IS~平凡な俺の非日常~   作:大同爽

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気付けばあと一話で200話ですね。
前回書いたところだけど、なんか番外編書こうかな?
なんかネタ考えておきます。

とにかく最新話でございます。



第199話 飼い犬

「はぁ~改めて、シャバの空気はうまいね~」

 

「はいはい、お勤めごくろーさまー」

 

 お好み焼き屋「ふらわー」を後にし、会社まで戻ってきたハヤテとシャルロット。

 鼻歌まじりに歩くハヤテとは対照的にシャルロットは疲れた顔でため息をつく。

 

「なんだよ、元気ないなぁ~。もっとこう…まりっとしろよ、まりっと」

 

「まりっと、がどんな状態かはわからないけど、この後に待ってる報告書作成っていう余計な面倒事が無ければ、私だってもうちょっと元気だよ」

 

「あぁ、なるほどね。そいつはご苦労様です」

 

「まったく、誰かさんが警察のご厄介にならなければこんなことには――」

 

「ただいま~」

 

「ちょっと話聞いてる!?」

 

 のほほんと言うハヤテにシャルロットは皮肉を込めて言うが、それをスルーしてハヤテは会社のドアを開ける。

 

「あ、おかえりなさい、しゃちょー!」

 

「お勤めごくろー様ですー」

 

 と、会社に戻った二人をレナとムラサキが出迎える。

 

「おう、ただいま~。僕の留守中変わったことはなかったか?」

 

「ないよ~」

 

 ハヤテの問いにレナが答える。

 

「そいつは何より。他のやつらは?」

 

「それぞれ仕事出てますよー。私たちはお留守番中です」

 

「そっかそっか~」

 

 ハヤテの問いに答えたムラサキの言葉にハヤテは納得したように頷く。

 

「いやぁ~、やっぱり自由っていいねぇ~。堅っ苦しい牢屋より、慣れ親しんだ我が社!とりあえず、拘束されていた間に撮りためてたアニメでも――」

 

「アニメもいいですけど社長、その前に一つよろしいでしょうか?」

 

 と、スキップで社長室に向かうハヤテにムラサキが声を掛ける。

 

「おう?どうしたんだムラサキ?」

 

「はい、実はつい先ほど社長に来客が。今応接室にてお待ちしていただいてます」

 

「は?来客?」

 

 ハヤテは首を傾げる。

 

「誰だろう?了解、ありがとう」

 

「いえいえ~」

 

 礼を言ったハヤテにムラサキはお辞儀し自身の仕事に戻る。

 

「来客かぁ……なんか知ってる?」

 

「いや……私も知らない」

 

 ハヤテの問いに考えたシャルロットは首を振る。

 

「とりあえず行ってみればわかるか」

 

 そう結論付けたハヤテは応接室に向かう。その後ろにシャルロットもついて来る。

 応接室のドアをノックし

 

「失礼します」

 

 ゆっくりとドアを開けて中に入るハヤテ。

 

「お待たせしてしまって申し訳ありません。朽葉ハヤテ、ただいま戻り――」

 

「フフッ、遅かったわね、ハヤテくん」

 

 と、入室したハヤテの言葉を最後まで言わせず、部屋の中にいた人物が朗らかに言う。

 

「「っ!?」」

 

 その人物に二人は驚きの表情で固まる。

 

「待ちくたびれたわよ、ハヤテくん?」

 

 そう言って驚きに固まる二人にその女性――更識楯無は、悪戯っ子のような笑みを向けて行ったのだった。

 

 

 〇

 

 

 

「で?詳しく話を聞かせてくれるかしら、ハヤテくん?」

 

「え~っと……」

 

「今回はいったいどうして警察のご厄介になったのかしら?もちろん説明してくれるのよね?」

 

 有無を言わせぬ雰囲気で楯無はソファーに座ったまま腕を組み、ハヤテにジトっと視線を向ける。

 

「いやぁ~……話せば長くなるんですが、話す方も聞く方もかったるいと思うんで後で提出する報告書を読んでいただく方向でここは一つ――」

 

「あら?あなたの口から直接報告させるためにわざわざきたのに。それとも、あなたを釈放するために骨折った私には報告する気はないかしら?私、あなたを釈放するためにあっちこっち頭を下げたんだけどなぁ~。決して少なくないお金も使ったんだけどなぁ~」

 

「うぐっ……い、いえ、そんなつもりは無いです」

 

 言い訳するように言ったハヤテに楯無は意地悪く笑いながら訊く。

その問いにハヤテは顔を引き攣らせる。

 

「楯無さん、その言い方は意地悪すぎですよ」

 

「あら?そうかしら?私の労力を考えれば、こうしてわざわざ足を運んで直接報告を受けようと思っても、むしろお釣りがくるくらいじゃないかしら?」

 

 ハヤテの隣に立つシャルロットが苦笑いで言うと、楯無は笑みを崩さず答える。

 

「それで?何があったのかしら?」

 

「……………」

 

 笑いながら見つめられ、ハヤテは少し考えた後

 

「はぁ……」

 

 諦めがついたのか大きくため息をつく。

 

「話すと長いので端的に言いますと」

 

「うんうん」

 

「六歳の少年誘拐したら捕まりました」

 

「…………」

 

「……………」

 

「………………」

 

「…………………」

 

「…………え、終わり!?」

 

 続きを待っていた楯無はその続きがないことに驚きながら叫ぶ。

 

「それは知ってるのよ!私が聞きたいのはなんでそんなことしたかってことよ!」

 

「あぁ、それは母親から依頼されたからですよ」

 

 楯無の言葉にハヤテは納得したように頷きながら答える。

 

「……どういうこと?」

 

 ハヤテの言葉に意味が分からず首を傾げる楯無。

 

「今回の依頼人は彼が誘拐した少年の実の母親だったんです」

 

 理解できていない楯無にシャルロットが説明をする。

 

「彼女は夫の暴力に耐えきれず、アルコール依存症になり強制入院させられていました。そんな彼女から子どもが夫から暴力を振るわれているから助けてほしい、と、言うのが今回の依頼だったそうです」

 

「そうなんですよ!」

 

 シャルロットの説明にハヤテが頷く。

 

「僕は警察に届ければいいって思ったんですけど、その母親が、それじゃ駄目だって言うもんですから。自分が何を言っても信じてもらえないし、子どもは父親を怖がって何も話さないだろうって」

 

「だからってなんで誘拐したのよ……?」

 

 ハヤテの言葉に楯無はため息まじりで言う。

 

「誘拐すれば、父親から守れるし、警察が追っかけてくれれば、みんな君を助けたいと思ってるよ~ってあの子にわからせてあげることもできる。ね?いいアイディアでしょ?」

 

「でも他に方法があったんじゃないの?」

 

「警察は民事不介入ですから。大事にすれば警察も動かざるを得ないと思ったんですよ。それに――」

 

 楯無の問いにハヤテは答えながら、優しくはにかむ様に微笑む。

 

「あのお母さん、僕に依頼するとき〝子どもと夫を助けてくれ〟って言ったんですよ。だから僕、この家族まだ間に合うなぁって思ったんです」

 

「………そう」

 

 ハヤテの言葉に楯無はゆっくりと頷く。

 

「ちなみに、その男の子は今どうしてるの?」

 

「現在その子は児童相談所に保護され、父親には綿密な事情聴取を行っているらしいです」

 

 楯無の問いにシャルロットが答える。

 

「………はぁ、まあ話は分かったわ」

 

 楯無はため息をつきながら組んでいた手を解く。

 

「あなたらしいと言うかなんというか……」

 

「いやぁ~それほどでも~」

 

「「褒めてない!」」

 

 照れたように頭を掻くハヤテにシャルロットと楯無が声を揃えて言う。

 

「まったく、あなたにはもう少し自分の立場ってものを理解した上で行動してほしいんだけど……」

 

「立場なら重々理解しているつもりですが?」

 

 楯無の言葉に肩をすくめながらハヤテはネクタイを緩め、シャツの首元をグイッと開く。

 

「心配しなくても僕はあなた方の従順なワンコですよ。なんならここで三回回ってワンと鳴きましょうか?」

 

 冗談めかして言うハヤテ。その首には先ほどまでシャツの襟で隠れていた物、黒いチョーカーのような首輪が彼の首にぴったりとっくっついているのが見えた。

 

「あら、それは大変興味深いわね」

 

 言いながら楯無は妖艶な笑みを浮かべて立ち上がり、ハヤテのチョーカーをジッと見つめながらハヤテの周りをぐるりと歩き、隣に寄り添うように立つと、彼の背中に手を回す。

 

「それじゃあ、隣のホテルであなたの立場について朝まで語り明かそうかしら」

 

 そう言って自然な動きでハヤテを連れて行こうとし

 

「ちょちょちょ!ちょっと楯無さん!?」

 

 と、そんな楯無にシャルロットが叫ぶ。

 

「ななな何言ってるんですか!?そんなことさせるわけないでしょう!?」

 

「あら、いいじゃない堅いこと言わない。なんならシャルロットちゃんも来る?三人でって言うのもいいかもしれないわね」

 

「いいわけないでしょう!?」

 

 からかうように笑う楯無の言葉にシャルロットは顔を真っ赤にしていう。

 

「楯無さん、嬉しい申し出ではありますけど、僕は今日釈放されたばかりなんで、いろいろとやることがあるので、その申し出はお断りさせていただきます」

 

「あらそう。それは残念ね」

 

と、二人のやりとりを見ていたハヤテは冷静に言い、ハヤテの言葉に楯無は肩をすくめて体を離す。

 

「それと楯無さん、そういう冗談はあまり言わない方がいいですよ?立場と言うことであれば、楯無さんの方こそ、そこらへんは僕なんかよりも……ではないんですか?」

 

「あら?私は冗談のつもりじゃなかったのだけどね。それに、昔どこかの誰かさんに〝自由に生きろ〟と言われちゃってね」

 

「そのどこかの誰かさんが誰かは知りませんが、そいつはとんだバカ野郎ですね」

 

 笑いながら言う楯無の言葉にハヤテは肩をすくめて返す。

 

「さぁて、それじゃあ詳しい話も聞けたし、私はそろそろおいとましようかしらね」

 

 と、ちらりと時計を確認した楯無はソファーの脇に置いていたカバンを手に取る。

 

「それじゃあ、シャルロットちゃん、報告書はいつもの手順でお願いね」

 

「わかりました」

 

 楯無の言葉に頷いたシャルロットを確認しながら楯無は笑顔で頷き

 

「それじゃあ、ハヤテくん、近々またディナーにでも誘うわ。シャルロットちゃんも、今度簪ちゃんも呼んで女子会でもしましょう」

 

「ええ、是非」

 

「今簪、少し仕事が立て込んでるらしいんで、少し先になりそうですけどね」

 

 楯無の言葉にハヤテが頷き、シャルロットは苦笑いを浮かべつつ頷く。

 

「それじゃ、二人とも、アデュ~」

 

 そう言って笑顔のまま楯無は去って行った。

 

「……………」

 

「………なんだよ?」

 

 楯無が出て行って数秒後、楯無がいなくなってからずっと隣から向けられる非難の視線にハヤテが訊く。

 

「べっつに~」

 

 と、シャルロットはハヤテの言葉に含みのある様子で言う。

 

「まあ?楯無さんの申し出が嬉しかったのなら別に行ってもよかったんじゃない?どうせハヤテに急いでしてもらわないといけない急ぎの仕事なんて特にないんだし~」

 

「……………」

 

 不貞腐れたように言うシャルロットの言葉に数秒考えたハヤテは何かを思いついたようにポンと手を打ち

 

「嫉妬?」

 

「ち・が・い・ま・す!!」

 

 ハヤテの言葉にシャルロットがギロリと睨みながら答えたのだった。

 




改めまして、おはこんばんちは(おはよう/こんばんは/こんにちは)
FGOの夏イベの最後の追い込みかけたりいろいろごちょごちょやっていました。
本当はもう少し早く更新するつもりだったのに……(;^ω^)

さて、今回の質問はBRAVE(オルコッ党所属)さんからいただきました。「女権団は鎮圧されたけど、逆に男権団的なやつとかはどうなったんでしょ?後、各国のテロリスト。亡国とかその他諸々の裏世界的な動きとかを」と言うことですが



 まず男権団体のような団体についてですが、そう言った組織はあってもそれほど力を持っていません。
 女性権利団体がやられ、世界は行き過ぎた女尊男卑が緩和されつつありますが、それでもやはりISを女性にしか扱うことのできないと言うこともあって、男尊女卑となるところまではいっていないので、結果、そう言った団体ができたところでそれほど権力を持つことは無いでしょう。
 さて、続いて各国のテロリストについて。
 五年前の颯太の起こした一件により、世界は一時期パワーバランスを崩し、その間力を蓄え、また積極的に活動していた集団がいくつかあり、そう言って集団は今現在も活発に活動しているのが現状です。
 ちなみに亡国についてですが、亡国の名で活動している集団はいますが、そこに例の三人の姿は無く、表舞台に立っている様子ではありません。噂では篠ノ之束とともに行動しているとかいないとか……


さてさて今日のところはこの辺で!
今のところ来ている質問は今回のですべて答えてしまったので、皆さんどしどしどうぞ!
それでは次回もまたお楽しみに!

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