゼンダと吉良の二人に俺は叫ぶ。

 

「あいつの想いを弄びやがって!実の母親をはやくに亡くし、妾の子となじられ、実の父からも愛を受けられず、いいように道具みたいに扱われ、やっと…やっと普通の幸せを謳歌し始めてたのに!これ以上あいつを苦しめんじゃねぇよ!」

 

 俺の叫びに画面の向こうの二人はどこ吹く風で微笑む。

 

『フフ、なら早く助けてあげたら?でないと彼女、ただじゃすまないわよ?』

 

「なっ!?どういう意味だ!?」

 

『ダーインスレイヴ・システムは確かに強力だけど、いまだ未完成の代物でね。操縦者への負担もその分大きいの。これまでに行った実験ではそのほとんどで操縦者に不具合をきたしていたわ』

 

「不具合…だと……?それは一体――」

 

「颯太避けろ!」

 

「っ!」

 

 問い詰めようとした俺の言葉を遮ってオータムの声が響く。

 咄嗟に右側に飛び退いた俺の脇を掠めて地面に大剣が叩きつけられる。

 

「もう……僕を放っておいて、ぺちゃくちゃおしゃべり?まったく、颯太は悪い子だねぇ?」

 

 大剣を叩きつけた姿勢のままぐるりと顔だけをこちらに向けてシャルロットが微笑みながら言う。

 

「………いいだろう。やってやる。この胸糞悪いもん引っぺがしてシャルロット助けたら、テメェら覚悟しておけよ」

 

『あら怖い』

 

『ならあなたにはここで死んでもらわないとね。ね、シャルロットちゃん?』

 

「フフフ、アハハハハハハハッ!さあ颯太!今すぐ殺り(愛し)合おう!!」

 

「そんな愛はごめんだねぇ!!」

 

 俺とシャルロットは叫びながらぶつかり合った。

 

 

 〇

 

 

 

 とは言うものの一夏との戦いに加えシャルロットとの連戦で『火焔』のシールドエネルギー的にも俺の肉体的にもギリギリだ。

 体は重いし、喉の奥からせり上がって来る酸っぱい味で喉が痛し、頭は割れそうに痛い。

 それでも、今ここで引くわけにはいかない。

 ここで引いたら

 

「アハハハハハハハッ!アハハッ!アハハハハハハハッ!颯太!颯太!颯太ぁ!」

 

 彼女は救われない。

 

「はぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

「颯太ぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

 互いの絶叫とともに俺の《火人》とシャルロットの大剣がぶつかり合って火花を散らす。

 

「そこだぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

「せいっ!!!」

 

 俺と鍔迫り合っている隙に横合いからオータムが機関銃を連射してエムがブレードで斬りかかる。

 

「あぁぁぁぁ!!!」

 

 シャルロットが苦悶の声を漏らしながら吹き飛ぶ。

 この状態になって確かに火力もスピードも上がった、が、それ以上に判断力が下がっているらしい。

 〝こう〟なる前に比べて彼女に確実にダメージを加えられている。

 

「ふっ!」

 

 息を吐きながら両肩の荷電粒子砲を放つ。

 体勢を立て直そうと立ち上がっていたシャルロットは飛び退く様に避け、笑顔のまま大剣を構える。

 そんなシャルロットの脇から滑り込むようにゴーレムが両腕を荷電粒子砲に変換させて零距離で放つ。

 

「ぐぅっ!」

 

苦悶の声を漏らしながら地面を転がり、しかし、転がるまま立ち上がったシャルロットは『瞬間加速』で俺に向かって来る。

 『八咫烏』を展開して狙うが速すぎて当たらない。すぐに《火打羽》を体の前に広げようとする。が、一瞬早くシャルロットの剣戟が《火打羽》の隙間から襲い掛かる。

 

「颯太ぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

「ぐはっ!」

 

 重い一撃を胸に受けて一瞬その衝撃に呼吸が止まりかける。しかしここで気を抜けない。俺の目の前ではさらに追撃を掛けるべくシャルロットが構えている。

 

「はぁぁぁぁぁ!!!」

 

 シャルロットの攻撃に今度は《火打羽》が間に合う。

 《火打羽》でシャルロットの大剣を受けダメージは無い。しかし、その重い一撃に踏ん張っていても数歩分押される。

 

「颯太颯太颯太颯太颯太颯太ぁぁぁぁぁ!!!」

 

「ぐぅ……!」

 

 そのまま《火打羽》で防ぐ俺に剣技も何もない大振りな動きで大剣を叩きつけるシャルロット。

 俺はシャルロットの攻撃に対応しながらエネルギーを確認する。

 さっきの一撃でかなり削られてしまった。

 タイミングを見計らった俺はシャルロットが大きく振りかぶって振り下ろした瞬間俺は《火打羽》で受けず、シャルロットの大剣を握る手を狙って『八咫烏』を纏った右手を振るう。

 

 ガギンッ

 

 大きな音と共にシャルロットの手から大剣が舞う。

 

「はぁぁぁぁぁ!!!」

 

 一瞬の隙に回転を加えて勢いを乗せた蹴りを放つ。

 綺麗に決まった蹴りはシャルロットのお腹を捉え、シャルロットの身体を蹴り飛ばす。

 

「オータム!エム!」

 

「おう!」

 

「任せろ!」

 

 吹き飛んだシャルロットを両脇から飛びかかったオータムとエムが抱き着く様にシャルロットの両手を拘束する。

 

「行くぞ!!受け取れシャルロット、これが俺の全力の一撃だぁぁぁぁぁ!!!!」

 

 俺は叫びながら両腕に『八咫烏』を纏って『瞬間加速』の勢いを乗せて突進する。

 

「っ!」

 

 俺の加速にシャルロットが一瞬目を見開き、その口元に笑みを浮かべる。

 

「っ!?」

 

 その笑みの意図が読めず俺は一瞬困惑する。

 そんな俺の目の前でシャルロットの脚の付け根に取り付けられていた透明な装飾が開く。

 飾りだと思っていたそれは――稼働するアームの先に着いた透明なブレードは両側から拘束していたエムとオータムを斬りつける。

 

「ぐっ!?」

 

「なっ!?」

 

 予想外のことに一瞬で来た隙をついて拘束から両腕を抜けさせたシャルロットはその両肩から伸びる二本づつのアームをV字に広げる。

 と、そのV字の間から光が溢れ、蛍光グリーンの光の膜のようなものが伸びる。透明な光のそれは菱形に形作られ、

 

「颯太ぁぁぁぁぁ!!!」

 

 叫びながらそれを接近していた俺に振るう。

 殴りかかっていたせいで《火打羽》で防ぐことができず、俺はその攻撃を真正面から受けてしまう。

 

「がぁぁぁぁ!?」

 

 今までに感じたことのない衝撃とともにシールドエネルギーがすごい勢いで削られる。

 そのまま息つく暇もなく二撃目、三撃目とその斬撃を防ぐことができないままなすすべなく受けた俺にシャルロットはニィっと口元に笑みを浮かべ

 

「さっきの…お返しだよぉ!!!」

 

 回転の勢いを加えた重い蹴りが俺の腹に突き刺さるように叩きこまれる。

 

「ガハッ!?」

 

 その勢いに吹き飛ばされそのまま部屋の脇に積まれていたコンテナに叩きつけられ地面に倒れ伏す。

 

「く……そぉ……」

 

 俺は体を起こそうと手をつき

 

「なっ!?」

 

 その手から全身に、俺の身体を包む『火焔』が光と消える。

 

「クソッ!シールドエネルギーが切れたかっ!?このタイミングで!?ふざけん――」

 

「避けろ颯太!」

 

「えっ?」

 

 エムの声に俺は一瞬判断が遅れた。

 振り返った俺の視界に自分へと落ちてくるコンテナが見え――

 

「しまっ――!?」

 

 寸前で地面を蹴った俺は強い衝撃とともに頭を床に叩きつけられる。

 

「くそ……足が……」

 

 エムの注意のおかげで体全てが下敷きになることはなかった。しかし、それでも間に合わなかったらしい。俺の左足は膝上のあたりまで落ちてきたコンテナの下敷きにされていた。

 

「なんとか抜け――ぐっ!」

 

 引き抜こうと引っ張るものの潰され押さえつけられているせいで引き抜くのはムリそうだ。

 コンテナは重く特殊スーツで底上げされた俺の筋力でも一ミリも持ち上がらない。

 

「もう逃げられないよぉ、颯太ぁ!」

 

 ゆっくりとこちらに歩み寄って来るシャルロットに俺は視線を周りに廻らせてこの状況を打開する術を探すが、残念ながらそんなものは無いようだ。

 

「大人しくここで――」

 

「させるかよ!!!」

 

「はぁぁぁぁぁ!!!」

 

 歩み寄るシャルロットに俺を庇う様にオータムとエムが突進を掛ける。が――

 

「僕と颯太の、邪魔をするなぁぁぁぁ!!!」

 

 両腕の透明なブレードを振るいエムの大剣を弾き、蹴りを入れて弾き、オータムの機関銃の攻撃をその左腕のブレードを盾のように広げて防ぎながら一瞬で接近し右腕を振るう。

 

「くっ!」

 

「がっ!?」

 

 苦悶の声を漏らして吹き飛ばされる二人を尻目にシャルロットは俺に視線を向け

 

「さあ、颯太、これで――」

 

 目の前で右腕の蛍光グリーンの透明なブレードを振りかぶったシャルロット。視界の端ではオータムとエムが俺に向けて手を伸ばすが、きっとそれは間に合わないだろう。

 シャルロットは口元しか見えないその顔に笑みを浮かべ

 

「終わりだよ」

 

 そのまま振り下ろした。

 




このダーインスレイブ・システムの元ネタはVVVに登場する機体です。
見た目もそれをイメージしていただければ。

ちなみにシンフォギアのイグナイトモジュールは関係ありません。

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