IS~平凡な俺の非日常~   作:大同爽

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ついに自身の正体を語り始めたハヤテくん=颯太くん。
はたして彼らは何を語るのか!?






第208話 説明の義務

 

『井口……颯太……!?』

 

 ニッコリと微笑んで言うハヤテの――いや、〝颯太〟の言葉にクリスを除く八人が驚きの声を上げる。

 

「井口颯太って、〝あの〟井口颯太デスか!?」

 

「そうだよ」

 

「海斗先輩の、お兄さんの……?」

 

「そうだよー」

 

「あの魔王井口颯太!?」

 

「魔王って呼ばれ方はあんまり好きじゃないけど、そうだよ~」

 

「あの大事件の主犯の、あの井口颯太!?」

 

「だからそうだって」

 

 切歌、調、奏、響の問いに頷きながら颯太は苦笑いを浮かべる。

 

「何?みんなそんな顔して?そんなに信じられない?」

 

「信じられるわけないじゃない!?」

 

 颯太の言葉にマリアが声を上げる。

 

「だって、井口颯太は五年前のあの日、死んだって――」

 

「でも、遺体は見つかってないだろう?」

 

「それは……」

 

「唯一見つかったのはあの日一夏に切り落とされた左足だけ。そう、この左足がね」

 

 言いながら颯太がズボンの左側を捲って見せる。そこには――

 

『義足……』

 

 颯太の左足部分、太腿の半ばから金属の医療用の義足になっている姿に今度はクリスも含め九人全員が息をのむ。

 

「で、でも初めて会った時も、海斗君を救出したあの日も、ハヤテさんは――いや、颯太さん?えっと……と、とにかく!あなたは普通に何の違和感もなく歩いてたじゃないですか!?」

 

 未来が一瞬困惑しながらも訊く。

 

「あぁ、その時はもっといい〝脚〟だったからね。これは代用品なんだよ」

 

 颯太はいい質問だ、という様に頷きながら答える。

 

「あの日、海斗を救いに行ったときに左足刺されちゃってね。最初は平気だったけど、襲ってきたISに対応するために戦ったのが原因か、あの後不調が出てね。いまメンテナンス中。今日返ってくることになってるんだよ」

 

 捲っていたズボンのすそを戻しながら言う。

 

「あの時は参ったよ。痛覚の無い義足刺されても変に演技で痛がってても相手にばれるだろうから、わざわざ自分で指折る羽目になったし」

 

 颯太はやれやれと肩をすくめる。

 

「じ、自分で折ったんですか!?自分の指を!?」

 

「まあね。本当に痛がらないと余計に刺されるからね。そんなの損でしょ?」

 

 全員が驚く中で口を開いたセレナの問いに颯太が何でもないことのように答える。

 

「と、とにかく!百歩譲ってあなたが井口颯太だったということが真実だったとしましょう。それが本当のことだったとして、なんでそのことを我々に話したんですか?」

 

 翼が颯太に訊く。

 

「うん、そこは気になるよね」

 

 颯太はうんうんと頷く。

 

「まあいい機会だったからね。彼女たちも学園を卒業したら本格的にS.O.N.G.のメンバーとして働くようになる。そりゃ今だって任務についてるけど、卒業すれば五人もそっちの四人みたいに俺と会うことも増えるだろうから」

 

 颯太は奏たち四人をさしながら言う。

 

「でも、それなら井口颯太だって名乗らなくても……」

 

「確かにそれも考えた」

 

 未来の問いに颯太は頷く。

 

「でもねぇ、君らの前で使っちゃったからね、『火焔』をさ」

 

 颯太は苦笑いを浮かべながら答える。

 

「あれはデカかった。あれ見られちゃったら、言い逃れできないかな、ってね」

 

『……………』

 

 颯太の言葉にみな押し黙る。

 

「まあそんなわけだから、これからも顔を合わせる機会があると思うから、その時はよろしくねってことで。あ、わかってると思うけど、これからも井口颯太はもう既に死亡。〝僕〟はあくまでも〝朽葉ハヤテ〟だから。それじゃ」

 

 そう言って颯太は後ろに控えていた三人に目配せをする。

 三人のうちシャルロットが颯太の後ろに立ち、車椅子のロックを外し、車椅子を押し始め四人は会議室から退出しようとドアに向かう。

 

「待ってほしいデス……」

 

 と、そんな颯太たちを呟くような小さな声が呼び止める。

 

「……何かな、暁切歌ちゃん?」

 

 シャルロットが車椅子を止め、颯太が振り返って訊く。

 

「待ってほしいデス!まだ!まだわからないことだらけデス!」

 

 バンッと机を叩いて立ち上がった切歌はズンズンと颯太の目の前まで歩み寄り睨みつける。

 

「なんで……なんで会いに行かないんデスか?」

 

「……………」

 

「なんで海斗先輩に会いに行かないんデスか!?」

 

 切歌の問いに颯太は答えずただ黙っている。

 

「私も知りたいです」

 

 と、切歌の隣に賛同するように調、そして、響と未来が立ち、颯太に視線を向ける。

 

「アナタは…自分を死んだことにした。なんでわざわざそんなことをしたのか?なぜそうする必要があったのか?ちゃんとした説明してくれないと、私たちは納得できません」

 

「……………」

 

「ちゃんと説明してください!」

 

 調、響の言葉に颯太は黙って俯くばかりだった。

 

「あたしにもちゃんと説明してもらうぞ」

 

 と、クリスも颯太の前に立つ。

 

「あんたは前に一度あたしから訊かれたとき否定していたよな?そりゃ言えないだけの理由があったんだろうが、こうして名乗り出た以上、あんたにはあたしらに説明する義務があるはずだ。違うか?」

 

 クリスは睨みつけるように問う。

 

「……颯太くん」

 

 と、その様子を見ていた楯無がゆっくりと歩み寄り、颯太に視線を合わせるようにかがむ。

 

「彼女たち、ちゃんと説明しないと納得しないわよ」

 

「…………」

 

「自分の正体明かすってことは、一から十までちゃんと納得のいく説明をしないと」

 

「…………」

 

 楯無の言葉にも颯太は答えない。

 

「颯太が説明しないなら、僕らが話すよ?」

 

「いい……?」

 

 と、楯無に続いてシャルロットと簪も訊くが、颯太は答えない。

 

「……無言は肯定ととるわよ?話してもいいのね?」

 

「………どうぞ」

 

 楯無の問いに颯太はため息をつきながら頷く。

 

「はぁ……どうにかそこんとこぼかしたかったんですけど、そうは問屋が卸さないってもんですよね」

 

 肩をすくめながら顔を上げた颯太は五人に視線を向ける。

 

「話すと長くなる。立ってするような話じゃねぇから席に戻れ。ちゃんと一から十まで説明してやるからよ」

 

 颯太の言葉に頷いた五人はそれぞれが座っていた席に戻る。

 それを見ながら颯太もシャルロットに押されて元の位置に戻る。

 

「さて、話すと言っても、どこから話したもんか……」

 

 颯太は考え込むように腕を組む。

 

「一番疑問だったことがある」

 

 と、クリスが口を開く。

 

「あんたはあの時最後まで施設に残っていたはずだ。そこからどうやって生き延びたんだ?」

 

「なるほどね……」

 

 クリスの問いに颯太は納得したように頷く。

 

「確かにそこから話すのが一番か。となると……」

 

「私が説明した方がいいわね」

 

 と、楯無が一歩前に出る。

 

「そうね。あれはそう……五年前の北海道での決戦の最中、颯太くんが一夏くんや簪ちゃんを退て目的の施設の最奥へ向かってる時のことだったわ――」

 

 そうして、楯無は語り始めた。

 




ついに語られ始めた真実。
さて、五年前のあの日、彼らに何が起きたのか!?



さてさて、今回の質問コーナーは前回の続き、Goetia.D08/72さんからいただきました!
「颯太を気に入っていた(意味深)ニコさんの現在の颯太への心境的なモノが知りたいです。」
ということですが……

ニコ「そうネ。彼はなかなか面白いものを見せてくれたわ。それに関しては私の目に狂いはなかった、ってところかしら。ただまぁ、彼の活躍がそれ以上見れなくなったのは、少しもったいなかったかしらネ」


へ~
………ちなみに……ちなみにだけどね?
『朽葉ハヤテ』って人について、何か知ってる?

ニコ「あぁ、まあ〝噂〟はある程度聞いてるわヨ?〝噂〟は、ネ」

あぁ~……そうっすか……
……これどっちなんかわからんやつや(;^ω^)


さて、今回はこの辺で!
次回もお楽しみに!

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