IS~平凡な俺の非日常~   作:大同爽

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???「この本によると、稀代のテロリスト井口颯太の弟である井口海斗。彼は――」

キングクリムゾン!!!
時間を20秒だけ吹き飛ばした
その時間内のこの世のものは全て消し飛び
残るのは20秒後の「結果」だけだ
お前がネタバレを話し終えたという「結果」だけが残る
途中のネタバレ内容の全ては消し飛んだのだ

ネタバレを阻止したところで最新話!
どうぞ!





第206話 着信アリ

 

「すまない、遅くなってしまった。状況はどんな感じだ?」

 

 海斗の監禁されていた廃ビル近く、ハヤテたちが合流した場所で一台停まったバンの隣に立つハルトに数名の黒いスーツの男たちを引き連れた一人の男が話しかける。

 その男は赤毛の髪に厳めしい引き締まった顔つきに顎には整えられた髭を蓄え、服装は白のスーツのズボンに上は赤いカッターシャツを肘あたりまで捲り、ピンクのネクタイを締めていた。何より目を引くのは捲った袖から見える腕や服の上からもわかるほど鍛えられ盛り上がった筋肉だった。

 その筋骨隆々の男――風鳴弦十郎の登場に事後処理をしていた手を止め、ハルトが頷く。

 

「あぁ、お疲れ様です。あらかた片付いてますよ」

 

「そうか。響君たちは?」

 

「保護対象の彼に付き添って病院に向かいました。救急車じゃ全員は乗り切らないのでうちのムラサキが車を一台出してます」

 

「そうか。社長のハヤテ君の姿が見えないが、事後処理の途中か?」

 

「いえ、社長も病院です。シャルロットさんはその付き添いで。その…社長、ISを使ったもので……」

 

「何っ?」

 

 ハルトの言葉に弦十郎は驚きの声を漏らす。

 

「彼は使ったのか、ISを?響君たちの前で?」

 

「ええ。テロリストたちもISを所持していてやむを得ず」

 

 弦十郎の問いにハルトは頷く。ハルトの言葉に弦十郎は重苦しく顔をしかめる

 

「……使わない方がよかったでしょうか?」

 

「……いや、使ったことを非難するつもりはない。彼のことは信頼している。きっと最善の選択だったのだろう。問題は……響君たちの前でそれを使ったことだ……」

 

 ハルトの問いに首を振りながら弦十郎は答える。

 

「……彼女たちにも、そろそろ説明するときか」

 

 弦十郎は考え込むようにつぶやく。

 

「まあ、それはおいおい考えるとしよう。――それで?こちらの被害状況は?」

 

「はい。人質となっていた井口海斗君は無事確保。独断専行で突入した社長も多少ケガはしたものの無事です。こちらの被害をしいて挙げるならうちの社長が左手の小指折ったのと、〝左足〟を刺されたくらいです」

 

「そうか……」

 

「風鳴さんが現着したら〝左足〟の件、手配をお願いしておくように言付かっています」

 

「わかった、すぐ手配しよう。それで、相手のテロリストたちは?」

 

「ここに」

 

 ハルトが示した先には拘束された十数名の人物たちがいた。その中には海斗やハヤテを監禁していた場にいた五人もいる。

 

「これだけか?もう少しいると予想していたんだが……」

 

「生きてる分は、ですね」

 

「……なるほどな」

 

 苦笑いを浮かべるハルトに弦十郎も渋い顔をする。

 

「とにかく了解した。ここからは我々が引き継ぐから、君たちはここで解散してくれ」

 

「了解しました。失礼します」

 

 源十郎の言葉に頷いたハルトは一礼し、バンの中にいる面々とその隣に停められた青のバイクの隣に立つレナに声をかけ、撤収していった。

 

「………面映ゆいな。俺たち大人に力がないばかりに……」

 

 ハルトたちを見送りながら源十郎はこぶしを握り締めて呟く。

 

「………さぁ!ここからは俺たちの仕事だ!」

 

 気を取り直して源十郎は大きく息を吐き、周りの黒服たちに声をかけ、動き始めた。

 

 

 ○

 

 

 

「やあ、海斗君。目が覚めたんだな。調子はどうだい?」

 

 自販機の前、飲み物を買おうとやってきた海斗にベンチにいた先客、朽葉ハヤテはにこやかに声をかける。

 海斗が目を覚ましたのは救出されてから約二時間後のことだった。目を覚ましてすぐに見たのは、泣きそうな顔で感極まったように自分に飛びついてきた二人の後輩と同級生、その後ろで一安心したようにほっと一息つく同級生、そして、安心したように優しく微笑む先輩の顔だった。

 このまま病室に一緒に泊まりかねない勢いの調と切歌、響の三人を寮の門限も近いと宥めて未来とクリスが半ば引きずるように去って行くのを見送り、出された夕食の病院食を食べた後のこと。このままだとつい先ほど起きたせいで消灯の時間には寝ることができそうにない、ということで散歩がてら自販機に飲み物を買いに来たところ、先にベンチに座り、缶コーヒーを啜る朽葉ハヤテに遭遇したのだった。

 二人の服装は、ハヤテは浴衣のような入院着、海斗はズボンタイプの入院着だった。

 

「今日は災難だったね。どうだ?消灯まで時間あるし、お互い暇してるようだ。ちょっとした話し相手にならないかい?」

 

 言いながら自身の座るベンチの隣をポンポンと叩き、座るように示すハヤテ。海斗はそれに従って座る。

 その様子にハヤテは嬉しそうに微笑む。

 

「どうだい?体は何ともないか?」

 

「え、ええ。おかげさまで……」

 

「そうか。気を失ったから驚いたよ。……ちなみになんで倒れたか覚えてるか?」

 

「いえ……倒れる前の記憶が少しあいまいで。お兄さんと一緒に逃げて、一階まで来たところまでは覚えてるんですが――」

 

「いや!覚えてないならいいさ!別に大したことじゃないし!」

 

 海斗が思い出そうと首をひねるが、ハヤテは慌てたように言う。

 

「そうだ、ここに来たってことは何か飲むだろ?驕ったげるよ。何がいい?」

 

「い、いえ!そんな――」

 

「いいからいいから。何がいい?」

 

「………じゃあ、コーラで」

 

「あいよ」

 

 海斗の言葉に頷いたハヤテはベンチの背もたれや壁に手をつきながら立ち上がり、自販機の前に立つ。

 

「まあ無事で何よりだよ。君になんともなかったんなら、僕らも骨折った甲斐あったよ」

 

 一瞬ハヤテの動きに違和感を覚えた海斗だったがハヤテの言葉に息をのむ。

 

「………その、左手は大丈夫ですか?」

 

「ん?……あぁ!そういう意味じゃないさ」

 

 首を傾げたハヤテだったがすぐに合点がいったように笑う。

 

「確かに折れてはいるが僕の利き手は右手だし、何より小指だからね」

 

 言いながら海斗に左手を見せる。彼の手は小指が薬指と一緒に添え木で固定されていた。

 

「でも、やっぱりそれは僕の――」

 

「ほい」

 

 海斗の言葉を遮ってハヤテが自販機の取り出し口から出した缶を海斗に投げて寄越す。

 

「この指は僕が自分でこうしたんだよ。君のせいじゃない」

 

「自分でって……どうして……?」

 

「まあいろいろあるのさ」

 

 ベンチに座りなおしたハヤテは笑って答えながら自分のコーヒーに口を付ける。

 

「ありがとうございます」

 

 礼を言いながら海斗はプルタブを開ける。炭酸系の飲物特有のプシュッと言う音がする。

 

「そう言えば、僕から一つ君に訊きたかったことがあるんだけどさ」

 

「なんですか?」

 

 缶に口を付けながら海斗が首を傾げ

 

「君、なんでHDDの中身をあいつらに教えなかったんだ?」

 

「っ!」

 

 ハヤテの問いに海斗は息をのむ。

 

「中身について詳しく教えてやれば、あいつらだって諦めただろうに」

 

「なんで……中身を教えるって……」

 

「だって君、そのHDD開けられたんだろ?」

 

 肩をすくめながら言うハヤテに海斗は驚いたように目を見張る。

 

「君はあの時、確かに中身については触れなかった」

 

「え、ええ。だから――」

 

「だったらなんで、その中身が〝あいつらの欲しがるようなものじゃない〟って断言できたんだい?」

 

「っ!」

 

 ハヤテの指摘に海斗は息をのむ。

 

「同じ理由であいつらも遺産の存在には気付いたみたいだけど、その中身については推察できなかったみたいだな」

 

「……………」

 

 ハヤテの言葉にどうこたえたものかと逡巡するそぶりを見せた海斗は

 

「……ダメだ、言い訳が思い浮かばない。すごい、よくわかりましたね」

 

「これでも探偵みたいなこともしているものでね」

 

 苦笑いを浮かべて海斗が頷く。

 

「そうですね。僕は確かにあのHDDを開けることに成功しました。そのことを知っているのは他に誰もいません。今日初めてあなたに話しました」

 

 頷きながら海斗が言う。

 

「それで、なんであいつらに中身を言わなかったか、でしたよね?」

 

 海斗はハヤテに視線を向ける。ハヤテは興味深そうに微笑みながら頷く。

 

「答えは簡単です。あそこで正直に中身を言えば、あいつらは僕らのことを確実に殺してましたよ」

 

 海斗は肩をすくめて言うとコーラに口を付ける。

 

「ああいうタイプの人たちは〝アレ〟が目当てのものじゃないとわかったら、僕らのことが邪魔になる。だからあの場ではあえて中身については言わなかったんです」

 

「なるほどね」

 

 海斗の言葉にハヤテは納得したように頷く。

 

「しかし、見てきたかのように言うね。前にもそんなことがあったのか?」

 

「ええ、まあ」

 

 ハヤテの問いに海斗が頷く。

 

「その時は馬鹿みたいに強いおじさんと、頼りになる先輩が助けてくれましたけどね」

 

「馬鹿みたいに強いおじさん、ねぇ……」

 

 海斗の言葉にハヤテは何か思うところがあるのか呟きながらコーヒーを飲む。

 

「僕からもひとつ訊いていいですか?」

 

「ああ、いいよ。何かな?」

 

 海斗の言葉にハヤテが頷く。

 

「もしかして……兄さんの知り合いですか?」

 

「………なんでそう思った?」

 

 海斗の問いにハヤテは数秒黙ってから訊く。

 

「なんとなくです。やけにうちの兄さんのことでテロリストに語ってたんで、もしかして、と思って。違いますか?」

 

「…………」

 

 海斗の問いに数秒考えこんだハヤテは

 

「……いや、残念だけど、君のお兄さんと僕は面識はないよ」

 

 ゆっくりと首を振る。

 

「あいつらに言ってやったことも、俺の考えさ。聞いてるかもしれねぇが、うちの会社にはシャルロットがいるからな。君のお兄さんの人となりについては聞いてたのさ」

 

「そうですか……」

 

 ハヤテの答えに海斗は少し落胆したように頷いた。

 

「………おっと、少し話しすぎたかな?」

 

 と、腕に着けた時計にちらりと視線を向けたハヤテが言う。

 

「そろそろ消灯だ。今日はいろいろあったんだ、ゆっくり休め」

 

「………そうですね」

 

 ハヤテの言葉に海斗は頷き、缶に残っていたコーラを飲み干す。

 缶を片手に立ち上がり、自販機のわきのゴミ箱に缶を捨てる

 

「あの、今日は助けていただき、ありがとうございました」

 

 言いながらハヤテに向けて海斗は頭を下げる。

 

「いいよ。これも僕の仕事の一つだ。また何か困ったことがあったらシャルロットにでも連絡くれ」

 

「はい」

 

 ハヤテの言葉に頷いた海斗はもう一度深く頭を下げ

 

「あっ!そう言えばもう一個訊き忘れてたことが!」

 

「おん?」

 

 思い出したように海斗が言う。

 

「あの、お兄さんの名前をまだ聞いていなかったので」

 

「あれ?そうだっけ?」

 

 首を傾げるハヤテに海斗が頷く。

 

「そっかそっか。すまんな。失念していた」

 

 苦笑いを浮かべながら頭をかいたハヤテはニッと笑い

 

「ハヤテだ。朽葉ハヤテ」

 

「ハヤテさん……」

 

 口の中で反復するように小さく呟き頷いた海斗は

 

「ハヤテさん、ありがとうございました。あと、コーラごちそうさまです。また機会があればどこかで」

 

「ああ。おやすみ」

 

「おやすみなさい」

 

 そう言って会釈し、海斗は自身の病室へと去って行った。

 

「………さて、僕もそろそろ――」

 

 と、腰を上げる。と、わきに置いていた携帯が着信を告げる。病院の中なのでマナーモードにしていたので震えるばかりだ。

 

「…………」

 

 ハヤテは一つため息をついて、相手を確かめることなく電話に出る。

 

「はい、もしもし、朽葉ハヤ――」

 

『もすもすひねもす~♪みんなのアイドル!束たんだよ~♪ぷ~んp――(ブツッ)』

 

 自分の言葉を遮ってハイテンションに聞こえてきた声に嫌そうな顔をしながらすぐに電話を切るハヤテ。

 が、すぐに同じように電話がかかってくる。

 

「……はぁ」

 

 ハヤテはため息をついて電話に出る。

 

「はい、朽葉ハヤテです!」

 

『今電話したら電話がいきなり切れたんだけど』

 

「あぁ~!どうも、すいませんでした~!(ガチャン)」

 

 再び電話を切る。が、またかかってきて

 

「はい、朽葉ハヤテです!」

 

『電話が切れたんだけど、って電話したら切れたんだけど?』

 

「あぁ~!どうも、すいませんでした~!失礼しま~す!」

 

『うんうんだからさ!』

 

「はい?」

 

『なに切ろうとしてんだよ!』

 

「あ、はい!わかりました。ちょっと待ってくださいね」

 

『え?あ、うん』

 

 そう言ってはハヤテは再び電話を切る。

 

「………さて、と」

 

 ふぅ、と一息つきハヤテは立ち上がろうとし、しかし、また電話がかかってくる。

 

「………はい、朽葉ハヤテです!」

 

『あのさ、ちょっと待っててって言うのは、いまタイミングが悪いから後出かけなおすってこと?それとも、携帯電話OKなところに移動するってこと?どっち?』

 

「………はい!」

 

『……いや、だから、はいではなくて』

 

「はい?」

 

『今どうしようとしてたの?』

 

「部屋戻って寝ようと思ってました」

 

『……おやおや?ちょっと待って!』

 

「(ガチャン)」

 

 ハヤテは電話を切る。しかし、電話はすぐにかかってくる。

 

「はい、蕎麦屋です!」

 

『朽葉ハヤテだろ!?』

 

「はい!」

 

『なんでウソついたの!?』

 

「あぁ~!どうも、すいませんでした~!(ガチャン)」

 

 ハヤテは電話を切る。しかし、電話はすぐにかかってくる。

 

「はい、朽葉ハヤテじゃないです!」

 

『朽葉ハヤテだろう?』

 

「はい!」

 

『なんで切るんだよ!?』

 

「(ガチャン)」

 

 ハヤテは電話を切る。しかし、電話はすぐにかかってくる。

 

「はい、誰かです!」

 

『朽葉ハヤテだろ?』

 

「はい!」

 

『あのさ――』

 

「タダイマ、ルスニシテオリマス、ファックスノカタハ――」

 

『遅いよねそれやるなら』

 

「はい!」

 

『一回ばっちりコミュニケーションとったじゃん』

 

「はい!」

 

『そこ頑張んなくていいから私の話を――』

 

「(ガチャン)」

 

 ハヤテは電話を切る。しかし、電話は当然すぐにかかってくる。

 

「ピンポンパンポ~ン♪気象庁予報部、午後六時発表の――」

 

『お前さぁ!』

 

「はい!」

 

『あのさぁ、この私がわざわざこうして電話かかけてきてやってるんだから、それなりの態度ってものがあるだろ?』

 

「(ガチャン)」

 

 ハヤテは電話を切る。しかし、電話はすぐにかかってくる。が、今度は出ない。

 なおも携帯は着信を告げる。が、ハヤテは出ない。

 さらに携帯は着信を告げる。が、ハヤテは出ない。

 それでも携帯は着信を告げる。が、ハヤテは出ない。

 なおかつ携帯は着信を告げる。が、ハヤテは出ない。

 まだまだ携帯は着信を告げる。やっとハヤテは電話に出る。

 

「ワタシノナマエハ――!」

 

『朽葉ハヤテだろ?』

 

「はい!」

 

『お前今何してた?』

 

「コーヒー飲んでました」

 

『おい、いい加減にしろよ!この私がわざわざ電話してやってるのにさっきからお前は――』

 

「あの、いい加減飽きてきたんで普通でいいですか?」

 

『だ・か・ら!さっきからそう言ってんだろ!!』

 

 電話の向こうから絶叫するような声が聞こえ、ハヤテは一瞬耳元から電話を離す。

 

「それで、いったい俺に何の用ですか、篠ノ之博士?」

 

 電話を耳元に戻しながらハヤテは電話の相手、篠ノ之束に問いかける。

 

「わかってると思いますけど、俺とあんたがこうして接触を持てばどうなるか――」

 

『あぁ、それは気にしないでいいよ。他のやつにはばれないように特殊な回線使って電話してるから』

 

「それ先に言ってくださいよ。それ知ってたらあんな長ったらしいコントやってあんたに切ってもらおうとしなくても済んだのに」

 

『うん、それ言わせずに勝手に切ったのそっちだからね?』

 

 ハヤテの言葉に束は呆れたように言う。

 

「まあ、それは置いておいて。あんたがくれた情報のおかげで海斗を助けることができたよ。その件は感謝してる。ありがとう」

 

『ほぉ~、そいつはよかった。まあ知ってたけど』

 

「だろうな。あんたなら何かしらの方法で顛末を見てるだろうとは思ったよ」

 

 ハヤテは肩をすくめながら言う。

 

「と言うか、いつの間に俺の携帯にあんたの番号登録した?しかも変な名前で登録したうえに変更できないし削除もできないんだが?」

 

『私に不可能はないのだよ!なにより私の連絡先知れるんだからもっとありがたがれ』

 

「ワ~イ、マンモスウレピ~」

 

 ハヤテは気のない棒読みの声で答える。

 

「しかし、どういう風の吹き回しなんだ?あんたが他人を助けるなんてさ?しかも事後にこうしてそっちから電話をよこしてくるなんて」

 

『……………』

 

 ハヤテの問いに束は少し黙り

 

『まあなんていうのか、私だって同じ立場ならどうにかしたいと思うだろうからね』

 

「……なるほどね」

 

『あとはまぁ…借りを返したかったのさ』

 

「借り?」

 

 束の言葉にハヤテはその意味が分からず首をかしげる。

 

『あんたのおかげで、私の夢が叶いそうだからね。今回のこの手助けはそのお返しだよ』

 

「…………」

 

 束の言葉にハヤテは押し黙る。

 

『まあこれで貸し借りは無し。まあまた何かお前を利用したい時には電話するから』

 

「わしゃお前の奴隷か?」

 

 束の言葉にハヤテはため息をつく。

 

「そういや、クロエは元気にしてるか?」

 

『元気だよ~。この五年でますます可愛くなったんだよ~!もう鼻が高いよ~』

 

「オータムやスコールやエムは?一緒にいるんだろ?」

 

『なんでそう思うんだい?』

 

「ここ数年、『亡国機業』の活動頻度が落ちている。活動しても三人の名前は聞かないし目撃情報もない。ってことは、あり得るとすればアンタかなってね。違った?」

 

『……ふふっ、相変わらず変なところで聡いね、凡人のクセに』

 

 束は楽しげに言う。顔の見えない電話の向こう側の束の、ニヤリとした顔がハヤテには見えた気がした。

 

『お察しの通りあの三人には今は私の下で働いてもらってるよ。『亡国機業』を抜けるときに面倒があったからちょっと痛めつけてやったけど』

 

「なるほどね。だから最近『亡国機業』の活動頻度が落ちてたのか……」

 

 ハヤテは呆れつつも納得したように頷く。

 

「まあ、みんな元気ならいいよ。よろしく言ってたって伝えてくれよ」

 

『はいはい。覚えてたらね』

 

「あ、それ忘れるだろ。絶対言わないやつじゃん」

 

『大丈夫大丈夫!この天才の記憶力を舐めるなよ~』

 

「だとしたら意図的に言わないつもりだろ。ちゃんと伝えてくれよ!?」

 

『へいへ~い』

 

 ハヤテの言葉に束は気のない雰囲気で答える。

 

「……まあいい。とにかく、今回は助かった。ありがとう」

 

『言っただろ?借りを返しただけだって。そいじゃ、機会があればまた会おうね。まっ、そんな機会、あるかどうかわからないけどね』

 

 そう言って今度は束の方から電話を切った。

 

「……………」

 

 通話の切れた携帯の画面をハヤテは数秒見つめ

 

「……この表示の治し方、訊き損ねた」

 

 ハヤテの見つめる画面には登録者名として「ラブリーアイドル束様」と、表示されていた。

 




どうも!
キングクリムゾンしすぎてバトルシーンも消し飛ばしてしまった大同爽です!

事後処理にやってきたOTONAな風鳴弦十郎さん。
ハヤテくんの何かを知っている様子の彼の正体は!?
響達に語るべきこととは!?



さて、そんなわけで今回の質問コーナーですがなんと!!質問のストックがつきました!!

颯太「てことはこのコーナー自体終わりじゃん。どうすんの?」

おや、颯太君久しぶり。
前に某快楽のアルターエゴの宝具食らったけど生きてたのね。

颯太「おかげさまで。――でさ、この質問コーナー質問のストック無くなったんだろ?これからどうするの?」

そりゃお前……あれだよ……あれだ。そう!あれなんだよ!

颯太「どれだよ?」

あれだ!
もし次に更新するまでに新しい質問がこなかったら!そんときは!
質問として来るかなって用意してたけど結局来なかった、みたいな裏設定出したりするよ!

颯太「質問としてこなかったってことは読者の誰も興味ないことなんじゃねぇの?無意味じゃね?」

…………( ノД`)シクシク…

颯太「あぁ!ごめんごめん!言い過ぎた!そうだね!喜ぶ読者ももしかしたら一人くらいはいるかもね!いいと思う!やったらいいんじゃないかな!?」

だよねぇ!?
いいよねやっても!
そんなわけで今後の質問コーナーはそんな感じで行きます。

颯太「あ、じゃあ今回の質問として俺から一個訊いてもいい?」

おう。
何でも訊けよ。

颯太「五年後世界になって登場し始めた新キャラに『グリザイア:ファントムトリガー』のキャラが何人か出てるじゃん。あれって主要なメンバーは全員出るの?要はまだ出てない残りの美浜学園のヒロインも出るの?」

うん、まあ一応その予定だけど。

颯太「てことはさ、この作品には雪音クリスがいるけど、ファントムトリガーの残りのヒロインにもいるよね〝クリス〟?あれどうするの?ややこしくならない?」

そ、それ…は………

颯太「それは?」

………………………おっともうこんな時間だ!

颯太「あっ、逃げた」

今回はこの辺で!
そんなわけでまた次回!
お楽しみに!

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